ScreenKiss Vol.063

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1999年 11月 10日 配信
ScreenKiss Vol.063

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Vol.063

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □東京国際映画祭:キッシュ島の物語   □東京国際映画祭:風が吹くまま >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆東京国際映画祭:キッシュ島の物語☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 第1話 ギリシャ船 ◆ストーリー  浜辺近くに打ち上げられている難破船の辺りはいろいろなものが流れつく。今日  はダンボールだった。そのダンボールを拾い集め、波打ぎわのあばら屋の飾り付  けにしようとするが、妻がそれを硬く拒んでいる。妻はすっかり塞ぎ込んでしま  いどうやら憑き物のせいだろうと、霊媒師のところへ連れていくことに。霊媒師  いわく、「ダンボールをとるか、妻をとるか」。妻を捨てるなんてことは考えら  れないためしぶしぶダンボールを捨てる羽目に。船の上で乾かしていた物も海に  投げ入れていると、妻の口元には笑みがこぼれる。  ◇コメント  祈祷という文化は世界各国であるが、この祈祷も独特な物で興味深い。(それだ  け) 第2話 指輪 ◆ストーリー  キッシュ島に仕事を求めてやってきた青年。水か何かをローリー車に入れる小屋  に住み込んで働くが、小銭を貯める為に魚を釣ったり、貝殻を売ったり。しばら  くしてショッピングセンターに指輪を買いに行く。男性用だが自分でつけるもの  ではない。嫁いでいく妹が持参する結婚指輪だった。  ◇コメント  祈祷という宗教伝統的な側面、しかもこの様式はキッシュ島あたりのものらしい  から、そのドキュメンタリー(再現)的な面白味はある。ダンボールが近代消費  社会の象徴でありつつ、祈祷が伝統文化の象徴で、その狭間で生きる人々への応  援とも取れよう。短編としての物語の充実度は評価したい。 第3話 ◆ ストーリー  玄関扉を背中に背負って白い砂漠を歩きつづける不思議な父親。その後ろから郵  便配達人が自転車で追い掛けている。手紙を渡す為に声を掛けると、立ち止まり  その扉を開いて応対する。手紙の内容は1番地の家に暮らす娘に宛てた恋文だ。  彼の扉には“1”というプレートがある。つまりここが1番地だ。その手紙を受  け取って破り捨てる典型的な父親。そしてまた扉を背負って歩きつづける。(こ  の時点ではまったく意味不明)しばらくして、その後ろから黒いベールをかぶっ  た女性が、黒いヤギを無理矢理引きずり父親の後を追い掛けている。娘だ。  再び郵便配達人がやってきて、再度手紙を手渡そうとするが、受け取りを拒否さ  れる。そして、不思議な楽団が訪れるが、最後は浜辺に着き、小船でやってきた  商人にその扉を売り払おうとするが、粗末な扉は売れなかった。 ◇コメント  扉は何を象徴しているのか。恐らく深い意味はなく、全てを売り払った後最後に  残るものとして描いているだけだろう。イランといえば、キアロスタミの「友達  の家はどこ」でも描かれていた装飾された木の扉(又は、鉄の扉)が一般的だ  が、その扉を売り払う前の数日間を描いているとも考えられる。勿論、砂漠を横  断して浜辺に来ている商人に売るために運んでいるとなるが、果たしてその行動  になんの意味が?  時として、短編映画に深い意味を求めることは必要ない場合がある。つまり、単  に滑稽であればいい場合もある。そうすると、この行動にたいして我々は不思議  とすこし笑顔を浮かべていて、それが監督(脚本家)の意図したものだったのか  もしれない。 ◆短編集としての総評  この「キッシュ島の物語」は全6編からなる短編集であったが、上映されたのは  その内3本のみ。恐らく多くの人は、中途半端な短編集と感じたことだろうが、  他に3本の作品があると知って、その3本もまとめて上映される日を待ちわびる  ことだろう。  1本1本は、短編映画としてみれば決して駄作ではないが、なにぶんキッシュ島  の魅力も十分現されている訳でなく、各々の短編が一つの表題のもとまとまりが  ある訳でもなく。とにかく中途半端に感じる。これが単に独立した短編映画とし  ての上映であれば、それなりに違う解釈ができたと思う。しかし、来日していた  ナセール・タグヴァイ監督(1話「ギリシャ船」)の言葉を聞く限り、6本の短  編それぞれ違う側面のキッシュ島を描いていて、キッシュ島の全体的なイメージ  を捕らえるために役立つようだ。  キッシュ島の観光局からの依頼で作ったという事が頭に残ってしまうと、この映  画は島の宣伝用ではないかと思われるが、そんな内容の短編はなかった。つま  り、映画文化振興の一貫としてお金を出してもらったのではなかろうか。  ただこの短篇集がどうであれ、引き続きイラン映画に注目せざるを得ないことに  は間違いないと確信を持っている。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆東京国際映画祭:風が吹くまま☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:アッバス・キアロスタミ    総評:★★★★★(満点)  キアロスタミ監督の最新作は、いままでの作品とくらべてその完成度で群を抜い  ている。年々成長していくイラン映画の中で、やはり彼がその牽引者であろう。  世界の映画祭が認めた監督で、世界に通用する作品を生み出せる優れた監督だ。  イラン映画界の中でもおそらく獲得する予算も余裕があるのだろうし、イラン  人、またイラン映画人の中でも人気抜群なようだ。  その彼がやりたいように自由に作った作品は、彼のよさばかりが表に立ち、いっ  さいの嫌みや退屈さを感じない。また撮影がすごい。(これはすでに見られた方  には同意していただけると思う。)下手なズームを使ったり、不自然な色合い、  無駄なイメージショットを省き、必要なシーンしかない。あくまでもミニマリズ  ムに徹しているかのようだ。  ほとんど絵画の域に達するほどの美しいシーンをいくつか発見した。終盤、町医  者のバイクに2人乗りして畑の中の道を突っ走る場面や、町中の一見些細と思わ  れるようなショットの中に。また、車が発進した後を牛や、鶏がスクリーンを横  切る場面、携帯電話を受信しようと丘の上を走りまわってベーザードがフレーム  から外れると老婆がその中心に現れる場面など、計算したのではなく、偶然そう  なって、それを編集段階で発見して使用しているとしか思えないカットがあっ  た。  ちょっとコメントから外れて雑談になるが、町医者の乗るバイクの後ろに取り付  けられたBOXには赤い三日月のマークが書いてあります。映画のチラシでも分  かりますが、これは赤十字と同じ意味のマーク。正式には国際赤十字・新月社連  盟といわれる国際赤十字は、ジュネーブ条約で赤い十字架のマークと、イスラム  の新月をもじった赤い新月マークを正式採用しています。さらに現在、イスラエ  ルの為にあのユダヤ教の"ダビデの星"(三角形を2つ組みあわしたマーク)をと  りいれるかどうかでもめている。  さて、本題にもどり、一部多少長すぎると感じたシーンは、ベーザードが髭を剃  るシーン。ここでは、実際に半分くらい剃り終えるまでワンカットで鏡の中から  撮影しているような演出だが、しつこく感じる。カットが長いことに問題がるの  ではなく、髭を剃ることを見る楽しさが飽きに替わってしまうのだ。あまりきれ  いなシーンでもなかろう。もう少し短くするか、撮影の位置を変えて変化をつけ  るかしてはどうだろうか。  また、携帯電話が鳴るたびに車で丘の上の墓地に登る繰り返しのシーンは、ほと  んど同じ位置からなんども撮影しているようだが、位置をかえることで更に風景  の広がりを感じることができたのではないだろうか。もちろん、このシアダレ村  は背後を山に覆われた位置関係にあり、他の位置からの撮影が難しかったとか、  反対にそれ以上の広がりがないという意味を持たせたいという捉え方もできなく  はないが、キアロスタミ監督は繰り返すことの面白さを演出していたと考えたほ  うがいいだろう。背後からの撮影、車を追ってい行く撮影、丘の上からやってく  る車を撮影するなどどれも簡単な方法だが、どこか1場面でもそうなっていれば  「またこのシーンか」と一瞬であれ退屈に感じることがなかったはずだ。  勿論これらは撮影監督への不満ではなく、編集と撮影場所(位置)選択の問題だ  ろう。とはいえ、このイランの田舎の自然を、人物の表情を見事に捕えているこ  とに違いはなく、たわわに実る麦の穂の黄金色、大地の色、白い壁と青いドアと  いったあたりには本当にほれぼれする。  脚本も単調になりそうな話の中にいろいろとちりばめた話題が入り交じっていて  面白い。基本的には死を待つ話なのだが、エンディングでみせる複雑な心境の意  味深さや、取り囲む人間一人一人の性格に同時に引き込まれていてく。  これは必見だ。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃i┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー!  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QT MAI               hana ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-1999 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼