ScreenKiss Vol.176

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Vol.176

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>☆ C O N T E N T S ☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆<   □カノン   □シベリアの理髪師   □チューブ・テイルズ   □クレイドル・ウィル・ロック   □アルメイダ劇場公演『コリオレイナス』『リチャード二世』 >☆−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−☆S_c_r_e_e_n_K_i_s_s☆< >>☆1☆カノン☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     Seul Contre Tous     1998年/フランス/93min/カラー/シネマスコープ     監督・脚本・製作・撮影・編集:ギャスパー ・ノエ     出演:フィリップ ・ナオン、ブランダン・ルノワール     カンヌ国際映画祭・批評家週間賞     http://canon-jp.com     9月30日よりシネマライズにて公開  監督のデビュー作『カルネ』の続編的作品。50歳になった男は冒頭で足早にこれ  迄の人生をフラッシュバックする。自分の生い立ち、口のきけない娘の母親との  出会い・・・今は失業し成りゆきで、ある女性の実家に居候している。馬肉売り  に戻りたい彼だが職はない。ふとした事でピストルを手にした彼は、再びパリに  戻る。娘の毋が彼女を身籠った安ホテルへ。そして今は施設にいる娘を連れ出し  た彼は・・。  “全てのモラルに挑んだ”ソシオパス的な主人公の男の頭の中の言葉と、時々鳴  り響く爆発音。そして時折見せる彼の挑むような眼差し・・。クライマックスに  さしかかって画面に大書される「ATTENTION!・・劇場を出るなら30秒以内で」の  文字。すかさずカウントダウンが表示されると、気の弱い私は本気で退場したく  なった。が、それを何とか止めたのは上映前に登壇した監督の挨拶だった。  スキンヘッドにくりくりした目、小柄なノエ監督は、雑誌『CUT』の表紙撮影の為  に来日したという。その仕事の合間を縫って舞台挨拶に現れた彼は、流暢な英語  でこう述べたのだ。「この映画で新しいものを確立する気は有りません。でもや  りたかった事は全てこの作品に反映させました。怖がったり笑ったりしてくださ  い。でも怖かったら“これは映画なんだ”と思ってください。」  そう、これは映画・・とても正直な映画。主人公の独白はかなり過激で自己中心  的なものだが、誰もが1度は感じたであろう本音が含まれている。曰く「生きる  ことは利己的行為。生き残る事は本能の定め」。「愛も友情も損得勘定」。  彼の金持ちや社会への憎悪は、彼自身の問題を棚上げしての言い分でもあるけれ  どフランスの抱える闇の部分をこれ程までに客観的に表現出来たのは、アルゼン  チンで生まれ、両親の政治亡命の為にフランスに移住したという監督自身の経験  によるものかもしれない。  ざらざらした画面。怒りしかみせない主人公(鼻が何となくJ・ギャバンを彷佛と  させる面構えだが、きっと笑うとベビーフェイスなんだろうな)、諦めの表情を  した娘、シンシア。この父娘の近親相姦的感情の高まりに流れる、一抹の清涼剤  のような「カノン」。邦題に拍手だ。(ちなみに原題は「みんなは僕の敵/たっ  た一人で」)                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆2☆シベリアの理髪師☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     The Barber of Siberia     1999年/フランス・ロシア・イタリア・チェコ/162min/     監督・脚本・出演:ニキータ ・ミハルコフ     出演:ジュリア ・オーモンド、オレグ・メンシコフ、        リチャード・ハリス  1905年、アメリカ。陸軍士官学校の息子宛に彼の誕生をも含む、自分の過去につ  いて手紙を綴っている。時は1895年。モスクワに向かう列車の中で、士官候補生  のアンドレイ・トルストイと出会ったアメリカ人のジェーン。彼女は発明家、マ  クラケンの「シベリアの理髪師」開発の援助金を大公に頼む為やってきたのだ。  トルストイの忘れた写真を返却する、という名目で大公に口利きが可能な将軍に  近付く。やがてトルストイのジェーンへの一途な思いは、誤解の下将軍を傷つ  け、罪名の摺り替えと共にシベリア送りとなる。やがて10年が過ぎ・・・。  タイトルの通りモーツァルトへのオマージュが物語の根幹に流れている。士官へ  たてついてまでモーツァルトを尊敬してやまないジェーンの息子。「フィガロの  結婚」で唯一フィガロを演じられるトルストイ。時にコミカルに時にシリアス  に、モーツァルトの音楽が巧みに取り入れられている。  帝政ロシアと言えば『オネーギンの恋』や『アンナ・カレーニナ』など一見華や  かな貴族社会のイメージが多い。だが、『フィクサー』などでは、一方でユダヤ  人狩りにより民衆の不満の鉾先をはずさせるなどの政策も行われていたのが判  る。ツァーの存在に微塵の疑いも持たない士官学校の生徒達。その純粋さがその  後の歴史を既に知っている観客としては、妙に辛く感じる。  巨大伐採機「シベリアの理髪師」開発の事しか頭にないマクラケンのドンキホー  テのような役所は、文明の名のもとに自然破壊を進める(しかもよその国で)ど  こかの国の風刺のようだ。妻の感情にも無頓着な彼の存在は、その後のロシアの  ありようのようで可笑しい。  それにしてもトルストイ役のオレグ・メンシコフは、本当にカメレオン役者だ。  やはりミハルコフの『太陽に灼かれて』で初めて見てから、その存在感が忘れら  れない。『コーカサスの虜』では年長の捕虜を、昨年の東京国際映画祭で上映し  た『ママ』ではある事件で精神に異常をきたした次男を、ある時はふてぶてし  く、ある時は可愛らしく?演じてその度になりきっている。  かのジェラール・フィリップが『肉体の悪魔』で高校生を演じて話題となった  が、今回のメンシコフは実年齢の半分の年を、本当に若々しくチャーミングに演  じている。対するジュリア・オーモンドもこれまでは、どこか冴えない感じも  あったが、この作品では脆さを内包しつつ、それに自身気付かないまま一見勝ち  気で世間慣れした「ような」女性を演じて、とてもはまっている。  そのスケールの大きさ故か、メリハリの利いた演出にあっという間の2時間42分  だ。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆3☆チューブ・テイルズ☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     Cinemabound Underground     1999年/イギリス/89min/カラー/ヴィスタサイズ     作品&監督:     ミスター・クール(エイミー・ジェンキンズ)、     ホーニー(スティーヴン・ホプキンス)、     グラスホッパー(メンハジ・フーダ)、     パパは嘘つき(ボブ・ホスキンス)、ボーン(ユアン・マクレガー)、     マウス(アーマンド・イアヌッチ)、手の中の小鳥(ジュード・ロウ)、     ローズバッド(ギャビー・デラル)、     スティール・アウェイ(チャールズ・マクドゥガル)     出演:ケリー ・マクドナルド、デニス・ヴァン・オーテン、     スティーヴン・ダコスタ、レイ・ウィンストン、ケイ・カラーム、     ダニエラ・ナーディニ、アラン・ミラー、レイチェル・ワイズ、     ハンス・マシソン     www.tubetales. com  ロンドンの週刊誌『タイム・アウト』で募集したストーリーから9人のクリエイ  ター達が好きな作品を選んで映画化。ナンパに失敗した男は回送に乗り、ナイス  バディを見せつけられたおじさんは抑えの利かない身体を隠して下車。無賃乗車  の摘発をてっきりサツと思って致死量の麻薬を飲み込んだ青年、楽しいパパとの  面会日に思わぬ事故を目撃した少年等・・地下鉄に因んだオムニバス。  『ジャンヌと素敵な男の子』ではジャンヌがオリヴィエと運命的な出会いをし、  『スライディング・ドア』では扉の開閉でヘレンの運命が分かれ・・・今迄も地  下鉄を舞台に色々な作品が描かれているが、考えてみればひとつの車両に偶然時  空を共にしてしまっただけの人々が乗り合わせている事自体、奇跡みたいなもの  だ。  あたかも電車を乗り換えるの様に淀みなく各編が進行する。その為タイトルクレ  ジットの出し方もお洒落だ。回転ドアに入る人のジャケットの上であったり、札  束の上であったり。短いエピソードにちょこっと顔を出している「あの」俳優探  しと共に、タイトルを探すのもクイズのようで面白い。  どの作品も洒落ているが、敢えて一つ選ぶとすれば私のお気に入りは『手の中の  小鳥』。乗客の頭にくっついていた小鳥が驚いた客にはね飛ばされて気絶する。  「次の駅で乗り込んだ客に潰されるさ」という声もある中、一人の寂しそうな老  人が拾い上げ、一生懸命地上に出ると小鳥を大空に帰してやる・・ただそれだけ  のストーリーだ。たくさんの乗客の中の孤独、そして心の自由の象徴のような小  鳥。ちなみに監督はジュード・ロウ。  パンフレットにはロンドンの地下鉄マップものっていて、実際乗った事のある人  もそうでない人もそれなりに楽しめます。                                 鳥野 韻子 __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆4☆クレイドル・ウィル・ロック☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     Cradle will rock     ★★★★     1999年/アメリカ/134分/シネスコ     監督:ティム・ロビンス     撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ     出演:エミリー・ワトソン、スーザン・サランドン、        ジョン・タトゥーロ  アメリカ大恐慌時代のニューヨークを舞台に、「クレイドル・ウィル・ロック」  の上演を目指す人々を中心に展開される群像劇。  とにかくラストの演劇シーンは素晴らしい!それまでに向かう過程も、それぞれ  の人物を過不足なくコンパクトに描き、暗い時代背景も絡めつつ、ユーモアを交  えながら展開していく。そして映像に関しては、出だしから長回しの映像で始ま  るのを筆頭として流れを切らずに人物の動きや雰囲気を捕らえた、刺激的で計算  されている、そして印象に残る、素晴らしい撮影です。  レベルの高さを感じさせる作品で、まさにザッツ・エンターテイメント!観る際  にはこの1930年代の時代背景をある程度、頭に入れておくといいかも。パンフ  レットがまたユーモラス。                                  ユタカ __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ >>☆5☆アルメイダ劇場公演『コリオレイナス』『リチャード二世』☆<< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛     公演日:10月11日(水)〜29日(日)全23回     会場 :赤坂ACT シアター     詳細 :http://www.horipro.co.jp/  ロンドンの演劇界でホットな話題を集めるアルメイダ劇場が、この秋日本に初上  陸する。演目はシェイクスピアの『コリオレイナス』と『リチャード二世』。エ  リート戦士にして超マザコンの『コリオレイナス』と英国王室史上最もハンサム  だが無能だった『リチャード二世』・・この一見相反するような2作品が同時  に、しかも同一の出演者で見られる。  演出はサム・メンデス(『アメリカン・ビューティ』)と肩を並べる若手のジョ  ナサン・ケント。その特異な舞台作りも話題だ。主演は彼とは以前にも『ハム  レット』『イワーノフ』でコンビを組んだレイフ・ファインズ。そして2作品共  にレイフを死に至らしめる役柄として、ライナス・ローチ。  共に舞台に原点を持つ二人だが(ライナス・ローチも嘗て『リチャード二世』の  舞台では絶賛されている)、特にシェイクスピアフリーク?のレイフの力の入れ  ようは相当らしい。映画とはひと味違う魅力を発見出来るに違いない。(丁度こ  の時期『ことの終わり』も公開される) __________________________________________________S_c_r_e_e_n_K_i_s_s_____                                     □ ┏━┓                       I N F O R M A T I O N ┃i┃登録・解除・お問い合わせなどについて ┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 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QT MAI               吉田 浩二 ◇◇ScreenKissについて_________________________◇ ◇   映画に関して、「人物」「作品」「映画祭」「制作」と言った観点から紹介・   論評するメールマガジンです。   Copyrights(C), 1998-2000 ScreenKiss  掲載された記事はいかなる形式であれ許可なく転載は禁じられています。 ┼                                   ┼

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