ScreenKiss Vol.055

1999年 11月 1日 配信
ScreenKiss Vol.055

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Vol.055

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □東京国際映画祭:カドッシュ   □東京国際映画祭:ルナ・パパ   □東京国際映画祭:カドッシュ   □東京国際映画祭:ミッドナイト・アンド・ハーフ   □π >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆東京国際映画祭:☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛   監督:アモス・ギタイ   長いカットの使い方:★★★☆☆   映画評:★★☆☆☆  オープニングのショットから長いカットで、目覚めから祈り、出かけるまでが映  し出される。  全編を通じて1つ1つのカットが長く、その必要性に疑問を感じる場面もある。  この場面では短く編集していけばテンポがいいのではないだろうかといった疑問  が生じた。しかし基本的には1台のカメラが映し出す長いカットが好きな私は  節々でその魅力に魅了された。  やはり、最近の映画が過剰に1つのシーンを短いカットで編集し繋いでいく点に  は反感を抱く。ほとんどセリフごとにカットされ、役者はセリフを覚える必要が  ないのではと。  もちろん、短く編集していくことで迫力を感じることもあるのだが、最近はその  迫力に力を借り過ぎる傾向にあるのではなかろうか。映画という新しい芸術が始  まり現実的にはまだ100年もたっていない。その短い時間のなかではある種の  流行がうまれるのは必然的で、絵画でいえば「何年代は何派が主流」といった枠  組みをつくることができる点に近い現象だろうか?  いや、そこまでおおげさなことではないし、その編集方法が芸術とは言えないだ  ろう。映画が総合芸術と言われるのに嫌な気はしないが、それでもまだまだ未成  熟な世界だ。昔の映画は良かったと行っている人もいるが、昔というには映画の  世界はまだ若すぎる。  さて、この映画はイェルサレムという場所と、ユダヤ教の一つの側面を映し出し  ていて興味深い。リヴカとマルカという姉妹を中心に、宗教的束縛のために自由  を感じられない女性の感情が主題だ。  さて、粗筋はインターネットで東京国際映画祭のホームページにアクセスすれば  読む事ができるため、省いて各シーンに関してコメントしよう。  妹マルカは親の決めた相手との結婚の後、自分で鏡に向かい髪を切ってしまうが、  それは宗教的な慣習の一つだそうだ。(監督談)見方をかえればそれは、親が決  めた結婚に従わざるをえなかったマルカが新たな生活への区切りとして行った自  発的な行為とも見られるが、そうではなかったとのこと。ただし、自分で髪を切  りながら涙がとまらなかったあの姿は、慣習に黙って従うだけの姿とは違い、あ  ふれんばかりの感情が表現されて彼女の性格をうまく表していた。その後の行動  に結び付く大事なシーンと見られた。彼女はその後、結婚したばかりの旦那を裏  切り、元彼氏のところへいって抱き合うのだった。  一方、姉リブカは、監督いわく、神と夫への2つの愛の狭間で揺れ動き、結局ど  ちらをも選択することなく死を選択してしまう。自殺を否定する世界で、自殺と  捉えられる結末に監督の問題提起の深みを感じる。  しかし、私が映画をみる限りそれは自殺とは思えない。女性から誘惑することを  禁じられた世界で、夫への愛のために戒律を破ってまでも行った行為の結果、彼  女らの周りの小さな宗教世界に罰せられたのであり、つまりあの体は抜殻で、本  当の体はあの小さな戒律に守られた世界から離脱していったという、少々宗教的  な意味だと思った。つまり象徴的な死であり、実際にリブカが死んだのではない  と感じた。  結果はどうであれ、逃げることのできなかった彼女が反対に立ち向かっていく姿  は実に美しかった。  作品に込められた意味は深いが、少々間延びし、退屈に感じた。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆東京国際映画祭:ルナ・パパ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛   監督:バフティヤル・フドイナザーロフ   総評:★★★☆☆   撮影:★★★★☆  「少年機関車に乗る」は名作だった。私の最も好きな映画であり、その監督が久  しぶりに作った作品。  前作が国際的な評価を勝ちとった為だろうか、この「ルナ・パパ」は予算も十分  で、もちろんカラー、飛行機は飛ばすし、機関車も走らせる。船もあり、馬も走  る。  笑いの要素が盛り込まれて、まるでエミール・クストリッツァの「黒猫白猫」や、  「カッジョ・ディーロ」を彷彿とさせる。  海(ウラル海?)を映し出すシーン、結婚式のシーン(特に少女が祝いの舞でく  るくる回るシーン)、劇団の舞台といった場面では色合いが美しく、カラー撮影  の良さを十分使いこなしていた。  中央アジアの一連の映画から考えると、ずいぶん質が高く、ヨーロッパ的な映画  だ。音楽もすんなり画面に溶け込み、サントラとしても楽しみだ。  役者も「ラン・ローラ・ラン」のマニ役(男性の方)で日本でもお馴染みとなっ  たモーリッツ・ブライブトロイが兄役で出演している。彼は今後期待できる役者  だろう。  屋根が飛んでいくエンディングも「アンダーグランド」で岸辺が割れて、小島と  なって河に流れていくシーンに重なるものがあった。両方のシーンでの意味は大  きく異なるが、イメージは近い。この映画では主人公の少女マムラカットが村か  ら追い出されるように飛んでいくのだが、そこに悲劇の要素はない。  引き続き期待できる監督だ。  (30日は来日が遅れているとのことで、監督にお目にかかれなくて残念だっ  た。)                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆東京国際映画祭:カドッシュ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    1999年/110 min.    監督:アモス・ギタイ    出演:ヤエル・アベシスカス、ヨラム・ハダブ、メイタル・バルダ    10/30(土)シネマプリズム オープニング    渋谷エルミタージュ 14:20〜(リピート:11/1(月)16:40〜 同劇場)  エルサレム在住の姉妹。姉は夫を愛しているが、10年目にして子宝に恵まれず、  それが原因で辛い思いをしている。妹は愛している人がいながら、教区のラビの  決めた相手との結婚を強制される。そして、ユダヤ教の厳しい戒律の中、2人の  選択した生き方は・・・。  原題はヘブライ語の「神聖な」の意。この作品はテルアヴィブを舞台とした『メ  モランダム』、ハイファを舞台とした『ヨムヨム』に続く三部作の最終章でもあ  る。  ここ数年毎年来日している監督。今回はシネマプリズムのオープニング作品と  なった事を感謝している、と上映前に挨拶があった。それを受けるように年々、  観客も増えており、今回もほぼ満席の状態であった。  かなり厳格なユダヤ教徒が描かれているが、これはやはり、前作と比べて、より  宗教色の濃い、エルサレムという聖地を舞台にしている事が大きいようだ。様々  な宗教が混在し、ユダヤ教そのものも、たくさんの考えかたがある地。  こうした中での女性の生き方の話ではあるが、同時に、これはどの宗教にも通じ  る世界観でもある。はっきり言って、女性が子供製造機のように扱われ、神の名  の元にムードもへったくれもないセックスを強いられる彼女達を見ていると、同  じ女性として同情しつつ「この土地に生まれなくてよかった」とつくづく思って  しまった。それにしても、ユダヤ教って「神の御前には皆平等」ではないんで  しょうか。  ある意味、非常に封建的で伝統的な世界だが、一方で先進の技術で医学診療がな  されたり、アングラなバーがあったり。こうした対称的な社会の中で2人の姉妹  は選択する。姉は神と夫を愛しているが故に死を選び、妹は別世界へと旅立つ。  見なれないユダヤ教の儀式、習慣を覗いてみるにも面白い映画でもある。なお、  監督には上映後、メールマガジンで紹介する旨話をしたら、とても喜んでいまし  た。出来ればこの作品だけでなく、3部全部を見てほしいそうです。自分でも使  い捨てカメラを持参して、会場の様子を撮ったり、サインを求められている姿を  撮って欲しいと言ったり、結構お茶目でした。  筆者が初めて彼と話をした二年前はもっと、近寄りがたい雰囲気だったのに、今  回はなんだかとっても親しみのもてるおじさまになっていました。彼は元々建築  家で、建造物でなく、フィルムに歴史を納めようとしたのが、監督転身のきっか  けだったというから、ただものではありません。  11/1のリピートでこの三部作を1度にまとめて上映するのは、世界初だという事  でした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆東京国際映画祭:ミッドナイト・アンド・ハーフ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:マリアナ・ロンドン、マリア・テレサ・ウガル    出演:サルヴァドル・デル・ソラル、マリア・フェルナンダ・フェロ    10/30(土)19:30〜 オーチャードホール コンペ部門オープニング    (リピート:11/1(月)19:20〜 渋谷ジョイシネマ)  セバスティアンの運転する車が、犬をはねてしまった。そばにいた飼い主らしい、  少女を同乗させ町へ向かうが、折しも津波の襲来を告げるニュースに大方の人々  は非難してしまっている。少女の両親も彼女を置いて行ってしまったらしい。  が、町にはセバスティアンの恋人だった、写真家のアナがカメラを下げて今日も  取材をしている。どうやら依頼されて、町の模型を作製してるらしい。果たして  津波は本当にやって来るのだろうか?  津波で世界が終わると大人になれないといって嘆いている生意気な少女の口癖、  「不均衡」。彼女はつねにアンバランスなもので世界を表現しているのだが、義  手を持ち歩く様は、『逃亡者』のようで滑稽だ。まるで、縁起をかつぎまくって  いた、平安時代の貴族のように些細な事に、勝手に賭けをして点数を数えている  ところもしつこすぎて疲れる。  一方アナはフィルターを通しての世界が支配している。カメラを通しての事が彼  女の現実であり、想像の源でもある。彼女を気にしつつ、あと1歩のところで掴  み切れないセバスティアンは、どうやら他人を信じる事が苦手らしい。  登場人物の感覚、特にアナの感覚がどうしても、かなり片寄った女性的表現に  なっていて、見ている側はぴんとこない。言葉ゲームの感じを折り込みたいので  あろう、意図はわからなくもないが、しつこい。アナの感情に殺人犯の言葉を反  映させているのも陳腐だ。ほとんどが夜の場面なのだが、この辺のカメラワーク  は奇麗だった。  ストーリーですっかり疲れてしまい、来場した監督のティーチ・インまではとて  ももちませんでした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆5☆π☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛  監督は新人のダーレン・アロノフスキー。で、ストーリーはと言うと、「数学の  天才マックスは、数字は神のメッセージと思い込み、その暗号を解くことに懸命  になり、やがては悪徳株式仲買者や狂信的なユダヤ教信者たちに翻弄されてい  く・・・」と、ぴあに書かれていた。  観ているときにはそういったことが何となく分かりつつも、何だか全く訳が分か  らないような・・・。何だかそういう気持ちになったのに大いに役立った?のが、  計算が苦手である私にとって、数字もしくは数学であったのは言うまでもない。  なんか口惜しい。  そして、モノクロの映像表現という点が、この作品独特の世界、観客をその世界  に引き込むのに、とても有効な手段だったと思う。その上で、映像や音はもちろ  ん、コンピューターだらけのマックスの部屋、電気ドリルのような注射器に薬、  囲碁、さらには人間?の脳といった美術・小道具がこの独特な世界を作り上げて  いる。  分かっているようで、何だか分からないような。でも、こういった気持ちになる  のは、ある意味狙いであると思うし、観ている時には、なぜ、どうして、という  疑問を与えさせず、何となく納得したような、私にとって、この作品は「マルチ  商法」映画とでも言うべきか(悪い意味ではありません)。  これを観る前に、約700万円の低予算で作られているというのを聞いていたが、  観終わってみて、そういったチープさを全く感じさせずに、この作品独特の世界  を構築したことには、素晴らしいの一言です。魅力ある映画を作る際に、予算が  少ないからというのは、この映画を観てしまうと、もはや通用しなくなってしま  う。                                   ゆたか __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー!  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QT MAI ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-1999 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼

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