ScreenKiss Vol.049

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1999年 10月 1日 配信
ScreenKiss Vol.049

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Vol.049

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>☆ C O N T E N T S ☆------------------------☆<   □あの娘と自転車に乗って   □エイプリル   □金融腐蝕列島:呪縛 >☆------------------------☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆あの娘と自転車に乗って☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  1998年/キルギスタン=フランス/カラー/ヴィスタ/81分  1998年ロカルノ国際映画祭銀豹賞/1998年ユーラシア国際映画祭グランプリ  1998年ヴィエンナーレ国際映画祭観客賞  1998年東京国際映画祭アジア映画賞特別賞  1998年モントリオール国際映画祭正式出品作品  1999年サンダンス国際映画祭正式出品作品  1999年ロッテルダム国際映画祭正式出品作品  10月2日(土)~キネカ大森にて公開  監督:アクタン・アブディカリコフ  出演:ミルラン・アブディカリコフ、アルビナ・イマスメワ  腕白なベシュケンピールの成長を、美しい田園風景の中に描く、監督の少年期の  回想録的作品。ほとんどのモノクロ映像の中にところどころ、鮮烈なカラーを挿  入した独特の映像が印象的。  ストーリーの紹介はPFFレポートで、簡単に触れているので、バックナンバー、  ScreenKiss Vol.34をご参照ください。今回は、会場での監督のティーチ・インの  模様を交えながら、ご紹介します。  さて、上記のように各国際映画祭で評価の高かった作品である。キルギスタン国  内では'99年5月から一般公開し、大成功をおさめたそうだ。何しろ、監督は国内  唯一のフィルムメーカーであり、国の独立後は予算不足から国産映画がなかなか  製作出来ない状況だったから、アメリカ映画が多かった中、久しぶりの自国映画  だったのだ。  最後のシーンは、あやとりをしている、手のクローズアップだ。一連のあやとり  文化圏というのがあるらしいが、日本人の自分としては、ここにきて「そうか、  何故か懐かしい匂いが感じると思ったら、同じアジアなんだ」という、しみじみ  とした思いに浸ってしまう。その位、すんなり身体にしみ込む映画なのだ。  監督は、この辺を「映画のリズムや、イメージを中心に据えた演出法がアジア的  なのかもしれないが、この作品に関して言えば、台詞を最小限にして、画面によ  りその場の空気を観客に理解させる、という点が特異だろう」とコメントしてい  る。  だが、やはりアジア以外の国々からも高い評価があるのは、そういった点だけで  ない魅力があるからだと思う。世界共通の、特に男の子の思春期。そして、主役  の男の子に実子を用いながら、そこに監督自身を投影することによって生じる温  かい眼差しがあるからだと思う。  原題の「ベシュケンピール」は勿論主役の名前だが、この言葉自体が「5人の老婆」  を表し、英語のサブタイトに『Adopted Son』とあるように、養子縁組の際に村で尊  敬されている老婆の事なのだ。3人だとコシュケンピールといい、彼女等による悪  霊祓いを受けた子供を、悪霊から守る為に名前にしてしまう事もある、という。  主人公は、ある日自分の出生を知り、動揺するのだが、これはかつての監督自身  の姿でもある。その強烈な思い出も含め、カラーによる演出部分は初恋など、彼  の人生での劇的な場面に採用されている。  さて、登場するたくさんの子供達だが、ほとんどが『現地調達』の子だという。  首都から約300mのロケ地ではそこでの住民の生活を大事にして、農作業も手伝い  ながらの撮影だったが、そのお陰か、彼らもきちんと「仕事」をこなしてくれた  らしい。ギャラに関しての質問は『あまりに低いので『内緒なんだそうだ。なお、  撮影には約1年間が費やされている。  邦題にある「自転車」は実は恋の重要な小道具。好きな女の子を、わざと後部座  席をはずした自転車で迎えに行って、自分とハンドルの間に座らせる。そして上  り坂になれば・・・という男の子の可愛い下心なのだ。監督の息子、ミルラン君  もこの場面の撮影が一番のお気に入りだったとか。  色彩と同様、独特だったのが音楽。担当はヌルラン・ニシャーノフというキルギ  スの作曲家だが、自然の音とダイアローグだけの不思議なサウンドなのだ。  話ぶりも実に穏やかで、終始にこにこしている監督。彼を見ていると、何故か  ほっとする温かさのある人柄だった。彼はミルラン君の成長に合わせ、次回作を  準備中とのことだ。  最近でこそ、あまりありがたくないニュースで、名前を耳にする事が多くなった  国だが、キルギスタンの映画など滅多に目にする機会はないにも関わらず、自分  のルーツを見るような、不思議な作品だ。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆エイプリル☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  1998年 /イタリア・フランス合作/カラー/78min  '98年カンヌ国際映画祭正式出品作品・大阪ヨーロッパ映画祭正式招待作品  監督・脚本・製作・主演:ナンニ・モレッティ  出演:シルヴィオ・オルランド、シルヴィア・ノノ、ピエトロ・モレッティ  10月2日(土)~新宿シネマカリテにてレイトロードショー   連日 21:10~   特別鑑賞券 ¥1,600 劇場窓口でご購入の方全員にポストカードプレゼント  ストーリー  '94年3月26日。選挙結果は右翼の圧勝。モレッティ、初めてマリワナを吸う。'95  年、妻が妊娠。それ以来彼の生活は一新する。まず、名前。胎教として見る映画  の選択。同時に映画監督としての構想もまとめなくてはならない。  そして、ついに'96年4月18日。待望の赤ちゃんが誕生する。息子、ピエトロだ。  同時にこの日はイタリア史上初の左翼政権の勝利の日でもあった。早速選挙に向  けてドキュメンタリーを撮ろうとするが、気がのらない。が、一方で以前から温  めていたミュージカルの企画も捨てがたい・・・。  コメント  遂に、あの我侭で独善的で、それでいて憎めないモレッティがパパになった!そ  の心を反映するように、赤をふんだんに使ったカラフルな映像、ポップな音  楽・・。究極の親馬鹿映画と思いつつも、見ているこちらまで幸せな気分になっ  てくる。息子とのコラボレーション?も抜群で、ピエトロの可愛らしさや、モ  レッティの肝っ玉母さんの登場もほのぼのしている。  「4月生まれはアル・パシーノとエマ・トンプソンか。さて、フェデリコは立派す  ぎるけど、マッテオは響きがいい。親子で同じ名前は禁止されてるし・・・」  「『ヒート』は300人も殺すからよくないし、『ストレンジ・デイズ』は駄作だか  ら性格悪くなりそうだし・・・」  名前や胎教映画の選択の台詞は傑作だ。親の心は世界共通。しかし、出産寸前で  何と、パタニティブルー?になってしまう。  「私が分娩室に入ったら励ましてね」  「うん、分かった。でも、僕の事は誰が励ましてくれるの?」  そんな彼の姿を笑いつつも、世のプレパパの本音だろうと思う。  よく、「子供の誕生は人生観を変える」というが、ピエトロ誕生後はモレッティ  の視野も、妻や親との距離など、大分変わってきたようだ。  それにしても、彼のこうした私生活の波を、もろに受けてしまうのが、忍耐強  い?スタッフ達。「やっぱり気が乗らないからや~めた」。それでも、菓子職人  のミュージカルシーンはとても可愛らしい。実際に映像化してほしいものだ。  が、彼の中では当分、自らの人生の傑作、ピエトロ君が主役の座を独占すること  だろう。こんな親を持ったピエトロの将来も楽しみ。  赤ちゃん狂想曲のラストの方で、対称的に静かなポ-川の場面。この辺、モレッ  ティの作品つくりの巧さを感じさせる。  幸せな気分になりたい方、是非見てくださいね。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆金融腐蝕列島:呪縛☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  「金融腐蝕列島:呪縛」  1997年の第一勧業銀行(映画の中では、朝日中央銀行ACBと改名されてい  る)の総会屋への融資をめぐり、揺れに揺れた銀行内の様子を描いたもので、重  厚で本格的な映画に仕上がっている。経営陣の混乱・無責任さを目にした若手4  人が、第一勧銀を再生するために、身をなげうって活動を始める。この映画は、  経営陣の腐敗を主題にしているのではなく、北野(役所広治)片山(椎名桔平)  松原(中村育二)石井(矢島健一)の若手4人組、なかでも北野の銀行再生が主  題である。  ある組織が存亡の危機に立たされたとき、外部にいる人間たちは、当事者たちの  苦悩を無責任にあげつらうことができる。しかし、内部にいる人間にとっては事  情は大違いである。その内部にいる人間とても、事実の把握に奔走することは外  部の人間と同じであるが、内部の人間の第一の関心は、組織の維持であり再生で  ある。とりわけ、その組織を愛し、その組織の崩壊を座視できない者たちは、外  部の圧力のなかで組織を再生させるための行動に出る。それは健全な組織であれ  ばあるだけ、再生のための行動が強力になされる。  組織が円滑に動いているのは、その組織が社会に上手く適合しているからである。  ところが一度歯車が狂い、没落に向かい始めると、上手くいっていた原因がすべ  て負の要因になる。第一勧銀は、第一銀行と勧業銀行が合併してできた銀行だか  ら、頭取と会長がそれぞれの出身母体から互選されていた。それがこの銀行の温  厚な行風を作っていたが、逆風下になるとそれが無責任体制となり、誰もことの  本質に立ち向かわなくなる。今まで長所だったことが、すべて欠点となってしま  うのである。  第一勧銀は、幸せな銀行だった。無責任な役員たちにたいして、自行を愛する社  員をたくさん抱えていた。そして、全役員を解任し、新たな出発に向けて、新役  員体制を作ることができた。その過程を映画は、とても肯定的に描いていた。第  一勧銀は株主総会の公開ほか、情報開示する姿勢を打ち出すなど、次々に改善策  が打たれる。この事件を最初から追っていたカメラマンに、第一勧銀に口座を開  こうかなと言わせている。不祥事を扱いながら、第一勧銀の宣伝映画になってい  た。  映画としてみても、いまだ日本映画の良き伝統は死に絶えていないことを知らせ  てくれた。丁寧に作られたセット、惜しみない物量、充分なライティング、物語  にあった発色など、職人的な映画作りは健在である。実に丁寧に良く作り込んで  ある。最近の日本映画では出色であろう。  東映が力を入れたせいだろうが、力のある役者たちがたくさん出演している。面  白いことに経営者たちの人物像が、自殺した久山(佐藤慶)を除いて個性がない  のも、いかにも日本的な企業風景である。彼等は、くっきりと際だった個性を持  たず、誰が誰だか判らない。役員のなかで誰かと誰かを入れ替えても、気がつか  ないくらいによく似た人たちである。そのなかで、最高顧問の佐々木(仲代達也)  に悪のカリスマ性を演出するために、彼の足を不自由にさせたように思う。健常  者のままでは、いくら仲代達也でも悪人という強烈な個性を、あれほどに演技で  きなかったかも知れない。  仲代達也や佐藤慶など年寄りたちの存在感があるのに対して、根津甚八など中年  の俳優たちの存在感が希薄である。それは旧来の農業的人間像から、浮遊する情  報的人間像への変転を表しているのであり、今後ますます軽い人間が多くなって  いくだろう。土着的な存在感とは違った意味での、透明な存在感が生まれてくる  に違いない。  ブルームバーグという実在のアメリカの放送局が、実名で映画に全面的に協力し、  プレスクラブの中にあるスタジオや、アンカーウーマン和田(吉村麻由美)の教  育を提供していた。吉村麻由美のアンカーウーマンは女性の社会進出をたびたび  口にし、ややきれい事な感じがしたが、それでも日本のキャスターとは違った責  任感を感じた。ところで、観客の年齢層が非常に高く、中高年それも銀行員と思  われる風体の人たちが多く、若い人たちの多いいつもの映画館とは違って、なん  だか不思議な雰囲気の観客席だった。  原田真人監督、1999年の日本映画。                                  匠 雅音                     http://www.netpro.ne.jp/~takumi-m/ __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 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QT MAI ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-1999 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼