ScreenKiss Vol.057

1999年 11月 2日 配信
ScreenKiss Vol.057

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Vol.057

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □東京国際映画祭:オネーギン   □東京国際映画祭:たぶん悪魔が   □東京国際映画祭:火星のわが家   □東京国際映画祭:破線のマリス >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆東京国際映画祭:オネーギン☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:マーサ・ファインズ    出演:レイフ・ファインズ、リヴ・タイラー、マーティン・ドノヴァン、       トビー・スティーブンス    1998年/106 min (コンペティション)    オーチャードホール 11:20    (リピート:11月5日(金)15:20〜渋谷ジョイシネマ)  プーシキンの代表作「オネーギン」の映画化。叔父の遺産を相続したオネーギン  は叔父のいた田舎で数週間を過ごす。そこで友人となった地主の婚約者の姉が、  彼に思いを寄せるが、彼はそれを拒否した。そんな折、その友人とある事で決闘  になり、相手を倒してしまう。以来各地を彷徨い、6年振りのペテルブルグで再会  したしたのは・・・。  昨年発行のある雑誌で、『オネーギン』撮影中の彼のインタビューした記事を読  んで以来待っていた作品。記事に「真っ赤な髪で、まるで狐のような風貌だった」  とあったのだが、画面では見る限りそいうでもなかったような。  この作品では監督マーサの兄二人が主演と音楽を担当している、いわばファイン  ズファミリーの映画である。結束が堅いので有名なこの家族なだけに、素晴らし  いコンビネーションだったといえよう。(それにしても、ジョセフとラルフは似  てないけど、マーサとラルフはそっくり。髪と目の色。そして口元なんか瓜二つ  だった)  オリジナルの長編の詩から、映画化を思い付いたのはラルフだそうで、彼は今回、  エグゼクティブ・プロデューサーも務めている。そのせいか、今回のオネーギン  は、まさにこの時代の我侭で辛辣なインテリ貴族として、彼独特の人物像を造り  上げている。いつもながら、役になりきっており、ラストに至っては彼の身勝手  と思いつつも哀れに思えるから不思議だ。  この作品は何度も舞台で上演されているが、ロケーションや撮影といった映画的  部分を存分に生かしている点では、美しさにおいて映画の勝利かもしれない。  家具や衣装にも、かなりこだわったらしいが、オネーギンの女性のような下着に  は度胆を抜かれた。タチアーナ役のリヴ・タイラーも、今回なかなか、抑えた演  技が良かった。彼女のドレスも一見に価する。ダンスのシーンの華麗さは、これ  またよく知られ、数回映画化された『アンナ・カレーニナ』をも彷佛させる。  さて、私事だがレイフ・ファインズといえば、彼の映画デビュー(『嵐が丘』)  以来、私の中ではマイ・プリンスの座に居座り続けている俳優である。今回は来  日が噂されていたものの、昨年のロバート・カーライルのようなドタキャンもあ  り得る、と期待しすぎないようにしていただけに、目前に生ラルフが登場した時  には思わずうるうるしてしまった。  同時に、『シンドラーのリスト』では冷酷なドイツ人所長を、原作通りにぶよぶ  よの身体で演じ、それが終わった途端急に若々しくなって『クイズショー』、長  髪でマザコンは彼のおはこ、と思わせる位情けなかった『ストレンジデイズ』、  等見事に役になりきる彼の、彼自身の時を見てみたい、という願望が叶ったわけ  だ。(これも演技だったりしてね)  ちなみにこの日は赤いシャツにブラウンのパンツ、そして何故かブルーのチェッ  クのソックスという至ってカジュアルな装い。想像より少しばかり老けた感じの  ファイズ氏だったが、なるほど、これでシェークスピアものを演じさせたらさぞ  かし渋いだろう、と思える魅力的な声でした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆東京国際映画祭:たぶん悪魔が☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:ロベール・ブレッソン    出演:アントワーヌ・モニエ、ティナ・イリサリ、アンリ・モーブラン    1977年ベルリン映画祭銀熊賞(審査員特別賞)受賞    1977年/97 min (シネマ・プリズム)    渋谷エルミタージュ 13:50~(リピートなし)  学生で、友人にも恵まれていたはずの青年、シャルルが墓地で遺体となって発見  されるが・・・。彼の周囲には未来の世界を憂えてエコロジー活動をする友人達  もいたが、彼にはどうも馴染めない。次第に友人達との隔たりも感じるように  なってきた彼は・・・。  この映画の前の『オネーギン』でティーチ・インが長引き、頭の部分が数分欠け  たのと、凄まじい人で立ち見を余儀無くさせられ、頭が疲労気味の状態でこの映  画を見てしまった事を最初に白状しておきます。  初めてブレッソンを見たのは『バルタザールどこへ行く』。これで無茶苦茶感動  して、以来見まくりました。で、今回の未公開作品。涎が出てしまいました。  さて、はっきり言って難しい。どうやら台詞に使っている単語そのものが割と非  日常的で字幕を追うので精魂尽き果ててしまう。(ちなみに今回の字幕翻訳は山  崎剛太郎氏です)  度々出てくる環境問題への警告は、今でも充分効果的だ。つい最近の原発関連の  事故を考えても、20年たった今日でもこの作品が、そういう点で意味を持ってし  まう事自体哀しむべき点だと思う。  Y.モンタンが、生前よくオランピア等で歌っていた曲に「青春の決算」というの  がある。フランス語を解さない筆者は、テンポのいいこの曲を耳に心地よく聴い  ていた。が、ある日、歌詞の対訳をみて驚いた。  世の中の出来ごとをプラスとマイナスに分けて、最後に「決算」するものだが、  この中に「アザラシのこどもを毛皮の為に殺す事。マイナス」という箇所があっ  て、まさに学生達が見ている、ドキュメンタリーそのものだった。  それにしても、ブレッソン作品では多くみられる「素人俳優の起用」がここでも  行われたわけだが、シャルル役など、とても美形でそのまま俳優にならなかった  のが惜しい。  この作品では、何故か若者達の頭の部分を切り取った撮影が多い。例えば、最初  すんなりした上半身が写り、それが鏡に写りこんでいたりして、なかなか顔が写  らない。見ている側は、何となくいらいらと期待で顔が出てくるのを待っている。  そこで、全身になって登場すると、シャルルであったりするわけだ。  人物たちが申し合わせたように、のんびり、ゆっくり歩くのも同様な効果を狙っ  ているんだろうか。「この子達は一体どこへ行こうとしているのか」そして、何  時の間にかそれが死に向かっている、と暗示を感じるようにする彼独特のマジッ  クなのかもしれない。  『ラルジャン』以降沈黙の世界に入ってしまった監督。元気なら98才だ。同じ90  才台で現役のポルトガルのオリヴェイラ監督もいる事だし、ギネスを狙って是非  復帰して頂きたいものだ。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆東京国際映画祭:火星のわが家☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:大嶋 拓    出演:日下武史、鈴木重子、ちわきまゆみ、堺雅人    1999年/104 min (ニッポン・シネマ・ナウ)    シアターコクーン 16:20~(リピートなし)  恋人の心ない言葉で、歌えなくなった歌手の未知子がアメリカから帰国した。父  は、昔、火星の研究では有名だった時期もあるが、今は「懺悔録」なるものに取  り組んでいる。そんなある日、父が脳梗塞で左半身が不自由になる。たまにしか  来ない姉、離れに住む司法試験受験生、そうした人間関係の中で家族をみつめな  おす。  1950年代の終わりに本当に火星移住計画があったらしい。監督の父がそんな夢を  買った一人でもあったという。そして最近はまた、火星生物存在説が浮上してき  たりして、浮かんだアイデアが今回の作品に結びついたという。  辛辣な姉を、ちわきが好演しているが、“たまたま”帰国していて、そのうちま  た、渡米してしまうかもしれない姉の言い分もまんざら、悪役ばかりとは思えな  い。ぼ〜んやりと、自分の好きな道に進んできて、人生の困難に初めて直面した  妹への姉特有の「我慢」の子供時代からの蓄積が、辛辣な言葉となってしまうの  だ。  介護問題と家族、というテーマだと、とかく兄弟間の親のたらいまわしや、嫁に  のみのしかかる介護、といった重たい描き方が多いが、この作品は火星好きの父  の存在により、やや軽減されメルヘンチックにさえなっている。何しろ「20世紀  の奇人・変人」特集に起用されかかった位の父親だ。  散骨等が増える中、魂そのものが「火星」に行ってしまうなんて、考えてみると  いつも見守っていてくれるようで、どこかほのぼのしてしまう。監督自身もかな  りソフトな雰囲気の方だったが、そんな感じも表れているのだろうか。予算の問  題からか、主役の4人以外は「素人」が多用されていたようだ。この辺もブレッソ  ン的にシリアスにいかないとところも良かったのかもしれない。  何時の間にかマイクを離さず、ほぼ司会にまわっていた監督。芝居がはねた直後  に駆け付けた為、役が抜け切らないで口数の極端に少なかった日下武史氏、あん  まり質問が来なくて暇そうだった堺君、そして飛び入りの撮影担当、芦澤明子さ  ん等、ティーチ・インの雰囲気も妙に可笑しかった。そのせいか、観客からも、  普通よりやけに「質問」より「感想」発言の多いティーチ・インでした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆東京国際映画祭:破線のマリス☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:井坂聡    出演:黒木瞳、陣内孝則、山下徹大、篠田三郎    1999年/104 min (コンペティション)    オーチャードホール 18:50    (リピート:11月3日(水)19:20〜渋谷ジョイシネマ)  郵政省の職員を名乗る男から、極秘に撮影したものとして、あるビデオテープを  渡されたテレビ局の女性俊腕編集者、遠藤。一見内部告発に見えたテープは、彼  女の手にかかって、無関係な麻生の人生を破壊してしまった。が、それは彼女自  身の破滅への始まりだった・・  舞台挨拶には監督、主演の他、原作、脚本の野沢尚まで勢ぞろいし、まるで製作  発表会のような様相を呈していた。  もともと彼女の発案で、小説の映画化が企画された、というだけあって黒木さん、  かなり入れこんだようだが、ちょっと力み過ぎていませんか?という感じはした。  TVから毎日与えられる情報が、果たして「情報」にとどまるのか。これからある  程度の誘導された予め想定された結末に、大多数の人間が向かうように出来る、  実は恐ろしいものを含んでいるのではないか・・・そんな漠然とした危機感を提  示する作品だ。  嘗てオウム真理教が世間を賑わしていた頃、サブリミナル効果の事が話題になっ  ていたが、これは、そんな面倒な手順の不要な、だから余計に怖いものなの  だ・・・。  と、いう監督のメッセージはよくわかる。大体犯人の予想は、随所に散りばめら  れた布石から容易に想像は出来た。が、プロットに少々結構無理があって、よく  よく考えると多少不満が残った事は否めない。  その辺に深入りしなければ、適度な緊張感もあり、充分楽しめる作品ではある。  舞台挨拶では、陣内氏がぴか一で、くるくる変わる表情を見ているだけでも楽し  かった。ハイテンションな彼に対称的だったのが、終始落ち着いた監督。終映後  もロビーでサインに応じ、語り口も穏やかな方でした。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   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QT MAI ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-1999 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼

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