第21回ぴあフィルムフェスティバルレポート&PFFアワード受賞結果速報

1977年にスタートしたぴあフィルムフェスティバル(PFF)も今年で21回目を迎え、毎年12月の開催から夏の開催となった。

今年は7月3日(土)から9日(金)、有楽町の東京国際フォーラムの2会場(映像ホール+ホールD)にての PFF アワード対象の自主映画 16 本と、特集映画23 本、それに特別上映としてジョン・カーペンター監督『ダーク・スター』、今年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞した伊比恵子監督『ザ・パーソナルズ:黄昏のロマンス』の上映が行われた。PFFは東京を皮切りに9~11月にかけて名古屋、関西等の主要都市でも開催するという。

PFF ではコンペ部門の PFF アワードと、そこで入賞した作品からスカラシップ制度により、劇場映画製作を推進していくという人材育成の場としても機能している。過去の入選者の中には森田芳光、橋口亮輔といった現在プロとして活躍中の人物も多い。

今年はこの他に新たに5社(TBS/レントラックジャパン/TOKYO FM/日活/IMAGICA)が協力しての PFF パートナーズからの独自の賞も設定された。

※私は過去数回、PFF に行った事があるが、毎年観客動員数も増えているようだ。PFF アワードは平日の昼間のプログラムが多く、仕事を持っているとなかなか見に行けない。今回は特集上映を3本見たが、中には前売券はおろか当日券も売り切れていた作品もあった。

ちなみに前売り券はPFFアワードで1,000円(当日1,200円)特集で1,200円(当日1,400円)と他の映画祭同様若干値上がりの傾向。

しかし、普段なかなか見られない海外の作品や、新作をいち早く見る事が出来るのもこうした映画祭の魅力のひとつだ。

低迷しているといわれる、日本映画の活性化と、新人の登竜門の場の提供のためにもこれからも続けていって欲しい映画祭である。

■PFF アワード’99受賞結果

ここ数年、年々応募数が増加しているが、今年は PFF 史上最多の 914 本が応募、会期中上映された16本から以下の作品が入賞した。入賞作品からは更に次回の長篇劇場映画製作、公開のチャンスがあるPFFスカラーシップ制度がある。

なお、最終審査員は以下の5名。個々の作品については追ってレポートを予定。

降旗康男(映画監督)、三枝成彰(作曲家)、原田美枝子(女優)、平山秀幸(映画監督)、仙頭武則(映画プロデューサー)

□グランプリ映画監督として将来を最も期待したいつくり手に贈られる(副賞・賞金100万)

受賞作品『5月2日、茶をつくる』DV監督:小嶋宏一 出身:京都府   年令:26

□準グランプリグランプリに迫る映画の才能を感じさせるつくり手に贈られる(副賞・賞金20万)

受賞作品『風は吹くだろう』DV監督:白石晃士  出身:福岡県  年令:25:近藤太     :愛知県    :26

□審査員特別賞無視する事の出来ない映画の才能を感じさせるつくり手に贈られる(副賞・賞金20万-3作品)

受賞作品『シアワセの記号』Hi-8 *監督:三好曉   出身:大阪府  年令:23

受賞作品:『テーブルトーク』8mm監督:三内徹   出身:大阪府  年令:23

受賞作品:『他、3本。』DV *監督:川合晃   出身:大阪府  年令:29

□観客賞観客の人気投票で最も高い支持を得た作品に贈られる

受賞作品『ランナーマン』16mm監督:中村隆太郎 出身:東京都  年令:23

■PFFパートナーズ主催の受賞結果

人材発掘、育成システム向上を目指してPFFパートナーズとして参画した5社(TBS/レントラックジャパン/TOKYO FM/日活/IMAGICA)独自の審査による賞が今年から新たに加わった。

□企画賞(TBS)作品の優れた企画性(着眼点、アイデア、発想等)に対して贈られる

受賞作品『失跡-1998年の補足』監督:横川兄弟  出身:埼玉県  年令:25

□エンターテインメント賞(レントラックジャパン)ユニークさや華やかさを持ったエンターテインメント性溢れる作品に対して贈られる

受賞作品『プロゴルファー虎木』監督:長屋正志  出身:北海道  年令:33

□音楽賞(TOKYO FM)既成曲の使い方などを含み、全ての音楽、音響に対して贈られる

受賞作品『他、3本。』DV *監督:川合晃   出身:大阪府  年令:29

□ブリリアント賞(日活)最も光り輝く才能を感じさせる監督の作品に対して贈られる

受賞作品『シアワセの記号』 *監督:三好曉   出身:大阪府  年令:23

□技術賞(IMAGICA)撮影面、照明、映像のクオリティなど、技術に特化して優秀な作品に対して贈られる

受賞作品『にくいあなた』監督:継田淳   出身:秋田県  年令:24

*を付した作品は部門別で重複受賞しているもの

■特集上映作品レポート

今回は<特集1:日本映画の未来を観よ!>と<特集2:アジアの新しい風>の2部門に分かれての上映。

特集1は黒沢清、手塚真、あがた森魚、斎藤久志、園子温、等活躍中、またこれから期待の監督までエネルギッシュな人々の作品15本。ここでは、黒沢清監督の新作『カリスマ』を見てきた。

また、特集2では、中国、香港、韓国のインディペンデント映画を中心に、日本でなかなか見られないアジアのインディペンデント作品8本を紹介。こちらは中国の『小武(シャオウー)』とキルギスタンの『あの娘と自転車に乗って』を見た。

今回、見た作品は全て日本で、今後の公開が決定している。詳細については随時レポートする予定。

特集1『カリスマ』’99年/103分(35mm) 監督:黒沢清出演:役所広司、池内博之/風吹ジュン

ストーリー“カリスマ”と呼ばれる巨木を巡る様々な人間模様。それぞれの立場から伐採派、保存派に対立する村。そこに仕事に疲れ果てて流れ着いた刑事、薮池が巻き込まれていく。対立はやがて殺人事件にまで発展するが・・・。

コメント今年のカンヌ映画祭では監督週間に出品された作品で、今回の上映は日本では初めて。海外での評判もまずまずだったとか。当日券を求めての整理券が配付されたようだが、それでも入場出来なかった人が出た人気ぶりだった。

数年前の監督の本に『カリスマ』の名が既に出ていて、かなり前から温めていた企画である事は知っていたが、まさか約10年にもなるとは思わなかった。本人も仰っていた通り、当初のものとは大分変更があったようだ。昨年、急に映画化の話が持ち上がり、じっくりと見直す時間がなかったという。

内容的にはもっと恐ろし気なものを想像していたが、今回は殺人シーンも滑稽でさえある場合もあり、ある意味でほっとしたものの、監督の意気込みは充分伝わってきた。ソフトな語り口の監督を見ていると、作品に見られるエネルギーはどこから涌いてくるのかと、いつも不思議に思えてくる。

(私事だが、今年初めて監督に出会った日が、丁度この作品のクランクアップの翌日で、以来タイトルが頭を離れなかっただけに、作品を見られただけでも感慨深いものがありました)

特集2『小武(シャオウー)』中国 ’97年/103分(35mm)監督:ジャ・ジャンクー出演:ワン・ホンワァイ、ハオ・ホンジャン、ズオ・バイタオ

ストーリースリで暮らすウーは未だに足が洗えず、警察でもお馴染みの顔。かつての仲間には事業に成功した者も。カラオケで意気投合した(つもりの)メイ・メイとの結婚で今の生活を一新しようとしたのも束の間、彼女は行方をくらましてしまう。実家に帰ってみても厄介者のウー。彼はまたしてもスリに手を染めてしまう。

コメント長編第1作目というこの作品でナント映画祭グランプリ、ベルリン映画祭再優秀アジア映画賞等数々の賞を受賞、しかし本国中国では未だに上映出来ずにいるという。

ここでのティーチ・インはあまりにマニアックで、とても私ごとき観客・・実は監督の話を聞くまで中国映画だって知らなかった・・は到底お呼びでない、というか、ついていけない質問が飛び交い、更には原語(中国語)で通訳の言葉を介す前にフムフムと頷く人までいてぶっ飛んでしまった。

監督は小柄な可愛い感じの人。ハキハキと時にユーモアを交えてのコメントも。

映画の上映前後に登場する、PFF ディレクターの荒木啓子さんのコメントは、毎回とても的を得ていて感心するのだが、この時のコメントもあまりに的確だったので最後に、ここに再録させて頂く。

「スリが主人公で、何だかとても情けない話なんですよね。でも、何だか分らないのですが、後で妙に心に残ってしまった作品でした。」・・その通りの映画です。

『あの娘(こ)と自転車に乗って』キルギスタン ’98年/81分(35mm)監督:アクタン・アブディカリコフ出演:ミルラン・アブディカリコフ、アルビナ・イマスメワ

ストーリー少年ベシュケンピールは腕白ざかり。今日も遊びすぎて父に叱られ、映画に行きたいといっても許して貰えない。そんな時優しいお婆ちゃんがそっと小遣いを渡してくれる。ある日、可愛い女の子と友だちになってほのかな恋心が芽生えるが、嫉妬した悪ガキ仲間に「お前なんか養子のくせに」と言われ、ショックを受ける。家出した彼にお婆ちゃんの危篤の知らせが・・・。

コメント昨年の東京国際映画祭でも上映され、スペシャルメンションとして、黒沢清監督『ニンゲン合格』とともに選ばれた作品。映画祭では『ベシュケンピール』として上映。

しかし、今回の邦題は内容に添っていて、なかなか粋。

何とも懐かしい匂いのする作品。これといって大きな事件が登場するわけではない。だが、心の奥を揺すられるような感じがする作品だ。キルギスタンではソビエトからの独立後初の作品だが、今回はフランスが製作費を70%提供してくれたという。これは、監督の前作『ブランコ』を見ての申し出という。文化に対する国の姿勢が問われるような話だ。

国で唯一の映画監督という事だが、とても穏やかな感じの人で、今後の作品も是非見たくなるような気がする。今回のティーチ・インでは通訳の方(中川さん)の落ち着いたやりとりと、温厚な監督の息が合っていて、とても雰囲気が良かった。

上映後のロビーでの会話で、ティーチ・インで一人でたくさんの質問をした観客に対し、「君の質問はとても時間内で答えられる事ではないよ。たくさんの人が質問出来るように、ここではそんなに答える時間がない」とやんわり諭しているところも好感が持てた。

劇中の鳥があまりに珍しく可愛かったので、その種類を聞いてみると、日本の雀のように当り前にいる鳥との事。通称「プープー」?

この上映は7月7日の夜。七夕の話を知らなかった監督も、その由来を聞いて、国では「7」は聖なる数字という事もあり、この日の上映をとても喜んでいた。

鳥野 韻子

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