黒猫、白猫

作品紹介

★★★★★

「この映画は見事に突き抜けている。そしてきっと誰にも真似できない」

まず思ったことである。この作品の監督、エミール・クストリッツァなる人物を初めて知ったのが「アンダーグラウンド」であり、私は勉強不足で、この映画しか知らない。これを観たときには、「よく、こんな話思い付くなー」など思い、「しかし実写との合成が見え見えでひどいなー」など当時「フォレストガンプ」を観てしまっていたための比較によるチープさを感じたり、でもラストシーンの地面が流れていくという今も自分に残る強烈なインパクトと共に、独特で一度聞いたら忘れないあの音楽。こんな印象がその時あったと思うが、その当時私の中では特に好きな映画でもなく、この監督の存在はもう記憶の中で消えつつあった・・・。

と、そんな時に「黒猫、白猫」。監督の名前を見れば、あの監督。その中身はといえば、話といい、登場人物といい、とにかくぶち切れている。まあ、ラストに向かって、目隠ししながらトラヴァントが時速300キロキープで農道を突っ走る、そんな感じです。そして、これまた登場人物が濃縮ソースのようなキャラである。その中でも個人的には、車椅子(らしいが)に乗っているゴッドファーザーと呼ばれるじいちゃんは最高です。それから、前作のように意味不明な楽団がやはり出てきて、あの音楽もやはり健在、そして狂喜乱舞のごとくやはり踊る。・・・と、ハチャメチャな映画である一方感じたのが、パンフレットに載っている写真を見て、1カットの画が絵画的、アート的とでも言うのかとても魅力がある。劇中のシーンでも、船が出ていく川のシーン、ひまわり畑のシーン、そして林の中のシーンなどは画的にも、とても印象深かったです。

観終わってみて、この映画はまさしくあの「アンダーグラウンド」の、あのエミール・クストリッツァの、紛れもない作品であった。でも自分の中でその昔の印象とは大きく変わっていた・・・。いま一度、あの「アンダーグラウンド」を観て、昔の作品も観て、そしてまた「黒猫、白猫」も。

山下 裕