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Vol.173
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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆< □ベネチア国際映画祭情報8 □第27回テルライド映画祭レポート(9月1日〜4日):2 □江原道の力 □ひかりのまち □サイの角のように一人で行け >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆ベネチア国際映画祭情報8☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 様々な国の映画が一堂に会する国際映画祭。今回も、普段見なれぬ国の映画を楽 しめた貴重な機会であった。 出品作品をざっと眺めると、やはりイタリアでの映画祭だけあって、イタリア作 品が数多く目に付く。(コンぺ作品だけでも、出品作20中、4作がイタリア作 品。) トルナトーレやベニーニ、ベルトルッチはいるものの(最近イタリアをベースに した作品を発表し、原点に戻った感のあるベルトルッチであるが、彼を「イタリ ア人監督」と呼ぶにはもうワールド・ワイド化してしまった存在な気がする)、 現在のイタリア映画産業は誰に聞いても「よくないよ」と答えるのが現実であ る。 その低迷状態に渇を入れるべく、大プロモーションを掛けて映画祭に多数出品し たのだと思うが、「愛すべき小作」には出会えたものの、今回大きな印象を残す イタリア作品には出会えなかった。(イタリア人観客や報道陣に聞いても、同じ ような答えが戻ってきた。残念である。) □Together 「Together」(スウェーデン、2000)は日本でも好評だった「Show me love」の 監督Lukas Moodyssonの新作。(Cinema del Presente部門に出品。)1975年、ある 大家族の情景を、ひとりひとりに焦点をあてながら切り貼りした、楽しく可愛い 作品である。 全てとは言わないが、「その国のもつ色合い」というのは大なり小なりあるよう に思う。ラッセ・ハルストレムしかり、スウェーデン作品に描かれる色使い(特 に子供の洋服の色合わせ)の愛らしさはすばらしい。「Show Me Love」ほどテー マ性のある作品ではないが、ほのぼのとしつつもリアルな生活の一コマ一コマを 巧みにまとめたチャーミングな作品であった。 □Adanggaman 「Adanggaman」(コートジボアール、2000)は唯一出品された(Cinema del Presente部門)アフリカ作品。アフリカの大地を背景に、原色で描き出される映像 の力強さが印象的な作品である。 私は冒頭5分を見逃しているのだが、最後の最後、エンディングに映し出された説 明を読むまで、現代とは言わずとも、それほど遠くない過去の話だと思ってい た。(実際は17世紀の話。)アフリカの、結婚にまつわる因習と、人間がまるで 動物のように扱われた悲しい歴史を題材にした話である。 私の無知のなせる技なのであるが、それにしても一時間半見つづけても、画面か ら全く時代を想像出来ない作品というのは初めてである。 世界がネットで結ばれ、どんどん狭くなっているというのに、、、私にはショッ キングな体験だった。世界は広く、人間の見識なんてちっぽけなものなのだ、と 深く身にしみた出来事であった。 Roger Gnoan M'Bala監督は、コートジボアールを中心に活躍するアフリカを代表 する監督。現在イラン等、アジア映画が注目されているが、この作品のビビット な映像を見ていると、次はアフリカ映画なのでは?と思うほどであった。 □The Isle 「The Isle」(大韓民国、2000)は映画祭期間中、もっとも論議を巻き起こした 韓国作品(コンペ出品作)。一般観客を対象とした上映中、気分を悪くした人が 出たことで新聞にも報道されたからだ。 釣りや逢瀬を楽しむための、湖に浮かぶ小船で起こる事件を、ショッキングな映 像とともに、しかしあくまで静かに淡々と描かれた作品である。賛否大両論あっ たが、映画祭の大きな話題となり、盛り上げてくれた作品のひとつではあった。 山に囲まれた湖の風景、ちょっとしたしぐさ等、同じアジア人である私にはごく 自然に受け入れられるシーンもあったが、分かるからこそ敢えて嫌悪感をそそら れるシーンも数多くあったのも事実である。 それら全てが、観客の多くを占めるヨーロッパ人にどう映ったのか、一言で言え ることではないが、「興味深く」はあったはずである。 しかし、随所に見られる少々極端な表現を(思い切った方法で自殺を試みるシー ンはかなり強烈。しかし何故にあんなにもトイレのシーンが多いのか?)「斬 新」と肯定するには難しかった。奇をてらっただけの作品とは思いたくないが、 私には作品に潜む真理を読み取れなかったし、何も響いてこなかった。ヨーロッ パ人が「美しい」と表現するアジア的シーンは私には見なれた風景でしかない 分、見る目も辛くなってしまうのかもしれないが。 個性的な作品になればなるほど、外国人には理解出来ない雰囲気があるのはどの 国の映画でも同じである。しかし映画そのものが持つ「普遍性」を信じて評価・ 判断するのであるが、新しい文化に触れればそれだけ、知らない文化を理解しえ る限界も見えてきてしまう。そこが残念でもあるが、だからこそやはり世界はま だまだ広くて興味深いものなのかもしれない。 hana __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____ □ >>☆2☆第27回テルライド映画祭レポート(9月1日〜4日):2☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 前回に続き、テルライド(Telluride)映画祭のレポート。今回は「やっと」入場 出来た貴重な?4本について。 □Forever Mine 1999年/アメリカ/115min/カラー 監督:ポール・シュレーダー 出演:ジョゼフ・ファインズ、グレッチェン・モル 海辺のリゾートでアルバイトをする青年が金持ちの人妻と恋に落ちるが、嫉妬深 い夫が彼を暴行した上無実の罪で刑務所送りにする。出所後実業家として彼女の 夫に近付き復讐を果たそうとするが・・・ 監督が長年温めてきた企画だそうだが、サスペンスとラブストーリーの要素がど ちらも半端になってしまったような作品だった。人妻役のグレッチェン・モルは 可愛くて◯。 □Kippur 2000年/イスラエル/120min/カラー 監督:アモス ・ギタイ 1973年のイスラエルの聖日に起こったシリアによる侵略戦争を描く。休日の途中 この事を知った若い兵士達は、ゴラン高原で他の仲間と合流しようと試みたもの の、部隊は去った後。唯一の医者の指示の下、負傷者の救出に携わるがヘリが爆 撃される。 昨年の東京国際映画祭で『カドッシュ』を見たばかりのギタイ監督の新作。どー も彼の作品には独特の吸引力があって抗えない。しかし、これまでの作品と今回 はかなり様相が異なる。主人公の一人が監督自身の投影という事もあってか、と にかく生々しい。冒頭とラストに出てくる男女のカップルが、自らの肉体をパ レットに様々な色彩を混ぜていく。この時の指の跡が上空から見た戦車のタイヤ 跡にも重なってみえる。美しさと残酷さの溢れる作品だ。 □Crouching Tiger,Hidden Dragon 2000年/アメリカ・台湾・中国/120min/カラー 監督:アン・リー 出演:チョウ・ユンファ、ミッシェル・ヨー、チャン・ツィイー、チャン・チェン 『グリーン・デスティニー』のタイトルで今秋日本公開予定 今年のカンヌでも好評を博した作品。映画祭事務局で「お薦め作品」を尋ねたと ころ、この作品を挙げてくれた。邦題となっているのは、物語の中心となる秘刀 の名前。原題の方が多分に中国的な感じがするが、今迄東西のカルチャーを取り 上げてきたアン・リー作品と一転「いかにも」なスケールの大きい大陸的物語 だ。 数分間にも及ぶ女性同志の闘いのシーンは、チャン・ツィイーらも猛特訓したそ うだが、SFX入りのこういったシーンに観客は大喜び。ヤンヤの拍手喝采だった。 冒険活劇の要素と、老若2組の静と動のラブストーリーが程よくミックスされた 面白い作品。 □Great Expectations:ショートフィルム集 これからを期待される新人監督による作品を特集。心理的、ブラックコメディ、 社会的作品をそれぞれピックアップしてあった。 Boudless 2000年/フランス/ 27min/Dir:Isabell Brou 友人に重要な言付けをしたくてパリに出てきた女性。だが友人は行方不明で、捜 し出す迄の間孤独の中で彼女の経験した事は・・・ The Decadent Visitor 1998年/チェコ/30min/Dir: John Kovac 9歳の少年を取り巻く、刑務所にいる父、アメリカかぶれの男とその愛人である 毋。愛人殺害の片棒を担がせようと、刑務所から少年に指示を与える父。毒殺決 行の日、近所のゴシップお婆さん連中の見たものは・・・ One Day Crossing 2000年/ハンガリー/25min/Dir:Joan Stein 第2次大戦末期、ブタペストに住むユダヤ人一家の下に一人の少年が匿われる。 一家の子供と同年代の少年は、レジスタンスの子供の父が連れてきたのだが・・ 上記のうち2本は野外劇場で見たのだが、どちらもほぼ最終回のスケジュールで 8:30~の上映だった。夜になるとこの辺はめっきり寒くなる。温かい食べ物で腹ご しらえをし、ありったけの服を着込んで見るのだが何しろ地面に座って見るの で、そのうち身体のあちこちが痛くなってくる。用意周到な輩は何とソファまで 持ち込んで、愛犬とともにカウチポテト。 野外とあって樹木が字幕を遮る。ただでさえ英語を読むのが苦手なのに、よく見 えない。漸く見える位置に来ても風が吹けばまた遮られる。しかも折角監督が来 場しても暗くて見えない。・・・と、そんな悪条件の中でのレポートでした。 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____ □ >>☆3☆江原道の力☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 1998/108/ビスタ/韓国 監督:ホン・サンス 出演:パク・チョンハク、オ・ユンホン 女子大生3人組みが江原道を旅行する。その名かの1人、ジスクは不倫を清算し てもまだつらそう。同時期にその不倫相手も男2人組みで江原道へ向かってい た。 冴えない男女それぞれが旅の中で新しい関係をつくったり、遊んだりしていくよ うすが丁寧に描かれる。もちろんそんな2人が偶然再会することはない。 画面から映画の中の1時間、1分が過ぎていくようすが伝わる、独特な雰囲気の ある作品で興味深い。反面、スローテンポで眠くなるような映画だが、なぜか反 対に眠気が吹っ飛んだ。どうせ何も起きないだろうと分かりつつ、何か大きな展 開を期待しながら、それはことごとく裏切られていく。だから面白い。 これに似た雰囲気は、中国映画「沈む街」にもあった。ストーリーや構成はこと なっても、流れる時間の速度が同じ。 何度かセックスのシーンがあるが、超現実的な行動が非常にそそられる。まるで その場をのぞいているようにリアルで、恥ずかしくなってくる。金髪女とマッ チョな男が繰り広げるのと違って、我々に近すぎる。 港町、刺し身、ナイトクラブにロシア女と、日本の温泉地に通じる設定が韓国と 日本の近さを感じさせる。 エンディングで2匹の金魚が1匹になっているのを見つめるシーン、BGMが適切で 余韻がしっかり続く。面白くないけど身近な設定に納得できる、いい映画。 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____ □ >>☆4☆ひかりのまち☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ WONDERLAND ★★☆☆☆ 1999/イギリス/109分/スコープ 監督:マイケル・ウィンターボトム 出演:ジナ・マッキー、シャーリー・ヘンダースン、モリー・パーカー 99年イギリス・インディペンデント・フィルム・アウォード最優秀英国映画賞 原題がエンディングにもたらす感動を、邦題が少しだけ消し去った。「ワンダー ランド」なんて使いふるされた言葉も、ウィンターボトムの映画にはちょうどは まっているのにね。はずかしがらずに原題をカタカナ表記した方がよかった。 だから、これから映画を見る人は、これは、「ワンダーランド」という題名だっ て思うようにしましょう。きっとエンディングの感動がちょびっと変わります。 主演女優・ジナの演技が売り。しかし彼女の演技も癖があるね。鼻つまりのよう な声色、ごつい風貌、大きな身振り、私は嫌いです。 ロンドンという都会の中で起こる、今を生きる人たちの情景を見せる映画だか ら、展開は全く大袈裟ではない。本当にありそうなことばかり起こる。観光誘致 の映画ではないから間違えないように、小汚い都会が映るだけです。 演技を期待していくと、そこに意識が集中してしまう為にどうしても評価が厳し くなってしまう。映像がすごいと言われれば映像に集中するからどちらかと言え ば演技を見そこねてしまう。常に全体を眺めて映画を見ると細部の詰めが甘くな るから自身をもって評価しにくくなる。あまり細部に集中しすぎると映画を楽し めなくなる。仕事ではないから、やっぱし「楽しみたい」が1番の目的だ。 残念なのは早回しの映像。まったく意図を理解できません。単に変わったことを しているってだけで、意味のない演出。いつもウィンターボトムが好んで使う が、必要なし。 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____ □ >>☆5☆サイの角のように一人で行け☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ★★★☆☆ 1995/105分/韓国 監督:オ・ビョンチョル 出演:カン・スヨン、シム・ヘジン キネカ大森韓国映画特選(この日は無料Day) 学生時代からの仲良し女3人組み。学生から大人になり、結婚し、子供を産み、 30歳がすぎ、夫婦の危機を向かえる。3人それぞれの性格や生活が微妙に異なる 結果を導きだすのだが、その中には共通の悲しみや辛さが存在している。そし て、ついに1人が自殺をしてしまう。 死を向かえることに対する感傷よりも、生きて行くことの苦しさを感じる映画。 韓国版「オール・アバウト・マイ・マザー」と言えばぴんとくるか。台詞や職 業、演技や音楽までも日本のTVドラマと大差がないが、各々の問題の細部をさ らりと説明するあたりはうまい。死ぬ以外では、何があってもひたすら生きてい くしか方法がない現実に呆然としてしまう。 女性の方へ、男性がばかりが悪いということでもない点は見過ごさないでくださ いよ。不倫相手の女性は皆、くせものです。 立野 浩超 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____ □ ┏━┓ I N F O R M A T I O N ┃i┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇◇星(★)の意味___________________________◇ ◇ このメールマガジンで表示されている星は5つが最高で、1つが最低です。 ◇◇メールアドレス変更・解除______________________◇ ◇ このメールマガジンの購読解除は、ご登録された発行元のホームページより出 来ます。こちらでの作業は一切しておりません。 まぐまぐ (http://rap.tegami.com/mag2/m/0000007585.htm) マッキー! 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QT MAI 吉田 浩二 ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇ 映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・ 論評するメールマガジンです。 Copyrights(C), 1998-2000 ScreenKiss 掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼ ┼