監督に注目!ベルトラン・タヴェルニエ

◇ベルトラン・タヴェルニエ/Bertrand tavernier上映作品 「今日からスタート」

1941年、リヨン出身。ワーナー・ブラザースで広報を担当していたという経歴をもつ。63年に「キス!キス!キッス!」を撮っているが、正式デビューと言えるのはやはり84年の「田舎の日曜日」だろう。寡作(全7作)で佳作、比較的地味ながら、1作ごとに目新しさを盛り込むことも忘れない。その辺に広報のキャリアが生きてるってことか。

おすすめ作品1.田舎の日曜日(84) ルイ・デュクリュー/サビーヌ・アゼマ/ビデオ=廃版老いた画家と、その田舎家に集まって来る子供や孫のある日曜日の風景。昼間は楽しくても夕方には引き潮のように賑やかさが家から去り、後には老人の孤独が残る。印象派の絵を彷彿させる映像が美しい

2.ラウンド・ミッドナイト(86) デクスター・ゴードン/フランソワ・クリューゼ/フィリップ・ノワレ/ビデオ=WHV天才サックス奏者デイルと、彼に魅せられ彼のために生きようとする男フランソワの物語。ジャズの世界のけだるさをさらりと描いており、音楽も映像も心地いい。フランソワ役のクリューゼがダスティン・ホフマンに似てて、健気さが哀れを誘う

3.愛を求めて 素顔の貴婦人(89) フィリップ・ノワレ/サビーヌ・アゼマ/ビデオ=廃版時は第一次大戦後。行方不明の夫を探しに来た貴婦人にノワレ扮する少佐が心惹かれるが、思いをうまく伝えられず。実は彼女も彼に惹かれていて、さらに夫には秘密があってと、ひねりを利かせた大人の恋愛物。ノワレは武骨な軍人よりトロいやもめって感じでイマイチ冴えない

4.ダディ・ノスタルジー(90) ダーク・ボガード/ジェーン・バーキン/ビデオ=廃版南仏を舞台に、娘と余命いくばくもない父親とが恋人のように仲むつまじく過ごす楽しい日々。これ見てつくづく思ったが、タヴェルニエって絵になる風景を選ぶセンスがバツグンにいい。サントラのジャズもなかなかですよ

監督に注目!ジャック・ドワイヨン

第7回横浜フランス映画祭にむけてご紹介するフランス映画監督シリーズその2はドワイヨンとタヴェルニエです。タイプは違うがどちらもフランス映画らしい作品を撮る監督ですね。

◇ジャック・ドワイヨン/Jacques Doillon上映作品 「少年たち」

1944年パリ出身。ドラマ的であるよりは、日常のシーンを切り取ったかのドキュメントっぽいシチュエーションの中で人間の悲劇性や心理、哲学的テーマを浮き彫りにしていくのが特色。初期の作品は観念的でけっこう独りよがり的だが、最近は俄然円熟してきた。余談ながら、現在の私生活でのパートナーはジェーン・バーキン。

おすすめ作品1.ラ・ピラート(84) ジェーン・バーキン/マリューシカ・デートメルス/フィリップ・レオタール/ビデオ=無筆者は未見。しかしドワイヨンといえば必ず挙げられる作品で、ぜひ見たい。アルマという女性を軸とした、男女入り組んでの複雑な人間関係とか。まさにフランス映画的

2.家族生活(85) サミー・フレイ/ジュリエット・ビノシュ/マロ・ゴイエ/ビデオ=廃版父親と10代の娘の一風変った自動車旅行。互いに嫌ったりすねたりしつつも結局互いの愛を求めあう。家族って何だろうという問いへの一つの答えか。このときのビノシュからはよもや国際女優になるとは予想もつかなかった

3.女の復讐(89) イザベル・ユペール/ベアトリス・ダル/ビデオ=廃版交通事故死した男の妻と愛人の女の戦い。妻が圧倒的に陰湿で強く、愛人を追いつめていく。「女は怖い」を実感させられる映画。底意地の悪さ、女の残忍さを演じたら天下一品のユペールがハマリ役だ。原作はドストエフスキーの『永遠の夫』

4.15歳、無秩序な妖精(89) ジュディット・ゴドレーシュ/ジャック・ドワイヨン/メルヴィン・プポー/ビデオ=廃版15歳の少女、ボーイフレンド、その父親の危うい関係。父親役ドワイヨンがボブ・ディランをしょぼくれさせたオッサン風で、少女への言い寄り方もヘンタイなオッサンしてる

5.ピストルと少年(90) リシャール・アンコニナ/ジェラルド・トマサン/クロチルド・クロー/ビデオ=廃版愛情に飢えた少年が生き別れの姉に会うため暴挙に出る。酔いどれの母親の無責任を責めたくなるぐらい、彼の純情さ、胸の痛みが伝わってくる作品

6.ポネット(96) ヴィクトワール・ティヴィソル/デルフィーヌ・シルツ/マリー・トランティニャンャン/ビデオ=日活母親が交通事故死したのだが、幼いポネットには死というものが分からない。で、彼女は素朴に、しかし非常に真剣に考える、死とは何かと。ポネットが本当に可愛いし、演技とは思えないほど真に迫っている。ドワイヨンの監督としての力量もスゴイ

監督に注目!クロード・ルルーシュ

第7回横浜フランス映画祭もいよいよ開幕間近です。今年もコメディあり、ラブストーリーありサスペンス物あり。上映作品がバラエティに富んでいて、「フランス映画の今」を知ることができるのが嬉しいですね。

ところで、映画を見るなら予備知識があるとさらに楽しめるのではないでしょうか。そこで今回上映予定の作品の中でもベテランを中心に、何人か監督のプロフィールなどご紹介していきます。

◇クロード・ルルーシュ/Claude Lelouch上映作品 「幸運と必然」(仮題)

映画祭のオープニング上映作品で、指定席はすでに売り切れという超人気。実は彼、今年のフランス代表団の団長なのである。男性の団長は初めてらしいが、中年以上の日本人には知名度が高い監督だから、団長に選ばれなかった方が不思議なくらいだ(もっとも団長=女性だったから仕方ないか)。

1937年パリ出身。66年に発表した「男と女」でカンヌ映画祭グランプリを獲得し、68年に第10回冬季オリンピックのドキュメント「白い恋人たち」で世界的名声を得る。どちらもフランシス・レイによる映画音楽が有名。後者はスキー場などで一度は聞いたことがあるのでは?

その後幾つかの佳作を撮ったが81年の「愛と哀しみのボレロ」で再び脚光を浴び、今やフランスの大御所的存在である。

ルルーシュの作品はセリフが少なく音楽と叙情的な映像で綴ったものが多い。また「愛と哀しみのボレロ」以降は「遠い日の家族」にしろ「レ・ミゼラブル」にしろ、戦争、歴史とその中で生きた庶民たちに目を向けており、その眼差しは客観的だが暖かい。

おすすめ作品1.男と女(66) アヌーク・エーメ/ジャン・ルイ・トランティニャン/ビデオ=WHVシャバダ、シャバダバダ、シャバダバダ、というサントラでお馴染み。妻を失ったレーサーと夫を亡くした女の大人の恋物語

2.白い恋人たち(68) ドキュメント/ビデオ=無フランス・グルノーブルでの第10回と冬季オリンピックの模様をドキュメントした作品。競技をリアルに追うのではなく、ロマンティックな音楽をバックにした映像詩

3.恋人たちのメロディー(71) カトリーヌ・アルグレ/シャルル・ジェラール/ビデオ=無筆者はレンタル・ビデオで見たんだけど。3人の労働者の友情話。詩的でしかもドキュメントタッチ

4.愛と哀しみのボレロ(81) ジョルジュ・ドン/ジェラルディン・チャップリン/ダニエル・オルブリフスキ/ビデオ=廃版第二次大戦前後の世界4都市の営みを、ヌレエフやカラヤンなどをモデルに描いた一大叙事詩。モーリス・ベジャール振り付けでジョルジュ・ドンが踊る「ボレロ」はあまりに有名

5.恋に生きた女ピアフ(83) エヴリーヌ・ビックス/ジャン・クロード・ブリアリ/ジャック・ビルレ/ビデオ=廃版エディット・ピアフとボクサー、マルセル・セルダンの悲恋物。といってもわりと淡々としてます

6.遠い日の家族(85) エヴリーヌ・ビックス/アニー・ジラルド/ジャン・ルイ・トランティニャン/ビデオ=廃版第二次大戦中のユダヤ人一家の過酷な運命を描いた作品。映像が詩的、音楽が叙情的な分、悲惨さが身にしみる

7.ライオンと呼ばれた男(88) ジャン・ポール・ベルモンド/リシャール・アンコニナ/ビデオ=廃版裸一貫で生き成功お収めた男が新しい人生を求めて大西洋横断を企てるが、人生を捨て切れず。ベルモンドが俳優としての新境地を開拓。シブいです

8.レ・ミゼラブル 輝く光の中で(95) ジャン・ポール・ベルモンド/アニー・ジラルド/ミシェル・ブジュナー/ビデオ=WHV『レ・ミゼラブル』を現代化。第二次大戦を絡めて描く。ここでもベルモンドが裸一貫でかつ実直な男を好演

シネマノート

今回は29日の公開が近い「RONIN」とその試写を行った“第37回優秀外国映画輸入配給賞”について報告。この受賞式は去る4月22日(木)日比谷の東商ホールにて行われた。

1)第37回優秀外国映画輸入配給賞とは

平成10年4月1日から平成11年3月31日までの一年間に、作品的に優秀で、かつ新分野を開拓し、日本映画の発展に大きく寄与すると認められた外国映画を日本に輸入公開した配給会社を表彰する会。

審査員は社団法人え外国映画輸入配給協会により選出された10名。今年は昨年までの淀川長治氏に代わって品田雄吉氏が審査委員長を務め、東宝東和、フランス映画社、KUZUIエンタープライズ等65社も輸入作品を検討の上選出した。

結果は以下の通り

通商産業大臣賞 ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ・ファー・イースト「ディープ・インパクト」「プライベート・ライアン」「トゥルーマン・ショー」等

受賞者コメント:武者 滋 会長1993年の「ジュラシック・パーク」以来の受賞で嬉しい

特別賞日本ヘラルド「L.A.コンフィデンシャル」「セントラル・ステーション」等、興業的好成績

受賞者コメント:坂上 常務今回“特別賞”を受賞出来たので、来年は通産大臣賞を狙いたい

ブエナ・ビスタ・ジャパン「アルマゲドン」の驚異的ヒット

受賞者コメント:中島 常務「アルマゲドン」は公開18週間で872万人の動員があった

奨励賞ザナ・ドゥー「踊るマハラジャ」 シネマライズで23週間の続映という長期興業

受賞者コメント:市川 篤史 社長この作品の発見者、エドキジュンさん、配給に尽力したJCA、PRの日本TV、そして夏という大事な時期に上映を受けてくれたシネマライズ、各氏に感謝

*今迄こんな受賞式が行われている事も知らなかった私は、観客の中に結構常連さんがいたのにまず、吃驚した。何となく受賞の常連らしい、恰幅のいい、大手の配給会社代表に混じって「踊るマハラジャ」の社長は若く、とても謙虚で好感が持てた。今後も、小規模でも大ヒットを狙っていい映画を配給してほしいものだと思う。

2)特別試写会「RONIN」ジョン・フランケンハイマー監督 122分

物語パリ。あるバーに集った互いに素性を知らない、各国の秘密工作のプロ。そして、クライアントとのコンタクトをとる唯一の女性とコーディネーター。彼等の任務は厳重な警備を突破しての、ある、スーツケースの略奪。漸く得たスーツケースを巡り、今度はその奪い合いが続く。裏切りと破壊。最後に目的を達成出来るのは一体誰か・・。

*タイトルからは、どうしても、オーストラリアで映画を見た時「Ronin film」だかいう配給会社のイントロがおかしくて、映画館で大笑いして顰蹙をかったのを思い出してしまう。しかし、「フレンチコネクション2」や「終身犯」等で良質なアクションや人間心理を見せてくれたフランケンハイマー監督と、観客動員に欠かせないデ・ニーロとレノ。やはり期待した。

確かに日本文化に造詣が深いといわれる監督だけあって、「RONIN」の説明も正しいし、それを冷戦時代に活躍した秘密工作員達に置き換えたところなどは面白い。途中それを象徴するかのように、御丁寧にも四十七士の話まで盛り込んでいる。

この変の、欧米系の好きな「禅」的静の部分と、かなりの部分を当てているカーチェイスや爆発シーンとの対照もダイナミックだ。舞台を色々に移しながらも、互いを信用出来ない密室殺人的要素。その中でも芽生える友情と恋愛。

これだけの要素がありながら、何となく見終わってふと、虚しくなってしまうのは、要するにあまりに詰め込み過ぎて、全体がぼやけてしまった印象なのだ。

お利口だったのは、観客にも登場人物達にも最後まで、命を賭けたスーツケースの中身を明らかにしなかった事だ。ここで、実はただの金だったり、情報を満載したチップだったり、を見せてしまうと見る側が知らないうちに自分なりに理由づけしてしまう。これを避ける事で、より、人間関係や彼等の心境を浮かび上がらせることには成功していると思う。

冒頭で“浪人”の解説をしてくれるのだが、日本人の我々でさえ、本来の意味は死語と化している時代。果たして監督の意図をあちらの方々はどのくらい理解したのだろうか。

女性の出番の少ないこの作品。2人の対照的な女性を配しているのも面白い。一人はこのところ、「ダロウェイ夫人」や「トゥルーマンショー」でも自己主張のはっきりした役処の多いナターシャ・マケルホーン。ここでもクライアントとの連絡係のタフな女性を演じている。

もうひとりの意外な女性は、嘗てオリンピックで、その華麗な演技で旋風を巻き起こしたカタリーナ・ビット。ラストの方で花を添えている。

それにしても、こんな工作員の方々って実際活躍してるんでしょうか。こんなに壊しまくったら、世界のトップニュースになってしまうよね。

鳥野 韻子

「ヒューゴ・プール(96米)」

6「ヒューゴ・プール(96米)」東映ビデオ

オープニングの良さに惹かれてついご紹介

映画には、ほんのワンシーンとか、たった一言のセリフとか、そんな些細な何かがとても気に入ったために好きになる作品もあるんじゃないだろうか。こんな言い訳めいた前振りをしたのも、察しのよい方ならもうお分かりですね。そう、今日ご紹介する『ヒューゴ・プール』がその類なんでありマス。

この映画、悪くないけど出来がよいとはいいがたい。でも、オープニングがとびきりいい。青みがかった夜明けのロスアンゼルスの静かな町並みに、そっと入り込んでくるセロニアス・モンクのジャズ・ピアノ。朝が始まりつつあるとはいえまだ家々はブルーのもやの中でひっそり眠っている。そんな風景にモンクのちょっと外し加減のソロがほんとよく似合っているのだ。

選曲がうまい。うますぎる。もしやこの監督、すごい才能の持ち主なのではないか。などど考えていると、ゆっくりテロップが出はじめる。このフォントがジャズエイジの時代のポスターなぞを彷彿させるデザインでなかなかよい。むむ、もしやどころかほんとにデキる監督だったりして……。しかしこれは早とちりだった。残念ながら本編には、このオープニングほど才気はひらめかなかったみたいだ。

ヒューゴ・プールとはアレッサ・ミラノ扮するヒューゴが一人で経営するプール清掃会社。ある朝ラジオから、ロス市は水不足のためプールへの給水には罰金を科すとのお知らせが流れると、途端にプール掃除の依頼が殺到する。

そこで糖尿病のヒューゴは起き抜けにインシュリン注射を済ませ、さっそく仕事に取り掛かる。まずヤク中の父親を訪ねて叩き起こし、プールの水を盗まれてしまった依頼主のために給水トラックでコロラド川へ水を「仕入れ」に行くよう指示。次は競馬狂で借金山ほどの母親の元へ行き、借金の肩代わりをしてやる条件で手伝いを承諾させる。

こうして父は川へ水汲みに、母子はお仕事しに依頼主のプールへ。それにしてもプールの水を盗まれるとか1日で回り切れないほど依頼を頼まれるなんて話が成り立つのは、自家用プールの多いロスならでは。日本じゃ考えられないですな。

そんな一軒でヒューゴはALS(筋萎縮性側索硬化症)の青年と出会う。キーボードを打つと音声の出るノートパソコンでユーモアたっぷりの会話ができる彼は、ヒューゴ母子と親しくなり、二人の乗るピックアップの荷台に車椅子ごと同乗。プール清掃巡りや競馬観戦まで体験する。楽しい1日を分かち合ったヒューゴと青年は翌日結ばれる。が、青年は短い命を閉じる――。

大まかにはこんなストーリーだが、起承転結ありのドラマティックなハリウッド的映画ではない。父親と自閉症気味のヒッチハイカー(ショーン・ペン)との心暖まる副ストーリーの他は、ささやかなエピソードの積み重ね。それも水彩画のようにさらりと描かれる。映画というより1人称で語るミニマル系アメリカ現代小説の趣だ。

しかし哀しいかな、監督の才能不足で水彩画が滲んでしまった。弱い者が互いに癒し癒されていく、というストーリーは有りがちとはいえいい素材。これを爽やかに描きたくて水彩画的な映像を選んだ気持ちもよく分かる。ところがその手法がうまく生かされていない。心象風景の描き方がヘタ、というか映像で登場人物の内面を表現するまでには至っていないのだ。

そのせいで、薄味でさえあれば上品だと勘違いした懐石料理を食べさせられている気分になる。つまりダシが効いていないってワケ。監督はオープニングに力を入れすぎて後が続かなかったのかしらん?(まあ、作業手順を考えればオープニングの制作は本編の編集より後でしょうけど)

とは言え登場人物たちの醸しだす優しさには不思議な魅力がある。糖尿病のヒューゴ、ヤク中の父親、競馬狂の母親、筋萎縮の青年、自閉症のヒッチハイカー、そして頭のネジがゆるんでいるような依頼主たち――皆、心身のどちらかまたは両方に弱さやハンディキャップをもっている。でも優しさももっている。

そういう、弱いけれども心根の優しい人たちがある日偶然に出会って、ほんのひととき心触れ合い、お互いに癒される。それがとても自然で普通だ。なぜか。彼らは自分が弱いゆえに相手の弱さも理解できるから。相手の痛みを感じることができるからだ。

主人公の糖尿病という設定もおもしろい。ALS の青年と心を通わせやすいキャラクターとして使ったのだろうけど、登場人物をステレオタイプではなく造形しているのには好感が持てる。この映画みたいに、いろいろな病気持ちや怪我人がごく普通のキャラクターとして映画にどんどん登場するようになれば、弱者に対する人々の認識も多少は変るんじゃないだろうか。

監督がもうちょっとがんばってくれたら佳作になりえたのに、かえすがえすももったいない作品。ちなみに監督は、この作品にラリパッパな依頼主役で登場するロバート・ダウニー・Jr.の父君ロバート・ダウニーで、若くして ALS で亡くなった妻へのオマージュ的作品であるらしい。

quittan

フランス映画祭2007

 横浜で1993年に始まったフランス映画祭は来年で15年を迎えることになりまし
 た。今年は横浜からいきなり東京・大阪に移転したことにより、今後の開催も
 危ぶまれましたが、来年も同様に3月に開催されることが決定しました。

 今年は横浜でも開催される予定ですが正確な日付がまだ決まっていません。更
 に会場はみなとみらいではなくTOHOシネマズ ららぽーと横浜になる予定
 です。また、大阪は高槻だけではなくTOHOシネマズ なんばも加わるそう
 です。

 上映される作品は全て日本初上映で18作品を予定されています。

【東京・横浜】
 六本木 3/15(木)~18(日)TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
 お台場 3/17(土)~18(日)シネマメディアージュ
 横浜  3月予定 TOHOシネマズ ららぽーと横浜

【大阪】
 難波 3/18(日)~20(火) TOHOシネマズ なんば

フランス映画紹介1

嘘つきな彼女
来日した監督、主演、制作全員が「巡り会ったのが運のつき」のメンバーの性か
何となく和やかな雰囲気の人たちだった。

マリー・トランティニヤン(女優)
思ったより小柄で可愛い感じの人。
作品では虚言症で、周囲に迷惑をかけまくるのになぜか憎めない役だが、「メラ
ンコリー」といい、この作品といい割にこの手の役がはまり役。本当は解ってい
るのだろうけれど英語を使ってくれなかった。

肉体の学校
三島の原作に監督がイザベラ・ユペールをはめて作品化したという。

ブノワ・ジャコ(監督)
実は彼の作品をあまり見ていないので対して話が出来なかった。
思ったより目立たない人というイメージ。

イザベル・ユペール(女優)
映画祭の団長として来日した時は結構気分屋との噂も耳にしたが落ち着いた美人、
この作品のヒロインのイメージにぴったりだった。
本当は脆いのに強そうなイメージ。を演じる事が多い気がする。

ヴァンサン・マルティネス(男優)
兄のオリヴィエよりやんちゃなイメージ。気取りがなくて人当たりが良い作品で
はなんだかひょろひょろしたイメージばかりが。

ヴァンサン・ランドン(男優)
最近は去年の「フレッド」や今年の「パパラッチ」のようなちょっぴりうらぶら
れて、人生に疲れた役が多かったが、この作品では心優しいがしたたかなゲイの
役。結構それなりに美しくなったので驚愕した。
サイン会やボードパーティーでは普通なのに大勢を前にしての舞台挨拶ではチッ
ク症気味になってしまうのはかなりシャイな性格と見た。巧い役者だ。

短編映画
一度に数人が舞台挨拶をしたので識別が出来なくなりました。
ベネックス作品が目玉とはいえそれぞれ赴きがあってよかった。

ジャン・ジャック・ベネックス(監督)
一昨年、日本橋三越の「ベネックス祭」で来日した祭は朝の8:30から地下鉄構内
間で人が並んでいたというのでなかなかガードが固いかと思っていたが本人がと
ても気さくな人柄で、ファンには気楽に答えていた。
原点に戻るという芋込めてドキュメンタリーを撮ったという。
今回一番人気の監督。次回は<>か。

たれ込み屋
正当はフィルムノワールを期待していたらちょっと盛りだくさん過ぎた気がした。
俳優も個性派ぞろいなのにちょっと生かしきれなかった感がある。

アラン・コルノー(監督)
最近は「インド夜想曲」系アート作品のイメージが強いが嘗てはこの作品のよう
なノワールものが得意だったので監督本人にも意味なくハードなイメージを抱い
ていたが、なかなかお茶目。母はモンタンが目当てで「メナース」を見たのだけ
れど、母があの作品を好きだと言ったら「お母さんによろしく」とカメラにポー
ズしてくれた。

映画評論家 坂田洋子

フランス映画祭の中の逸品「変人たちの晩餐会」

 一昨年の「ルコントの大喝采」。昨年の「家族の気分」。
 年間を通して日本にくる外国映画のなかで、コメディーはもちろん多いし、いく
 つかはそこそこ笑える。ただその中でも心底笑える映画となれば、これは2、3
 本と少ないもんだが、その中の1本が最近はフランスから来ているようだ。しか
 もその1本が毎年フランス映画祭で見られる。選考の良さからか、フランスコメ
 ディー映画のレベルが高いのか?

 まったく笑いのセンスが違うような(はっきり言えばくだらない)多くのフラン
 ス映画を見るにつけ、フランスコメディーのレベルが特に高い訳ではないと感じ
 るから、まずは映画祭の選考にかかわる方々に感謝すべきだろう。

 今年の第6回フランス映画祭でもまた来た。「変人たちの晩餐会」は心底笑える
 1品。アメリカのテレビ番組的なちょっと大袈裟な演技で、コメディーのパター
 ンは世界どこでも通用しそうな、人を小馬鹿にするタイプ。こう聞くと嫌気を感
 じる人も多いだろうが、観ているとそんなことを感じる暇もなく進んでいく。こ
 のテンポは脚本がうまいからだろうし、役者も脚本を熟読した上で笑いのつぼを
 十分把握した演技を感じさせる。

 みんながそこそこの個性で責めてくる。ティエリー・レルミットは特別な個性を
 感じないが、そこはこの映画の中でもっともノーマルな感じの人を演じているの
 で、はまり役といえるし、ジャック・ヴィレルは丸い顔を更に丸くした演技が独
 特のまじめな人柄をうまく演じている。

 監督は劇作家出身で、舞台を見ているようなテンポがうまくカメラを駆け巡るし、
 この脚本はそのまま舞台でも成功をおさめそうだ。この手の映画ノは、アドリブ
 を多用する場合と、脚本に全て書いてある場合があるが、演技がいきすぎない為
 には脚本がしっかりしていなければならないと思う。あくまでもそこそこの表情
 で、そこそこのアクションで演じてこそおもしろい。この映画にももちろんいき
 すぎの場面(演技)もあるが、そんな場面もこのテンポにアッという間に飲み込
 まれてしまう。とにかく久しぶりの傑作だったから、今年のフランス映画祭 No.
 1は文句なしにこの1本!

                          映画評論家 立野 浩超

横浜フランス映画祭98

今年の横浜フランス映画祭はエールフランスのストライキにより、
フランスの俳優などの来日が遅れ、そのために予定されていたオ
ープニング舞台挨拶が一日ずれました。このときに今回来日する
フランス映画代表団(俳優、制作、その他映画関係者)が全て集
まります。

横浜フランス映画祭は出演者がハリウッド映画と比べ有名でない
点もあり、他の大きな映画祭と比べアーティストへのガードも厳
重でないのです。このためにアーティストとの接触も多く、サイ
ンや写真なども撮りやすく、アーティスト側もそれに応じてくれ
ます。

今年の代表団は小粒が多いと言う話ですが、ジャン=ジャック・
ベネックスが来日しています。彼の映画は短編映画ですので、彼
のような大物ならこの程度の作品のプロモーションのために来日
する必要がないのですが、横浜市の主催で行われた講演会もあり
ました。

彼は日本が好きなようで、日本には何回か来ているようです。サ
インも積極的にしてくれていて、暇なときにはロビーに出てきて
いるようでした。もちろんファンとのコミュニケーションをとる
ために!

後ほど詳しく映画作品の紹介をしていきますが、簡単に作品と出
演者の印象を話していきたいと思います。

今回団長としてきたサビーヌ・アゼマの作品「恋するシャンソン」
は、僕自身は見ませんでした。なぜかと言えば、いかにも古いフラ
ンスのシャンソンが流れてきてノスタルジックな雰囲気でも楽しむ
と言う感じがします。予告のビデオでも古いシャンソンを中心に、
ほら知ってる曲でしょ(フランスのタイトルはOn connait la
chanson)と言う感じです。まあ確かに面白そうに見える様には作
ってありましたが、、、

フランスのポップミュージックの歌詞をせりふに使う事が主な構成
です。ただし俳優が自分の声でその曲を歌うのではなく、本当にオ
リジナルの曲を流してしまいます。それを俳優はクチパクすると言
ったものです。予告の映像ではそのコラージュはきれいにはまって
いたのですが、その映画を見た多くの人の話では、「確かにあの予
告は良いところばかりだったけれど、大半が不自然だった」と言う
ものでした。

ただし予告では古いシャンソンばかりでは流していましたが、実際
は今のものも多く使われているようです。どのくらいフランスのポ
ップミュージックを知っているかが、この映画のおもしろさになる
ようです。

カンヌに出展されたTOKYO EYESは監督がジャン=ピエール・リモザ
ンと言うこともありこの横浜映画祭で公開前に上映されることにな
りました。吉川ひなのと武田真治が出ていることもあり、会場は高
校生が目立つようになりました。ただし出演者はギャラが支払われ
ないと言うので、パーティーにも来ないと言うことになりました。

「ねじれた愛」はユダヤ人とホモがテーマになる映画。フランスで
はこの手のネタがコメディーでは多用されています。ホモのユダヤ
人青年が心配した父親に結婚したら(女性と)お金をやると言う話
を持ちかけられたのをきっかけにアメリカ生まれの女性をつきあい
始めることになるストーリーです。

基本的には恋愛ドラマですが、設定が面白いので全体的に笑える場
面を多く作り出しています。フランスの恋愛映画によくあるエロチ
ックな場面もほとんどありません。

「ジャンヌと素敵な男の子」はミュージカル仕立てで、ヴィシー・
ルドワイヤンやマチュー・デュミが出演しているアイドル系の映画
です。内容はエイズをテーマにした作品で内容的には軽い恋愛もの
ではありません。ただしこのミュージカル的な部分が全体的に間延
びしている様な印象を受け、実際よりも長く感じました。

「変人たちの晩餐会」はフランスでも大人気だっただけありこの映
画祭でも大受けでした。今回の映画祭では一番の人気があったので
はないかと思います。フランスの今年はコメディー作品が良くでき
たとの話です。ただしこの映画祭には当然フランス語が分かる人々、
フランス人やフランス語を習った人々が普段よりも多くいるので観
衆効果も手伝って、他の劇場で公開されるときよりも、又は一人で
ビデオで見るよりもよりよく笑えます。

監督の話では「日本語のタイトルは少々上品になってるが、フラン
ス語ではもっとひどい表現です。」と話していました。フランス語
のタイトルはLe diner de consで馬鹿者たちの夕食と訳せます。僕
の印象では「変人」の方が悪い意味があると思いますがどうでしょ
うか?内容から言っても変人ではなく「馬鹿」です。

ブルジョワの何人かで馬鹿を集めてその馬鹿者を笑うための夕食会
と言うものを毎週水曜日に開いているのですが、たまたまTGVで知り
合った大蔵省(税務署かな)の人間をこのパーティーに招待するの
です。馬鹿だから呼ばれたのに彼は自分の作品(マッチ棒でエッフ
ェル塔などを造っている)の本を出版してもらえると勘違いするの
ですが、そこからがとんでもないことを次々とやらかしてくれ、こ
こまでかと言うほど笑わせてくれます。

「パパラッチ」はいかにもダイアナを題材にした作品ではないかと
思うでしょうが、これはあの事件が起こる1年半前から制作され始
め直接には関係ないそうです。ですので、初めは興味がありません
でしたが、見てみることにしました。人気コメディアンのパトリッ
ク・ティムシットも出演しています。ストーリーはパパラッチの空
しさを知り足を洗うというのです。真剣に考えさせる社会性という
わけではありませんが、ストーリー的にもコメディーとしても良く
できています。

「シリアル・ラバー」はかなりブラックなコメディーです。男性の
出演者はほとんど死にます。それも全て考えられない偶然でです。
「変人たちの晩餐会」や「パパラッチ」も次々とおかしな場面があ
りますが、その場ですぐ忘れてしまいます。今でもこの映画のおか
しな場面は思い出せるところが強力です。「変人たちの晩餐会」は
人を馬鹿にするなという、「パパラッチ」は異常なパパラッチに対
する批判という、何かしらのメッセージがあるのですが、これはそ
う言ったことは見あたりません。面白い格好で死んでいき、面白い
偶然で死んでいき、死体はおもしろさのための小道具として登場し
ます。

日本インディペンデント映画祭レポート

日本インディペンデント映画祭レポート(1999年5/2~4:有楽町・朝日ホール)

日映協、つまり日本映画製作者協会が毎年この時期開催していた「日映協フィルムフェスティバル」が今年から‘93年初回と同じ「日本インディペンデント映画祭」として第六回目を迎えた。

毎年テーマを決めての開催で、今年のテーマは「いま、映画プロデューサーは?」。1日だけだが、私は今年初めてこの映画祭に行った。この映画祭の魅力は何と言っても料金。3日間有効フリーパスで2000円、1日フリーパスでも1000円なのだ。

ちなみにディスカッションや受賞式を一作品とカウントして、毎日5本、3日間で15本、つまり1日パスでも1本200円、3日パスに至っては133円という破格プライスだ。(但し肉体的に無理だろうけど)

朝11:00から夜19:15の開始までの長丁場なので、その間半券さえなくさなければ、出入りも自由。但し連続して見たい場合は休憩時間が短いので、外出は無理だ。

今年は「HANA-BI」や「踊る大捜査線」といった比較的新しい作品や、「ルーキーズ・ゴト師株式会社」といった初上映もあってこの金額はかなり美味しい。

しかも、作品によっては製作や監督、出演者も登壇する。そして、初日には製作者達によるパネルディスカッション、最終日には製作者の選ぶ新人監督賞の発表とその作品の上映がある。

今年の最優秀新人監督賞・優秀新人監督賞には以下の作品が選ばれた。

最優秀新人監督賞:けんもち聡 監督 「いつものように」優秀新人監督賞:合津直枝 監督 「落下する夕方」

残念ながら毎日は見ることが出来なかったが、今年初めて参加してみたこの映画祭のうち5/3に上映された中から見た3本の映画についてレポートする。

<1> ちぎれ雲~いつか老人介護~ 製作:山村晋平、相沢徹監督:山口巧 (’99年・110分)

物語:広告会社OL百合子。早朝ジョギングで出会った友人のお婆ちゃんは徘徊。会社へ向かった駅前では、「行きたくない」と喚くお婆さんを無理に老人ホームで行かせる家族。会社では、両親介護の為に退職する上司。百合子の祖父も脳梗塞で半身附随となり、退院後は引き取る事に。そんな折、件のお婆さんはホームを脱走し、ひょんな事から百合子は彼女を通して福祉の現状に直面する事となるが。

ひとこと:確かに高齢化社会の現状だけでなく、家庭、地域社会、性といった様々な問題点を提起していながら巧く時間内にまとめている。

それに、出演者の熱演は素晴らしく、とりわけ、年老いても、恋する人間の美しさを体現してくれた、南美江さんには拍手だ。

しかし、冒頭で「文部省推薦」の文字が輝いていたのに、ちょっと嫌な予感がしていた。典型的な高齢化社会の例を並べたてて、ラストは介護福祉士を目指す明るい百合子であった・・・となるわけだが、問題点を盛り込みすぎて「『介護福祉士』を目指す君達へ」みたいな仕上がりになってしまった。教材として使用して、現場の生の声と併せて講演会に使用する、とかいうケースにはうってつけだろう。

知り合いに特別養護老人ホーム経営者がいる。この方は早くからこうした施設と地域社会の関係に積極的に取り組んでいて、近所の幼稚園等の子供や親が気軽に足を踏み入れられるような「楽しい」施設を目指している。

横浜にあるこのホームは「さくら苑」という“正式”名称の他に「Y2共和国」という呼び名をつけて、入居者の中から“姫”が選出されている。寝たきりをなくす為の様々な工夫や、最近では高齢者の共同生活も試みている。

アニマルコンパニオンシップを導入していた事から知ったのだが、行ってみて楽しく感じるホームは初めてだった。しかし、学生時代のボランティアで見てきた暗いイメージは、今回のこの作品に象徴されるのと全く同じだった。

重く、地味なテーマなだけに扱いが難しいと思う。その点、この作品は問題提起という意味では分かりやすいし、今度実施される介護保険制度を考える先駆になるとは思う。勿論、さくら苑とて楽しい事ばかりではないが、こうしたホームが実際存在する事も、百合子の未来の為にも触れたら良かったのではないかと思った。

<2> 生きたい  製作:新藤次郎監督:新藤兼人 (’99年・119分)

新藤次郎氏 舞台挨拶

この作品は、新藤兼人監督がウイルス性感冒に罹患して失明寸前と思われていた頃書いたシナリオによる。目がだめになる前と思われたか、急に書きまくり、急遽準備していた別作品を中止しこちらを先に撮影した。

新藤兼人監督は、今年87才になったばかりだが、80才を過ぎて初めて自分が“老人”だと気付き「午後の遺言状」やこの作品のように自分を含め、老人としての内部から高齢者を見るという作風に変化した。

ダンカンの「生きない」、黒澤監督の「生きる」等、類似したタイトルが多く、当初はこの題ではなかったが、監督の発案でこれになった。暗くなりがちな老人問題だが、これは見た後、明るい気持ちで帰れる作品。

ゴールデンウイーク明けから新作「三文役者」がクランク・インの予定。実はこれが延期したシナリオで、亡くなった殿山泰司氏の半生を描いたもので主役は竹中直人。(苗字が同じだから監督と親戚、と仰る氏の言葉は果たして本当?)

物語:70才の安吉が長野の「姨捨」駅にいる。東京へ戻った彼は行きつけのバー「ペペル・モコ」に行くが、このところどうも失禁が多く、店を追い出された後泥酔して道に倒れていたところを、通り掛かりの医師と出会う。

この病院で失敬した民話「姥捨て山」に夢中になった彼。ここから場面は彼が読み進む物語の内容をモノクロで、彼の現実をカラーで同時に進行していく。

安吉は長女で40才の躁鬱病の娘、徳子と暮らしているが生活費は主に彼の年金。現状を見兼ねた医師に老人ホーム行きを勧められ、一旦は入所してみるが・・・

ひとこと:高齢化社会の一端を担っている病院の現状や、家族愛を寓話的に描きながら、そこには鋭い監督の目が光っている。とにかくキャスティングが凄い。当初から彼を頭に描きつつ脚本を書いていたというだけあって、まさに適役の安吉役の三國連太郎。

リア王のごとく3人の子供に見捨てられながらも、親馬鹿ぶりが哀しい父だ。リアと異なり長女が面倒を見る、といってもこちらも自分の頭の蠅を追うのが精一杯。彼女を演じる大竹しのぶ。変な病院長に看護婦といった現実に比べ、妙にリアルな民話サイドの長老、津川雅彦に小柄ながらしっかりした“姥”の吉田日出子。

この辺りの皮肉も効いて、人生賛歌に仕上げた手腕は見事だ。長老が聾唖者という設定やカラスの使い方も巧みだ。

<3> カンゾー先生 監督:今村昌平製作:飯野久・松田康史(’98年・129分)

飯野久氏・柄本明氏 舞台挨拶

制作費集めが大変で、この作品よりロープライスの「うなぎ」を先に撮影した。現在、監督はシナリオ執筆中で、内容はまだ秘密。(飯野氏)

途中、配役交代があったが、2~3日のうちに決まった事だったので、かえって嬉しかった。この作品では日本アカデミー男優賞を受賞。と同時に報知、キネマ旬報、日刊スポーツ等各部門で受賞したが、(どの受賞も嬉しいが)キネ旬は印象的だった。(柄本氏)

*実は、私は昨年の東京国際映画祭で飯野氏を目の当たりにするまでは、お名前からして男性かと思っていた。小柄で、可愛い感じの彼女がこんなパワフルな活動をしているなんてなかなか想像が出来ない。

その、飯野氏に頭があがらないと言いつつどこかマイペースの柄本氏は、「最近は『元禄繚乱』等にもご出演中でお忙しいところを・・・」という司会者に「いやぁ役者何て暇ですから」と照れ笑い。12日からカンヌへ行く予定。

物語:敗戦間近の広島上空を米軍が飛行している。眼下では、今日も医師の赤城が往診鞄を手に走り続けている。この地域では栄養失調による肝臓病患者が蔓延しており、ほとんどの診断が「肝臓病」。そのため彼は通称「カンゾー先生」と呼ばれている。

両親を亡くした少女を助手として押しつけられた彼は、久しぶりに出席した学会で肝臓病研究の重要さを提言して会場から喝采を浴びる。これをきっかけに彼の研究熱は過熱。怪我をしたオランダ人脱走兵を手当した、ある日軍部の手入れに遭う。

親友の外科医を失い、全てが泡沫に帰した時、8月6日を迎えるが・・・

ひとこと:生臭坊主が胴に入ってる唐十郎はじめ、フランス映画『パリのレストラン』や『ペダル・ドゥース』でお馴染みのジャック・ガンブランがオランダ人に扮していたり、山本晋也監督が竹槍訓練を指導していたり、絶妙なキャスティング。

人の命を助ける医者は誠に戦争とは相容れない職業だ。カンゾー先生の言う通り栄養を摂って休んでいれば肝臓病にはならない。つまり、戦争という病原菌がなくならなければどんなに研究が進んでもどうにもならない事なのだ。研究に夢中になっている間に患者が亡くなってしまい、改めて初心に立ち返って走りつづける赤城医師。彼の見上げる鴨居の上の額には「走れ・・片足が折れなばもう片方で走れ・・両足折れなば膝を折っても走れ・・」というような内容が書かれている。

冒頭とラストと2回も出てくるのだが、誰かの有名な言葉なのだろうか?

確か今村監督の父も医者だったから、彼の父親像を反映しているのかもしれない。それにしても、臨終の患者に肝臓摘出を承諾させ、坊主と一緒に墓堀までして解剖するところは、江戸時代の腑分けに賭けた杉田玄白等を彷彿とさせる。

本人達が真剣なだけに妙に滑稽だ。『黒い雨』と比べて見るのも、戦争と今村ワールドを理解する一助になるだろう。

<4> ルーキーズ・ゴト師株式会社 監督:中田 信一郎製作:張江 肇・石川富康・鈴木ワタル (’99年・90分)

ここでの上映が初上映というのに惹かれ、少し頑張ったものの、この頃にはかなり目が疲労してきた。何となくパチンコのジャラジャラ音を聞くのも面倒になり、舞台挨拶もそこそこに遂に退場してしまったが、聞いたところまで報告。

「ゴト師株式会社」シリーズは今回で7作目。元は「パチンカー」連載の漫画の映画化。大学生が単位と引き替えに無理に引き込まれたパチンコ部。他校等とのパチンコ選手権に出場したり・・・という話・・・らしい。(すみません)

中田信一郎氏(監督)、川岡大次郎氏(俳優)、伊藤裕子氏(女優)舞台挨拶

撮影中の苦労といえば、パチンコホールの撮影が夜中だった事。大抵は夜の12:30から朝の8:00までで、これ以外の時間で撮影するには200~300万の営業保証が必要となる為やむを得なかった。楽しんで見て欲しい。(中田氏)

実は私生活ではパチンコをした事がなく、今回の撮影のために初めて挑戦した。意外とシンプルな印象を受けた。青春映画として楽しんで欲しい。(川岡氏)

1月の寒い時期の撮影だったのが大変だった。(伊藤氏)

*今回の上映は完成披露を兼ねており、一般には6月下旬に東京で、7月に大阪で公開予定。

■この映画祭も既に6回目だそうだが、つい見逃してしまった作品をビデオとさして変わりない料金でスクリーンで見られるのはかなり得した気分。いつも?GWが暇な人は1度出掛けてみては如何?

鳥野韻子