π(パイ)

作品紹介

★★★

低予算でつくった映画といっても約 700 万円かかっている。映画つくりとはいかにお金がかかるのかを実感する。

白黒でつられた映画にはカラーで観たくなってしまう作品もあるが、この映画は予算面で当初から白黒を余儀なくされている為か、人物、セット、ロケーション、ストーリーまでも白黒に合っているため、カラーでは魅力が半減するだろう。また、この映画のできが良いためカラーでリメイクをつくるとしたらこれ以上のものはできないのではないだろうか。それほどこの白黒映画はうまい。

数学者マクシミリアン・コーエンが取り付かれたのはすべての事象の数学化。実際物語上、株式市場の予測を数学でやろうとしているが、これが金儲けの為ではないことは「金などほしくない」というセリフで表されている。数式の正誤が翌日に証明されるためにこれを選び、そのために物語が意味をもつ。金を産む数式をねらうマフィア、カバラの謎を解かんとするユダヤ教徒、そして彼自身。

撮影は実にマニアックで、アメリカ人とは思えない。ヨーロッパ映画のアンダーグラウンドな作風だ。手で書き留める文字(数字)をアップで撮ったり、安ホテルのようなせまい部屋で主体に近づいての撮影。それらがこの映画の最大の魅力の一つであろう。物語が身近に展開されているような錯覚を生じるからだ。

ただし、癖のある映像は2回、3回とは使えないだろう。すでに撮影が終わるころであろう次回作で彼らしさがどこまで残っているか興味深い。

この映画はサンダンスで賞をとっているだけあって、見ごたえあり、その評判からか、金曜日のレイトショーにはほぼ満席の様子。

レイトでこれだけ観客が入れば、シネマライズ経営者はほくほくの笑顔だろう。30分前には並びましょう。

立野 浩超