アイズ・ワイド・シャット

作品紹介

★★★

公開前からキワい噂ばかりが飛び回っていたが、オーストリアの作家が原作なだけにまるでクリムトの絵画を思わせるような美しい作品だった。

特に公開に際して一番問題になったという仮面舞踏会の世界は、見終わって数日たった今でも脳裏に焼き付いており、「シャイニング」の双子姉妹の映像、「時計じかけのオレンジ」のレイプシーンなどと同等に、いかにキューブリックが言葉や音声で訴えかけるのではなく、映像のみで人の心に恐怖の染みを作るのが上手い監督かを改めて感じた。

内容的には、夢物語のようでありながら、ある意味非常に現実的な物語である。性への憧れと不安、死の恐怖など、人間なら誰もが一度は体験するであろうテーマだからだ。この作品が彼の遺作となったのは感慨深いところだ。

と、ここまで賞賛しておいてなんだが、残念なのがやはり、キャスティングだ。ニコール・キッドマンは確かにビジュアル的には美しいし、冷たく無機質なふんいきが役にはあっているとは思う。だが、ひとたびセリフを口にすると舌足らずな声が幼稚に聞こえ、オープニングのダンスシーンなどは「酔っているの」というセリフを口にしなければ、ただの頭の悪い女にしか見えない。

もともと過去の作品「冷たい月を抱く女」が火曜サスペンスなみの作品に成り下がっていて、こういう繊細な役を彼女が出来るのだろうか、と心配だったのだが…

また、トム・クルーズに関して言えば、確かにいつものように頑張っているのだが…その「頑張ってます」的演技がやはりこのような静かな作品には向かないのではないか。

そもそも色っぽさを見え隠れさせなければいけない作品なのだから適度な色気と演技力、そして知性を兼ね備えた役者、たとえばレイフ・ファインズやジェフリー・ラッシュ、ユマ・サーマンやエリザベス・シューあたりにこの役をやってもらえれば更に作品の格も上がるとおもうのだが…

MS. QT MAI