「てなもんや商社」

5「てなもんや商社」 監督:本木克英/出演:小林聡美、渡辺謙 他

堅すぎて、ちとザンネン

邦画というヤツがどうにも苦手で、ここ数年、古いもの以外はほとんど見ていない。が、タイトルが何やらありそな「てなもんや商社」、ロケ先が中国、そして主演がアイドルタレントではなく小林聡美とくれば、それなりに笑わしてくれるんじゃなかろーか――と期待を胸に見たのだが、手堅すぎてガッカリでした。

適当なところに就職してグルメ三昧、遊び三昧、2~3年したら結婚退社、というお気楽な夢を描いて就職活動する主人公の小林聡美が、運良く、というか運悪く引っかかったのが、中国に洋服や縫製製品を発注し、出来上がった製品を日本国内の企業に売る小さな貿易商社。

ところが発注先が中国なもんだから(あ、これって偏見ですね)、納期は遅れる、注文どおりの品物ができない、材料が届いてないとウソをついて過分に物を要求する。これらの手配やケアやらで毎日てんやわんやの忙しさ。

その上、輸入した商品を社員みずからあちこちへ売り込みに行かなきゃならないし、社員ときたら直属上司の中国人、王(渡辺謙)はじめ、ちょっと変った人たちばかりで、上司は叱ったり責めたりしない代わりにどんどん仕事を回してくる。かくして聡美嬢は入社初日からハードな日々を送ることになるのである。

やがて、文句もタレずオシゴトする聡美嬢は王のお供で中国入り。日本人のお得意さんを連れてさっさと引き上げてしまった王に代わって検品を担当する。が、中国式接待で酔いつぶされたり、ど田舎まで検品しに行くはめになったり、さらにはそこでクルマが溝にはまり込んで身動きできなくなったりと、さまざまなアクシデントに遭遇するのである。

しかし、それも過ぎてしまえば楽しい思い出。今では会社で元気に働く聡美譲――。

というのが粗筋だが、はっきり言って冴えない映画だ。まず、何が来ても「そんなもんかぁ」とクリアしてしまう主人公の性格。小林聡美のひょうひょうとしたキャラクターのお陰でどうにかつじつま合ってるものの、主人公が本気でグルメ三昧、お遊び三昧指向のOLだとしたら、この会社、この仕事に「そんなもんかぁ」で済むはずない。心のうちに怒り、苛立ち、葛藤が渦巻いてしかるべき。いや、お気楽指向のOLじゃなくたって、普通はもう少し葛藤するんじゃないだろか。

ところがこの主人公、まるでのれんに腕押しなんですね。そりゃあ、世の中には彼女みたいに順応性の高いOLさんもいることだろう。それに感情の起伏の激しくない人がドラマの主人公になったってかまわない。が、この映画みたいに流されっぱなしだとキャラクターとしての魅力が出てこない。ストーリーの都合に合わせて動いているだけって感じだ。

もちろん、「てなもんや商社」のタイトル通り、主役は会社、という見方もできよう。「できないことをできるようにしていくのが私たちの仕事。最初からできると分かっていることをやってもおもしろくありません」と厄介事をひょうひょうと片づけていく渡辺謙や、一流商社にいたのに活気の無さに辟易して転職した柴俊夫など、集まるのは日本の会社社会の規格からはちょっとズレているが個性的で仕事に夢を持っている人たち。そして会社はといえば秩序もルールもなく一見いい加減だが、自分次第では夢が実現できる場所でもある。ね、世の中にはこんな会社もあるんだよ、みたいな。

しかし、そうだとすれば会社内のエピソードがあまりに弱い。社内のシークエンスはパターンすぎるし、個性的であるはずの社員たちも、その個性は型通り。この映画ならではの個々の魅力作りにまで至っていない。要するにどこをとっても上っ面だけしか描かれていないってこと。いかにもおもしろそうなキャラクターをあちこちから駆り集め、おもしろそうなエピソードをつなぎあわせただけにすぎないまのである。

それは中国という国に対しても同じ。観客の知識と想像力に頼りすぎていて、なぜギャップが生じるのか、といった点に全く触れていない。ことさら説明せず異国のひとつとしてサラリと描きたかったのかもしれないし、実際、こんな風にサラリと流して効果を上げる監督もいる。だが、この映画に関してはそれがうまくいっていない。だいたい、せっかく中国くんだりまで行って、ありきたりの映像で終わりってのがあまりに情けない。一体全体この監督、中国について感動したり表現したいと思ったものがなかったんだろうか。

ストーリーに破綻があるわけではなく、見苦しい映像があるわけでもない。達者な役者が揃っているから、演技のぎこちなさにウンザリさせられることもない。スーッと見てしまえば楽しめない映画ではない。

でも、正直なところ、この監督、何が撮りたかったんだろうねぇ。映像が平凡、言いたいことも中途半端。オシゴト来たので引き受けました、映画の手法は一応勉強してますから、常道に沿って手堅くクリアしたと思いますよ、ってな風で、味もおもしろみもないんだなぁ。

それに淡白系を狙ったのだとしたら大きな勘違い。なぜなら一見淡々とした映画とは、実は映像が濃密で映像自体が饒舌。景色ひとつにも監督のこだわりがしつこいほどこもっているものなのだ。しかしザンネンながらこの作品は映像も淡白で無口。それも、言いたいことを抑えているというよりは、何も言ってない。

私は日本人の若手監督にありがちな一人よがりの作品は好きじゃない。だが、監督の第1回作品だというソツなく優等生っぽく、しかし個性のないこの映画を見ていたら、まだしも一人よがり系の方がよいかもしれないと思ってしまった。おもしろい作品を見つける嗅覚はあるみたいだから、2作目は(そんな話があるとして)、もっと何とかしろよー!

quittan

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