ScreenKiss Vol.036

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1999年 8月 17日 配信
ScreenKiss Vol.036

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Vol.036

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>☆ C O N T E N T S ☆------------------------☆<   □アイズ・ワイド・シャット   □スカートの翼ひろげて   □黒猫・白猫 >☆------------------------☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆アイズ・ワイド・シャット☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  ★★★★  来年のアカデミー受賞式では、毎年恒例の"亡者の肖像"にスタンリー・キューブ  リク監督があの顔写真で紹介されると、会場は拍手が一段と高まる。そんなこと  を想像せずにはいられない状態でこの映画を観る。この映画のパンフレットの制  作は公開第1週にまにあわなかった。監督の徹底的な秘密主義がもたらしたハプ  ニングなのかもしれない。  そのおかげでストーリー、評価に関してはほとんど知識がないまま初日を迎え、  特別キューブリック監督のファンでもないことも幸いし、ほとんど先入感なしで  観ることができた。先入感があると判断が大きく鈍るが、それを排除している分、  今回の★4つの評価には冷静に自身がもてる。一般的には監督の評価が高い場合  先入感で評価されがちだし、映画作成秘話の噂を聞くといやがおうにも評価され  てしまったりする。  この映画を観終えると脚本のストーリーの巧みさを実感する。8月7日より公開  の「ロック、ストック&トゥー・・スモーキング・バレルズ」のように話が入り  組んだ挙げ句、最後に1箇所に集約されるような巧みさではないが、トム・クル  ーズが1人で行動し、想像し、苦しんでいくことで完全に物語が一人称で進む中、  ニコール・キッドマンとその他数人の感情が交差し、彼のなかに集約される。  これは見事な演出だ。感情をつき破るようなおおげさな表情の場面もないのに苦  しみが伝わり、一流のホラーのごとくに汗を感じる。一流の犯罪推理もののよう  に謎は深まり完結に近づく。  全編を通して全員の動きがスローテンポで、それを追いかけるカメラもゆっくり  と動き、その時間の流れが観客に焦りを生む。人物をすこし引いた位置での撮影  は、背景となる空間を広くとることで迷宮のごとき印象の室内をつくりだす。見  事な撮影だ。特別変わったセットではないのに、その構図によりまったく異なっ  た印象にさせる。  この点は「2001年 宇宙の旅」を思い出させた。宇宙空間を描くのに、すこし  引いた場所から撮影することにより空間の広がりを描いている。ハル(コンピュ  ータ)のスローな話しかけや、宇宙飛行士達の台詞の少なさ、無駄な音楽、効果  音を省き真空の無音状態を実感させるとともに恐怖心をあおっていく。  宣伝ではセックスシーンに対して過剰反応があるが、今の世の中この程度のシー  ンはテレビでも氾濫しているし、ヘアーが見えるシーンに対してはフランス映画  をよく観ている人達にはごく普通のことだろう。しかしその使い方には十分テク  ニックが感じられるし、最後まできれいだ。  18禁(18才以下は観る事ができない)ではあるが、日本の映画館はチェック  が甘いし、まわりを見回す限り数人は明らかに18才以下だった。今後レンタル  ビデオでの扱いが気になる。この映画のように、今をそのまま突き進むような映  画には映論ご担当者にも時代の勉強と若返りが必要ではなかろうか。もちろん世  界的にいえることなのだろうが。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆スカートの翼ひろげて☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  ★★★  原題は「THE LAND GIRLS」だったが、随分意味の異なる邦題に変えたものだ。  この映画はどちらかというと女性向けかつ、ある程度年輩なかたがたが楽しめる  物だろう。映画館にも女性の姿が多かった。そのことから考えると、女性的な結  構いい邦題になったのではなかろうか。  第2次世界対戦の最中、イギリスで農業に従事する女性を"農業促進婦人会"(女  性農場兵士といったほうがいいだろう)と呼んだ。この女性達が、農業から離れ  戦場に赴いた男達の仕事を引き継いだのだ。  3人の女性が主人公となり、この時代を駆けぬけていく姿を描いている。それぞ  れの性格で男性に対する行動は随分違い、それが笑いと共感をつくりだす。  男達には戦争下らしいハプニングがあり、簡単で分かりやすい映画だから誰にで  も受け入れられるだろう。  最近3人の女性が主人公になっていた映画といえば、今年岩波ホールで記録的ロ  ングランを続けた「宗家の三姉妹」が記憶に新しいが、この映画がそこまで人気  がでることはないだろうが、観に来た人には受け入れられる内容だ。  男性には物足り内容だが、いま最も旬のイギリス女優レイチェル・ワイズの姿、  しかも彼女に似合う時代設定とくればファンは必見であること間違いない。日本  では「ハムナプトラ」に続き主役として登場となる。(ハムナプトラに関しては  ScreenKiss Vol34参照)  映画に関してはあまりコメントすることはないが、レイチェル・ワイズの活躍ぶ  りにはおどろくばかりだ。  ただし、これは日本の公開時期が続けざまであったことから感じる日本人にとっ  ての印象であろ。実際「チェーン・リアクション」でキアヌ・リーブズと共演し  て以来、年間2、3本程度の出演で、主役ばかりではないことからまだまだ今後  どこまで演技力を伸ばしていくかで彼女の役者人生が決まっていきそうだ。  今後 「The Taste of Sunshine」という映画に出演していることを確認したが、  詳細はまだ不明です。皆さんが使われているインターネットで検索すればある程  度のニュースは入手可能と思われますから、興味あるかたは一度調べてみては?                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆シネマノート『黒猫・白猫』☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  今回は8月21日(土)公開予定の新作のご紹介です。  『黒猫・白猫』     1998年 仏・独・ユーゴ合作、ユーゴスラビア映画     1998年 ヴェネチア映画祭銀獅子賞最優秀監督賞受賞     監督:エミール・クストリッツァ     出演:バイラム・セヴェルジャン、スルジャン・トドロヴィッチ、        ブランカ・カティチ、フロリアン・アイディーニ □ストーリー  ある夏の日のドナウ川のほとり。ザーレの双眼鏡には、賭け事に夢中の父マトゥ  コとたくさんの家畜たちが写っている。マトゥコは父ザーリェに見限られ、ザー  リェの親友グルガに金の無心をするが、金と引き換えたのは石油列車強盗。  もとより、そんな勇気が彼にある筈もなく、新興ヤクザのダダンの協力を仰ぐ。  が、計画は失敗し、弁償にダダンのいき遅れの妹、アフロディタとザーレの結婚  を迫られる。  だが、ザーレは酒場の娘、イダと愛し合っており、アフロディタは夢の恋人との  出会いを信じていて、2人ともこの結婚には不服だ。結婚式から脱走したアフロ  ディタは森で目出たく恋人と出会い、ザーレは“黒猫”と“白猫”を証人にイダ  との結婚を敢行してしまう。 □コメント  何とも騒々しくって、可笑しくって、パワフルな映画だ。字幕をつけられた山崎  先生をお尋ねした際、丁度仕上げられたばかりの作品がまさにこの『白猫・黒猫  』。ロマ語の上に早いテンポ。御苦労のお話を伺っていただけに、納得だった。  さて、前作『アンダー・グラウンド』で、ユーゴスラビアの一大叙事詩を書き上  げたクストリッツァ監督、この作品での政治的な毀誉褒貶にうんざりして、一時  は“引退宣言”まで伝えられたが(実は誤報だったらしい)今回はコメディ作品  でカムバックしてくれた。それもとびきりハイテンションで。  今迄以上にロマのパワフルな生き方に焦点を当てつつも、車を食べるブタに見え  る国の変化の表現や(この車、トラヴァントといってボディが樹脂製らしい。今  では生産中止らしいが、何でも食べて自由にしておくブタ程美味しい食肉になる  というイメージから)、首吊りの場面等、彼独特の「お約束」は健在。  何より、いつもながら出演動物は多い。いつでも同じ方向に皆で歩いているアヒ  ルや、同じ輪を回りつづけるリスも意味ありげだが、今回はタイトルロールが必  ず重要な場面でも目撃者として存在している。しかも白、黒いつもペアで。  この猫の色がまた寓話的で如何様にも解釈出来る。  一般に黒猫は、不幸等のマイナス的存在。可愛い孫の不本意な結婚を、その「死  」でもって、まさに身を持って防ごうとした、爺性愛?のザーリェ。だが、結婚  を何としてでも強行したいダダンが氷を乗せて隠蔽工作。  時を同じくしてゴッドファーザーとして君臨していた親友グルガもぽっくり。仲  良く氷を乗せられるが、結婚式でのごたごた後に目覚める。この、結婚と死、死  と目覚め(蘇生)という相容れないような状況には必ずや猫が見守っているのだ。  昔気質のグルガ一家と新興ヤクザのダダンや、パソコンなどの文明的機器を手に  しながらも、呪文を唱えて孫の為に死んでしまうといった、不思議な部分や迷信  的要素との共存等も猫の黒、白に表現されるコントラストに通じる。  何しろ携帯電話の一方で、電柱に水を撒くと電話がよく聞こえるとか、揺りかご  風ベッドに寝ながら、繰り返し見るビデオが『カサブランカ』だったりするのだ。  この『カサブランカ』はグルガが友情の話として大好きなのだが、監督の好きな  ヒーローが、この作品でのハンフリー・ボガードだというのも影響しているのか  も。  しかし、猫達の一番の大役は、ラストでのザーレとイダの結婚の証人かもしれな  い。傍観者の立場から、いきなり物語の一旦を担うはめになってしまうのだから。  ここでは、「何と無茶苦茶な!」と言いながらもこの結婚を記録する戸籍官とし  て、クストリッツァ映画の常連、ミキ・マノイロヴィッチが登場する。  (この人、フランス映画にも多く出演しているが、声がいい。そのせいか、最近  ではフランス映画祭で上映された短編映画でヴァンサン・ペレーズがメガホンを  とった『何も言わずに』で、電話の声だけで出演していた)  ほんの少しの出番ながら、彼を見るとクストリッツァ映画だ、という安心感?が  生まれるから不思議だ。  そして、この場面では、冒頭でザーレがドナウ川のこちら側から覗いていた双眼  鏡の対象が、今度は乗り込んだ船から今迄自分達のいた岸辺に変化している。次  世代を担う彼らの視点として考えてもいいのかもしれない。  それにしても、全編を流れる音楽の楽しさといったら。独特のジプシーの音楽に  加え、場面にぴったりのロック等も配しているが、中でもザーリェの退院祝い等  で登場するNO SMOKINGというバンドが面白い。  祭りのシーンでは樹木に張り付いて演奏していたりする。このバンドは昔、監督  自身が演奏していた事もあるという。何でも有りの雑多な世界は音楽にも表れて  いるわけだ。  出演者はほとんどがロマの素人。存在感のあるゴッドファーザー役も、今は隠居  ながら嘗ては駅の靴磨き店の経営者とか。トニー・ガトリフ監督の『ガッジョ・  ディーロ』でもアマチュアのロマの人が堂々、主役級を演じていて、それがまた  自然で吃驚したものだが彼等は天性の芸術家なのだろうか。  (実際は台詞なんて無視して演技する彼らにクストリッツァ監督も手を焼き、時  に爆発したらしい。が、反面それを彼らの魅力として画面に反映させたのは、監  督の手腕だ)  数少ない?プロ俳優では、ミステリアスな魅力のイダ役、ブランカ・カティチや、  ザーレを演じるきりりとした二枚目のフロリアン・アイディーニといった若手も  ベテランに混じって頑張っている。  退院後に”人生は素晴らしい”と孫に言うザーリェの言葉に、ロマの生き方と監  督のメッセージが凝縮されているのだと思う。  また、ボスニア内戦、コソボ紛争・・と哀しい話題の多いユーゴ情勢。  人間が黒猫、白猫と色で分けているだけで彼らは「猫」であるのと同様、猫達か  ら見れば、人種に関係なく「人間」の括りなのに、何故同じ種がこれ程までに傷  つけあっているのか。  一見雑多に見えるこの映画の世界の方が本来の姿なのかもしれない。  何はともあれ、元気になれる、この夏のお薦めの1本だ。  <蛇足>   ちなみに、クストリッツァ監督作品は全て、どこかしら有名な映画祭で受賞し   ている。『ジプシーのとき』(1989年)等と比較しても面白いだろう。   また、監督自身は、新作『ヴーヴ・ドゥ・サンピエール』(原題)という作品   で、俳優として出演している。ちなみに、この作品の監督はパトリス・ルコン   トで、共演はJ・ビノシュ。コスチュームプレイらしい。(フランスでは?)来   年公開予定とか。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー!  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