ScreenKiss Vol.035

1999年 7月 31日 配信
ScreenKiss Vol.035

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Vol.035

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>☆ C O N T E N T S ☆------------------------☆<   □ケス   □大地と自由   □踊れトスカーナ >☆------------------------☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆ケス(監督:ケン・ローチ)☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  ★★★★★(満点)  映画を観終わった後、その映画が体に自然にしみこんでいくような感覚がある。  女性と男性ではこの映画に対する(感想ではなく)感覚がかなり違うのではない  だろうか。主人公が少年(ビリー)であり、女性で唯一でてくるのは母親という  設定、子供のころの少年独特の行動が盛りこまれている辺りがその原因だろう。  さて、この映画はスタンダードサイズで撮影されている為、画面の幅がかなり狭  い。しかしその為だろか非常にピントがあっていて、特に人物を追いかけるシー  ンでも常に画面全体がクリアに表現されている。これは非常に重要だ。いつも大  きい画面(アメリカンビスタサイズ、シネスコープ)に見慣れている為テレビの  サイズに近いその画面に迫力不足を感じる人もいることだろうが、幅の広い画面  ではしょっちゅうピントのあっていないシーンに出くわし、その度に映画のスト  ーリとは関係ないのだが興ざめすることがあるのは私一人ではなかろう。特に動  いている人物を追いかけるシーン。人物が手前から奥に動いたりすればほぼ確実  にピントがずれている。もちろん原因はサイズの違いから生じているだけではな  いが。  フォーカスだけではなく画面の美しさにほれぼれするシーンと言えば、ビリーが  森を抜ける時樹上から撮影しているかの角度で彼を追っていくシーンと、芝の上  でハヤブサを訓練するシーン。彼は遊びながら、かつ真剣に動きまわっている。  その態度に演技という言葉は感じられない。  また、画面の角々まで、手前から奥に広がる風景がまるで絵画のように描かれて  いる。まさしく丁寧に描かれた18世紀の風景絵画のように視線をむけるとその  細かい描写におどろいてしまう。自然の景色ではなく、計算して作られたセット  のようでもあり、しかしセットでは決してまねできない美しさがある。  この2つのシーンは話が進む中で必然的に何度か使われるのだが、その度にこの  映画を観つづけることに楽しみを感じてしまった。非常に個人的な感想だが、ど  うも本当にこの映画が自分の波長に合うようだ。  また特筆すべきはこの子供、少年たちの演技であろう。この場合少年とはビリー  とけんかする同級生の男の子まで、つまり学校の生徒達のことを言っていて、ビ  リーの兄(ジャド)は入らない。ジャドの演技はまったく話にならないので、わ  ざわざ説明するまでもないだろう。意識して演じすぎているから、単に演技にな  ってしまったのだ。  子供が主役の場合、その純粋な演技は特に重要になっていく。どんなにその他の  要素が完璧であったとしても名作となるにはこの部分が重要で必要不可欠だ。そ  の反対にこれが十分存在していれば、すこしくらい他の要素に欠陥があったとし  ても、なんとか名作に仲間入りできそうなものだ。  しかし、この演技という言葉はあくまでも大人の視線、観客の視線にたって言っ  ている言葉で、実際あの少年たちは演技をしているというよりも、ありのまま自  分達の生活の一部を見せているだけなのではないだろうか。つまりこのように見  せることができる脚色で脚本を仕上げていった監督の才能が、子供というフィル  ターを通してしみでているということだ。  演技がへたな子供を使った場合、というよりも子供の演技の仕上がりを決めるの  は大人達であろうから、そのへたな結果を産み出すような脚本や、監督の意識が  その程度であった作品の場合は、どんなに基本的な内容がよくても評価がいま一  歩となってしまう。こういう映画は監督の失敗といえるだろう。最近公開の作品  では「キャメロットガーデンの少女」がその手の失敗作だった。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆大地と自由(監督:ケン・ローチ)☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  ★★★  この映画は評価すべき映画のようなきがするが、どうしても総合的に考えた際に  抜けている点がみられる。彼のイギリスを舞台とした作品ではありえないような  ミスがそこには存在するかのようだ。今回はリバイバルで上映されていたものを  観た後の評価だが、前回1年くらい前、ロードショーの時にも同様に退屈な作品  と感じたものだ。  オープニングは一人の老人が亡くなり、孫娘が彼のスクラップした新聞や当時の  手紙を読み返し、時代をさかのぼり彼が生きた"真の自由を求める闘争の日々"を  回想するという設定。ときたま彼女がそれらを読んでいるシーンにもどり、彼女  がピザを食べ、ベックビール(瓶ビール)を飲んでいるところを見せる辺りはリ  アリズムの監督ケン・ローチらしい。観終わった後同じ行動の衝動にかられる。  つまり思わずビザを食べにいってしまった。  ちなみに撮影はバリー・エイクロイドで、いままで「リフ・ラフ」から始まり「  レディーバード・レディーバード」「カルラの歌」「マイ・ネーム・イズ・ジョ  ー」と同じ色合い、かつその撮影題材にそった微妙な表現力を使い分けている。  しかし、残念ながらこの作品では十分その力量が発揮されているようには感じら  れなかった。「カルラの歌」の場合もそう感じたのだが、エイクロイドはイギリ  スの風土の中では映画に必要な部分を誇張する事も、切り取るように一面だけを  抜き出す事もできるテクニックをもった人だが、一歩国を出るとイギリスでのテ  クニックをそのままはめ込んで使用しているようだ。つまり、土地の違いが表現  されているとは思えないということ。  また、意図的な感情移入を誘わないような客観的な表現で撮影をしているのだが、  その傍観者としての目の重要さはケン・ローチの映画の上であるから理解できる。  ところが逆に必要なときもあると思うし、そのような時には中途半端に心情を映  し出し感情をあらわにするシーンがある。銃撃のさなか、エンディング近くの前  線地帯で部隊が投降させられるシーンなどは残念ながら緊迫感のたりない映像に  なっている。その方法がケン・ローチの一貫した姿勢でもあるが、ケン・ローチ  も題材によっては苦手なシーンがあるようだ。  孫娘が読み返すという設定、かつラストでは彼女が詩を朗読し、無表情に「土く  れ」をかけているその表情は最初から最後の一コマまで一貫して、感情を大きく  誇張しないまま終わりを迎える。(注意してもらいたいのは、もちろん泣いたり  怒ったりの感情の起伏は映画の中にいくらでもあるが、その撮影がその感情を誇  張しない、まるで設置カメラが偶然捕らえたかのようなままで捕らえているとい  うこと。)  祖父のおこなったその闘争が現代に生きる彼女にとってどういう意味を持ってい  るのかは一切押し付ける事なく、表面に押し出さずに、観客一人一人が彼女と同  じ立場に立たされて同じように自分の意見で感じる権利があるかのようだ。  公平で、上手い手法だが、多少退屈な内容であることが一番の問題か。  ケン・ローチファンには頭に来る表現なのかも知れませんが、私の自由に基づき  書いておりますので、ご了承を。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆シネマノート『踊れトスカーナ』☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  ストーリー  トスカーナの片田舎で会計士を勤めるレバンテの家に、ひょんな事からスペイン  のフラメンコダンサーを乗せたバスが到着し、更に一行を泊める事に。平凡な彼  らとこの町にとってそれは台風(原題は"Il Ciclone"=サイクロン)並みの出来  事だった。  興奮した父はさらに鼾が大きくなるし、ワインつくりをしながらもゲージツ家の  弟は、明るい絵に転向。レズの妹とレバンテにはそれぞれのお目当てのダンサー  が。  そして、ダンサー達の移動が決まり・・・  ※この中で、不思議な名優が3人いる。作中では1度も役名?を呼ばれなかった  飼い犬役のLilliと、声だけで1度も姿を見せない祖父のジーノ。それに、レバン  テの心中の声。登場人物が皆どこか変で、何故かオーバーアクション。葡萄栽培  の為の緑青噴霧器を背中に、リズムをとる姿は明和電気みたいな弟、たらお君が  そのまま大人になったような妹と、彼らのネーミングも、レバンテ(決起)、リ  ーベロ(自由)、セルバジャ(野生?)。着ているTシャツには「癇癪持ち」なん  て書かれていて、何かはずれた可笑しさが全編を覆っている。  カテリーナ(この女優さん、梅宮アンナとジュリア・ロバーツを足して2で割っ  たような感じだった)と、几帳面なレバンテの恋愛模様は平凡だが、面白い。小  道具としてのブーメランや、家に活気が帯びると電界が生じるという設定も小粋  だ。植物でも音楽を聞かせたりすると、微少ながら電流が生じるというから、ま  んざら嘘でもないし。  一面のひまわり畑、ノリのいい音楽。レバンテの心情を表現するバイクや、日記  風に綴っていくところは、ナンニ・モレッティ的でもあるが、ハッピーエンドな  がら『ライフ・イズ・ビューティフル』にも通じるイタリア的なテンポの良さ。  原案、脚本、監督、主演の4役をこなした、レオナルド・ピエラッチョーニは張  り切り過ぎず、バランスよくまとめている。気分の落ち込んでいる時、是非お薦  めの作品。  私事だが、筆者のボスはイタリア人。仕事での衝突は日常茶飯事で、この日も憂  さ晴らしにこの映画を見に行ったところ、登場人物の仕種や表情がどことなく彼  に似ていて、イタリア映画を見に来たことを大後悔。(おまけに彼はバイク通勤  している)しかし、日頃の恨みも忘れてしてしまう程可笑しくて、楽しめた作品  でした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー!  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