ScreenKiss Vol.021

1999年 5月 10日 配信
ScreenKiss Vol.021

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Vol.021

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■ビデオでシネマ

 このコーナーは見損なった作品、もう映画館では見られそうもない作品、あるい
 は未公開の作品に出会えるビデオのご紹介がてらの勝手な感想をお送りします。

 6「ヒューゴ・プール(96米)」
   東映ビデオ

   オープニングの良さに惹かれてついご紹介

 映画には、ほんのワンシーンとか、たった一言のセリフとか、そんな些細な何か
 がとても気に入ったために好きになる作品もあるんじゃないだろうか。こんな言
 い訳めいた前振りをしたのも、察しのよい方ならもうお分かりですね。そう、今
 日ご紹介する『ヒューゴ・プール』がその類なんでありマス。

 この映画、悪くないけど出来がよいとはいいがたい。でも、オープニングがとび
 きりいい。青みがかった夜明けのロスアンゼルスの静かな町並みに、そっと入り
 込んでくるセロニアス・モンクのジャズ・ピアノ。朝が始まりつつあるとはいえ
 まだ家々はブルーのもやの中でひっそり眠っている。そんな風景にモンクのちょ
 っと外し加減のソロがほんとよく似合っているのだ。

 選曲がうまい。うますぎる。もしやこの監督、すごい才能の持ち主なのではない
 か。などど考えていると、ゆっくりテロップが出はじめる。このフォントがジャ
 ズエイジの時代のポスターなぞを彷彿させるデザインでなかなかよい。むむ、も
 しやどころかほんとにデキる監督だったりして……。しかしこれは早とちりだっ
 た。残念ながら本編には、このオープニングほど才気はひらめかなかったみたい
 だ。

 ヒューゴ・プールとはアレッサ・ミラノ扮するヒューゴが一人で経営するプール
 清掃会社。ある朝ラジオから、ロス市は水不足のためプールへの給水には罰金を
 科すとのお知らせが流れると、途端にプール掃除の依頼が殺到する。

 そこで糖尿病のヒューゴは起き抜けにインシュリン注射を済ませ、さっそく仕事
 に取り掛かる。まずヤク中の父親を訪ねて叩き起こし、プールの水を盗まれてし
 まった依頼主のために給水トラックでコロラド川へ水を「仕入れ」に行くよう指
 示。次は競馬狂で借金山ほどの母親の元へ行き、借金の肩代わりをしてやる条件
 で手伝いを承諾させる。

 こうして父は川へ水汲みに、母子はお仕事しに依頼主のプールへ。それにしても
 プールの水を盗まれるとか1日で回り切れないほど依頼を頼まれるなんて話が成
 り立つのは、自家用プールの多いロスならでは。日本じゃ考えられないですな。

 そんな一軒でヒューゴはALS(筋萎縮性側索硬化症)の青年と出会う。キーボ
 ードを打つと音声の出るノートパソコンでユーモアたっぷりの会話ができる彼は、
 ヒューゴ母子と親しくなり、二人の乗るピックアップの荷台に車椅子ごと同乗。
 プール清掃巡りや競馬観戦まで体験する。楽しい1日を分かち合ったヒューゴと
 青年は翌日結ばれる。が、青年は短い命を閉じる――。

 大まかにはこんなストーリーだが、起承転結ありのドラマティックなハリウッド
 的映画ではない。父親と自閉症気味のヒッチハイカー(ショーン・ペン)との心
 暖まる副ストーリーの他は、ささやかなエピソードの積み重ね。それも水彩画の
 ようにさらりと描かれる。映画というより1人称で語るミニマル系アメリカ現代
 小説の趣だ。

 しかし哀しいかな、監督の才能不足で水彩画が滲んでしまった。弱い者が互いに
 癒し癒されていく、というストーリーは有りがちとはいえいい素材。これを爽や
 かに描きたくて水彩画的な映像を選んだ気持ちもよく分かる。ところがその手法
 がうまく生かされていない。心象風景の描き方がヘタ、というか映像で登場人物
 の内面を表現するまでには至っていないのだ。

 そのせいで、薄味でさえあれば上品だと勘違いした懐石料理を食べさせられてい
 る気分になる。つまりダシが効いていないってワケ。監督はオープニングに力を
 入れすぎて後が続かなかったのかしらん?(まあ、作業手順を考えればオープニ
 ングの制作は本編の編集より後でしょうけど)

 とは言え登場人物たちの醸しだす優しさには不思議な魅力がある。糖尿病のヒュ
 ーゴ、ヤク中の父親、競馬狂の母親、筋萎縮の青年、自閉症のヒッチハイカー、
 そして頭のネジがゆるんでいるような依頼主たち――皆、心身のどちらかまたは
 両方に弱さやハンディキャップをもっている。でも優しさももっている。

 そういう、弱いけれども心根の優しい人たちがある日偶然に出会って、ほんのひ
 ととき心触れ合い、お互いに癒される。それがとても自然で普通だ。なぜか。彼
 らは自分が弱いゆえに相手の弱さも理解できるから。相手の痛みを感じることが
 できるからだ。

 主人公の糖尿病という設定もおもしろい。ALS の青年と心を通わせやすいキャラ
 クターとして使ったのだろうけど、登場人物をステレオタイプではなく造形して
 いるのには好感が持てる。この映画みたいに、いろいろな病気持ちや怪我人がご
 く普通のキャラクターとして映画にどんどん登場するようになれば、弱者に対す
 る人々の認識も多少は変るんじゃないだろうか。

 監督がもうちょっとがんばってくれたら佳作になりえたのに、かえすがえすもも
 ったいない作品。ちなみに監督は、この作品にラリパッパな依頼主役で登場する
 ロバート・ダウニー・Jr.の父君ロバート・ダウニーで、若くして ALS で亡くな
 った妻へのオマージュ的作品であるらしい。

                                 quittan

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■ビデオでシネマ大賞を新設

 いきなりですが「ビデオでシネマ大賞」(通称ビデシネ大賞)を勝手に新設する
 ことにしました。毎回ご紹介する作品の中から各賞に該当する候補者があれば(
 あればですよ!)、その都度候補として取り上げ、年末に大賞受賞の発表を行う
 予定(ほんとかしら)。

 各賞についてはまだ具体的に決めていませんが、なるべくユニークなものにした
 いと思ってます。皆さんのご意見も取り入れていくつもり(候補への応援も大歓
 迎)。

 今回の各賞候補は、
 ◇オープニング賞(当然ですな)
 ◇テロップ賞(映画に使われるものとしては凝っている類だと思う)
 ◇怪演賞:ロバート・ダウニー・Jr.
      (何で彼かって?刑務所暮らしがこたえてかあばら骨が浮き出てしま
       った哀れな体躯にほだされたせいもある。けど、アメリカでああい
       うラリパッパな演技出来る人は少ない。イギリス映画『リチャード
       ?世』の怪演もなかなかなのダ。)

 の三つ。

 では次回をおたのしみに。

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■横浜フランス映画祭情報

 今年も恒例の横浜フランス映画祭が始まります。6月10日(木)-13日(日)
 の4日間、今年は7回目を迎え、御馴染みのパシフィコ横浜で開催される。

 日程:6月10日(木)~13日(日)
 場所:パシフィコ横浜
 料金:前売り券 1000円
    当日券  1200円

    今年は指定席もあるそうです。
    ウェルカムセレモニーとクロージングは1500円(当日は1700円)

 チケット発売日は5月14日

 ■公開予定の映画作品紹介

 □ Asterix et Obelix contre Cesar
  「アステリックスとオベリックス対シーザー」

  原作はフランスのマンガ「Asterix et Obelix」の完全映画化。監督は「フレン
  チ・コップス」「アルレット」のクロード・ジディ。出演は主演2人にクリス
  チャン・クラヴィエ、ジェラール・ドパルデュー。悪役には今年のアカデミー
  賞でオスカーを得たロベルト・ベニーニが扮している。
  109 mins
  http://www.asterix.tm.fr/lefilm/

 □ Belle Maman
  「美しいママ」

  「ペダル・ドゥース」に続いて、ガブリエル・アギオン監督のラブ・コメディ
  が今年もセレクトされた。この作品はキャストに注目。カトリーヌ・ドユーブ、
  ヴァンサン・ランドン(今年も来るか?)ステファーヌ・オードラン。
  102 mins

 □ Ca commence aujourd’hui
  「それは今日始まる」

  ベルトラン・タベルニエ監督の作品は、フランス映画祭ではこれまで3本上映
  されています。今回の映画もドキュメンタリー・タッチで小学校の教師を主人
  公にした社会派ドラマ。
  117 mins
  http://cacommenceaujourdhui.com/

 □ La classe de neige
  「雪のクラス」

  「伴奏者」「オディールの夏」に続くクロード・ミレール監督の新作です。ロ
  マーヌ・ボーランジェが出てるかって?残念でした。出ていません。心配性の
  ニコラは学校のスキー教室へ行くことになった。そこで起きた事件とは・・・?
  96 mins

 □ Le Derriere
  「お尻」

  サチャ・ギトリの原作を映画化した監督主演作品「カドリーヌ」に続いて、ヴ
  ァレリー・ルメルシエがまたまたコメディに挑戦。自分の父親がゲイであるこ
  とを知った娘(ルメルシエ)は、「ゲイの世界」を覗いてみたくなり、ある決
  心をする。彼女が取った行動とは!?
  102 mins

 □ Hasards ou coincidences
  「偶然と一致」

  これは、噂では今年の来日団の団長を務めるクロード・ルルーシュ監督の最新
  作です。日本でも「男と女」「愛と悲しみのボレロ」「レ・ミセラブル」等ヒ
  ット作があるルルーシュ監督。自分の奥さんを主演にしたこの作品はロードム
  ービとか。期待しましょう。
  120 mins

 □ Je regle mon pas sur le pas de mon pere
  「私は父に歩調を合わせる」

  新人監督のレミー・ウォーターハウスは撮った父親と息子のロードムービー。
  主演:ギヨーム・カネ、ジャン・ヤン、ローレンス・コート
  88 mins

 □ Karnaval
  「カーナバル」

  トマ・ヴァンサン監督作品。主人公ラルビは父親との大喧嘩の後、マルセイユ
  へ家出する。ダンケルクでカーニバルを見たラルビはベアと言う女に出会って
  ・・・
  88 mins

 
 □ Lautrec
  「ロートレック」

  題名が示す様に、画家トゥルーズ-ロートレックの伝記映画。ロートレックと
  言えば、「赤い風車”Moulin Rouge” 」と言う映画がすぐに思い浮かぶ。ホセ・
  フェラーがロートレックを演じたジョン・ヒューストン監督作品である。これ
  をビデオで見てから本国フランス製の本作品を見るか?キャストで唯一識別出
  来たのはエルザ・ジルベルシュタインだけだった。監督もロジェ・プランショ
  ンと聞いたことのない人だ。
  125 mins

 □ Mille bornes
  「1000の境界」

  死んだ友人の葬式に集まった友人:男5人と女が一人。死んだ友人は最後の願
  いとしてビデオを残していた。その願いとは、自分の死体を安置所から盗み出
  し、イタリアのベニスまで運んでくれと言うものだった・・・
  103 mins

 □ La Nouvelle Eve
  「新しいイブ」

  女流監督のカトリーヌ・コヌシーニの作品。30年間独身だったカミーユが遂
  に理想の男性に巡り会えたが、彼は子持ちの妻帯者だった。やはり「不倫」す
  るしかないのか?
  94 mins

 □ Petit freres
  「小さな兄弟」

  「ラ・ピラート」「ピストルと少年」そして、去年はあの「ポネット」でヒッ
  トを飛ばしたジャック・ドワイヨン監督の最新作です。家出した 13 才の少女
  と彼女を取り巻く4人の少年。
  92 mins

 □ Quasimodo d’el Paris
  「パリのカジモド」

  個人的には筆者が一番楽しみにしているのがこの作品。カジモド(ノートルダ
  ム・ド・パリのせむし男)の話は何度となく映画化されている。最近ではあの
  ディズニーもアニメ化した。さて今回は去年の映画祭でも受けていた「パパラ
  ッチ」のパトリック・ティムシットが監督主演で、あのモンティー・パイソン
  を連想させるタッチで映画化した。
  100 mins
  http://quasimodo-film.com/

 □ Rien sur Robert
  「ロベールに関しては何もない」

  脚本家として有名なパスカル・ボニツエール脚本・監督作品。数年前「Encore」
  と言う題名の彼の監督作品が東京映画祭で上映されたので、見に行った。あの
  作品が気に入った人にはいいかも。
  ファブリス・ルキーニ、ミシェル・ピコリ、サンドリーヌ・キベルラン、ベル
  ナデット・ラフォン
  107 mins

 □ Venus Beaute
  「美しいビーナス」

  マリオン・ベルヌー脚本、トニー・マーシャル監督作品。とにかくこの作品は
  出演している女優人が凄い。ナタリー・バイを筆頭に、ブル・オジエ、昔のフ
  ァンが泣いて喜びそうなミシュリーヌ・プレール、エマニュエル・リバ、トリ
  ュフォー作品以来のクロード・ジャドなど。ストーリーは現代女性が直面する
  様々な問題:仕事、嫉妬、自殺などを取り上げる。
  105 mins

 □ Tout baigne
  「全て水浸し」

  エリック・シバニアン監督作品。家が水浸しになってしまった。しかもこんな
  中、子供が生まれそうなの。一体どうしよう?

 □ Peau neuve
  「新しい肌」

  アニエス・B制作。もしも別人になることが出来たら?アランはある日決心す
  る。家族、仕事も捨てて、新しい運命を模索した彼に用意されていたのは?
  監督:エミリー・ドゥルーズ。

 □ Nos vies heureuses
  「私たちの幸福な生活」

  ジャック・マイヨ監督作品。6人の若者の人生スケッチ。イヤな物ばかりのこ
  の世の中で、好きな物を見つける喜びとは?

 □ L’humanite
  「ヒューマニティ」

  「ジーザスの日々」を撮ったブルーノ・デュモン監督の最新作。

 □ C’est quoi la vie
  「人生って何」

  フランソワ・デュペロン監督作品。家族崩壊で自分の居場所がなくなったニコ
  ラは祖父母が残してくれた農場へ行く。そこで、マリアと言う女性と出会い、
  彼は自分の新たな居場所を見つけることになる。

 情報提供:高木 洋一
 (編集部:ありがとうございました)
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