ScreenKiss Vol.017

1999年 4月 8日 配信
ScreenKiss Vol.017

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Vol.017

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■ 英国映画祭レポート

 ◆英国映画祭第2部 続き

 □ E □  しゃれた大人の恋物語

 ◆ガールズ・ナイト 10/25(金)*’99年春公開
  ゲスト:ニック・ハラン(監督)

  作品内容

  奔放なジャッキーと大人しいドーンは幼馴染み。同じ工場でパート勤めをして
  いる2人の唯一の楽しみは金曜夜のビンゴ大会「ガールズ・ナイト」。ある日
  ドーンが 10 万ポンドを当ててしまう。賞金はいつも仲良く分けていた2人は
  この大金も分け合い、亭主に愛想を尽かしていたジャッキーは工場を辞めて別
  居。

  しかし勤務中に倒れたドーンは脳腫瘍を発病していた。家族には病名を言わず
  にいた彼女だが、ジャッキーは見逃さなかった。そして彼女の永年の夢だった
  ラス・ベガスへの旅を計画する。

  ティーチ・イン

  ・一番伝えたかった事は何か

  辛い話の中に尊厳や希望を描きたかったので、ラストはこのようなものになっ
  た。これは脚本家のケイ・メラーの実体験に基づくものでそこで、オープニン
  グに“デニーズに”という言葉が書かれている。

  実際は行かなかった旅だがそこの部分はややファンタジックに表現している。
  しかし夫や子供達、そしてジャッキーがドーンを通して皆前向きに変わってい
  く。

  ・ブレンダ・ブレッシン、ジュリー・ウォルターズの起用は?

  2人は脚本の段階でキャスティングを念頭に書いていた。クリス・クリストフ
  ァーソンも是非起用してみたかった。

  ・このところ英国映画が好調なのは何故だと思うか

  映画製作に対する自信とそうして製作された質の高い作品への財政的投資。そ
  れにより新しい脚本家や監督にチャンスが与えられ、またその中から良い作品
  が生まれる。

  良い意味でのそうした雪だるま的な相乗効果の構造が好調な英国映画を支えて
  いる。また、日本においても最近はアメリカの大金をかけた大掛かりな作品ば
  かりでなく内容の良いものへの評価が高まって来ている。

  ~会場からの質問~
  ・癌の告知については日本では色々と問題にされているが英国ではどうなのか

  基本的に本人にする場合が多い。監督のお毋様の場合のそうだったという。た
  だし本人の精神状態のは十分留意する。また、その事に対する家族や周囲の受
  け止め方がポイントとなる。

  ・バックミュージックにプリティ・ウーマン等のりのいい音楽を使っていまし
  たが。

  は大きく2つに分けて「楽しい、面白い」場面にウェスタン調を取り入れ、背
  景としての音楽は「神様からのギフトとしての命を幸せに生きている」のを表
  現した。

  ・これからのご予定は?

  丁度今トライスターで撮り終わったばかり。内容はロマンティック・コメディ
  でボーイフレンドのいない若い女の子がコンピューターで理想の完璧な男の子
  をデザインしてしまうもの。テーマは“ヴィジュアル・セクシャリティ”。

  この作品は恋がテーマではないのでこの分類(E:大人の恋)に入れるかどう
  しようか悩んだが、ベガスで出会う気の良いカウボーイとの関係はラストでド
  ーンの遺品とジャッキーの生き方に関係してくる重要な部分でもあったのでこ
  こにいれた。

  監督の言う通り病気がテーマだとどうしても暗くなりがちだが、その辺をも英
  国お得意のウィットを混ぜて乗り切っている。見た後はお涙頂戴というよりは
  むしろ何だか爽やかな気分になれる。予定のゲストに主役のブレンダ・ブレッ
  シンには期待していたが来日した監督はとても物静かな落ちついた感じの人で
  終映後のロビーでは1人づつ丁寧にサインに応じていた。

 ◆アイ・ウォント・ユー 10/25(日)*’99年1/15~公開
  ゲスト:なし

  作品内容

  美容院で働くヘレン。そこへ9年振りにマーティンが戻ってくる。実は彼はヘ
  レンとベッドにいたところを彼女の父に咎められ殺して海に遺棄し、刑務所に
  いたのだった。

  今23才になったヘレンは今は DJ の恋人がいる。が、毋が自殺して以来口を
  きかず楽しみは盗聴と毋の生前吹込んだお伽話のテープを聞くことという難民
  の少年ホンダや娼婦の姉との関わりから9年前の事件の意外な事実が浮上して
  来て・・・

  「バタフライ・キス」や「ウェルカム・トゥー・サラエヴォ」も記憶に新しい
  マイケル・ウィンター・ボトムの最新作である。“大人の恋”のジャンルにし
  てはあまりに残酷で恋にしてはあまりに幼い「事件」。

  だがすべては彼等の恋に始まったという事でここに入れてみた。さびれた町、
  心に傷のある登場人物達。「ウェルカム・・」より「バタフライ・・」を想起
  させる重い内容だ。

  ヘレンの住む家にはプールがあってこのあたりはゆらゆらと揺れるブルー。海
  辺のホンダ達の家、寒々とした町の風景と、レッドやセピアといった色彩の妙。
  すべてが幻影のようであり曖昧な過去を暗示しているようにも感じられる。美
  しいヘレンがその顔で平然とやりのける事実。その目撃者はホンダだけという
  皮肉。

  そしてそのホンダが語り手となっている不思議。この重要な少年役はどこかハ
  ーモニー・コリンの「ガンモ」に出ていたモーゼスという名の大人子供の様な
  少年に似ている。

  随所で使われるタイトルでもある「アイ・ウォント・ユー」のメロディが物悲
  しくストーリーを際立たせている。孤独で寂しい時に見てはいけない作品です。

 ◆ラブ&デス:10/27(火)*11/28~公開
  ゲスト:リチャード・クウィートニオスキー(監督)

  作品内容

  妻を亡くし独り住まいの英国人作家デアスは、文豪として君臨している。ある
  日文芸作品の映画化といわれる「永遠の瞬間」を見るつもりで雨宿りを兼ねて
  映画館に入ったところ間違えて別の作品を見るハメになってしまった。

  しかもアメリカのアイドルもので、下らない!と席を立ちかけた時彼の目は画
  面の美しい青年に釘付けになる。丁度美術館で最近見た美少年が横たわるまさ
  に同じポーズで青年は画面にいる。

  俳優の名前はロニー・ボストック。その日から彼のマニアと化したデアスは1
  度も使用した事のないビデオやそれを見る時間の為に留守電を購入したり、初
  めてレンタル・ビデオ店に足を運んだり。挙げ句“ボストキニア”とタイトル
  した専用のクリッピングノートまで密かに作る始末。

  想いが高じた彼はとうとうロニーのいるロングアイランドまで飛び何とか彼と
  接触する機会を得るが、ロケで離ればなれになる時がやってきて・・・

  ティーチ・イン

  ・東京は初めてという事でしたが、印象は?

  花の蕾みが開くような昼間に対して夜はネオンが森のようでまさに“映画的”
  体験だった。

  ・撮影中の苦労は?

  同じ英語を喋るのに英国人と米国人は発音も違えば、文化的にもかなり異なる。
  例えば脚本の紙の大きさもページ割りも違う。

  ・この作品の見どころは?

  異なる文化圏から来た人間とのロマンス。これは世界中どこでも起こるカルチ
  ャーギャップだから同じ箇所で泣いて笑える。

  ・日本の食べ物で好きなものは?

  寿司、酒、刺身。今度は納豆」に挑戦するつもり。

  ・日本映画で好きな作品」はあるか?

  10代の頃溝口や小津の作品を見て今迄に見たことのないタイプの映画だと思
  った。時間や舞台の感覚がかなり異なっていてその感じに慣れる迄が時間がか
  かった。黒澤や大島の作品は好きだが、それに北野武の「Hanabi」は 1990 年
  代で優れたロマンティック作品だと思う。

  「ベニスに死す」や「ロリータ」の変型といわれているようだが、「ベニス..」
  にしては明るくて、「ロリータ」にしては偏執的すぎず、むしろアン・リー監
  督の「推手」に見られるようなカルチャーギャップに、少々ロマンティックな
  エッセンスを加えたような洒脱な物語と捉えた方が良いような気がする。

  堅物でトラディショナルな典型的英国紳士がアイドルに夢中になったばかりに
  巻き込まれる個人的な文明開化。たまたま夢中になった相手が男の子というだ
  けでここにはそれほど深いゲイ的な強調はないと思う。

  誰でも1度位は経験するだろうこうした気分を、たまたまこの作家氏はことも
  あろうに老年にさしかかろうとしている今経験しているにすぎないのだ。普通
  なら手が届かない存在で過ぎていくこうした時期を、彼はその社会的地位も後
  押しして本人に会ってしまうという快挙を成し遂げてしまっただけなのだ。

  こうした憧れの気持ちが実に良く出ている。最初にロニーを目にした時のエン
  ディングクレジットが、彼のキャスティングの部分だけ輝いて見えたり、彼に
  関する情報は総べて知りたい、とせっせと記事を集めた結果、飼い犬の名前ま
  で暗記して夢の中でもロニーに関する口答試験を受けていたり。

  まして憧れの彼から貰ったサングラスともなればこれはデアスにとって国宝級
  の代物になる。これがティーンエージャーの物語なら平凡すぎて特別面白味が
  ないが、立派は先生だから話になるのだ。

  自分で自分をおちょくっているジェイソン・プリーストリーもさることながら
  ジョン・ハートはさすがだ。特にあの大好きなアイドルと話す時心の中の憧れ
  と嬉しさと照れを父親的、先輩的な顔で隠している表情などは最高だ。

  監督は静かな語り口の何となくのっそりした感じの人で、彼こそあちらの世界
  の人では...とつい考えてしまった。

 ◆雨の中の恋:11/5(木)*’99年春公開予定
  ゲスト:マリア・リポル(監督)

  作品内容

  役者の卵ビクターは恋人シルヴィアがいながら劇団の仲間とたった1度だけ浮
  気をした帰宅後彼女に問い詰められて「真実」と言ったため別れてしまう。そ
  の後ふと立ち寄ったパブでふいの雨にあって傘を借りる。

  傘をさして辿り着いたゴミ捨て場で不思議な人々に会い、彼はシルヴィアと別
  れる前の時まで遡ることが出来る。そこで彼が見た光景は...一方やり直し
  の中で今度はシルヴィアが別の人生を歩んでいる。ここでは、彼女もビクター
  を失いやはり失意でベンチに腰掛けていると...

  ティーチ・イン

  ・映画化のプロセスを

  普遍的な内容で脚本が良かった。

  ・製作に当たり、困難だった点は?

  ロンドンのカーニバルは世界でリオに次ぎ大きなお祭りだが、そこでの撮影シ
  ーンは人ごみと大音響の中、大変だったが同時に楽しい思い出となった。

  ・影響を受けた監督は?

  母国スペインの監督ではルイス・ブニュエル。そして国際的な英国の監督とい
  う意味でアルフレッド・ヒッチコック。

  ・スペインの監督として見た時の最近の英国映画の動向をどう思うか?

  とても身近なテーマを巧く撮っている。そのテーマが世界的にみても通じるも
  のがある。

  ・日本映画では何が好きか?
 
  うなぎ

  ・今後どんな映画を作製したいか?

  脚本を映画化するには約2年の歳月を要するので次の2年間を費やすだけの
  価値ある作品を選びたい

  この作品の原題は”The man with rain in his shoes”だが、公開時のタイトル
  は”If only”となっていた。何となくうろ覚えの受験単語の記憶では・・しさえ
  すれば、とか・・なら良いが、という意味で何となくこちらの方が分かりやす
  いかもしれない。

  人間後悔はつきもので、幸福の神様の前髪を掴まなかったばっかりに・・とい
  う事が多いものだが、じゃあやり直せれば幸せになれるのかというと、「バッ
  ク・トゥ・ザ・フューチャー」で命拾いしたドクは別として、こと恋愛となる
  と必ずしもそうとはいえないかもしれない。

  巧みな画面繋ぎでスタイリッシュな作品に仕上がっている。監督はどことなく
  男性的なさばさばした感じの女性で歯切れのよいテンポの作品が頷ける。舞台
  はロンドンだが、音楽や色彩に色濃くラテンが漂う不思議なボーダーレスな感
  覚の映画だ。

  ...というわけで以上英国映画祭のレポートでした。実に新作18本のうち 13
  本とは良く見たものです。いわゆる典型的な英国映画という感じではなく、本
  当に様々なジャンルの様々な表現、そしてたくさんの新しい才能が出て来てい
  るのを知って驚いた。

  全てとは言わないが、アメリカ映画で感じられる人工的な笑いではなく、ひね
  りの効いたコンクな味わいこそ英国映画の醍醐味だと思う。また、何人かの監
  督もおっしゃっていたように、世界に通じる身近なテーマとというのが更に強
  みとなっている。

  さてここで紙面をお借りするのも変だが、東京国際映画祭のシネマプリズム部
  門最終日でキャンセルになったカザフスタン映画の「殺し屋」が昨年 12 月 17
  日と19日の両日各1回上映されたので簡単に御報告を。上映場所は京橋の映画
  美学校の試写室。事前の申し込み受け付けだった。

  作品内容

  ラジオのスタジオ収録場面。スタジオ入りしている医学博士の運転手がロビー
  で彼を待っている。

  運転手はこの日はじめて父親になる。そこで早めに仕事を切り上げその足で病
  院へ妻と子供を迎えに行った。バックミラーで後部座席の赤ん坊を良く見よう
  と脇見をした瞬間追突してしまう。

  免許証を取られたまま修理代の請求に一向に応えられない。運転手で稼ごうと
  した矢先、件の博士は自殺。研究所の経営も危ぶまれる。仕方なく姉に金の無
  心に行くが、当てにしていた金は騙し取られて夫婦喧嘩の真っ最中。

  そのうち修理代催促に暴力団が来る始末。とうとうヤクザから借りて一件落着
  したものの今度は強盗団に遭って商売用に購入した車を壊され、借金は貯まる
  ばかり。その上赤ん坊は難病に罹り、借金帳消しと引き換えに殺人を請け負う
  事になるが。

  ’97 年のぴあフィルムフェスティバルだかでカザフスタンのやはり救いのない
  少年の犯罪映画を見た記憶があるのだが、この作品は終わってからしばらくど
  んより~としてしまう位これでもか、という不幸雪だるま映画である。

  カザフスタンてどんな国か実は良く知らないのだが、もしこれが事実ならとん
  でもない国だし、事実を歪曲してるなら間違った知識を世界に植え付けること
  になるわけだが。

  大体なんでそもそも追突事故を警察に届けず示談にしようとするのか、とか保
  険の制度はどうなっているのかとか、失業手当てはないのか、とか何だって言
  う通りに殺人したのか、とか私の悪い頭の中は疑問符で埋まってしまった。

  映画祭では一応監督が登壇する予定だったので是非聞いてみたかったと思った。

                                鳥野 韻子

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