ScreenKiss Vol.072

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1999年 12月 25日 配信
ScreenKiss Vol.072

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Vol.072

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □橋の上の娘   □季節の中で   □スリーピー・ホロウ(来春公開予定)   □ナビィの恋   □ターザン   □榕樹の丘へ   □大いなる幻影   □一瞬の夢 >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆0☆お知らせ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛      ・〜★〜・       /※\ *     *  ※※※ *      /☆※※☆\   *  ∴※※※※∴ * Merry Chiristmas!     /※※☆※☆※\     ※☆※※※※※※    /※※※※※※☆※\       ■■■       ■■■ ■今年度最後のScreenKissです。  ラスト・クリスマスは如何でしょうか?  来年もどうぞ宜しくお願いいたします。 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆1☆橋の上の娘☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     監督:パトリス・ルコント     総評:★★☆☆☆  ルコントは好きだ。ヴァネッサ・パラディは大嫌いだ、あの鋤っ歯がだめ。ダニ  エル・オートゥイユは悪くない。で、結局この映画はと言えば、ぜんぜん良くな  い。  チラシにコメントを寄せている中に私の好きなウディ・アレンが「新作もなかな  かチャーミング」といっているではないか。他の人がほとんどべた誉めの言葉な  ので、なんとなくほっとした。もちろん誉め言葉に違いないのだろうが、チャー  ミングと英語で言っている程度であれば、"べた"誉めではあるまい(これは私の  希望にすぎないのだが)。なにはともあれ、アレンがルコントという監督を好き  なことに間違いないが。尚、ルコントはアレンの「マンハッタン」がお気に入り  らしい。  さて、本題にはいろう。一言で言えば、この映画のストーリーが私には全く受け  入れられなかった。落ちぶれ始めたナイフ投げ曲芸師と、自殺をしようとしてい  る娘。自殺したいくらいだからナイフ投げの標的になっても恐怖なしで構えてい  られるだろうとのことから、ナンパする。  彼らの愛はSMチックに展開し、ロードムービとなっていく。究極の愛だとか新  しい愛の形だとか、全くいいかげんな評判にすぎない。ナイフ投げの曲芸師・ガ  ボールにとっては、ナイフを投げつけてささる瞬間が快感であり、的になってい  るアデルは自分に刺さらないまでの緊張が快感に変わっていく。しかしアデルは  恋多き女で、しょっちゅう色男を引っかけ、あっという間に飽きてしまう。  半端な恋物語という気がしてならないが、ガボールが歳を取っていく過程を見せ  られているかのようでもあり何度か淋しさを感じてしまった。ルコントの映画は  レ・ブロンゼ・シリーズは別として、「タンデム」「髪結いの亭主」などどこと  なく淋しさを感じるものがあるので、その傾向には沿っている作品ではあるとい  えよう。  しかし、どの場面でも特に気になることもなく、肝心のナイフなげのシーンです  らつまらないと思い続けて終わってしまった。バネッサ・パラディー嫌いの私に  はしょうがないということではなく、彼女の好き嫌いを別としてもルコントが送  り出した作品としては評価したくない映画だった。彼なら他に撮りようがあるっ  ていう感じ。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆季節の中で☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    ★☆☆☆☆  全編ベトナムで撮影されたアメリカ映画は戦争後初となる。99年サンダンス映  画祭では史上初めてグランプリと観客賞のダブル受賞となっただけではなく、撮  影賞までも受賞した。これは信頼できる評価であろうと期待も膨らんだが、私に  とって結果は残念なものだった。  これはヴェトナム戦争以来初めてヴェトナムでオールロケされたアメリカ映画。  もしかしたらこれだけでもアメリカ人にとっては評価に価するばかりでなく、感  傷的になるだけの要素があったのではないかと思われる。そんなことは実際もっ  とはやく実現できたはずだが、それに興味を持つだけの魅力がアメリカ映画界に  なかったのだろう。  さて、ストーリーは4本の柱がある。ストーリーチルドレン・ウッディは商売道  具の箱を探しまわる。蓮の花売り・キエンと蓮が咲きほこる屋敷の詩人・ダオの  関係、シクロ運転手・ハイと娼婦・ランの関係、退役軍人・ジェイムズは戦争時  代にヴェトナム人女性との間に生まれた娘を探している。  アメリカ映画以外の映画を見慣れた人にとっては、ごくありふれた話の寄せ集め  だった。最近の香港映画で良くみかける雰囲気。ベトナムの良さはあえて言うな  らアオザイだけだろう。  おまけにジェイムズ役のハーヴィ・カイテルの演技がひどい。彼は最近めっきり  演技が下手になった気がする。シクロのレースの場面に迫力はなく、蓮の花から  香りがただようことなく、唯一ストーリーチルドレンの少年がどのような環境に  いるかだけを実感することができた。  まったく残念だったがこの映画に特別な雰囲気もなく、感動する要素はない。こ  の映画は感動させるのではなく、ほんのりとじーんとさせることを目的としてい  るようだが、映像に見入る為の美しさも欠けていた。  いったい何がここまで評価を高めたのだろう。アメリカ以外で評価されるのだろ  うか。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆スリーピー・ホロウ(来春公開予定)☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    ★★★★★  ブラボー!ティム・バートン!素晴らしい完成度。娯楽性、サスペンス性、キャ  スティング、舞台美術、脚本、どれをとっても完璧。最初から最期まで、鳥肌が  立つくらい怖くて楽しい。物語のベースとなる、スリーピー・ホロウの首なし騎  士の伝説は、日本の雪女、とかみたいな昔話なのですが、(中学の英語の教科書  にも載っていたので、記憶にある方もいらっしゃるのでは。)そういった古典を  基にこれだけ新鮮な作品が生まれるとは!  物語は18世紀、スリーピー・ホロウという村で、殺人事件が相次いで起こるこ  とから始まる。死体は皆、首を切り落とされ、首は行方不明という奇妙なこの事  件を解明するため、N・Yから一人の若い警官(ジョニー・デップ)がやってく  る。最初の被害者には莫大な遺産があったため、最初は金がらみの事件だろうと  踏んだ彼だが、村の人々から、昔戦争で死んだ、首狩の騎士(クリストファー・  ウォーケン!!)が自分の首を捜し求め、霊となって彷徨っていると聞かさ  れ・・・  なにしろ、一瞬も退屈させない展開。首なし騎士は本当に存在するのか?怪しい  魔女のまじないは何を意味するのか?誰が真犯人なのか?など、グングン引きこ  まれてしまう。(これだけ雑念を排して映画に見入ったのは久しぶりである。)  また、役者の使い方が実に上手い。ジョニー・デップは「ニック・オブ・タイ  ム」「フェイク」などのアクションものにも出ているが彼にはやはりバートンの  作品がハマる。彼の個性を最も活かせる監督なのでは?  また脇役に「クライング・ゲーム」「詩人の妻」など、イッてる女をやらせた  ら、ピカイチのミランダ・リチャドソンを添えていたり、 ヒロインのクリス  ティーナ・リッチーも金髪にドレス姿の可憐な少女を演じているも、ここのとこ  クセのある役が多かっただけに、なんか裏があるのでは?と思わせ、いかにも誰  もが怪しく見える。まさにキャスティングの妙ですね。(どうでもいいけど、彼  女、かなり痩せたみたい。役者ですね。)  プラス、恐怖シーンが本当に恐い。首なし騎士が死体の首の中から登場するシー  ンなどまさに背筋も凍る想い。(死体解剖のシーンなんかもあるので血が苦手な  方にはオススメできない。)女・子供も容赦しない殺しっぷりで、主人公が殺さ  れてもおかしくないわけで、ますます展開が読みにくいのだ。  また至る所にお約束の監督のテイストが現れていて、ファンはニヤリとする筈。  主人公の回想シーンには、彼の母親(バートンの奥様だと思います。)が花びら  の中、周りながらダンスするシーンがあり、これってまさに「シザーハンズ」だ  し、その夫はマッドな科学者だし。  主人公が塔に追い詰められるシーンもバートン作品ではお約束。あと、この人っ  て、黒髪女性を金髪に染める趣味があるんでしょうか。ウィノナの次はリッチー  が被害者?!に・・・  どんなに好きな映画監督でも、期待を裏切られることはしばしばありますが、  バートンは一度も私の期待を裏切らない、数少ない監督です。絶対公開されたら  見てください!                                 MS.QT.MAI __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆ナビィの恋☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    ★★★★☆  日本映画としての評価ではなくて、私が見ている世界中の映画の中でも十分評価  できて、面白い。ぜひ見に行ってもらいたい。  ただ、この映画はミュージカルです。沖縄文化色も濃く、なんと日本映画にして  時たま日本語の字幕が付きます。それほど琉球語が我々にはまったく分からな  い。それに、演技はやはり下手くそです。さて、脚本の出来具合は、あらすじが  非常にうまいのだけど、セリフがまずい。必要のない言葉が多い気がする。これ  は「明るいミュージカルだから」と割りきればいいが、もうすこしセリフを削っ  たほうが印象深い映像に見入ることができるのではないだろうか。  おじいちゃん役には沖縄民謡の大御所・登川誠仁。エンディング近くで披露する  彼の三線(さんしん)の早さには驚く。6弦ある三線の音色が本当に身にしみ  る。喉の具合も至極良好。ただし、演技はまったくの棒読み。孫役の西田尚美の  多少なりすれた演技と対象的で、少々滑稽。一方おばあちゃんはなぜか演技がう  まい。うまいというより、味があるといったほうが性格だが。実は彼女は舞台女  優で、「うみ・そら・さんごのいいつたえ」にも出演している。  http://www.d2.dion.ne.jp/~shirous/cast04.htmにて詳しく書いてありますが、  登川さんのことを「沖縄のジミ・ヘンドリクス」と書いてあるのには少々笑みを  浮かべてしまう。  さて、私はついつい撮影やライティングなどの技術的な面に厳しくなってしまう  のだが、この映画も気になる点があった。撮影は単に好き嫌いの問題になる場合  も多いが、この映画の場合カメラがどんと腰を落ち着けてくれないのだ。ちょこ  ちょこと動きすぎる。クレーンを使って下から持ち上がったり、パンしたり、  きょろきょろしているとしかいいようのない撮影が随所にある。撮影の動きに対  してなぜそうしたのかという理由を感じることができなかった。しかし、反対に  日本映画にもこれほどきれいなシーンを、自然なライティングで見せる場面もあ  るのだなということも感じた。部屋の中から逆光で撮影しているシーン、寝てい  る奈々子の姿。日の光射し込む家の中や、外から家の中を写したような陰陽がう  まかった。  また、この映画を今回私が見に行った理由はその音楽に引かれたこと。沖縄音楽  が好きなわけではないのですが、マイケル・ナイマンがテーマ曲を作曲している  事と、印象的な三線にあわせた日本のラップといえる歌詞。映像とぴったしあっ  たタイミングで始まる音楽はあくまでも自然で、ミュージカルにある「なんでそ  こで歌うの?」といった不可解な気分に陥る事はない。  この魅力が実はほとんど始めてといっていい、日本映画に「お金をはらってまで  も映画館で見る」という行為に駆りたてた。もの心ついて以来、アニメーション  以外で日本映画を見に行った記憶がない私だが、ようやく満足できる日本映画に  出会えたようだ。  アメリカ映画だけの映画ファンには無理かもしれないが、アジア映画が好きな人  には必ず通じる魅力が満載だろう。  とにかく必見。終わる前に見に行こう。  東京地区ではテアトル新宿での公開。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆5☆ターザン☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    ★★☆☆☆    ディズニー映画としての評価:★☆☆☆☆  ディスニー映画のすごいところは、日本のアニメーションにないCGと手描きの  技術の融合だろう。ただし、CGだけの魅力ではなく、じっくり観察してコピー  した動物や、風、水、葉といった自然の動きが巧みに取りいれられ、かつアニ  メーションとして表現されている点。今回は主人公でもあるゴリラの動きがすご  い。実際にゴリラを前にスケッチしまくったといういとだが、手の動きがまさし  く本物っぽく感じる。  また、動物が話す時に見せる表情や、口の動き。ディズニー嫌いの人にはこれを  毛嫌いしている人もいるようだが、私にとってはマジックのように見入ってしま  うほどみごと。  今回の見所の一つに、人物にあわせて動き続ける背景の美しさが挙げられる。  ターザンが木々の枝をサーフィンのように滑り続ける場面では細かい苔の色合い  そのままの背景がでどんどん動いていく。すごい技術だ。  さて、そのあたりはぜひとも映画館で実感していただくとして、ストーリーはど  うだろう。子供向けとしてはまったく問題ないだろうが、我々大人が見れられる  映画になっているのかどうかが問題だ。エドガー・ライス・バロウズの「類人猿  ターザン」は読んだことないが、すでに47回も映画化されているらしい。そん  なに映画化されたものがあるなんて、私には思い出す事ができません。本当にそ  んなにあるの?しかし、皆さんもテレビで一度くらいはターザン映画を見たこと  があるのではないでしょうか。しかし、それがいったい47本の内のどのターザ  ンだったのやら?  最近のディズニーではやはり「美女と野獣」、「アラジン」が傑作だった。今回  はその題材に引かれて、あの感動を期待してディスニーの味付けが加わった  「ターザン」を見に行ったが、結果は散々。話が単調で、ターザン自身にも魅力  を感じ得ない。もうすこしコメディーの要素が必要だろう。おまけにフィル・コ  リンズの音楽も少々単調だった。  手に汗にぎることもなく、すべてが簡単に進んでいく印象のストーリは、原作に  近いのかもしれないが、脚色として考えるとお粗末。滝のシーンや森の中でも、  細部のこだわりは感じたが、画面全体を眺めた時には迫力を感じない。  見終わって印象の浅い作品に評価のしようがなかった。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆6☆榕樹の丘へ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:フウ ・ピンリウ    出演:パン ・ユイ、パイ・シュエユン、スン・ミン  ひとり息子との同居を熱望しながらも、時期が来るまで、と頑固に一人暮らしを  しているアーシー。息子トンは喘息を患う毋を気遣い家政婦を雇うが、気の強い  アーシーは彼女たちをことごとく追い出してしまう。  が、新しく来た娘、シャンは、故郷に帰って店を開くという夢を叶える為、アー  シーのどんな皮肉にも負げない。気立てのいい彼女に次第に心を開いていくアー  シー。或日2人で、アーシーと亡くなった夫の故郷を訪ねて懐かしさに浸ってく  るが、帰ってきた時の息子の提案は、毋を老人ホームへ預けるという事だっ  た・・・。  タイトルの「榕樹」は「ガジュマル」と読み、ここではアーシーの故郷に生える  大きな樹木で、彼女の実家を探す目印となっている。しかし、周囲が変化し、こ  の目印もなかなか1度にはみつからない。昔の価値や感覚というものの変化や、  複雑化の象徴にも思える。  アーシーを演じるパン・ユイが実に巧い。始めは頑固婆で手に負えないと感じる  が、徐々にそれが寂しさの裏返しだという事がわかってくる。憎々し気な表情  が、段々柔和に見えてきて、歯のない顔が何だか、自分の祖母を見ているような  懐かしい気持ちになってくる。  『推手』のカルチャーギャップ、『女人四十』の痴呆性老人問題、とテーマは異  なるものの、この作品も「家族」のありかたを問うものだ。副題に「安居 Live  at Peace」とあるように、心の休まる場所探しが中心となっている。  ここでの一人息子は、実に親孝行。老人ホームへ母親を預けるのも、自分の家庭  の経済状況の所以で、働き口が遠くになるためのやむない選択だったのだ。  互いの立場を思い遣る親子。ラストで幼かった頃からの息子のアルバムを愛おし  気に眺めやるシーンには涙腺がゆるんでしまう。アーシーは、老人ホーム行を目  前にシャンの店の資金を用立ててやるが、「家族」は必ずしも肉親に限らないの  だ。日本でもとかくありがちな、嫁姑問題等も含め、うまくまとめあげている。  関係ないけど、作品の中で、アーシーの見ているTVが面白い。『孫悟空』や「太  極拳」、ありがちなメロドラマに加え『ターミネーター』も写っていた。シュワ  ちゃんは中国語を喋っていたんだろうか。  この映画は『中国映画の全貌2000』の開催記念公開作品で、2000年1月8日(土)  以降2月13日(日)まで「20世紀の中国史をふまえ、21世紀の中国を考える」とし  て中国と香港映画63作品を連続上映していく。期間中は講演やシンポジウムも予  定されている。  ◇12月26日(日)〜2000年1月7日(金)(12月31日〜1月2日休映)                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆7☆大いなる幻影☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督・脚本:黒沢清    出演:武田真治、唯野未歩子、安井豊  2005年の花粉舞うどこかの街。ハルは音楽制作を仕事にし、その恋人ミチは郵便  局の海外小包窓口で働いている。ミチは海外へ行こうとして暴漢に襲われ、ハル  の元から姿を消す。が、ハルは成りゆきで加わった強盗団がミチの勤める郵便局  襲撃に失敗し再会した2人は・・・。  「あの」フランス映画と同じタイトルながら、全く異質のこの作品は近未来のど  こかで、たえず自分の存在の薄さに不安を抱いている男女の物語。冒頭から「消  えろよ!」「早く消えてよ!」といった台詞が目立ち、消え入りそうな自己の存  在を、視覚的にも消滅してみせる一風変わったラブストーリーだ。監督流に言え  ば「誰からも頼まれた事なのない恋愛映画」。  昨今、ラブストーリーといえばセックスがお約束の中、キスシーンさえなくて、  恋愛を撮ってしまう監督の手腕には脱帽だ。  この作品の英語のタイトルはモBarren Illusionモ。直訳すると「不毛の幻影」。  そう言えば、物語の中で2人が実験台になる花粉症の新薬は、「不妊」という副  作用が伴っている。  音と台詞が極端に少ない。ユーロスペースの制作の為、映画美学校でお馴染みの  顔をみつけるのも面白い。思い掛けないところに出演しているので、探してみ  て。だけど、この人々がわかったらかなりのマニアック。  さて、この作品は今、渋谷のユーロスペースで公開されているが、初日に主演二  人の舞台挨拶があったのでそのレポートを記載しておく。当日は黒沢監督も舞台  あいさつに立たれる筈だったが、お仕事で出張中。(ある筋によれば、公開日を  間違えられたそうな)そこで監督からは以下のような自筆のメッセージのコピー  が入場者に配付された。(以下原文のまま)  初日にかけつけてくれた観客のみなさん、まことに申しわけありません。私は  今、多分台北にいるのです。だから、みなさんの顔を見る事ができません。おそ  らくみなさんは、かなり強いご自身の欲望からこの映画を見に行くと決め、今日  ユーロスペースにいらっしゃったのだと思います。本当にありがとうございま  す。  そのみなさんの欲望の強さが、スクリーンの中の武田真治と唯野未歩子を1度き  りの、かけがえのない、聖なる存在たらしめることを祈っております。  黒沢清 ■インタビュー  ◇お互いの印象をお話頂けますか?  武田:撮影期間が短かったので、あまり言えませんが「とてもミステリアスな人  だ」と思いました。  唯野:静かな方です。  ◇監督はどんな方ですか?  武田:撮影は楽しいし、僕はとても好きです。この作品は恐らく監督と、奥様の  事を描いているのだと思います。現代では、あまりにはっきりとわかってしまう  ので、舞台を未来にしたのだと思うのですが。  ◇監督の奥様とは会われたことがあるのですか?  武田:はい、ごく内輪で行った完成試写会の時、監督からご紹介頂きました。そ  の時、すぐに奥さんがミチなんだな、と直感しました。  ◇武田さんは、『御法度』といい、お正月の顔ですね。  武田:自分ではそんな風に思っていませんけど。ただ、黒沢監督、大島監督と  いった大監督のそばで、とても勉強になりました。映画があるから、彼等がいる  のではなくて、彼等のような方達がいて映画がある、と言える位の存在感です。  そうした彼等の内なる情熱に触れられた事は、とても刺激的でした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆8☆一瞬の夢☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督・脚本:ジャ・ジャンクー    出演:ワン・ホンワァイ、ハオ・ホンジャン、ズオ・バイタオ  都会でスリ稼業に励む青年が、ある女性と出会い、足を洗って将来を考える、と  いう「一瞬の夢」を見るも束の間、現実には、彼女にふられ、また以前の生活に  舞い戻ってしまう、という何とも哀れで情けないお話だ。  これは、今年の夏、第21回ぴあフィルム・フェスティバルで『小武』として公開  された作品。但し、主人公の名前である、原題を「一瞬の夢」という邦題にした  のは、この青年の心を表現していてなかなかいい。簡単な概要とコメントは  ScreenKiss Vol.34に掲載されているので、そちらを参考にして頂きたい。  冒頭に見られるように、この作品は海外でかなり評価されているが、実は中国で  は一般公開されていない。それでも上海の雑誌では「田舎の感じが良く出てい  る」という賞賛と、「他の世界の人が見たら、中国人は皆スリと思われる」とい  う否定的な評が出たそうだ。  これに対し、監督は映画は受け手の感じ方で見え方が左右されるが、作品の根底  にあるのは、「愛」であって、そこを汲み取ってくれないところにはがっかりし  た、とコメントしていた。賞賛派の評とて、海外へおもねった作品として考えら  れている点に失望を感じるし、国内ではインテリ向けの作品と捉えられ、映画勉  強会で4回程上映されただけだそうだ。  監督は1970年生まれの若手。以下はティーチ・インからの抜粋である。  ◇とてもリアルな表現の俳優ですが、知人を起用しているのでしょうか?  ジャ・ジャンクー:  脚本の段階で既に思い描いていた人と、現場で探した人とがいます。知人は学生  次代のクラスメートや近所の人。皆、演技だ出来るかと、一様に不安がりました  が、「何、写真を撮るのと同じだよ」と言って納得させました。また、プロでな  い人を登用したのは、「現実に今を生き人々」を撮影したかったからに他ならな  いからです。  ◇撮影の場所は、監督の故郷(山西省・フェンヤン)という事でしたが。  ジャ・ジャンクー:  故郷を離れて2年程で、生活様式が変化していました。出演者には、自然な動き  を求める為、 TVの影響などが出てしまわないよう、撮影日を早くには知らせてし  ませんでした。彼等に自分達のフィルムを見せたところ、知人をみつけたりして  喜んでいましたよ。  ◇中国映画では、あまり音楽は使われないようですが、この作品では多用されて  いますね。  ジャ・ジャンクー:  そうです。これは舞台がカラオケバーという事もあります。ある日、カラオケ  バーに行くと、ある中年の男性が音痴にもかかわらず、一人熱唱していて、そこ  に凄い孤独を感じたんですよ。そこで、これを舞台に取り入れようとしました。  中国で流行するポップスは、1年に1曲位必ずあって、これは大多数の人の心情  を表現しているので、これらを引用してみました。小武が友人といる時長く流れ  る音楽は、中国で人気のTV番組の主題歌です。よく、中国人同士で“仲良くやろ  うぜ!”と言うけど、今年はやった歌の歌詞に「そんなの言葉だけさ」と言うの  がありましたね(笑)。 ◇12月25日(土)よりユーロスペースにてモーニング&レイトショー                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃i┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー!  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QT MAI               hana ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-1999 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼