ScreenKiss Vol.058

1999年 11月 3日 配信
ScreenKiss Vol.058

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Vol.058

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □東京国際映画祭:アローン(ひとり)   □東京国際映画祭:海の上のピアニスト   □東京国際映画祭:ママ   □東京国際映画祭:ナン・ナーク〜ゴースト・イン・ラヴ   □東京国際映画祭:ルート9   □東京国際映画祭:アローン(ひとり) >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆東京国際映画祭:アローン(ひとり)☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:ベニト・サンブラノ    総評:★★★★★    演技:★★★★★  今年確実に賞を取るだろう映画。  ■ストーリー  田舎(村)に暮らす両親。都会に暮らす娘。父親が病気になった為都会の病院に  入院し、母親は付き添いの為に娘のところに泊り、しばらく都会での生活が始ま  る。娘の暮らすアパートの階下の老紳士を交え、4人の人間ドラマが始まる娘マ  リアは妊娠してしまい、中絶に対する葛藤が生じる。母親ローサは娘のアパート  の階下の老紳士と知合いになり、田舎のような人間関係を作る。  唐突に、病院に見舞いに来ている母親の姿と入院中の父親の姿から映画は始まり、  都会に独り暮らしている娘がその後に登場する。家族構成や、近況などを細かく  説明する事から始める映画とは異なり、最初は人間関係が掴めにくい方もいるか  もしれないが、次第にそれらは説明されていき、またその過程でそれぞれの性格  が分かりやすく表現されている。  地味なあらすじ、地味な人物。終盤までセリフが少ないが、それを感じさせない  くらいに演技の密度は濃い。演技が語っているためにセリフは気にならないくら  いだった。ところが終盤にはセリフの嵐となるが、その変化はスムースで、意識  的に終盤を迎え説明口調にしたということではない。  ローサの演技は目をみはる。どっぷりとしたその体は迫力と、優しさを備えた母  親の風貌で、はまり役と言えよう。  撮影で言えば、“マリアが線路沿いに立ちすくみ、車両のつなぎめごとに見える  姿”のシーン、“隣人の老紳士とマリアが朝まで飲み語り明かした日、朝日の当  たる老紳士の姿”など見ておく価値のあるシーンがいくつかある。特に老紳士が  朝に顔半分を照らされている場面では、老紳士を画面右端に位置させ、左側には  窓から差し込む光を大きく捕らえる。老紳士が振り向く際には右側、つまり光り  の方に顔を回していくことで感情の変化を表現している。そのような演出がこの  映画の評価を高めている。  犬の役柄もよく、シェパードという選択も完璧ではなかろうか。また、アパート  の階段に装飾されているタイルの美しさも何気ないが、意識しなくても自然に感  性に訴えかけていることの一つだ。  残念ながら今日の上映が2回目となり今映画祭では上映終了だが、必ず配給が付  き、おそらく岩波ホールかル・シネマが上映しそうだから、その時は必見。                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆東京国際映画祭:海の上のピアニスト☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:ジュゼッペ・トルナトーレ       (あのニュー・シネマ・パラダイスの監督だ)    総評:★★★☆☆    演出:★★☆☆☆  過剰演出気味。一言で言えば、大袈裟すぎる。すでに“3時間完全版”の噂もあ  り、それが実現すれば恋愛の部分、船から下りて生活し挫折を味わう部分などが  見られることだろうから、そちらの方が興味深い。  トルナトーレ=感動作、海の上=客船とくれば、現在の日本ではまだまだ「タイ  タニック」を思い浮かべる人が多いことだろう。しかし、まったく異なる作品で  あり、タイタニックがヒットした理由は恋愛だったが、この映画は恋愛というよ  り、ピアニストの生きざまを主眼とした作品。そのギャップが観客の不評につな  がるのではないだろうか。恐らく、たいしてヒットしないだろうと思う。  撮影もぱっとしないし、名場面にも欠け、演技も特筆すべき点はない。  残念!                                 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆東京国際映画祭:ママ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:デニス・イェフスティグニェフ    出演:ノンナ ・モルジュコーワ、オレグ・メンシコフ    1998年/100 min(コンペ )    11:20〜(オーチャードホール)  昨日見た『アローン』もこの作品も毋の子供へ与える影響がいかに大きいか、と  いう事を今更のように考えさせられた。6人もの子供達が揃って毋に従うという  のは、考えれば結構怖いかもしれない。しかも全員男の子だ。  どうも父と娘の犯罪ってのは、せいぜいケチな『ペーパームーン』位しか思い浮  かばないが、毋と息子となるとスケールが途端に大きくなる。これが毋と娘も同  様で『ビッグバッドママ』なども、やることがでかい。どうやらマザコンとかの  問題ではなく、ひょっとして女性の方が結構大胆なのかもしれない。  おまけに映画監督は男性が多いせいか、どうも父をメインにした作品は少ないよ  うな気がする。あっても『晩秋』(原題はモDadモ)のように老人問題と絡ませた  りの展開だったりする。  実際の事件は実はもっと悲惨な結末だったそうだ。ラストに故郷に帰ったご一行、  さてこれからは、どうするのだろうか。妙に明るく閉めてくれただけに、余計に  気になってしまった。  俳優陣はとても個性的で、兄弟のしれぞれの性格をきちんと演じ分けていた。時  に彼の一人称で語られる、車椅子の長男は一番難しい表現を要求されるが、流石  に名優。表情の多才さから、全てを物語っていた。メンシコフはまさにカメレオ  ンの様な役者だ。  紅一点状態の毋も、時に不遜に、時に聖母の笑みを浮かべ、非常に繊細な演技  だった。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆東京国際映画祭:ナン・ナーク〜ゴースト・イン・ラヴ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:ノンスィー ・ニミブット    出演:インティラー ・ジャルンプラ、ウィナイ・グライブット    1999年/100 min(コンペ)    オーチャードホール 15:20〜(リピート:11月3日(水)渋谷ジョイシネマ)  子供を身籠りながら、夫を戦地に送り込んだナーク。難産の末母子ともに死亡し  たが、夫マークが帰還すると3人の生活を始める。  が、近所、寺院はナークが幽霊だと知っていて、マークに忠告するが彼は聞き入  れない。そんなある日、マークはとうとう事実に気付き・・・。  一言で言えば「牡丹灯篭」と「雨月物語」と「道成寺」をミックスして、それを  CGも駆使して表現してみました・・という感じだろうか。この手の話は世界中ど  こにでも、あるのだろう。これもタイの実話に題材をとった代表的な伝説で、過  去20回も舞台や映画になっているそうだ。  初めの方で、さわさわと木の葉のこすれる音や、湿地帯の感じを見ていたら、以  前岩波で見た『ムアンとリット』というタイ映画を思い出した。これも夫婦愛を  含めた女性の自覚を描いた実話からだった。  内容はいいのに、「決め」の部分で水戸黄門が印篭を取り出すような、大仰な音  がして辟易した記憶が蘇り、内心“失敗した”と思った。が、話が進むうちに結  構のめりこんでしまった。所々『スペースヴァンパイア』や『ゴースト・バス  ターズ』を彷佛とさせるところがあったりで、ファンタスティック映画祭でも出  品出来そうだ。が、監督の言う通り、単に「幽霊の復讐」に焦点を当てずに専ら  テーマを夫婦愛に絞ったところが、成功したといえよう。  約100年前のタイの生活を再現している、とかで住居や風俗を見るのも興味深い。  死者を連想させる、動物といえば日本では、まっ先にカラスあたりが登場しそう  だが、この作品では大トカゲみたいなのが、屍肉にぱくついていたり、タランテ  ラ風の蜘蛛がぽとんと落ちてきたりして、あまりに懸け離れた動物だけに、何だ  か怖さが実感出来なかった。  ナークの幽霊退治に「寺院派」「焼き討ち派」「悪魔払い派」でそれぞれが、行  うところが面白い。で、結局高僧の説得でやっと魂が鎮まるところなんざ、適度  な教訓になっている。彼女の魂を封じ込めた頭蓋骨の一部が、人から人の手に渡  り、行方知れず、というのもミステリアスだ。  ナーク役の女優は、有名な監督の娘さんだという事だったが、まだ19才と思えな  い落ち着いた演技だった。素顔は銀髪に染めたショートヘアの似合う、今どきの  若者。  このまま渋谷の町に繰り出しても、溶け込んでしまいそうな感じだった。  なお、タイトルの「ナン・ナーク」のナンはミセスという意味だんだそうです。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆5☆東京国際映画祭:ルート9☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:デヴィッド・マッケイ    出演:カイル・マクラクラン、ウェイド・アンドリュー・ウィリアムス       ピーター・コヨーテ    1998年/100 min(QFRONT東京国際ファンタスティック映画祭)    12:00〜 (渋谷パンテオン)  ネバダ州のはずれにあるルート9。沿線の農場では麻薬取り引きのこじれから、  関係者が全員死亡した。そこへ、今日も暇な仕事でやってきた保安官補佐の2人  組。  物証のトランクに積んであった、現金150万ドルのネコババをはかるも、その為殺  した唯一の生き証人が、実はFBIの潜入エージェントだった事から、事件は思わぬ  方向へ・・・。  ファンタスティック映画祭の、独特のノリは承知のつもりだった。毎回ディレク  ターが踊って舞台に登場するのも慣れてきた。が、今回は来年2月に1月にビデ  オ発売されるからって宣伝部の方(?)が何も警官コスチュームで出てこなくて  も・・・。  さて、何だか最近見たような、と思ったら『シンプルプラン』。汚いお金横領作  戦+そこから来る人間関係のもつれ=登場人物全滅・・・というスタイルだ。  監督は『レッサー・エヴィル』が第一作というから、この手の内容が好きなのだ  ろうが、どうもプロットが甘い。保安官の女房と出来てるカイル・マクラクラン  は、黒髪に白いものがかなり見え、そこに妙なヘアスタイルだから、立派な「  とっちゃん坊や」に仕上がっており、浮気する体力あんのか?って心配になる。  一方寝取られ男の、ピーター・コヨーテ。昔はいい役もあったのに、数年来『キ  カ』『赤い航路』等「変態なら任せて」男になってしまった。今回も初めは割と  普通だったが、次第に嫉妬深い暴力夫な役になっていき、期待を裏切らなかった。  ビデオになったら、往年のカイルファンとか、時間と暇のたっぷりある人にお薦  め。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆6☆東京国際映画祭:アローン(ひとり)☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛    監督:ベニト・サンブラノ    出演:アナ ・フェルナンデス、マリア・ガリアナ、       カルロス・アルバレス・ノボア    1999年/100 min(コンペ)    オーチャードホール 18:50〜    (リピート:11月2日(火)15:20~ 渋谷ジョイシネマ)  父の入院の為、マリアの元に身を寄せることになった毋。彼女は、度重なる夫の  暴力に耐え3人の子供を育ててきた。父は病床にあってなお、妻に辛く当たる。  マリアは愛のない男の子供を身籠り、職もなく迷っている。アパートの隣人は一  人暮らしの老人で、犬と暮らしている。それぞれが問題を抱える中、毋の存在が  そうした空気を変化させていく。  今年は比較的コンペを見る機会が多いが、これはそうした作品の中でもピカ一  だった。ほとんどが素人だという俳優も、絵も、ストーリーもよかった。全ての  人物が中年期以降のせいだろうか。派手さもないが、どこか飄々とした突抜けた  感じがあって、作品全体のトーンを統一させている。  それぞれが抱えた問題の、清涼剤として一役かっているのが、老人の飼っている  シェパードのアキレス。初めて画面に登場するのは、粗相をして叱られていると  こだだが、次第に人間の心を素直にさせる純粋さを持った存在となる。毋の持ち  込んだ植物同様、アニマルヒーリングなのかもしれない。  この犬に関しては、監督がこんな事を言っていた。「あいつはアクターズ・スタ  ジオで訓練を受けたタレント犬さ。俳優、照明、全てが整った時点で奴を呼ぶと、  あいつはひょこひょこ出てきて、演技をして拍手を貰い、またとことこ帰って  いったもんさ」  どうもお茶目で悪戯っこのような監督のこの話、どこまで信じていいのやら。異  常に嗅覚の鋭い設定の父親と勝負させるのも一興だろうが。  父からの暴力に耐え、無抵抗かに見えていた毋が、この家族で実は一番強い人間  だったのかもしれない。ゆったりと、まるでその美しい田舎の風景の一部のよう  に逝ってしまった毋は、まさに大地に足をつけた人生だったのだ。  この映画は「アローン」といいながら、実は誰もが「アローン」ではない。とい  う逆説なのかもしれない。あとで、しみじみと心に残る作品だ。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃F┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇   このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇   このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出   来ます。こちらでの作業は一切しておりません。   まぐまぐ   (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm)   マッキー! 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