アイズ・ワイド・シャット

★★★★

来年のアカデミー受賞式では、毎年恒例の”亡者の肖像”にスタンリー・キューブリク監督があの顔写真で紹介されると、会場は拍手が一段と高まる。そんなことを想像せずにはいられない状態でこの映画を観る。この映画のパンフレットの制作は公開第1週にまにあわなかった。監督の徹底的な秘密主義がもたらしたハプニングなのかもしれない。

そのおかげでストーリー、評価に関してはほとんど知識がないまま初日を迎え、特別キューブリック監督のファンでもないことも幸いし、ほとんど先入感なしで観ることができた。先入感があると判断が大きく鈍るが、それを排除している分、今回の★4つの評価には冷静に自身がもてる。一般的には監督の評価が高い場合先入感で評価されがちだし、映画作成秘話の噂を聞くといやがおうにも評価されてしまったりする。

この映画を観終えると脚本のストーリーの巧みさを実感する。8月7日より公開の「ロック、ストック&トゥー・・スモーキング・バレルズ」のように話が入り組んだ挙げ句、最後に1箇所に集約されるような巧みさではないが、トム・クルーズが1人で行動し、想像し、苦しんでいくことで完全に物語が一人称で進む中、ニコール・キッドマンとその他数人の感情が交差し、彼のなかに集約される。

これは見事な演出だ。感情をつき破るようなおおげさな表情の場面もないのに苦しみが伝わり、一流のホラーのごとくに汗を感じる。一流の犯罪推理もののように謎は深まり完結に近づく。

全編を通して全員の動きがスローテンポで、それを追いかけるカメラもゆっくりと動き、その時間の流れが観客に焦りを生む。人物をすこし引いた位置での撮影は、背景となる空間を広くとることで迷宮のごとき印象の室内をつくりだす。見事な撮影だ。特別変わったセットではないのに、その構図によりまったく異なった印象にさせる。

この点は「2001年 宇宙の旅」を思い出させた。宇宙空間を描くのに、すこし引いた場所から撮影することにより空間の広がりを描いている。ハル(コンピュータ)のスローな話しかけや、宇宙飛行士達の台詞の少なさ、無駄な音楽、効果音を省き真空の無音状態を実感させるとともに恐怖心をあおっていく。

宣伝ではセックスシーンに対して過剰反応があるが、今の世の中この程度のシーンはテレビでも氾濫しているし、ヘアーが見えるシーンに対してはフランス映画をよく観ている人達にはごく普通のことだろう。しかしその使い方には十分テクニックが感じられるし、最後まできれいだ。

18禁(18才以下は観る事ができない)ではあるが、日本の映画館はチェックが甘いし、まわりを見回す限り数人は明らかに18才以下だった。今後レンタルビデオでの扱いが気になる。この映画のように、今をそのまま突き進むような映画には映論ご担当者にも時代の勉強と若返りが必要ではなかろうか。もちろん世界的にいえることなのだろうが。

立野 浩超

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