ScreenKiss Vol.199

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Vol.199

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   ■TOKYO FILMeX特集   □ブラックボード -背負う人 -    □メイキング『ブラックボード』   □異邦人たち   □シンポジウム   □記者会見 >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆ブラックボード -背負う人 - ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     Blackboards     2000年/日本・イラン・イタリア/85min/カラー/35mm     監督:サミラ・マフマルバフ     出演: サイード・モハマディ、バフマン・ゴバディ     2000年カンヌ国際映画祭審査員賞     TOKYO FILMeX・オープニング作品(特別招待作品)  爆撃で学校を破壊された教師達が、子供達に読み書きを教える為に黒板を背負っ  て歩いて行く。その中の一人、サイードは老人の一群に遭遇しイラクとの国境迄  の案内を申し出る。グループの中の子持ちの未亡人と結婚するが、国境で離婚。  国境近くで叉もイラクからの攻撃。彼等は爆撃で故郷を追われたクルド人だった  のだ。一方、子供の密輸品運搬グループに出会ったレブアルもイラク軍の襲撃に  遇っていた。  17日から開催されるTOKYO FILMeX/アジア[新・作家主義]映画祭のオープニン  グ上映作品である。映画祭のチラシ表面にはこの作品の母子が登場している。  「学問」のセールス?の為黒板を背負って歩く姿は異様で、滑稽ですらある。長  らく読み書きなしで生きてきた老人一行は誰も興味を示さないが、将来のある子  供のグループの中には学びたい者も出てくる。が、その将来も銃弾で永遠に終わ  りになてしまうのだ。ペンは剣より強し・・が通じない世界の脅威。  黒板は、あるときは戸板や骨折の添木であったり、ある時は弾よけや物干竿の代  替品となって活躍する。この作品にはもろに戦争を批判する台詞は一切出ていな  い。が、夫を失い精神のバランスを崩してしまったハラレと彼女が必死に守る幼  い息子、膀胱炎に苦しむ老父や幼い運び屋・・戦争は常に弱者に多大な被害をも  たらす。  「私の心は汽車のよう。一人が乗れば一人が降りる。常連は最愛の息子だ  け」・・どこかずれた動作と間延びした受け答えしかしないハラレが、唯一言う  まともな台詞がこれだ。彼女は息子によってかろうじて生きている。  前作『りんご』で都市の暗部を描いた監督が、今度は戦争が民衆にもたらす普遍  的な悪について骨太な作品に仕上げた。それでも、おしっこの出ない祖父とまだ  一人で出来ない孫や、カラスの群れから身を守る黒板集団の、狂言『棒しばり』  のような動きなどに彼女独特のユーモアを織りまぜている。黒板を画面割に用い  て観客の興味をひっぱる技もなかなか。  上映当日はサミラ監督(まだ20歳!)のQ&Aも予定されている。なお、レブアル役  バフマン・ゴバディは今回上映する『酔っぱらった馬の時間』の監督でもある。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆メイキング『ブラックボード』☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     How Samira Made The Blackboard     2000年/イラン/76min/カラー/ビデオ     監督:メイサム ・マフマルバフ     FILMeXビデオプログラム  サミラ・マフマルバフ監督作品『ブラックボード』等の製作過程を追ったドキュ  メンタリー。作者は監督の弟。こちらはビデオ上映で会場は、ル テアトルのそば  の映画美学校。『ブラックボード』の同日に上映されるので本編が気に入った方  は是非お薦め。カンヌ映画祭での記者会見や、インタビューなども交えてあり、  彼女の映画への考えなども理解出来る。  何しろ有名な監督でプロデューサーでもある父、モフセン・アフマルバフ(彼の  作品『サイレンス』も渋谷で上映中!)と今回コンペに出品している(『私が女  になった日)』)毋マルジエ・メキシニを両親に持つサミラ。何しろ映画初出演  は生後数カ月の時、毋に抱かれてだし、8歳の時には既に主要なキャストを務めて  いたという筋金い入りの映画作家。が、そうしたプレッシャーをバネにしたかの  ように、自分というものをはっきり持っている。  ドキュメンタリーの前半は『りんご』のメイキングで、これに出演した事件の当  人達も今は14歳になってカメラの前で発言している。今回の作品も、前作同様ほ  とんどの出演者が素人で、台詞のタイミングや視線など、サミラがほとんど手本  を見せている。対話で自分が写らないで相手のに合わせてタイミングよく台詞を  言うとき、彼女は彼等の後ろに廻って手で口を塞いだり離したりしながら言わせ  ているのだ。  まさに体当たりの撮影現場だ。特に今回の撮影は気紛れな?老人集団をまとめる  のでかなり苦労している。ハラレの父にプロの役者を起用したところ、あまりに  オーバーアクションで監督と意見の対立し、彼から降番を申し出るシーンは迫力  だ。「自分の思うようにやらせてくれ」と言張る役者・・この辺、いくら監督で  も女性の地位が厳しいイランの背景も投影されているのでは?と思えてしまっ  た。  彼女はまた、唯一のハラレという女性の存在を、同じ女性という点から興味があ  る、と言っている。男性の職場的イメージの映画界で、特にイランでこうした優  秀な女性監督の出現は頼もしい。  ロビーで監督の姿を目にした。小柄で可愛い、少女とも言える感じの中に聡明さ  が見えるなかなかの美人でした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆異邦人たち☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     The Island Tales     2000年/日本・香港/103min/カラー/35mm     監督:スタンリー・クワン     出演: ミッシェル・リー、スー・チー、大沢たかお、桃井かおり     TOKYO FILMeX・特別招待作品  報道陣がつめかけ、一人の遺体が運ばれる・・。ここは香港近くの蜉蝣島。島を  去る人、訪れる人・・。結核の療養を兼ね滞在していた作家、春樹。マスコミか  ら逃れてきたスターのハン。米国で成功した銀行家シャロン。その友人の写真家  マリアン。恋人の電話を待ち続けるメイ。何の繋がりもなかった彼等は、政府の  伝染病隔離政策で14時間あまり島に閉じ込められ、その間に彼等に不思議な絆が  出来て・・。  前作が香港返還を背景にしたものだったが、今回はリアルタイムな2000年の終わ  りだ。ひとコマ、ひとコマが1枚の絵葉書になりそうなスタイリッシュな撮影  と、ポップミュージックのお洒落なコンビネーション。その中に効果的に挿入さ  れる「ネッスン・ドルマ」と「レクエイム」。引き寄せられる孤独な人々・・。  スタンリー・クワンの真髄が全て詰め込まれたような作品だ。  多国籍な巨大都市香港と、その目と鼻の先に位置しながら、その縮小版ともいえ  る蜉蝣島。その名のようにはかない繋がりながら、その閉鎖空間で芽生える、国  籍や言語を超えた人々の結びつき。主な会話は英語だが、時折成りゆきを春樹の  ナレーションが補う。大沢の柔らかな声がいい。ハンが日本語について「くす  ぐったい音」と評しているが、物語が進むにつれてその感じがわかってくるから  不思議だ。  「太陽は自分から手を拡げない限り抱き締めてはくれないんだ」  「最初はね、愛がなければと思うでしょ。そのうち一緒に寝てくれるだけで嬉し   くなる。同じ布団を掛けているってだけでね」  登場人物の放つ何気ない台詞それぞれに、実は真実が込められている。切なくて  ちょっと哀しくなって、そして元気になれる映画だ。  余談ながら今回プロデュースに当たった附田斉子氏によると、特別出演の桃井か  おりは、監督が長らくファンだった事で起用になったのだが、彼女はリハーサル  を希望し、大沢たかおは役づくりの為に1ヶ月香港暮らしを体験し・・と真剣な  取り組みに監督はいたく感動したらしい。実は香港の俳優は撮影当日になって、  その日の分だけ台詞を覚える、という泥縄形式が普通らしいのだ。意外な裏話で  した。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆シンポジウム☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  16日に行われたシンポジウムと記者会見に出席させてもらいましたので、簡単な  レポートです。  シンポジウム第一部「東アジア映画の現状」報告  聞き手:市山尚三  出席者トニー・レインズ:映画キュレーター。バンクーバー映画祭で東アジア映  画を紹介するドラゴン&タイガー部門の作品選考担当などを務める。  トニー・レインズからタイ、韓国、台湾、中国などの映画産業の現状に関してコ  メントがあった。タイや韓国ではここ2年の内に自国の作品がヒットし、再度映  画産業が活性化している点。中国では政府の規制がマイナスの効果を与え続けて  いて、国を逃げ出す作家と留まりながら低予算の中国人向け映画を作る作家に分  けられるということ。台湾では定期的に映画を作っている製作会社がなくなって  しまった点。フィリピンでも期待できる監督が育ってきたことなどをコメントし  た。  中でも印象的なことは、台湾では年間10〜15本程度が製作されているが、50%の  確立でいい映画が生まれているとのコメント。  またこの時市山氏が言われたことだが、今回の映画祭期間中に上映される「プ  ラットフォーム」(監督:ジャ・ジャンクー)は、おそらく最後のロングバー  ジョン上映になるとのこと。上映時間194分という長編で、彼の前作「一瞬の夢」  が好きな人はカットされていない作品を目にする最後の機会になる可能性があ  り、見逃せない。  シンポジウム第二部「アジアにおける共同製作」  ヘンガメ・パナヒ:「白い風船」や「キッズ・リターン」「河」などの海外配給  を手がける、セルロイド・ドリームス社長  彼女が強調した点は、数字。フランスでは40万人以上の観客が動員されれば大  ヒット。「ユリイカ」は5,475人の動員。Festival Filmと呼ばれる映画祭だけで  人気のある作品にチクリと釘をさした。たしかに利益のあがらない映画は人が作  品を見ないということで、強いて言えば駄作。受賞しているだけに芸術として100  年後に認められる可能性は残されるわけだが、訴えたいことが100年後に意味のあ  ることである事はなかろう。  チョン・テソン:プサン国際映画祭でPPP副ディレクターとして、アジアの監督と  プロデューサーの掛け橋となるプログラムを推進している。「スプリング・イ  ン・ホームタウン」のプロデューサー。  彼がPPPでやっていることは、アジア共同体で映画を作るということ。魅力のある  ことだし、高額の予算が必要な映画を自国で資金調達するのは容易ではない現状  において、各国が寄り添えばカバーできる部分が生まれる。思想としては重要  で、日本人の私にとってはやはり日本映画界にこそ、その牽引役をしてもらいた  いと感じる。  附田斉子:「ヤンヤン 夏の想い出」「異邦人たち」をプロデュース。  「ヤンヤン」はフランスでも大ヒット中だそう。すでに25万人を動員している  点、パナヒさんの言葉を思い出す。日本でも16日からロードショウ公開中です  ね。映画を見る目が確かなのだろうか、今後も今回の経験を生かして、よりいっ  そういい映画作りに関わってもらいたい。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆5☆記者会見☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  17日からの映画祭開催に先駆け、来日ゲストの記者会見が執り行われた。  出席者  宇治田隆史 (『悲しくなるほど不実な夜空に』監督:コンペ)  行定勲 (『贅沢な骨』監督:コンペ)  篠崎誠 (『忘れられぬ人々』監督:コンペ)  塩田明彦 (『ギプス』監督:ビデオプログラム)  レイモンド・レッド (『アニーノ』監督:特別招待)  ロニー・ラザーロ (『アニーノ』主演俳優:特別招待)  ケネス・ビー (『スモール・ミラクル』監督:ビデオプログラム)  マルジエ・メキシニ (『私が女になった日』監督:コンペ)  サミラ・マフマルバフ (『ブラックボード』監督:特別招待)  メイサム・マフマルバフ (『メイキング「ブラックボード」』:                ビデオプログラム)  コンペ審査員からは  荒木啓子(ぴあフィルムフェスティバル・ディレクター)  キム・ジソク(プサン国際映画祭アジア映画部門プログラマー)  出席者からは一様に映画祭への参加に満足の声があがり、中でも低予算、デジタ  ル使用のケネス・ビー監督や、同様に商業映画に比べて難しい立場に位置するイ  ンディペンデント系のレイモンド・レッド監督などは一般に公開する機会が極端  に少ないという事で、映画祭での公開を喜んでいた。  また同時にフィリピンのレイモンド・レッド監督は、米国を中心とする外国映画  の無制限は公開に対し、年々減少している国内映画産業の衰退(1999年で約140  本、2000年は約70本)を心配していた。一方ケネス・ビー監督は多くの低予算映  画と数本の多額な製作費の映画が蔓延する香港の映画業界で、その中間に位置す  る作品の希薄さについて述べていた。  毋、娘、その弟と一家で記者会見に臨んだマフマルバフ家では、毋(マルジエ・  メキシニ)は激しい男女差の残るイランだけでなく、世界的な規模での男女差の  緩和に映画で貢献するべく女性を扱い、娘(サミラ・マフマルバフ)は今回の作  品を「テーマ、ロケーション等が巧くひとつになって構想が出来たので映画化し  た」と言い、「これからもイランの中で作品をつくりたい」と述べていた。  サミラの弟メイサムは「二人とも父親の学校(Madresse Film)で学び、姉は監督  に、自分はカメラに興味を持ったので今迄スチルを担当していた。そこで今回も  スチルカメラマンとして姉の現場に同行したところ、大勢の人々の中で仕事する  彼女をみて、その事を伝えるのも面白いと思った」ので今回の作品が出来あがっ  たそう。  ちょっとおとなしめの日本人監督。落ち着いた語り口のフィリピン組。あっけら  かんとした香港のケネス・ビー。優しい雰囲気のマルジエ・メキシニと静かなメ  イサムの間に座ってよく動く大きな目で、ハキハキと発言するサミラのマフマル  バフ組・・とそれぞれ個性的なゲスト陣だった。今回臨席出来なかったゲストも  会期中に顔を出すそうなので、是非会場でナマの人々に接してみるのも映画祭の  楽しみの一つだろう。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃i┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー!  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QT MAI               吉田 浩二 ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-2000 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼