恋人たちのポートレート

このコーナーは見損なった作品、もう映画館では見られそうもない作品、あるいは未公開の作品に出会えるビデオのご紹介がてらの勝手な感想をお送りします。2「恋人たちのポートレート」★フツーでした。「ミナ」のマルティーヌ・デュゴワゾン監督の作品と聞けば見てみたいと思う人もいるはず。何を隠そう私もその一人で、ロードショーを見逃したためビデオが出るのを手ぐすね待っていたんですね。で、見た感想は、フランス映画にしちゃあんまりフツーで、ちとガッカリ。もっとも、口当たりいいし分かりやすいから、パリの空気が恋しいとき見るには手ごろかな。おハナシは、女3人男4人のグループに女が一人飛び込んできて、恋愛がちょっくら入り組んで友情もあって、という日本のトレンディドラマじゃ使い古した筋立て。メインキャラクターのアダを演ずるヘレナ・ボナム・カーターの職業がファッション関係、友人のマリー・トランティニャンと男たちが映画関係って設定も、それぞれの業界をしっかり描いてくれていないから魅力ない。まあ、“グループ交際”は万国共通、マンネリこそが大前提ってことか。でも、もしエリック・ロメールが撮ったらもっと皮肉っぽくておもしろくなっただろうにと、途中でついつい余計なこと考えたりしたものだ(その代わり、登場する男はみんなお喋りで女々しいんだろうね)。

ただし、よい部分もありました。女性監督だけあって女友達の関係がわりにうまく描けているのだ。たとえばやり手で姐御風のトランティニャン、仕事熱心でしっかり者のカーター、うだつが上がらず恋人もいずどこか抜けてるエルザ・ジルバースタインという3人の女友達のつるみ方。ほら、3人のうち2人がしっかりしている場合、何にかにつけて2人が額を寄せ合ってヒソヒソやり、ボケ役は「あんたは黙ってなさい」って言われるケース、よくあるでしょ。といって2人は彼女を嫌っているのではなく、むしろ憎めない妹扱いしている、みたいな。そんな女友達の関係性の勘どころと呼吸をうまく捕まえている。前作の「ミナ」は、若い時期の女友達の関係にありがちな打算、駆け引き、自己中心、意地の悪さに目を向けた点がおもしろかったが、この作品も女友達物として見た方がおもしろいかもしれない。

そう思えるのは女性の方が性格付けがよくできているせいもある。この映画、男はパターンだし、ほんと冴えない。俳優も男どもより女優陣の方が健闘してます。意外や意外、ヘレナ・ボーム・カーターがいい。これまでの彼女は癇が強かったりキツい役が多く、ドラマの主人公にはよくてもお友達にはしたくないタイプだったが、今回は身近にいそうな普通の女性を好演。圧縮器にかけたような容貌と小柄な体躯のせいで、イギリス、アメリカ映画じゃ特異な雰囲気になっちゃう彼女も、やはり小柄でアクの強いフランス人女優の間だと普通に見える点が良く作用しているんだろうか。とにかく彼女の才能に対する認識を新たにしました。マリー・トランティニャンも他の映画じゃとんでもないエキセントリックぶりをご披露くださっているが、この作品では愛敬たっぷり。男っぽくてツッパラかってるくせに、自分の愛人とカーターが夜中になっても戻らないと気を揉んでジタバタ。これが茶目っ気あって笑わせてくれる。この人、コメディやったら絶対いい。

ところで、マリー・トランテイニアン扮するキャリアガールはイヴァン・アタル演ずる映画監督と長年同棲して赤ちゃんもいるが、二人は結婚も入籍もしていない。フランスでは未婚で子供を産みその父親と独立した関係を保ちつつ自分のキャリアを続けていく生き方が、多くはないにしても女性のライフスタイルのひとつとして定着している。だから女友達が何人か集まる際にこういうタイプが1人ぐらい混じるのは設定としてごく自然なのだろう。

さて、実はここが日本のトレンディドラマと違う点なんですね。日本にも彼女みたいな女性はいるもののまだ少数派。一般に十分認知されていない。ゆえに日本のドラマでは、不倫中のOLや離婚した女性は普通に登場するが未婚の母は典型的キャラクターとしては出てこない。この違い、日仏のお国柄や社会的背景の違いによる現象ではある。けれどむしろ日仏の女性の意識の違い、人生観や結婚観の違いの現われじゃないのかな。私はこの作品見ていてつくづくそう思った。ついでながら、原題のPortrait Chinoisって決まり文句? ご存知の方があったらぜひ教えてください。quittan

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