ScreenKiss Vol.254

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Vol.254
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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<

□ブロウ
□ゴーストワールド
□今日から始まる
□ルムンバの叫び
□監督トラン・アン・ユン来日記者会見

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>>☆1☆ブロウ☆<<
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Blow
2001年/アメリカ/123min/カラー
監督:テッド・デミ
出演:ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、ポール・ルーベンス
<http://www.gaga.ne.jp/><http://www.blow-jp.com/>
9月15日(土)よりみゆき座他全国東宝洋画系にて公開

1970〜80年代のアメリカのコカインの8割を捌いていた男、ジョージ・ユング。
最初はほんの小遣い稼ぎの気持ちで始めた麻薬取り引きが、アメリカ文化の波に
乗り裏社会のキングにのしあがる。が、私生活はその派手な表の顔と裏腹に、毋
との断絶、最愛の女性の死、仲間の裏切り・・とままならない。実在の麻薬王の
人生をJ・デップが好演。 Blowとはドラッグ吸引と、人生のトップから奈落への
転落の意。

正直で貧乏だった父を見て育ったジョージの夢はリッチになる事。だが、ラスト
に彼は呟く。「パパの言っていた金は幻だという意味が42年かかってやっと判っ
た。野望は能力を遥かに越えていたのだ」。ドラッグがファッションだったアメ
リカで、掃いて捨てる程の金を儲けた末に全てを失った男。金も友も家庭も。ま
さに蟻とキリギリスのようなお話。その落差が激しいだけにかえって小気味いい
位だ。

麻薬王というとどこか胡散臭いイメージがあったが、単純でお人好しなところが
あって、少し間抜けで・・この人間臭さにある種の親しみさえ感じてしまう。美
人の妻(今や旬のペネロペ・クルス!)を持ち、娘の出産に立ち会い・・とどこ
か私生活も重なるJ・デップの演技もさることながら、父親役のレイ・リオッタは
記録的名演だ。実直な若い父親から、逃亡生活を送る息子を見守る老年まで、よ
くぞこなした!という感じ。

『俺たちに明日はない』などでも、逃亡生活を送るわが子をじっと優しく見守る
のは大概母親だった。が、ここでは毋は見放し、父が母性的でさえある愛情で息
子を包み込む。この愛を娘に引き継ぐ事が出来ず「お前はパパのハートだよ」と
言いながら裏切り続け、そのつけがまわってきたジョージ。自業自得とはいえ哀
しい。

その昔ピーウィーシリーズで人気絶頂の最中、怪し気な罪状でその座から転げ落
ちたという、ポール・ルーベンスがゲイなマリファナ元締で出演しているのも強
烈。これがまた60〜70年代のサイケな服を妙にぴったり着こなしているのも凄
い。また、往時を偲ばせる派手派手サングラスやムッシュかまやつなヘアスタイ
ル等、次々とファッションを変えてくれるJ・デップを見ているだけでも面白い。
脚本がこの時代を描いたらピカ一のJ・カサベテスの遺児、ニックなのにも注目。

鳥野 韻子
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>>☆2☆ゴーストワールド☆<<
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GHOST WORLD
★★★★☆
2001年/アメリカ/111min
監督:テリー・ツワイゴフ(「クラム」)
出演:ソーラ・バーチ、スカーレット・ヨハンス、
スティーヴ・ブシェミ
原作:ダニエル・クロウズ著
http://www.asmik-ace.co.jp/
http://www.presspop.com/

イーニドとレベッカ。高校を卒業したばかりの2人の女の子は、自立を目指して
毎日を過ごす。

コミックを原作とするこの映画。監督はアメリカン・アングラ・コミックの代表
ロバート・クラムのドキュメンタリー『クラム』を撮ったあのダニエル・クロウ
ズだっ! でもこれは少女映画? 強いて言うなら少女版『ミッドナイト・カウ
ボーイ』か、『荒野の1ドル銀貨』か!(嘘ですよ)

過去の作品に関連づけるなんて、まどろっこしいが、イメージは『クラム』の映
像と同類。ストーリーは遠くかけ離れるけど、クラムと30年らいの親友というオ
タク度の高いテリー監督の世界が満載っ!

レイス・レコードを見せたり、ラグライム音楽についてブシェミにうんちくを語
らせるあたり、あんたは本当のマニアだよ。でもこれがフィリップ・シーモア・
ホフマンだったらちょっと恐いよね。ブシェミだから安心できる。

道端に捨てられているジーンズ、意味がないって? バスを待つ老人はよけいっ
て? ノートのイラストはソフィー・クラムが描いたって? 音楽が・・・、壁
の落書きが・・・、そんなこと放っておいて、ボケ〜っと見れば一発で気に入る
はず。(そのくせ★はしっかり減点1)

『アメリカン・ビューティー』では超美少女ミーナ・スバーリの後ろでも主張の
強い可愛さが爆発していたソーラ・バーチ。すっかりポテポテの体つきは、クリ
スティーナ・リッチの後を追うかのよう。となれば、来年あたりダイエットに成
功してスレンダーな体に変身かっ? まあ、アングラ路線を外れないで欲しいって
こと。それじゃあ決してリッチの上を走れないか?

でもまあ、この人達のワールドって、なんでそんなに最悪に輝いているんだ!!
って、「クラム」「クラム」な映画でした。監督の新作に強く期待する!

「クラム」を知らない方、不幸です。(見ると人生が不幸になるかも)

立野 浩超
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>>☆3☆今日から始まる☆<<
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CA COMMENCE AUJOURDユHUI
1999年/フランス/116min/カラー/シネスコ
監督・脚本:ベルトラン・タヴェルニエ
出演:フィリップ・トレトン、マリア・ピタレシ、ナディア・カシ
9月8日(土)より岩波ホールにて公開

炭坑閉鎖で不況に喘ぐ寒村エルナン。ここで幼稚園の園長を勤めるダニエルは、
授業料の未払い、親の飲酒、子供への虐待といった現実に直面している。そんな
折、ある母親が貧しさの末子供を道連れに心中をした。彼は行政を相手に立ち上
がるが壁は厚い。実生活でも実父や恋人の息子との関係にも頭を悩ませながら、
彼は毎日が「今日から始まる」のだった。

夏休み中も連日のように幼児虐待、果てに殺人・・等胸の痛む事件が相次いでい
た。この作品は詩人でもあるドミニク・サンピエロが、嘗て教師として体験した
事に基づいている。今回、彼は監督の娘ティファニーと共に脚本にも参加してい
るが、凄まじい現実への憤りをダニエルに託しつつ常に子供の目線を主にしてい
る点がいい。

貧困は親から生きる力を奪い、未来に生きていく子供達の目に哀しみと諦めを植
え付ける。それでも子供に愛情を注ぐうちはまだしも、様々な歪みを弱者である
子供に向けた時、子供は行き場を失う。こういう社会であっては決していけな
い・・とラストでの子供達のイキイキとした表情に胸を打たれる気分になる。

ここではダニエルもまた嘗ての自分を子供達の中に見ている。今や一介の老人と
成り果てた父親も彼を虐待していたのだ。心の奥底では決して父を愛せないでい
る彼には虐待された子供の将来の心まで読めていたに違いない。父と自分、そし
て今は恋人ヴァレリアの息子との関係・・園児に限らず彼自身の問題を取り入れ
る事で、作品がより奥行きを増している。

2歳〜6歳というある意味人格や感性、社会性を形成する基礎を築く大事な時期
に、いくら教師が頑張っても絶対的にスタッフが不足だ。作品でもストレスで潰
れそうになる先生が登場している。日本でも目が行き届かない事による事故が起
きているが、国による制度的な違いはあれ、教育環境の充実は急務の事だ。しか
し、役所の頭の堅さは万国共通のようだ。

暗い現実を吹き飛ばすような、ラストのお祭りのシーン。ここではヴァレリアの
アーティストとしての感性が全開する。アイデア満載の手作りの小道具。経済的
理由からの発想とはいえ、何でも購入出来る現代社会にはかえって新鮮だった。

鳥野 韻子
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>>☆4☆ルムンバの叫び☆<<
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Lumumba
2000年/仏、ベルギー、独、ハイチ/115min/カラー/ヴィスタ
監督・脚本:ラウル ・ぺック
出演:エリック・エブアニー、アレックス・デスカス、
デオフィル・ムッサ
http://www.alcine-terran.com/
9月15日(土)よりBOX東中野にて公開

郵便局員だった「開化民」パトリス・ルムンバ。彼はレオポルドヴィル上京後
ビール会社の営業成績アップを皮切りにメキメキと頭角を現し、忽ちコンゴ独立
への立て役者となる。1960年ベルギーから独立。初代首相に納まるも軍隊の反
乱、内部分裂が相次ぎ、遂に大統領の裏切りで追い詰められた彼は・・・。

この映画は2000年作製だが、今年のコンゴ大統領暗殺という暗い偶然が重なり、
日本ではあまりにホットな公開になってしまった。世界のどこかで、毎日のよう
に戦争や殺戮が行われている今日、1960年前後という40年以上も過去にも同様の
混乱があり、そしてその中に意思堅固な男が帝国主義時代の名残りの中に独立を
叫んで存在していた、という事実。映画で勉強する事は多々有るが、これはまさ
しく世界を知る教材とも言える作品だ。

観客は訳もわからず、いきなり殺戮の場面を目の当たりにする。そして死体の一
人が静かに語りかけて来る・・。それだけで十分インパクトのあるオープニング
に加え、本人そっくりの俳優(エリック・エブアニー)と時折ドキュメンタリー
フィルムが交錯して、まさしく彼の記録映画を見ているような錯覚に陥ってく
る。

カリスマ的なムルンバはかなり攻撃的で自信家。が、どこかの総理大臣のよう
に、あちこちからの非難を受けながら最終的に曖昧な態度でお茶を濁してしまう
のに比べればある意味、それが正しい判断である限り「頼もしい」かもしれな
い。「独立とは市民のもの」と断言する姿勢は清清しくさえある。

だが、独立には経済的な要素が大きい。コンゴでは鉱山という切り札を持つカタ
ンガ州を甘く見た事も命取りになった。「生まれるのが50年早すぎた」と言う彼
の声に50年後も変わらない人間の酷さを感じる。「カタンガの事は子供達に言う
な」という彼の虚しさが伝わる。その子供達は今どうしているのだろう。独立30
周年に涌くシーンの中に彼等はいたのだろうか?

ラストはタイトルの「ムルンバ」という曲だったが、シーン毎の印象的な音楽は
フランス映画の数多くに携わっているジャン=クロード・プティ。

鳥野 韻子
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>>☆5☆監督トラン・アン・ユン来日記者会見☆<<
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『夏至』監督トラン・アン・ユン来日記者会見

■トラン・アン・ユン(Tran Anh Hung/1962〜)
ヴェトナム生まれ。1991年に短篇『La pierre de lユattente』がクレルモン・
フェラン短篇映画祭入賞。1993年に長編第1作『青いパパイヤの香り』がカンヌ
国際映画祭カメラドール賞、セザール賞第1回監督賞受賞。続く第2作『シクロ』
でヴェネチア国際映画祭、フランダース映画祭でグランプリ受賞。本作『夏至』
は2000年カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門出品。次回作はハーヴェィ・カイ
テル出演予定の英語作品『Night dog』と3年越しのプロジェクト『Je viens avec
la pluite』。

スリムな身体を黒のシャツ、ブルージーンズで包んだ監督。今作品の3女役で、
実生活では監督の妻であるトラン・ヌー・イエン・ケーが出産を控え来日が出来
なかった事を詫びながら、まず「日本の女性に見て、色々考えて欲しい」という
彼女からのメッセージを伝えた(監督の来日は今春。予定日は5月だったので、既
に生まれているはずです)。

監督には既に一人、女の子がいて作品でも長女スオンの子供役で登場している
が、子供が出来た事で作品にかなりの変化が見られるようになったようだ。ま
ず、これまでの作品に比べ台詞が多く使われている事。それ迄言葉は不必要だと
考えていたが娘の誕生で、言葉の重要性を感じたという。そこから言葉がより生
きる為に沈黙の重要性を認識した。また、台詞はシンプルでもその流れがストー
リーを進める上で大切なので、ここでは「メロディカル」であるよう心掛けた。

次に子供の教育に対する夫婦の態度が、子供の成長にもたらす影響。この作品で
は特筆すべき点が2点ある。一つは「夫婦間の問題」これは婚外の欲望等、世界
共通の問題。もう一つは「この問題をベトナムに特定した場合の問題」。後者は
儒教の影響は強いこの国ならでは、の対処として問題を認識しつつも調和を保と
うとする。

従って夫婦は教育上子供の前では口論したりしないので、子供達は親の嫌な部分
を見ないで育ち・・つまりはある意味幻想を見て育つから・・長じて恋愛を体験
しても純粋になる。そして経験を積んで大人の他の面を知る事になっても「いい
面」だけを心に止め置こうとしてしまう。そこで、3姉妹も毋の不倫を疑いなが
らも心に封印をしてしまうのだ。

だからリエンのナイーブさは、こうしたベトナム独特の閉鎖性などから来てい
る。性的な情報もない上、彼女は毋を幼い時に失っているから尚更晩稲。このナ
イーブさは現在も健在で?実際今回通訳で参加した25歳の女性も「不倫はすっご
く悪い人・・つまり特殊な人・・だけのものでベトナムには存在しない」と思っ
ていたという。

しかし今回の舞台はベトナムの中でも穏やかさと官能のある町、ハノイ。ここの
女性に他の町では感じ得ないチャーミングさを覚えて舞台に選んだそうだ。作品
でも女性達が井戸端会議よろしく水場を中心に色々な話をするが、ハノイには実
際、数件に一つ水場があり、シャンプーや炊事などをここで行っている。洗髪後
の何とも言えない官能性がひどく印象的だったという。

ベトナム社会のある種の特殊性や、ハーモニーなどの重要性を語りながら、時々
自分でも「何だか坊さんが寺院で説教しているみたいな感じになってきてしまっ
た」などと照れつつ誠実に語った30分だった。優しい顔立の裏に『シクロ』の強
さ、『夏至』の奥深さの原点を見たような気がした。

鳥野 韻子
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