ScreenKiss Vol.052

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1999年 10月 25日 配信
ScreenKiss Vol.052

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Vol.052

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □パッションフィッシュ   □ポーラX   □僕の無事を祈ってくれ   □Born to be ワイルド   □家族シネマ >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆パッションフィッシュ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  監督はジョン・セイルズ。脚本が主だったようで、監督としては「フィオナの海」  が有名なようだ。だが例のごとく、その作品は観ていない。そして、何気なく最  初のクレジットを見ていて、撮影がロジャー・ディーキンス。私が好きな撮影監  督の一人で、これは少々うれしい。  で、この作品だが、始まりから数分の導入で、主人公の下半身不随になった女優  のその経緯、心境や人となりを短い間でうまく伝え、とても印象深い。  話としても、主人公やその世話をする更正施設にいた黒人女性、その周りで関  わってくる人々が、どこか不器用であるが人間味深く描かれ、そして、互いに心  が傷ついている2人が、支え合いつつ前向きに生きようとする姿を、ストレート  に描いている。  また、画が人物の表情を深く表現し、アメリカ南部の自然や陽射しがその背景と  して美しく映し出されている。それにしても本当に、彼女たちの表情がとてもイ  イ。  というわけでこの作品、新しいと思っていたら、実は92年と古い。どうして今  ごろになって?あと、ここの劇場は1800円均一なので、前売りを買ってから  行くのを忘れずに。                                   ゆたか __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆ポーラX☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛   ★★☆☆☆  この前、前哨戦のつもりで見に行った「汚れた血」では眠りこけてしまったが、  この作品は最後まで目を開けて鑑賞できた。  「ポン・ヌフの恋人」が好きな私はもちろん期待していたし、レオス・カラック  ス来日時の試写会の券を逃してしまって以来"いかんいかん"と思いつつも感情は  ますます高まり今日を迎えてしまった。冷静に考えると決して映画の評判で本番  セックスシーン以外のまともなものがほとんどなく、疑ってかかるべきだったの  かもしれない。  さて、ストリングスの低音ではじまるテーマ曲はスコット・ウォーカーなる音楽  家による作曲。私は彼を全く知らないが、印象的ですばらしい曲だ。この曲はい  い。  ピエールが家を出るまでの前半は退屈な演出、気取りすぎたセリフ、唐突な編集  でうんざりしてしまった。 フランスの貴族(?)の生活、彼らが話す言葉は実際  こんな臭いものなのかもしれないが、窺い知れない為不明。(日本人は誰も知ら  ないだろう)  勿論それは、不慣れな監督や定予算の作品に見られるような失敗ではなく、金を  注ぎ込み意図的にわざわざ撮影し、編集しているのだが、それを効果的に見せる  為の何かが欠如している。つまり何らかの理由が必要だ。そうすることによるメ  リット、そうする理由がなければならない。このシーンではその意味が伝わらな  かった。ただ印象的にしているだけでまるでファッションといった感じ。全編を  通して感じたことだが単にかっこいい映像、かっこいい映画を作ろうとしている  としか思えない。勿論意味なんて映画には要らないケースもあるし、勿論かっこ  いい映像(映画)を作ることも大変だし、作ろうと思って作れるものではないか  ら、そこから判断すればすごいと言える。  しかし、原作となったメルビルの小説「ピエール」があって、それからこの映画  を立ちあげたのであればこの映画、この撮影に意味が込められていないと感じた  時点で失敗作だ。  また、本筋が単調なのに、撮影や編集に凝りすぎても本筋が変わるわけではなか  ろうに。  前半はただのイメージフィルムか、名曲の為のミュージック・クリップに過ぎな  いのではなかろうか。名曲に負けた。  また、ピエールに変化をもたらす重要なエピソードとなっている、イザベル(カ  テリーナ・ゴルベワ)が自分の生い立ちを説明する長い独唱はヘタクソな演技に  加えて、退屈なセリフ。ここでは気取りがなくなり、反面観客に説明をして続い  ていく話に変化を付け加えようとしている様子。  セリフには感情の変化がまったく感じられなく、カテリーナの演技に問題あり。  セリフの内容から、また撮影のしかたから、動揺に近いものを表現しなくてはな  らない場面だったと思うが、役者にはそれができなかった。インタビューでは  「監督は目で指示をした」と語っていたカテリーナであったが、その目は指示で  はなく、不満の目つきにすぎなかったのではなかろうか。この森の中に小走りで  入り込んでいく2人の場面で、映像は色合いからカメラワークまでが豹変し、無  理に編集してつなげた異なった2つ場面のように感じる。時間が飛んでいるよう  で、且つ場所まで飛んでしまったかのような違和感があった。  さて、いよいよ激しさを増す後半に突入。怒涛の展開が訪れる。まるで、退屈な  導入部は監督の意図とははなれ、興行的に成功させようとプロデューサーや資金  元が無理やりに付け加えたと言える程の違いがある。  カルト集団、婚約者であったリュシーとイザベルとピエール3人の怪しげな生活。  登場人物が総出で話しを進展させていく。意味、理由の分かる撮影、編集となっ  てきた。  そしてピエールの浮浪者のような風貌。そこで一つ発見した。ピエールが寒さの  あまり汚いコートを羽織り、、ブーツに新聞紙を突っ込んでいたあの姿。まるで  「シラノ・ド・ベルジュラック」で父親ドバルデューが演じていたあの姿そっく  りではないか。(そう考えると、詩人シラノと、作家ピエール。いろいろと共通  項が見えてきた。もしや…?)  この映画を評価する人は、なにを評価するのだろうか。あの編集だろか。  ぴあの10・18号をふと読んでいると、137ページの下に柳下氏の短い文章  が目についた。簡単に説明した後、「王子様がホームレス女に血迷って解脱し、  カルトに入信し…の映画」とある。うまい文章だ。ポーラXが私にとって、なぜ  魅力がないのか?それは、とても薄っぺらなストーリーをとても意味ありげに見  せている点だ。(うーん、こんな言い方してはポーラXファンの人はいらいらし  てしまうだろうな!?反論は貴方の400字程度の感想でお願いします。)                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆僕の無事を祈ってくれ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     (88年のカザフスタン映画)   ストーリ:★★★☆☆   総評  :★★☆☆☆  まず、主人公(ヴィクトル・ツォイ)のイメージを決めつけるようにロック音楽  と彼の黒いジャンパーにより映画は始まる。どのような映画なのか知らなくても、  このオープニングによっておそらくいきなり憂鬱に感じる人と、それを魅力的に  感じる人にはっきり別れるだろう。私にとっては、まったく憂鬱だった。まさし  くハードボイルドなのだが、それはかなり安っぽいのだった。基本的にそういう  映画は好きではないし、このキネカ大森での中央アジア映画特集に望むものでは  なかったから。  全編を通して流れるのは、そのツォイ率いるロック・グループ"KNHO"(キノと読  み、映画という意味らしい)の演奏。その曲もつまらないし、録音の質が悪いた  めに多少不愉快に感じることもある。彼が歌っているのでなければこの曲と映像  のミスマッチを許すことはできなかっただろう。  しかし私はエンディングで打ちのめされてしまった。彼らの曲の中でもエンディ  ングにかかる「BLOOD TYPE」、この曲もいいし、訳詞も意味深く反体制的で、  ボーカルのツォイはどちらかというと音痴な歌手なのだが、ここまで来ると音痴  までもが彼の魅力と感じさせてしまう。これが彼らが現地で驚異的ななヒットと  なった理由だと納得してしまった。  ツォイはロシア圏ではカリスマなロックボーカルだったらしいが、我々が見ると  冴えない風貌の為に魅力を感じないのだが、映画を見終わるころには逆にその冴  えないさまが気にいってしまう事だろう。つまり色男ではなく、なんとなくにや  けた顔がどちらかといえば我々自信に近いためではないだろうか。色男、かっこ  いいヒーローにはない親近感がある。  また、節々に"うまい"と感じる場面(映像・演出)がさし込まれている。それは  時には役者の動きであったり、時にはそのロケーションであったり、またカメラ  ワークであったり、色合いであったり。  悪役の医者が階段を降りる場面があるが、動きを止めてみたり、階段の踊り場で  ブレイクダンス的なステップを踏んだり、これが実にうまい。本当にうまい。デ  ジタル処理をしたり、編集に凝っている訳ではなく、ただ時間の進行に添って、  普通の長さのカットを普通につないでいるだけだが、実に新鮮に感じる。  薬中毒の元彼女の家、そのテレビや、インテリアもかなり凝っているのだがその  凝り様はどことなく現実的な汚さがあり、白々しくない。病院、動物園の跡地、  撮影場所はみな見事だ。  私は途中から邦題の意味、"僕の無事"を祈るとはどう言うことなのか考え続けて  いた。その意味が見えなかったのだが、最後にツォイが腹を刺されてしまいなが  らも雪の上を歩きながら去っていくその後ろ姿、それだ! このシーンは音楽  と共鳴しながら進む名場面だった。一見ありがちなようで、いまさらこんなに臭  い設定はありえないし、一時の香港カンフー映画か、西部劇のヒーロー像につな  がるものがあった。白い雪に滴っている数滴、そのたった数滴の血もリアルだっ  たし、刺された場所、そのナイフの小ささ(刃渡り約10?)、何よりもツォイ  のパワーが彼を死に導くそのエンディングとは逆に、続編"ツォイの復讐"に導い  ていく。(もちろんそんな映画なないし、ツォイはこの映画の2年後の90年に  交通事故で死んでいる。残念だ。)                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆Born to be ワイルド(Wild America)☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    ★★★★☆  文句なくみなさんにお薦めしたい一品。  これは子供から大人まで年齢層幅広く楽しめることに違いない。子供にとっては  同年代の少年の冒険物として、大人にとっては子供時代に感じた冒険に対する憧  れ、そしてなによりも子供時代に見えていたはずの景色を取り戻すことができる  映画といえよう。本当に大人が忘れたものがこの映画で取り戻せるかのようだ。  この映画は三男マーシャル(ジョナサン・テイラー・トーマス)に見えていたそ  のままの風景やハプニングを映像にしている為に、表現がかなり大袈裟になって  いる。しかし、大人にとっては些細なことが、子供時代には大きく、素晴らしく、  そして恐ろしく見えていたものだ。そうした子供にとっての現実が映像に表現さ  れていて、その為簡単な合成映像、ちょっと無茶苦茶なハプニングの設定などす  べてがまるで現実かのように、そうでなくてはならなかったように感じる。一見  するとチャチな、くだらない冒険物がこれほどの現実味を持ってくる理由がそこ  にある。  この映画を見る時、自分の歳や、個人の性格がどれほど影響するかはわからない  が、子供時代のトラウマすら癒して、子供時代のいい思い出だけを思い浮かべさ  せてくれるものだった。  個性的ですこし笑える父親、理解のある母親、信じられないことを弟にさせてし  まう兄2人(子供のもつ純粋な凶暴性)、そして不滅の三男とそれぞれの個性に  も文句のつけようがない。  ★を一つ減らした理由の一つは3人が兄弟に見えない点。もちろん子役の演技に  関してはそのままで文句なし。この映画に合った多少オーバーアクションの演技  がキッチリとできている。  そして、なによりこの映画を素晴らしいものと決定するのは、物語が終わり、エ  ンドタイトルの前に3人の現況が紹介されているが、実際にこの3兄弟が映像の  道で成功している(おそらく成功しているのだろう)ということで、さらにイン  パクトがあるのは、末の弟が現在絶滅しかけているカタツムリのドキュメンタ  リーを撮影している! とうことだ。ぴったりの人生ではなかろうか。  時として、まったく期待もしないあまり、おそらく駄作だと考えつつ見た映画に、  恐ろしくなるほどの掘り出し物があるものだ。もちろん、期待ということが先入  観をどれほど生み出すかは最近では「ポーラX」が私に忠告してくれたばかりだ  から意識して気を付けなくてはならない。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆5☆家族シネマ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 在日韓国人である柳美里の同名の小説を、韓国人の監督が映画化した。製作スタッ フのほとんどは韓国人で、出演者は日本人と在日韓国人という不思議な組み合わせで ある。バラバラになった家族が、自分たちを描いた映画を撮るというので、何年ぶり かで集まる。その時の顛末が映画中映画として、映画化されたものである。  家族は同じ屋根の下に住むという現実が崩れて久しいが、それでも家族は同じ屋根 の下に住むものだという常識は崩れていない。だから、バラバラになった家族を、旧 来の常識である核家族と引き比べて、ああだのこうだのと愚痴ることになる。この映 画も基本的には、その範疇から脱していない。日本人にしても韓国人にしても、核家 族が前提になっているから、壊れた家族をどうするかという方向では、少しも建設的 ではない。    核家族の崩壊の中で、異常な対応をする人々と言った視点しかなく、その次の核家 族に代わる男女関係へと進む展望はない。もちろん原作が、核家族より先の展望など 描いてないのだから、その原作に基づく映画に期待する方が無理なのだ。醒めた目で この映画を見れば、各人は見事に自立している。父親は借金とはいえ立派な家を建て たし、男狂いの母親だって不動産業を営んで自活している。    今日、ローンという借金を使わずに、家を建てる人など少ないだろうし、女性なが ら不動産業のプロというのは、立派な社会人である。本人はデザイン事務所に勤務し て生活しているし、妹はAV女優で生活が成り立っている。弟が自閉症だが、母親が 面倒を見ると言っている。確かに家族としてはバラバラだが、各人はきちんと生活で きているではないか。真っ当な家族を営むヤクザや、妾を囲う真っ当な社会人より も、彼等はずっと健康的である。  すでにきちんと生活できている大人たちを、いつまでも同じ場所につなぎ止めてお くことの方が、変だとは思わないのであろうか。家族は同居するものだという常識に よって、その必要のない者たちを一緒に住まわせることのが、いかに無理なことなの か。むしろそちらに目を向けるべきであって、家族を不可分の関係と見なすことは、 各人にいらぬ強制をすることである。この映画の中でも、彼等は充分に家族を演じて いた。会ったときには喜怒哀楽を持った会話が成り立っている。明らかにこれは他人 以上の関係である。  映画としてみると、各部分には笑える要素がたくさんある。もう少し上手く作れ ば、上質なブラック・コメディになるのだが、家族の展開方向が判ってないから、ま とまりの悪い映画になってしまった。乾いたタッチ、速いテンポなど、救える要素は ありながら、最後にはつまらない映画と言わざるを得ない。朴哲洙(パク・チュル ス)監督。1998年の韓国映画。                                  匠 雅音 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー! 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