第7回フランス映画祭横浜’99上映作品

■ヌーヴェル・イヴLA NOUVELLE EVE1998年/94分共同脚本・監督:カトリーヌ・コルシニ出演:カリン・ヴィアール、ピエール・ル・ラジョ、カトリーヌ・フロ

シングルライフに満足している30才のカミーユ。彼女は突然恋に落ちた相手は社会党の活動家で妻子持ちのアレクシス。愛する男性を手に入れるために、あれこれ策を講じて体当たりする女心が、コミカルなのに切なく胸に迫り、主演のヴィアールも一気に注目された。

■冬の少年LA CLASSE DE NEUGE1998年/98分監督:クロード・ミレール出演:クレマン・ヴァン・デン・ベルグ、ロックマン・ナルカカン

冬休み、山のスキー教室へやって来た空想好きな少年が、隣の村の子供が行方不明になるという事件に遭遇する。『なまいきシャルロット』『小さな泥棒』のミレールが、きめ細かに演出したサスペンスの中で、子供達の自然な姿と多感な内面を瑞々しく描く。配給 シネマパリジャン

■ヒューマニティL’HUMANITE1998年/150分監督:ブリュノ・デュモン出演:エマニュエル・ショット、セヴリーヌ・カネル、フィリップ・テュイエ

他人の痛みも我がことのように感じてしまうナイーブな青年。しかし刑事としての日常は彼を絶望させ、それは人間の原罪意識にまで発展していく。『ジーザスの日々』で97年カンヌ映画祭カメラ・ドールを受賞、衝撃的なデビューを飾ったデュモン監督の2作目。

■アステリクスとオベリスクASTERXET ET OBELIX CONTRE CESAR監督:クロード・ジティ出演:ジェラール・ドパルデュー、クリスチャン・クラヴィエ、ロベルト・ベニーニ

今は昔、フランスにガリア人達が暮らしている頃。魔法の薬の力で国を支配しようと企む悪役(ベニーニ)を向こうに回し、アステリクスとオベリスクが大活躍!?国民的大人気コミックを最高のキャストで映画化し、今春フランスで大ヒットした待望の話題作。

■ロートレック(原題)*後日、邦題が決定しますのでご確認くださいLAUTREC監督・脚本;ロジェ・プランション出演:レジス・ロワイエ、エルザ・ジルベルシュタイン、アネモーヌ

貴族の嫡男として生まれた天才画家ロートレックはゴッホ、ドガ、ルノワールらやモンマルトルのダンサー、娼婦達にインスパイアされ、才能を開花する。そして画家を志すシュザンヌと運命の恋に溺れていくロートレックの涙と笑いの人生。配給 日本ヘラルド

■新しい肌PEAU NUEVE1999年/98分監督:エミリ・ドゥルーズ出演:サミュエル・ル・ビアン、マルシアル・ディフォンザオ・ポ、カトリーヌ・ヴィナティエ

アランは30歳。すでに家庭を持っている。ところが突然、生活の変化を夢見て、何の計画もなく建設現場監督となるための職業訓練を受けることを決意。そこで彼は一人の青年マヌーと出会う。主演は『コナン大尉』で注目を浴びた若手俳優のサミュエル・ル・ビアン。

■少年たちPETTITS FRERES1998年/92分監督・脚本:ジャック・ドワイヨン出演:ステファニー・トゥリー、イリエス・セフラウイ、ムスタファ・グマン

義理の父親とそりが合わず、愛犬キムを連れて家出した18歳のタリアは、同年代の4人の兄弟と知り合う。彼等はタリアの愛犬キムを盗もうと思いつくが・・・『ポネット』のドワイヨン監督がマイノリティの少年たちへの共感と共に、心の真実を描く珠玉の一篇。

■ロベールとは無関係RIEN SUR ROBERT1998年/105分監督:パスカル・ポニツェール出演:ファブリス・ルキーニ、サンドリーヌ・キベルランヴァレンティナ・チェルヴィ

コラムニストのディディエは、軽い気持ちで書いた記事のせいで人生が急降下。『美しき諍い女』『パリでかくれんぼ』の脚本家としてすでに活躍中のポニツェール監督がしゃれた台詞と小気味よいテンポで、人生の尊さをさりげなく描くヒューマン・コメディ。

■幸運と必然(原題)*後日、邦題が決定しますのでご確認くださいHASARDS OU COINCIDENCES監督:クロード・ルルーシュ出演:アレッッサンドラ・マルティネス、ピエール・アルディティ

バレエ・ダンサーで女優でもあったミリアム。別れた夫との思い出を胸に、ヴェニスを旅する彼女の前に温かい人柄の画家ピエールが現れる。美しいダンスシーンとロケーションに彩られ、ルルーシュ監督の新しい傑作と呼び声も高い”癒しと再生の物語”

■父の跡をたどってJE REGLE MON PAS DSURLE PAS DE MON PERE1999年/88分監督:レミ・ウォーターハウス出演:ジャン・ヤン、ギヨーム・カネ、ロランス・コート

父と再会する為に全てを賭ける決意をした青年。しかし、父は冷たく彼を拒絶。そのため青年は身を偽って、密かに父のそばに潜り込む。主演のギヨーム・カネは最新作『ザ・ビーチ』でレオナルド・ディカプリオと共演している若手注目株。

■カーニバルKARNAVAL1998年/88分監督:トーマ・ヴァンサン出演:アマール・アブダラ、シルヴィ・テチュ、クロヴィ・コルニヤック

北の港町、ダンケルク。青年ラルビは新しい生活を求めて南仏に旅立とうとするが列車に乗り遅れ、そこで一組の男女に出会う。カーニバルの熱気溢れる2月のダンケルクを舞台にした色鮮やかなラブ・ストーリー。この映画で旋風を起こした女優シュルヴィ・テチュは必見。

■今日からスタートCA COMMENCE ALIJOURD’HUI1999年/117分監督:ベルトラン・タヴェルニエ出演:フィリップ・トレトン、マリア・ビタレシ、ナタリー・ベキュ

幼稚園の園長でもあるダニエルは、ある夜、父兄が置き去りにした少女と赤ん坊を家に連れ帰る。その行為は規則違反だったために議会からも追求を受け、彼は妻と共に体制と闘いはじめる。名匠タヴェルニエがフランス社会にある官僚的な体制を厳しく見つめた感動作。

■これが人生?CEST QUQI LA VIE?1999年/115分監督・脚本:フランソワ・デュペイロン出演:エリック・カラバカ、ジャック・デュフィロ、イザベル・ルノー

農家の暮らしに不満を抱いている息子ニコラ。父の自殺をきっかけに、ニコラは新しい場所での人生を切り開こうとするが、かつての祖父たちが住んでいた土地でマリアという娘に出会う。アンゲロプロス監督の話題作『永遠と一日』のイザベル・ルノーが出演している。

■ベル・ママンBELLE MAMAN1999年/102分監督:ガブリエル・アギオン主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ヴァンサン・ランドン、マティルド・セニエ

結婚式のその日、新郎アントワーヌの心を一瞬にして虜にしたのは、なんと花嫁の母親だった・・・。個性的な大物キャストに囲まれて、『ペダル・デゥース』のアギオン監督がまたまた放つアブナイ世界。主演のドヌーヴは劇中でラップも披露している。

■カジモドQUASIMODO D’EL PARIS1998年/100分監督:パトリック・ティムシット出演:パトリック・ティムシット、メラニー・ティエリー、リシャール・ベリ

教会の鐘つきで気の優しいカジモドが、女性ばかりを狙った連続殺人事件の容疑者に。名誉挽回、カジモドの真犯人探しが始まる。「ノートルダムの鐘」を大胆に飛躍させた独創的なセンス溢れるコメディ。『ペダル・デゥース』などの人気俳優ティムシットが初監督。

■幸せな日々NOS VIES HEUREUSES1998年/145分監督:ジャック・マイヨ出演:オリヴィエ・ピ、アラン・ベイジェル、カミーユ・ジャイピー、サラ・グラパン、サミ・ブアジラ

退院したばかりのジュリー、モロッコからやって来たアリ、失恋したエミリー、コックのルーカス、写真が趣味のセシル、攻撃的なジャン・ポール。6人の友人たちの人間関係をデリケートに描く。短篇映画で数々の国際的な賞を受けたジャック・マイヨの期待の初長編。

■大浸水TOUT BAIGNE1999年/90分監督:エリック・シヴァニャン出演:イザベル・ジェリナ、フランソワ・モレル、パスカル・エルベティエリー・ニコラ

奇人変人が集まっていた駅が突然浸水!?しかも、そこで妊婦が産気づいてしまった!?『パパラッチ』でおなじみのイザベル・ジェリナをコメディアンヌに迎えて、舞台喜劇で有名なエリック・シヴァニャンが初監督したドタバタコメディ。

■ボーダーラインMILLE BORNES1999年/103分監督:アラン・ベイジェル出演:エマ・ドゥ・コーヌ、ピエール・ベリオ、ラファエル・クレブゼール、広田玲於奈(特別出演)

「僕の痛いをベニスに運んで欲しい」という死んだ仲間の遺書を実行するために集まった、5人の青年と1人の少女。高校時代からの親しい仲間達の友情と、悲劇から立ち上がる力を描いた物語。特別出演の広田玲於奈はエンディングテーマも演奏している。

■ギャルソンヌLE DERREIRE1999年/102分監督・主演:ヴァレリー・ルメルシェ出演:クロード・リッチ、デュードネ、マース・ケラー

ようやく捜し出した父親はバリバリのホモセクシャルだった。この事実をうけいれる最良策として彼女が思いついたのが、自分を彼の”息子”と思わせ、コテコテのゲイファッションに身を固めること。ルメルシェのキュートでファニーな監督デビュー作。

■ヴィーナス・ビューティ(原題)*後日、邦題が決定しますのでご確認くださいVENUS BEAUTE (INSTITUT)1998年/105分監督:トニー・マーシャル主演:ナタリー・バイ、ピュル・オジエ、サミュエル・ル・ビアン

エステティック・サロンで働くアンジェルの恋愛を中心にその同僚達たサロンの経営者など女性達に焦点を当てた軽妙なドラマ。トリュフォーの『緑色の部屋』での名演が印象的なナタリー・バイ主演。『髪結いの亭主』を彷彿とさせる最新ヒット作。配給 アルシネテラン

■短篇映画特集LE COURTS METRAGES長編デビューを前にした若手監督たちの作品を中心にした短篇特集

第7回フランス映画祭横浜’99

今年も恒例の横浜フランス映画祭が始まります。6月10日(木)-13日(日)の4日間、今年は7回目を迎え、御馴染みのパシフィコ横浜で開催される。

日程:6月10日(木)~13日(日)場所:パシフィコ横浜料金:前売り券 1000円当日券  1200円

今年は指定席もあるそうです。ウェルカムセレモニーとクロージングは1500円(当日は1700円)

チケット発売日は5月14日

■公開予定の映画作品紹介

□ Asterix et Obelix contre Cesar「アステリックスとオベリックス対シーザー」

原作はフランスのマンガ「Asterix et Obelix」の完全映画化。監督は「フレンチ・コップス」「アルレット」のクロード・ジディ。出演は主演2人にクリスチャン・クラヴィエ、ジェラール・ドパルデュー。悪役には今年のアカデミー賞でオスカーを得たロベルト・ベニーニが扮している。109 minshttp://www.asterix.tm.fr/lefilm/

□ Belle Maman 「美しいママ」

「ペダル・ドゥース」に続いて、ガブリエル・アギオン監督のラブ・コメディが今年もセレクトされた。この作品はキャストに注目。カトリーヌ・ドユーブ、ヴァンサン・ランドン(今年も来るか?)ステファーヌ・オードラン。102 mins

□ Ca commence aujourd’hui 「それは今日始まる」

ベルトラン・タベルニエ監督の作品は、フランス映画祭ではこれまで3本上映されています。今回の映画もドキュメンタリー・タッチで小学校の教師を主人公にした社会派ドラマ。117 mins http://cacommenceaujourdhui.com/

□ La classe de neige「雪のクラス」

「伴奏者」「オディールの夏」に続くクロード・ミレール監督の新作です。ロマーヌ・ボーランジェが出てるかって?残念でした。出ていません。心配性のニコラは学校のスキー教室へ行くことになった。そこで起きた事件とは・・・?96 mins

□ Le Derriere「お尻」

サチャ・ギトリの原作を映画化した監督主演作品「カドリーヌ」に続いて、ヴァレリー・ルメルシエがまたまたコメディに挑戦。自分の父親がゲイであることを知った娘(ルメルシエ)は、「ゲイの世界」を覗いてみたくなり、ある決心をする。彼女が取った行動とは!?102 mins

□ Hasards ou coincidences「偶然と一致」

これは、噂では今年の来日団の団長を務めるクロード・ルルーシュ監督の最新作です。日本でも「男と女」「愛と悲しみのボレロ」「レ・ミセラブル」等ヒット作があるルルーシュ監督。自分の奥さんを主演にしたこの作品はロードムービとか。期待しましょう。120 mins

□ Je regle mon pas sur le pas de mon pere「私は父に歩調を合わせる」

新人監督のレミー・ウォーターハウスは撮った父親と息子のロードムービー。主演:ギヨーム・カネ、ジャン・ヤン、ローレンス・コート88 mins

□ Karnaval「カーナバル」

トマ・ヴァンサン監督作品。主人公ラルビは父親との大喧嘩の後、マルセイユへ家出する。ダンケルクでカーニバルを見たラルビはベアと言う女に出会って・・・88 mins

□ Lautrec「ロートレック」

題名が示す様に、画家トゥルーズ-ロートレックの伝記映画。ロートレックと言えば、「赤い風車”Moulin Rouge” 」と言う映画がすぐに思い浮かぶ。ホセ・フェラーがロートレックを演じたジョン・ヒューストン監督作品である。これをビデオで見てから本国フランス製の本作品を見るか?キャストで唯一識別出来たのはエルザ・ジルベルシュタインだけだった。監督もロジェ・プランションと聞いたことのない人だ。125 mins

□ Mille bornes「1000の境界」

死んだ友人の葬式に集まった友人:男5人と女が一人。死んだ友人は最後の願いとしてビデオを残していた。その願いとは、自分の死体を安置所から盗み出し、イタリアのベニスまで運んでくれと言うものだった・・・103 mins

□ La Nouvelle Eve「新しいイブ」

女流監督のカトリーヌ・コヌシーニの作品。30年間独身だったカミーユが遂に理想の男性に巡り会えたが、彼は子持ちの妻帯者だった。やはり「不倫」するしかないのか?94 mins

□ Petit freres「小さな兄弟」

「ラ・ピラート」「ピストルと少年」そして、去年はあの「ポネット」でヒットを飛ばしたジャック・ドワイヨン監督の最新作です。家出した 13 才の少女と彼女を取り巻く4人の少年。92 mins

□ Quasimodo d’el Paris「パリのカジモド」

個人的には筆者が一番楽しみにしているのがこの作品。カジモド(ノートルダム・ド・パリのせむし男)の話は何度となく映画化されている。最近ではあのディズニーもアニメ化した。さて今回は去年の映画祭でも受けていた「パパラッチ」のパトリック・ティムシットが監督主演で、あのモンティー・パイソンを連想させるタッチで映画化した。100 minshttp://quasimodo-film.com/

□ Rien sur Robert「ロベールに関しては何もない」

脚本家として有名なパスカル・ボニツエール脚本・監督作品。数年前「Encore」と言う題名の彼の監督作品が東京映画祭で上映されたので、見に行った。あの作品が気に入った人にはいいかも。ファブリス・ルキーニ、ミシェル・ピコリ、サンドリーヌ・キベルラン、ベルナデット・ラフォン107 mins

□ Venus Beaute「美しいビーナス」

マリオン・ベルヌー脚本、トニー・マーシャル監督作品。とにかくこの作品は出演している女優人が凄い。ナタリー・バイを筆頭に、ブル・オジエ、昔のファンが泣いて喜びそうなミシュリーヌ・プレール、エマニュエル・リバ、トリュフォー作品以来のクロード・ジャドなど。ストーリーは現代女性が直面する様々な問題:仕事、嫉妬、自殺などを取り上げる。105 mins

□ Tout baigne「全て水浸し」

エリック・シバニアン監督作品。家が水浸しになってしまった。しかもこんな中、子供が生まれそうなの。一体どうしよう?

□ Peau neuve「新しい肌」

アニエス・B制作。もしも別人になることが出来たら?アランはある日決心する。家族、仕事も捨てて、新しい運命を模索した彼に用意されていたのは?監督:エミリー・ドゥルーズ。

□ Nos vies heureuses「私たちの幸福な生活」

ジャック・マイヨ監督作品。6人の若者の人生スケッチ。イヤな物ばかりのこの世の中で、好きな物を見つける喜びとは?

□ L’humanite「ヒューマニティ」

「ジーザスの日々」を撮ったブルーノ・デュモン監督の最新作。

□ C’est quoi la vie「人生って何」

フランソワ・デュペロン監督作品。家族崩壊で自分の居場所がなくなったニコラは祖父母が残してくれた農場へ行く。そこで、マリアと言う女性と出会い、彼は自分の新たな居場所を見つけることになる。

英国映画祭レポート

今一番元気だと言われる英国映画。今回は 10/24~の第1部と国際映画祭開催と合わせた 10/31 ~の第2部に亘り新作 18 本のうち 13 本を観た。ハリウッドのような派手さはないが、身近な題材からワールドワイドな共通性を引き出していた作品が多かったのには繊細さと奥の深さを感じた。

作品は大きく分けて「社会派」系と「ファンタジー」系の2つのグループに集約された気がする。前者は『A:コスチュームプレー』、「ブラス」や「フルモンティ」に代表されるような『B:不況モノ』?と、そして『C:社会の裏面』に更に細分化され、後者はたまたま同一題材だった『D:フェアリー』と『E:しゃれた大人の恋物語』と5つに分類出来ると思う。

以下この分類に沿って紹介をしてみたい。第1部第2部共にクロージング作品のチケットの発売が遅れ入手がかなり困難だった。それにしても毎回開演前に聴かされる「威風堂々」が耳たこになってしまった2週間だった。

□ A □  コスチュームプレー編

◆オープニング&「鳩の翼」:10/24(土)*12/12(土)より公開ゲスト: アリスン・エリオット(女優)

作品内容

20 世紀初頭。電車の中で席を譲られる女性。譲った男の上着が彼女をかすめる。下車してエレヴェーターに乗った途端他人に見えた2人は実は恋人同士だった。男は新聞記者マートン。女は落ちぶれた貴族の娘ケイト。母は既に亡く、父は阿片中毒。その為彼女は裕福な叔母の元に引き取られている。今の暮らしを守るにはマートンとの結婚は不可能だった。

あるパーティにアメリカから来たという美しい資産家の娘ミリーがやって来る。彼女が余命幾ばくもない事を知ったケイトはミリーがマートンに惹かれている事を利用して、ある策略の元に3人でベニス旅行を計画する。

◆英国映画祭第1部・オープニング&舞台挨拶

英国大使館公使のチャールズ・ハンフリー氏と共に登壇。記念撮影等と共に簡単なQ&A

Q)まるで天使のようなミリーだが、この役作りはどのようにしたのか?

A)自分の人生を見直し、人生の大切さを学びつつ役作りをしていった。

Q)「バック・ビート」で一躍有名になった若手、イアン・ソフトリー監督の印象は?

A)彼の作品は「ハッカーズ」等含めとてもモダンな作品が多い。

Q)あなたはラックススーパーリッチのCMでも有名でとても美しいがその美しさの秘訣は?

A)健康であること。そしていつも恋をしている事。

オープニングというのでもっと華やかな感じを想像していたら何となく地味な開幕だった。

前売りを購入したとき「最後の1枚でした」と言われたのですさまじい混雑を考えていたがさほどでなかった。

ゲストのアリソン・エリオットは「この森で天使はバスを降りた」のままの楚々とした美人。ラックスのCMの話が出るとさらさらのヘアをさらりとふって見せたりするお茶目なところも。

この作品で絶賛されたヘレナ・ボナム・カーターが屈折した現実的な愛情ならアリソンのはどこまでも透明感のある、心に染みいる包括的な愛情表現を要求される。(どちらかというとコケティッシュな役柄の多いカーターなので、今回のようなタイプは珍しい)だが、アガペー的ともいえる後者の愛の強さはラストシーンを見れば納得出来る。

一方この対照的な2人に愛されるマートンが繊細すぎてちょっと存在が霞んでしまったところが残念だ。

マートン役のライナス・ローチも「司祭」の演技派だが、2人それぞれの愛情を受けとめるには少し弱い感じがする。そこがどこかロマンチシズムを持つ男性の役として魅力的でもあるけれど。(それにしても彼、「司祭」の頃に比べると何となく急に老けたような。第2のジュリアン・サンズにならないで欲しい、、、)

ヘンリー・ジェームズの原作、貴族社会、そして当時のヴェニスとくれば何となく想像がつく内容とはいえ、音楽やコスチューム、そして雨宿りの3人が見るクリムトの絵画やヴェニスの教会の内部など見所満載。

◆QUEEN VICTORIA 至上の恋 10/25(日) ’99年春公開予定ゲスト: ビリー・コノリー(俳優)

作品内容

建物の窓から石膏の胸像がスローモーションで落下してくる。ヴィクトリア女王を陰で支えた男、ブラウンの胸像だ。

何故破壊の憂き目に遭ったのか。1860年代。夫の死後長いこと喪に服したまま政治の舞台になかなか戻ろうとしない女王に夫の腹心だったブラウンが呼ばれる。

彼は堅苦しい女王の生活を型破りな方法で変えていき、女王の乗馬、水泳と活発に外出するようになって次第にブラウンとの交流も深まっていく。

こうしてハイランド地方で孤独だった彼女の心が次第に癒されている頃、政治の表舞台は女王を廃して皇太子を擁立しようとする者やその為にブラウンとの関係をスキャンダルに持ち込もうとする動きが出てくる。

漸く女王が政治に復帰するとブラウンは病に倒れる。それまでの事の次第を日記に書き続けていたがその日記は女王の側近の手によって永久に闇に葬り去られてしまった。

舞台挨拶: ビリー・コノリー

この英国王室を巡るスキャンダルは有名なものだが、当時のスコットランドにおいて階級という高い塀を登って女王と恋に落ちた一人のヒーローだ。その時代に於いては社会的な地位が異なるというハンディがあるがとてもベーシックなラブストーリーといえる。

タータンチェックのパンツで登場した彼に「何か今日は年とったベイ・シティ・ローラーズのような感じですね.」言われ、かなりショックだったようで、おおげさにリアクションしていた。

本国ではコメディアンとして有名だが、今回の出演はどのようにして決まったか脚本家がまだ何の台本もない段階で構想を話てくれたが、彼はそれを映画化するだけの資金がなかった。

そこでミラマックスが作品化した。この映画で(女王役の)ジュディ・リンチはアカデミー賞にノミネートされたが、私は何もなかった。(笑)きっとアカデミー賞には私はビッグすぎて向かないのだろう。

「内容からしてまるで“ボディガード”のようですね」という司会の言葉に、「あの映画は見てない」そして「子供の頃からチベットと日本に興味があったので嬉しいと言って舞台を去って行った。

映画の中では無骨でストレート、口べただが男らしくて頼りがいがあるブラウンを演じたビリーさんも大男なのは一緒だが、舞台ではコメディアンらしく大振りなジェスチャーで楽しいQ&Aだった。この日は多くの TV カメラが入っていたが、どこかに報道されたのだろうか?

本国では人気 TV シリーズのレギュラーで、最近では「ポカホンタス」でアテレコに挑戦するなど活躍しているらしい。

最後にブラウンの死後、彼の日記を探して闇に葬り去ることでほっとする連中の一言「悪人は休まる暇がない」という皮肉。今に世紀の大発見とかいってこの日記がみつかった何て事があったら面白いのに何て思ってしまった。

□ B □  不況モノ編

◆マイ・スウィート・シェフィールド 10/24(土)*12/23 公開ゲスト:ピート・ポスルスウェイト(俳優)スティーブン・ガーレット(製作)

作品内容

不況の中、レイは期限付で仲間と鉄塔のペンキ塗りの仕事を請け負う。それは日雇いの仕事でシェフィールド迄数キロにも及ぶ鉄塔を仕上げねばならないというものだったが、名物といえば岩登り位のこの町にオーストラリアから女性クライマーがやって来た事からペンキ塗りの男達の関係に微妙な変化が生じる。

ティーチ・イン

◇ピートさんへの質問

Q)英国映画が最近注目されているが英国映画の良い点は何か?

A)狭い世界を取材している作品でも世界の人に分かって貰える点。特定の話が一般的なものとして受け入れられる事。

Q)脚本を初めて見た時どう思ったか。

A)まず、驚いたが、年令の高い人が女の子を手に入れる所が良い(笑)私的な事である結婚と苛酷な労働という事が対立してしまう点に生きる事の意味を考えさせられるものだった。

Q)次回作は何ですか?

A)ハリス監督作品のテネシー・ウィリアム風のもの。(と南部訛りを披露)

◇プロジューサーへの質問

Q)脚本家サイモンさん(フルモンティの脚本家)とこの映画を作る事になったきっかけは?

A)8年前 TV ドラマの人材コーディネートをしていたが、そこを去る時彼が170ページの脚本をくれたのがきっかけ。その作品ではラストでスティーヴンが理由は分からないが死んでしまうものだった。

「ブラス」に続き不況モノに縁のあるピートさん。今回はペンキ塗りのリーダーだが、件の女性と全裸で登場のシーンがあり、本人は大照れだった。スクリーンでは個性的な役柄が多いが本人は会場の大拍手に思わず涙ぐんでしまうようなとても繊細な人柄だった。

出演作ではどれが好きかと聞かれ「その時々入れ込んでいるのでどれも好き」と言う答にも役者としての誇りを感じた。

「ツインタウン」という映画の中で主人公の双子兄弟の父親が作業中の事故以来賃金で雇用主ともめ、それをきっかけに兄弟が復讐をするものだったが、この作品にも見え隠れする理不尽な契約の横行。

このところ英国映画に多々見られるこうした現実社会は冗談でなく私達にも身近に思えてくる。が、仲間達の最低限の出費でのお祝?(鉄塔をピンクにする!!)等でその辺の暗さを緩和してくれている。

原題は Among the Giants。男達の中の紅一点の意味か、まるで Giant のようにそびえる鉄塔の事か…。

□ C □  社会の裏面編

◆ザ・ジェネラル:10/28(水)*公開未定ゲスト: なし

作品内容

男が自宅から車に乗り込む、、、と一人のバイカーがいきなり暴走してきて彼の顔に向かって発砲した。男の死亡の知らせに沸く警察署。見張りを付けていたはずの時間に何故?

被害者の男は「将軍」の異名をとる有名なギャングだった。貧しい子供時代に隣家の少女に恋をして彼女にお菓子を盗んだり、彼女と結婚してからは子供の為に玩具を盗みほとんどのものは盗んだものでまかなうという生活。

そのうち盗むものも次第に大胆になり仲間も増えて巧く法の目を盗んでは警察の手をくぐり抜けている。大手銀行を襲い、絵画の盗難に至っては警察も 24 時間体制で張り込みを続ける。そんな折、彼の片腕の男が組織を脱会するべく警察に協力するが、、、

これは公開未定ということと紹介の写真にエイドリアン・ダンバーが写っていて、それに惹かれてつい見てしまった1本。(エイドリアン・ダンバーはここでは将軍の右腕になっているが、クライング・ゲームやイノセントライズといった犯罪ものによく顔を出している個性派俳優。

「ヒア・マイ・ソング」や短篇「奇妙な隣人」等でも邪魔にならない存在感?を発揮している)主人公マーティン実在の人物らしいが、何とも憎めない奴なのだ。

貧乏の辛酸をなめているせいか、金持ちしか狙わないし、家庭的には実に良き父、良き夫なのだ。(もっともこの夫の点がなんとも理解しがたいのだが、妻の了解のもと彼女の妹とも子供をもうけている。)

取り壊しの為に今までの安アパートの立ち退きに遭えばテントを張ってでも抗議し、それでは..と「仕方なく」現金を強奪して高級住宅を購入。殺人は犯さず仲間とも戦利品は仲良く山分け。警察にはとっくに目をつけられているがそこを逆手にとってアリバイ工作。

いくら貧乏だからといって盗みをしていいわけがないが、政策をあざ笑うかのような彼の行動に思わず笑いがこみあげてしまう。クラス社会、権力等への痛烈な批判ともとれる。

ブレンダン・グリーソンというこの主役の俳優がまた何ともすっとぼけたいい味を出している。ちょうどジョン・グッドマンみたいな体型でちょっとのそのそしているのだが、どうしてこれがなかなか抜け目がない。

冒頭とラストが同じ狙撃シーンなのだが最初に見たときは「当然の報い」と思うものの、ラストで同じシーンを見ているのに「何も殺さなくたって(他にもんお非道な輩がいるだろうが、、、)」という心境になってしまう。

なかなかよく出来た脚本で2時間5分の上映時間があっという間だった。是非とも公開してほしいものだ。

◆第1部クロージング & FACE 10/30(金)*12/19(土)より公開

クロージング

、、、といっても目玉ゲストのロバート・カーライルが急遽キャンセルになって代わりに?第1部を振り返ってというしけた企画のみ。急に来日したリチャード・アッテンボローや第1部のゲストのティーチ・インやパーティの模様をスライドで見せてくれるという有り難い?!ものだった。

そして、「今アラン・パーカー監督(私の記憶に誤りがなければこの方 12 月に亡くなった気がする。この作品は一体どうなったのだろうか気になる)の最新作撮影の為にアイルランドにいて訪日出来なくなり残念」というカーライル氏のメッセージが代読され、がっかりの来場者には配給元から先着 850 名にカーライルのポートレートが配布された。

中には彼当ての花束を用意して来た女性までいて何だか気の毒だった。(でも新聞には“ゲストなし”と書かれていたのに)で、スクリーンいっぱいに彼の顔が映されるとせめてそれだけでも撮りたいのか会場からフラッシュの嵐が起こったのには驚いた。

作品内容

イーストエンド。ロンドン。35才のレイを筆頭に5人の窃盗団「フェイス」は造幣工場で札束の強奪に成功する。思ったより小額ながらもそれぞれが金を保管したが、何者かによって全員の金が消えてしまう。

レイの金を預かっていた老夫婦も、仲間の1人も死体となって発見される。犯人は意外な人物で、彼自身も制裁を受けるがレイはこの事件をきっかけに人生をやり直すべく恋人とともにこの地を離れる事を決意する。

「ニルバイマウス」のレイ・ウィンストン等の個性派俳優に加え、ロックバンド Blur のデーモン・アルバーンの出演も話題。

何ともいたたまれない心が痛くなる作品である。「ニルバイマウス」のようにやるせなくどうしようもない人間の有り様が伝わってくる。

レイも嘗ては毋や恋人達とともに反体制運動という手段で社会に対峙していたのに何時の間にか強盗という暴力的な行動に移行してしまっていたのだ。「(私がでなく)あなたが自分自身に一番失望しているのでしょ」という毋、「あなたはただの泥棒にすぎない」という恋人。強盗を働いても常に虚しさが澱のように心に沈んでいる、どこか悪等にもなりきれない存在。

そんな中に起こる僅かな金を巡る仲間どおしの不信感。「ファーゴ」のラストでやはり捕らえた殺人犯に刑事が質問する。「こんなちっぽけなお金で殺人を繰り返す何て。私にはわからない」些細な欲望が招く悲劇。

アントニア・バードと組んだ「司祭」に続きカーライルの心の葛藤が巧い。いつも本に夢中で誰も聞いていないのにその内容を語っては満足しているちょっと気弱なスティーブンの存在が重い作品の緩和剤となっている。サウンドもいいのでお薦めの1本。

フランス映画紹介

ねじれた愛去年の「嘘は真実」でもユダヤ教を扱っていたけれど、この作品ではそれにゲイが加わって物語的に幅。各キャラクターの扱いがきっちりして面白かった。

アントワーヌ・ドゥ・コーヌ(男優)実物はまず普通のハンサム。作品ではあごひげをはやしたゲイの役でクラリネットを吹く様など実物よりハンサムでした。でもなかなかウィットのある素敵な印象でした。

エリザ・ジルベルシュタイン(女優)昨年の映画祭での「正装のご用意を」で出演していました。「ミナ」で有名だけど「恋人たちのポートレート」ははじめちょっとずれた可愛い女の子をさせるとピカ一。笑顔がとても可愛い。

ジャン-ジャック・ジルベルマン(監督)映画館も経営していると言う監督。とってもおしゃべりで本人自体楽しげな人でした。

ジャンヌと素敵な男の子

ヴィルジニー・ルドワイヤン(女優)ここ数年映画祭で来日している。映画も実物も申し分なく可愛い!

マチュー・ドゥミ(男優)お母さん(A.ヴァルダ)の顔を色濃く踏襲した感じ。「百一夜」では華奢な少年風だったのに実物は結構たくましげ。

変人たちの晩餐会終始笑える。絶妙な間や展開上手い脚本と役者の賜。さすが舞台作品。

ティエリー・レルミット(男優)この人も思い入れが強いのですが、、、舞台挨拶はオープニングより超ラフ。超簡単なサインがちょっとがっかりだったけれど2ショットを頼んだら立ってくれただけでも感激!背は高いが思ったよりがっちりしていた。

パパラッチ監督の前作が頭にあったので覚悟していたら割と社会的な面もあり、心の琴線に触れる所あり、で意外な期待はずれだった。

アラン・ベルベリアン(監督)この人の第一作目のしょーもない「カンヌ映画祭殺人事件」のチラシでは表記がバーバリアンになっていて一体どんな人だろうと思っていたらDホフマを可愛くしたような人。

ヴァンサン・ランドン(男優)(個人的に私のお気に入り)「女と男の危機」で組んだ(これまた私の好きな)パトリック・ティムジットと再び組んでよいコンビネーション。得意の哀愁漂う中年がはまっていました。

エリーズ・ティエルロワ(女優)この人「シリアルラバー」でも登場。ブロンドの典型的な美人。作品の中より本物の方がエレガント。それでいて物静かで好感が持てた。

情事のあとかなり女性の個人的感覚の映画。愛人との別離語の苦しさってのがすさまじすぎて妙に生々しくて何か疲れる。編集者とスランプの作家の砂時計のような関係をも表現、、、と言うところは解るのだけれど。

ブリジット・ルーアン(女優)個人的には(大好きな)「オリヴィエ オリヴィエ」のお母さんの役が印象的だったが、ちょっとスーザン・サランドン似の可愛らしい人だった。

シリアルラバー巧くコミックを取り入れたテンポの早い作品。何となく話の先が読めるが結構楽しめる。

ジェームス・ユット(監督)サイン会に行ったら妙にハイでこんな人が友人に一人でもいたら結構うるさいけど楽しいかも、、、と言う感じの人でした。

ミッシェル・ラロック(女優)最近「ペダル・デュース」「僕のバラ色の人生」と映画祭でも出演作が続いている。映画の中では割とプライドが高いインテリ役が多い彼女、実際はヘヤダイなどかすごいブロンドで思ったより落ち着いた雰囲気の人

ルール違反プログラムの説明ではなんだかコメディーかと思ってみてしまったのでどうもシリアスな内容に驚愕してしまった。実名で役者が本人を演じるのは珍しいことではないけれど、後半の密室での進行は舞台劇のようだ。

アリエル・ドンバール(女優)「海辺のポーリーヌ」「美しき結婚」などロメーヌの常連。最近はアンリ・ベルナールとの結婚で「知」と「美」の結婚とか言われていたくらい美しかったが、やはり老けました。風邪で来られなかった友人へサインを頼んだら元気になってと言ってくれました。

愛と復讐の騎士フランスでは公開したそうで、フランス人によれば比較的評判は良いとのこと。

ヴァンサン・ペレーズ(男優)「インドシナ」「恋人たちのアパルトマン」「愛と巡り会い」と段々頭が寂しくなってきたというイメージが強く、確かにそうだったけれど本人はとても良い感じの人見方が変わりました。

マリー・ジラン(女優)「さよならモンペール」で一気にファンになった私。あれから数年経っても少女臭さは抜けても可愛らしさが変わらない。彼女の周囲は華やかなオーラがあったのは気のせいでしょうか?

映画評論家 坂田洋子

第6回フランス映画祭~ランベール・ウィルソン

ゲストの来日はフランス映画祭の楽しみのひとつだが、ミーハーな私にとってこのところ毎年誰かしら“マイヒット”なゲストが来ている。1作目で一目惚れのC.クラピッシュ監督、子役時代から唾つけてました..のG.コラン、子供の頃からお慕いしてました..のB.ジロドー等なのだが、

今回ご紹介するのは3つ目のパターンのランベール・ウィルソン。この8月で確か御年40才。「恋するシャンソン」で鼻持ちならない不動産屋マルクを演じている。この中で「僕は女の子達が好き」を口パクしており、映画祭でも舞台挨拶でちょっと声を披露したが実際、れっきとしたバリトン歌手でもある。「ピーターと狼」等のナレーションやクラシックからポップスまで数枚のCDも出している。大感激の私をよそに映画祭での写真を見せると「一応…二枚目だけど…知らない」というのが大方の友人達の感想だが、私が最初に魅了されたのは実は“声”だった。

「ヘルマン夫人ですか?2等4号車の甥のフランツです。貴方の誕生日にジュリアさんから..」『ジュリア』におけるこの数秒の台詞が映画初出演。後にこれは丁度英国で演劇を学んでいた時に出演したという事を知ったが、この綺麗な発音の“イギリス人”俳優が気になった。誰だか分かったのは数年後で、何と「ラ・ブーム」のヒットを知らなかった私は破滅的なキャラクターを演じた「ランデブー」や「私生活のない女」でフランス語も喋れるんだ….と感心していたものだ。実際はイタリア語も堪能とか。「悪霊」でA.ワイダ、「建築家の腹」でP.グリーナウェイ、そして今回のA.レネ(以前、監督に出演希望のラブレターを書いたという)等個性的な監督との仕事が多く、好青年から詩人、ジゴロ、テロリストと役柄も様々だが(出演作が多い割に日本であまり馴染みがないのはそのせいかもしれない)最近では「恋する..」や「妻の恋人、夫の愛人」のようにちょっと嫌みで割を喰う自称プレイボーイの洒脱な演技が結構はまっている。

「恋する…」は口パクとはいえ現場は歌いながらの撮影だったというが、数年前からは本格的に声楽でもプロを考えていたらしい。1度聴いてみたいと思っていたところ、昨年東京国際映画祭に続き京都映画祭でも「女優マルキーズ」のプロモーションで来日。その際東京と2箇所でリサイタルを開催した。’96年にリリースし、翌年パリ公演を行ったアルバム「悪魔と奇跡」の内容のリサイタルはモノトーンの衣装にベレー、ジャケットで変化を凝らしながら「突然炎の如く」に始まり父の主演作「かくも長き不在」まで一気に約1時間半。映画の中のシャンソンという宣伝のせいか客層は思ったより年齢層が高く静かだった。プログラムがなく次々に歌われて行くのだが、冒頭で流れる映画のワンシーンの音から、台詞の感じと船の汽笛等から「望郷」だな…とか、全ての曲を知らなくても映画が推測出来る。とはいえヌーベルバーグ以前の古い映画が多くフランス語音痴の私にとってはカルトクイズだった。東京での最初のステージは声も心なしか硬い感じがしたものの徐々に馴染んできて、上背を上手に生かした表現力豊かな動きと共に本来の幅のある響きになった。他にもR.ベリ等フランス映画界には意外な歌える俳優がいるのだが彼の父(ジョルジュ)もその部類だったようだ。

スクリーンでも背と鼻の高さは印象的だが、実物に会ってみると189cmの身長は想像以上に大きくがっしりしていた。クロージングの日、名前を聞いてサインしながら「歌も演技も可能性を試したい」と流暢な英語で答えてくれる姿には誠実な印象を受けたが、舞台挨拶時のタキシードからうって変わってこの日はスウェット? にスニーカー、クラーク・ケント風の眼鏡という超ラフないでたち。よく言えば飾らない…見方変えれば無頓着な…感じにこれ又この装いにはやや不釣り合いなトワレ(香りそのものは爽やかで良いのですが…会場でサンプル配ってたYSLのJAZZ? )を纏ってちょっぴり前屈みでホテルへ戻る背中は少々お疲れ気味でした。

鳥野院子

東京国際映画祭1998

今回の映画祭はチケットの発売日が大幅に遅れたり、フィルムの未着でキャンセルが生じたりして例年以上に前売りがゲットしにくく、時間帯も各ジャンルが重なっておりセレクトにも悩んだ。結局 10 本しか見られなかったが、各ライン毎にティーチ・イン等レポートしてみる。

◆1)コンペティション部門

□10/31(土)◇静けさが消えた日(渋谷ジョイシネマ)コンペ部門オープニング作品(公開未定)ゲスト:パオロ・アガッツィ監督

【作品内容】ある村にやってきた旅回りの演劇団の俳優と家庭を捨てて駆け落ちしてしまった村一番の美人。

数年後、この辺鄙な村に有線ラジオを開こうと1人の男がやってくる。はじめは村人の為、と張り切っていた彼だが、次第にマイクを通じての村人たち互いの悪口の場になってくる。男もある家に閉じこめられた美しい娘(実は母の駆け落ちで残された娘)に一目惚れ以来心は上の空。挙げ句娘と実父が近親相姦していると思いこんだ彼はスイッチをオンにしたまま言いたい放題を放送。遂に村を追放される。「予告された殺人の記録」を甘口にしたような寓話的物語。

【ティーチ・イン】・どのような点がボリビア的な作品といえるのか?

丁度1年前に制作したこの作品は今から7~8ヶ月前に地震で壊滅してしまった村が舞台で、この村が映画の中心といえる。ボリビア的というと多分に先住民族にスポットを当てたものが多いがその村はスペイン領だったという点ではボリビアでもコロンビアでも特定しないので逆にボリビアを強調していないとえる。が、言語をはじめ様々な点で普遍的な点が多いのでラテンアメリカを題材にした。

・ボリビア出身の観客からボリビアの映画がコンペ作品17本のうちに選ばれた感想を聞かれて

東京国際映画祭はハリウッドトーンに重きを置かず新しい才能にスポットを当てる点に特長があると思ったので他の映画祭へのオファーを断ってでも来日を果たした。

・ラテンアメリカの映画事情について

映画産業全般が配給や制作の面を含みハリウッド映画にコントロール去れているため自国の映画を上映する劇場がない上、制作面でいえばアルゼンチン、メキシコ、ブラジル以外は体型化されていないので他国との合作の形を取らざるを得ない。又、きちんとしたスタジオがなく、プロのスタッフも仕事のチャンスがなく他の道を模索している。

更に家でテレビや海賊版ビデオを見る習慣の人の方が多く、映画館へ足を運ばないので劇場が閉鎖の事態に追い込まれている。こうした事から当たる映画のみ上映するから専らトップは「タイタニック」

しかしそんな中でこの「静けさが消えた日」は当初の2~3週間の上映期間の予定を8週間にまで延長するほど国産としては珍しく当たった。映画製作は極めて困難な状況だが今後も作り続けたい。

・日本映画を含むアジア映画について

アジア映画はラテンアメリカではビデオの形でしか入ってこないが「菊豆」等良質の作品もビデオで知ることが出来た。ハリウッド作品以外の作品はほとんどビデオで見られる。

監督はボリビア国籍のイタリア人で、ティーチ・インはスペイン語で行われた。この作品は長編第3作目。ラテンアメリカの映画が日本人の目にどのように写るかが興味深かったという。小柄で髭をたくわえた静かな語り口の監督だが、ティーチ・イン後にサインを求めたところカタログの自分の顔写真を指して「変な顔」というので「本物の方がハンサムですよ」というと照れてしまうようなちょっとシャイなところのある人だった。

□11/4(水)◇レクイエム (渋谷ジョイシネマ)*公開未定アラン・タネール監督ゲストの来日なし

【作品内容】

7月最後の日曜日のリスボン。港で今は亡き詩人と待ち合わせをしていたポールは昼と夜の時間を間違えてしまう。あいてしまった 12 時間の間に過去と現在を自由に行き来しながら様々な人物に会う。

愛していた女性の自殺はやはり故人となった親友の作家の何か関係があるのか?ジプシーや故人の力を借りながら若き日の父や、美しかった恋人と再会を果たしていく幻想的な物語。

ゴーストたちとの再会シーンでは「海の嘆きのサラダ」等ネーミングも楽しい奇妙でユニークな食卓もみどころ。

□11/6(金)◇レッド ヴァイオリン(渋谷ジョイシネマ)*日比谷シャンテ他にて公開予定ゲスト:監督 フランソワ・ジラール、プロデューサー ニヴ・フィッチマン東京国際映画祭 最優秀芸術貢献賞受賞

【作品内容】

カナダ。通称「レッド ヴァイオリン」と呼ばれる名器が今まさにオークションにかけられようとしている。その中には有名な鑑定士や中国からのバイヤー、イギリスのとある財団、電話参加のイタリアの修道会が買い付けに来ている。

彼等は何れもこのヴァイオリンとどこかで因縁のある人々だ。17 世紀にイタリアのマエストロが妻アンナの出産に作製したヴァイオリンだったが妻は死亡し、だがその魂は彼女をみた占い師の予言通り4世紀にも亘って5ヶ国もを旅してきたのだ。

この名器を手にした者は皆運命に翻弄されてきたが、様々な憶測が飛び交う中、鑑定士は極秘裏の調査で名前の由来とそこから「本物」である事を確信する。

オークション後このヴァイオリンの旅は終焉するのか。美しい映像と音楽、それにミステリーが加わって多方面から楽しめる映画だ。

【ティーチ・イン】

・5ヶ国に亘るヴァイオリンの旅だが、舞台がこのように何カ国にも及ぶ時はよくアメリカ映画等では国が異なっても全て英語の台詞を使う場合が多い。が、この作品では全てその国の言葉を使用した訳は?

言語や音楽はその国固有の文化の一端。監督もフランス系カナダ人で 20才から、製作のフィッチマン氏も8才から英語を覚えたが、国の文化紹介には言語から入るのが一番早いと思うので。

現地スタッフとも言語の点は多少不安を感じたが、一つの作品つくりという共通性があったので何とか乗り越えられた。

・撮影秘話があれば

中国での撮影許可が難しかったが、この地をラストにスタッフ一同家に帰れるので嬉しかった。また、作品中の文化革命をリアルタイムで生きた人々も出演してくれてその頃への思い入れがあって良かった。

・ヴァイオリンは「無伴奏・シャコンヌ」はじめ題材として取り上げられる事が多いし、この作品とよく似た内容の著作物もあるが製作に当たってそうしたものは参考にしたか

この作品は5年前から温めていたのだが作品化にあたってリサーチ中アシスタントが偶然この作品によく似た小説「アントワネット」をみつけた。が宝石や車や様々なものが時代を経て色々な人の手にわたる話は多々あるので著作権侵害等にはならないだろうと作品化に踏み切った。

・ヴァイオリン演奏のジョシュア・ベルは作品に出てくる少年の音色も含め全て彼一人の演奏か

ジョシュア・ベルはニューヨークの若手ヴァイオリニストで今回の音楽は全て彼の手による。ただ、リアル感を出すためにオーストリア編の少年は9才で俳優ではなく実際にヴァイオリンを弾ける子を起用。

・レッドヴァイオリンは様々な人の手に渡った末、このラストでは鑑定士の娘の処で落ち着くように見えるがこの楽器の旅はここで終わりになるのか?

製作のフィッチマン氏の答えはシリーズものをつくれるので終わりにしなくても、、、というもの。

監督の答えは「アンナの魂が彷徨した挙げ句このヴァイオリンを知り尽くしている鑑定士の手に渡ってはじめてやすらぎを見いだせたとも考えられる。続編はどうかな?」

・カナダ出身の監督にはクローネンバーグ、A.エゴヤンはじめユニークな人が多いが。

映画産業に於いてアメリカはカナダもほぼ国内と同じように考えて、カナダ独自の映画を無視している。アメリカの介入で才能が開花出来ないでいる人も多くいるのでユニークでなければ対抗できないからこうした人々が出てきたのではないかな。 

*中国での撮影許可の困難さは近頃公開されたR・ギア主演の「レッド・コーナー」でも内容の過激さもあって国内での撮影は許可されず、とうとうカリフォルニアに巨大な中国の町並みを再現してしまったという話を聞いたばかりだったのでよくわかった。

また、ボリビアの監督の話といい、どうもアメリカのフィルム統制は各国で障害をももらたしているようだ。

シネマプリズムのビデオプログラム「ヨーヨー・マ」のシリーズにも出品している2人は前作「グレングールドをめぐる 32 章」に引き続き今回もコンビを組んでいる。フランス系カナダ人で小柄なジラール監督とテルアビブ生まれで大柄なフィッチマン氏。穏やかで気さくな2人だった。

舞台挨拶の時に「今日は平日なので来ている人は仕事をさぼったのかもしれないが、映画を見ればさぼったことを後悔しないでしょう」と言っていたので、あとでロビーで「今日は貴方の映画を見るためにさぼりました」と言うと「それは大正解。会社へ行くよりずっと有意義だったね」とにっこり。

フィッチマン氏に「お2人は音楽に関する作品を撮られているけれど、何故音楽にこだわるのですか?もしかして音楽家になりたかったのですか?」と聞いたら「僕は楽器はやらないけれど音楽が大好き。フランソワはピアノを弾くんだよ。

「ヨーヨー・マIII」は僕も監督をしているんだ、ほらね。」と嬉しそうにカタログを開いて自分の名前を指してくれた。

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◆2)特別招待作品

□11/1(日)◇イン&アウト(オーチャードホール)’98 12/19~テアトル西友他にて公開ゲスト:ジョーン・キューザックの予定が急遽来日キャンセル。来日出来なくて残念というメッセージを襟川クロが代読。

【作品内容】

12 月半ばの公開が決定しているので既にチラシもでまわっていて内容はその方がよくわかるかもしれないが、、、

ハワードは生徒に人気の先生。卒業生のキャメロンは俳優で今年のアカデミー男優賞の有力候補。見事受賞した彼のスピーチでこともあろうに「ハワード先生はゲイです」と爆弾発言。彼との結婚を3日後に控え3年間プラトニックな関係を守り続けながらけなげにダイエットに励んでいた同僚のエミリー先生もこれには吃驚。学校、地域を交えての大パニックに。そこに実は本物のゲイのリポーターがやってきて大混乱。そして結婚式当日。

*ケビン・クラインはご贔屓の役者だし、「トイズ」でお人形を演じたジョーン・キューザックの可愛らしさったらなかったし、結構期待していたこの作品。

アカデミー賞授賞式シーンではキャメロンを演じるブロンドのマット・ディロンも変なら、ノミネート作品自体パロディだし、列席者の中にカメオ出演を探すのも面白いし、何よりノリノリのケビン・クラインを中心に(彼のダンスは一見の価値あり!)

突然ゲイの息子を持つことになった母役のデビー・レーノルズ、やや神経症的なジョーン・キューザック、ハワードの唇を奪うトム・セレック等芸達者が揃ってややオーバーアクションながら文句なく笑える。タイトルは「イン」が「クローゼットランド」のクローゼットと同語でゲイの隠語から。

ただ、最後まで謎だったのはそもそも何故キャメロンがハワードをゲイと言ったか、、、なのだが、先日、監督のフランク・オズの話を聞いていたら「フィラデルフィア」でアカデミー賞を取ったトム・ハンクスがステージで似たような発言をしたことがあって脚本家がそれにヒントを得たらしいとの事だった。

この作品では普段マッチョなトム・セレックのキスシーンはベストキス賞にノミネートされたという事だが、、

K・クラインもそこへの質問が多かったようだ。しかし、さすがの彼。答は「普通のキスの撮影と一緒だったよ。ちゃんと歯を磨いて臨んだだけさ。仕事だからね。」クライマックスの卒業式のシーンでは誰もが、女の子までが、、、ゲイのカミングアウトをするのだが、このシーンを見ていたら、ふと「レニー・ブルース」という古い映画を思い出してしまった。

過激な言葉を連発し、大統領までこきおろした芸人レニーが、「ニガーって言葉だってみんなが使わないからそうする事で差別用語になってしまう。

でも日常的に使えば差別でも何でもなくなって普通の言葉になるのに」というシーンがあって言葉が変わるだけで何時の時代も同じだな..何て。

それにしてもゲイの好みという事でやたらにバーブラ・ストライサンドの名が出てくるのだが、これってゲイを語るキーワードなのだろうか?誰か教えて、、、

◆3)シネマ プリズム

□11/1(日)◇オール・ザ・リトル・アニマルズ(渋谷エルミタージュ)*公開未定ゲスト:ジェレミー・トーマス監督

【作品内容】

ボビーは子供の頃の事故が原因で軽い障害があり、今でも定期的に通院をしている。母が亡くなってからは抑圧的な継父のもとで暮らしているが、ある日母の遺産の店の経営権の放棄を迫られる。

生前母に決してサインをしてはいけないと教えられていた彼は、署名に抵抗したため可愛がっていた鼠を殺され着の身着のまま家出をしてしまう。

ヒッチハイクしながら祖母の元を目指している途中、道路に飛び出した動物を故意にはねようとした運転手と揉みあううち車が転倒、そこへ不思議な老人が現れ、そんな悪い人間は死ぬに任せて放っておけという。

過去に何か陰を背負って生きているサマーズというその老人は、交通事故で死んだ野生動物達を葬ってやる仕事をしている。

ボビーは老人の仕事を手伝いながら森の中で彼と暮らし始める。父との間に決着をつけるべくサマーズと共にロンドンへ戻るが、、、

【ティーチ・イン】

・映画化へのいきさつを

原作者は 1972 年に亡くなるまでに小説は2作のみという寡作な作家で、この作品はごく初期のもの。約 30 年程前の 20 代でケン・ローチのアシスタントをしていた頃に作品と出会い、いつか監督をする時には最初の作品にしようと決めていた。

・何故映画化まで30年も経ってしまったのか。

初めての製作作品「シャウト」の成功後、自分の作品の製作となるとどうしても夜しか活動出来ずプロジューサーとしての仕事に流されてしまって年月が経ってしまった。

・今回は審査員長としての来日なのに自身の作品も観客である我々に審査させてくれて嬉しいが、もし 20 代の頃映画化していたら今と違った作品になっていたか。

当時は自分自身や子供の未来を念頭にエコロジーを考えいたが、今のように内容を深く掘下げることが出来たか分からない。映画を創ろうと思ったエネルギーは当時と同じだと思っている。

また、これまで素晴らしい監督達と多くの経験を積めた事は大いにプラスとなった。脚本は妻が担当し、そこから得た事も多かった。多くの準備期間を経て映画は完成するものかもしれない。

・原作と脚本との違いは

1968 年の作品なのでこれを現代に置き換えた。1968 年といえばヒッピーの時代と言われる頃だが、現代の若者にも通じるものがあると思う。また、原作はボビーの主観で展開するがこれを内容的なものに採用し、物事をすべてシンプルな対称、例えば太っている人(継父=悪 対 痩せた人(サマーズ)=善、サマーズのいる田舎=良い 対 ロンドン(都会)=良くないといった具合に分けている。

・現代に置き換えたとはいえ、何となく 60 年代の感じがするが。

音楽を担当したリチャード・ハリーと2人で「ここには 60 年代の香りがあるようだね」とよく言っていましたが、1968 年は自分が 19 才の時で無意識にその頃の感じが出てしまったのかもしれない。

・ロケ地がマン島になっていて全体的にケルトっぽい感じがするが特に意識したのか。

マン島はこの作品の資金源となった場所であり、何となく古い雰囲気を漂わせている事とと音楽もケルトっぽくしている。

・ボビーがラストで継父を殺害するがこれはエディプスコンプレックスの表現とみなしてよいのか。

継父を殺す事でボビーの中の悪魔的なものが去ったとも考えられるが、登場人物は全てちょっと変わったモラルを持っている。サマーズは聖人として描かれてはいるものの過去には妻を殺害してるし、ボビーに言わせれば彼の亡くなった母親は継父に殺されたわけで対極に位置する筈の2人だが、妻殺しという共通点を持っている。

*審査委員長作品の特別上映なんぞ銘打っていたのでさぞかしチケットは売り切れてしまったかと、当日は慌てて並んでみたものの結構空席が目立っていた。

監督自身はとても落ち着いた雰囲気の人で、質問にはよく考えながら誠実に答えていてとても好感が持てた。コーンウォール地方の厳しいが美しい風景と監督の人柄がダブって見えた。

英国映画祭でも「ラブ&デス」に出演していたジョン・ハートはここでも風変わりな老人を好演している。やはり英国映画祭の「ベルベット・ゴールドマイン」で来日予定だったクリスチャン・ベールがボビーを演じているが、事故の後遺症のせいもあって保護され、空想の世界で生きてきたひ弱な存在でしかなかった青年が徐々に成長しいく微妙な演技もなかなかだった。 

蛇足ながら、打ち合わせの為か、終映後のロビーにケノビッチ監督らが来ており、毎年審査員にはお目に掛かる機会がなかっただけに(特に彼のファンの私としては)少しでも話が出来たのは嬉しかった。

□11/7(土)◇恋の秋(シアターコクーン)*日比谷シャンテ他にて‘98 11/28日~公開ゲスト:ベアトリス・ロマン(女優)

【作品内容】

エリック・ロメール監督の四季シリーズ完結編。マガリは離婚後一人で葡萄園をきりもりし、美味しいワインつくりに燃えている。息子の恋人が唯一の手伝いだが、不思議と彼女との相性が良い。

そんなマガリを心配して彼女は以前つきあっていた哲学の教師を紹介すべくお膳立てをする。一方マガリの親友イザベルは内緒で新聞の交際欄に掲載。

応募してきた中年の紳士と打ち合わせの為数回会い、娘の結婚式での出会いを設定する。当日、何も知らないマガリだったが、この出会いに何か不自然さを感じとり親友を問いつめる。隠し事をされた事に一度は腹をたてるが、、、

【舞台挨拶】

作中と同じぼわぼわのソバージュで現れたロマンさん。エリック・ロメール監督との仕事が多い彼女は監督の人柄等を質問されるが、「この質問がくると思っていました。やはり来たのですが、心の準備が、、、」と言いつつ「本をよむのが好きです」とか何とか..何だかよく分からない受け答えだった。

終映後も是非一言観客に言いたい。と言って再登場したもののやたらに「ありがとう」を連発しただけ。写真撮影タイムには舞台でいきなりしゃがみ込んでしまったり、結構お茶目?

*20 分前の開場だったが2時間前位から長蛇の列で、入場してみると2階席までびっしりの人気プログラムだった。70 代の監督の若々しい感性が定評だが、今回は中年期にさしかかった大人の女の恋心を描き、人間、恋は年齢じゃないのね。という元気の出る作品だ。

最後に流れる音楽を聴くだけでも観る価値あり。お見合もどきな事は珍しいお国柄、それをあえて描いている点も面白いがハッピーエンドを予見させるエンディングながらマガリの心の揺れが見ていて微笑ましい。四季シリーズの最後をちょっと枯葉色のイメージに実りのイメージが加わって友情と恋と美しい風景の秋で締めくくったロメールの粋。

*シネマプリズムではこの2本の他に、11/8(日)のカザフスタン映画「殺し屋」を見る予定だったが、フィルム未着で払い戻しになってしまった。(この時払い戻しの憂き目に遭った人々は12/17と19に京橋での上映の通知が来ました。観賞後にまたレポートする予定)

鳥野 韻子

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◆4)協賛企画:カネボウ国際女性映画週間(シネセゾン渋谷)

□11/1(日)◇輝きの海:オープニング作品’99春公開予定ゲスト:プロデューサー ポリー・タプリン

【作品内容】

今世紀初頭のイギリス、コーンウォール地方。断崖の上から子供の手をひき海を眺めている女。

彼女は足の傷で苦しむミス・スウォファーについて看病を続けようとするが、医者が彼女を遠ざける。子供はヤンコの忘れ形見。ウクライナから一族の期待を担って出発した船は難破。

ただ一人の生き残りとしてたどり着いたこの村で出会った孤独な少女エイミーと彼は排他的な周囲にめげず結婚。が、嵐の晩言葉の壁がヤンコの命を奪ったのだ。

はじめからヤンコに好意的だった医者もエイミーが彼を見捨てたと思って嫌っていたのだが、スウォファーに語るうち彼の心も氷解していった。

【舞台挨拶】

この話は舞台を 100 年以上昔にしているが基本的にはラブストーリー。しかし愛は国境や人種、時代に無関係だと言う事を描きたかった。ジョゼフ・コンラッドの原作を脚本化し、作品にするまで約3年間かかった。

本来なら監督のビーバン・キドロンも来日したかったのだが、彼女は映画制作中に妊娠、出産して果たせなかった。彼女は以前も制作中に妊娠、出産を経験している。

*女性映画週間のオープニングという事もありゲストが一同に舞台に上がったが、フィリピン映画の中で助産夫を演じたということで今年は初めて男性も加わり喝采を浴びていた。

ヒロイン役のレイチェル・ワイズは英国映画祭では「アイ・ウォント・ユー」でもヒロインを演じており、そのミステリアスな美しさにこの作品ではどこか凛とした強さの加わった演技でなかなか良かった。足の傷のためじっと動かず物語の進行役となるキャシー・ベイツや、医者のイアン・マッケランといった演技派そろいの作品だ。

相手役のヴァンサン・ペレーズも今回はロシア人の役で、言葉が通じない分表情や仕草での表現を要求され、真に迫った演技を見せている。難破船でたった一人生き残ってしまった悲しさと彼女への優しさをたたえた目の表情には女性ファンをまた増やすかもしれない。

6月のフランス映画祭での彼の人気からしてチケットの売り切れを心配した私は発売日に購入してしまったが。ラヴストーリーとしては特に目新しさがあるわけでもないが、結構泣かせる。

この監督の作品は「迷子の大人たち」や「3人のエンジェル」があり、現実を描きつつもどこかメルヘンを漂わせていて可愛いところがあるのだが今回の作品はそれらに比べると重たい仕上がりになっている。

原題は Swept from the sea。幼い息子に人間は皆海から来る、あなたのパパもここから来たの、と説明するが小さい村の中で外国人やちょっと他人と異なっているというだけで、村八分になってしまう心の狭い人間に比べ海は何と寛大な事か。

コーンウォールの美しい風景と残酷な人間の心理が対照的だ。

□11/2(月)◇自由な女神たち’99春公開予定ゲスト:なし

【作品内容】

デトロイトに住むポーランド系の大家族。父はヘビースモーカーのパン屋。母は掃除婦として働きながら7人の子供に孫の世話、しかしまだまだ色香は衰えず不倫までしている元気者。一人娘のハーラは思春期真っただ中。幼い弟と煙草をふかし毎晩窓から家を抜け出しては夜遊びの毎日だ。

そんな中夜道で知り合った警官と恋に落ち妊娠。カトリック教会の行事で未婚女性の代表に選ばれていたハーラは妊娠を隠して出席して騒動に。その相手が結婚を拒否しようとしたので一家を上げて抗議に乗りだし、めでたく結婚。

実はハーラの母も長男の妊娠で結婚、その長男も子供が出来たので結婚していた。こうした逞しい女性達を中心にまた大家族になっていく、、、

*11/1~2は女性監督の特集という事で、この作品の監督もこれが初監督作品になるという事だった。平日の最終回だったが座布団+立ち組で場内大混雑。立ち見も断られる人まで出た。

まだこの映画祭がこんなに過熱する以前に知り合いに連れてきて貰ったのがこの女性映画祭だったのだが、平日の最終回などは空席が目立ちぎりぎりに滑り込んでも余裕だったのにここ数年で観客が倍増している。

原題は Polish Wedding。祭りのシーンの音楽等も独特で、ここがデトロイトと知らされていなければとてもアメリカの映画と思わなかったかもしれない。

子供の出生で繋がっていく大家族。子供を産み育てていく逞しい女性達。オープニングでずっと流される聖母マリアへの賛美歌が彼女達へのエールのように聴こえたのは私だけだろうか。

音楽といえば落語の出囃子のように各登場人物のテーマが決まっていてこれがなかなか面白い。いつも煙草を耳にはさみ、無駄口はきかず何事にも飄々としていながら内心はナイーヴな父親にガブリエル・バーンが扮し、とてもいい味を出してる。そんな父が大好きな娘のハーラにクレア・デーンズ。子役出身だという事だが、ディカプリオとの「ロメオ&ジュリエット」以来大ブレーク。その後も「レインメーカー」等に出演し、演技力も伸びてきている。

肝っ玉おっ母さんのレナ・オリンは「蜘蛛女」の迫力そのままに一家の中心的存在にぴったり。丁度この映画祭と時期を同じくして開催されていたオランダ映画祭でも「ポーランド人の結婚」という作品が上映されたが、こちらは寡黙なオランダ人と訳ありのポーランド人の女性の結婚を淡々と美しいオランダの風景の中に描いていて対照的だった。

□11/3(水)◇パッション・フィッシュ’99夏公開予定ゲスト:プロデューサー マギー・レンジ

【作品内容】

昼メロを病室で眺めている女性。出演者は彼女自身。彼女、メイ・アリスは事故で下半身不随になってしまい、退院後は故郷のルイジアナで過ごすつもりだ。

家にたどり着いたものの絶望した彼女は一日中アルコール片手にテレビを見るだけ。家政婦を雇っても人生相談を聞かされるばかりだし、彼女自身の我侭もあってなかなか居着かない。

そんな中かつての麻薬中毒を隠して新しく看護についたシャンテールとはぶつかりながらもうまくいきそうだ。彼女はメイ・アリスの為に家とその周辺を車椅子に適した状況に変えていき、その甲斐あってか頑ななまでに外出を嫌っていた彼女も父の残した暗室を使って写真を趣味にするようにまでなる。

幼なじみのレニーと川遊びに行ってそこで「パッションフィッシュ」を見る。そんな頃彼女に女優復帰の話が持ち込まれるが、、、

*私事だが、ここ数年岩波ホールの“エキプ・ド・シネマ”になっていて女性映画週間では毎年会員の希望で招待券が入手出来る。実は今回一番見たかった映画がこの作品だったのに、残念ながらこれだけは招待券が出なかった。

また、この日はかなりタイトにスケジュールを組んでいたので折角購入しても無駄にするのが怖かったのだが、たまたま初日にこの主催の高野悦子氏とお話する機会があって、その折にタイトルに無関係で入れるという夢のようなチケットを頂いてしまったのだ。

しかもペアで。勿論高野氏とはそれまできちんとした面識はなかったのだが、お陰でこの作品も友人のシート確保作戦もあって見ることが出来た。この場をお借りして高野氏に感謝申しあげたい。

さて、この作品は上映時間が2時間以上なのだが驚くほど長さを感じさせない。特に華々しいクライマックスもないのだがすっかり引き込まれてしまう。

メイ・アリスの最初の頃の絶望からくる行動、そして心の癒し、、、内容は全く別物ながら何となく「モンタナの風に吹かれて」を彷彿とさせる。

それにしても彼女がテレビ漬けの毎日の中で見ている映画が何と「何がジェーンに起こったか」暗い怖さの演出。そして所々に散らされたユーモア。ユーモアって「にも拘わらず笑うこと」とある哲学の先生が定義していたが、そんな上質のユーモアだ。

この日は女性プロジューサー特集という事で来日したマギー・レンジ氏は長年ジョン・セイルズ監督と仕事をしてきたという人。パンフレットの写真よりはるかに美人で大柄な女性だった。

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□11/3(火)◇黒い雨ゲスト:監督 今村 昌平、プロデューサー 飯野 久女優 田中 好子

【作品内容】

井伏鱒二の原作の映画化。広島に原爆投下されてから5年後の小さな村で叔父夫婦と暮らす矢須子。投下当日は爆心地から離れた処にいたもののいわゆる「黒い雨」を浴びてしまったためかなかなか縁談がまとまらない。

原爆症で悩む近隣の人々は次々とあっけなく死んでいく。あんなに元気で働き者だった叔母まで犠牲者になった。そんな折、臀部の小さな腫れ物にはじまった矢須子の身体も髪の毛が抜けだし、徐々に蝕まれている事がわかる。

そんな彼女の心がやすらぐ時は戦争で精神バランスを崩してしまった近所の青年との語らいだ。「条件の良い」縁談より彼との結婚を望むようになっていた矢須子の容態が急変し、彼に付き添われて救急車で病院へ連れて行かれる。その後ろに「きっと治るよ」と祈るように呟く叔父の姿があった。

【舞台挨拶】

監督 今村 昌平この映画について被害者意識が濃厚だとか色々言われたが、20 万人の犠牲者を出したのは事実なので何と言われてもやはり伝えて行かなくてはいけない事だと思う。

製作 飯野 久映画化に6年の歳月がかかり、今村監督が撮影している間にも東京とを往復して資金集めに奔走していた。今回今村監督作品の上映というので、「うなぎ」にしようか、今上映中の「カンゾー先生」にしようかと迷ったがやはり 10 年前とはいえこの作品を選んだ。

女優 田中 好子撮影当時の思い出といえば監督はあんな優しいお顔をされていて、とても厳しい方で撮影は岡山のふるさと村で長期に亘り敢行されたが、その間たとえフリーの日でも現場を離れさせてくれなくてちょっと大変だった。自分は矢須子を演じさせて貰って成長したと思う。原爆のような悲劇は2度と起こってはいけない。

*この作品の前には「パッションフィッシュ」を見ていて、実はこの日は翌日会社という事もあって打ち止めにするつもりだった。が、高野氏にチケットの御礼を言いに行ったら「貴方、今日のご予定は?」と仰るので帰るのみ、と申しあげると「是非次の作品もご覧になってね。」とまたチケットを頂いてしまったのだ。

「黒い雨」は中学生の頃原作の一部を読まされたり、以前テレビで放映した際もちらっと見たりしていたのだが、どうしても途中で怖くなって最後まで見通せなくていた。

画面上とはいえ、痛い事をしているシーンには弱い。当然スプラッターやオカルトものはだめだが、非現実的な分救われる。が、セットとはいえこの作品のような実話の再現は辛い。現実の方がもっと残忍だったに違いない事を想像してしまうからだ。

その日も最後に見るにはあまりに重たいし、と後込みしていたのだ。だが、こうなっては最早逃げられない。覚悟を決めて見ることにした。テーマとしては重いのだが、今村流のユーモアが散りばめられていて全体的にメリハリのある作品に仕上がっている。

田中好子さんの言葉通り、監督は舞台挨拶でも優しいお顔をしてさらりと重い事を言ってのけられる方なのでやはり作品にもその人柄が反映されるのだろう。

杖をつかれてのご登場だったがしっかりとしたお話ぶりだった。昔の作品のせいか、方言のせいか多少台詞で聞き取りにくいところもあったが、英語の字幕のお陰で理解したりした。映画の中で原爆症にアロエが利くといって病院が薦めるのだが、戦後5年位で既にアロエがはいっていたなんて、と吃驚してしまった。ちなみに英語ではただ Herbal となっていた。

鳥野 韻子

英国映画祭第2部

◆英国映画祭第2部エブリバディ・ラブズ・サンシャイン10/31(土)*’99年春公開予定

第2部からは東京国際映画祭の開催と連動して会場を澁谷東急から主にシアターコクーンに移しての上映。この作品の監督、アンドリュー・ゴス氏とこの後の上映予定の「マーサ・ミーツ・ボーイズ」の監督ニック・ハム氏、そしてブリティッシュ・カウンシルのマイケル・バレット氏が登壇してのオープニングとなった。なお、「エブリバディ・・・」は今回の映画祭での上映がワールドプレミアとなる。

上映開始前に2監督に最近の英国映画の躍進ぶりについて、その理由を一言ずつ。

イギリスにはロケーションにふさわしい風景や場所が多いのと多方面で新しい人材が生まれていることと、そうした新しい人材を生み出す市場や宣伝等フィルムリリースに変化がしょうじてきている事からだろう。

作品内容

出所して来た2人の男をカメラが俯瞰で捉える。ヤクザな世界から足を洗おうとしているレイと再び2人で仕切る事を楽しみにしている従兄弟のテリーだ。レイは得意のダンスで身を立てようと仲間達とステージで踊ることに意欲を燃やし、恋人も出来る。が、2人の収監中に勢力を拡大したチャイナマフィアとの抗争を押し進めようとしているテリーはそんなレイを見て面白くない。次第にテリーのレイへの執着ぶりは狂気をきわめ、レイを独占する為には手段を選ばなくなる。そして、、、狡猾な参謀役にデビッド・ボウイを配し、マンチェスターの裏社会をクールに描いている。

舞台挨拶:アンドリュー・ゴス

・監督自らの体験がベースという事だが、何故映画化しようとしたのか?

体験から、、と言っても私自身は別にチンピラではないよ。(笑)だが、マンチェスターという土地の厳しい人間関係を傍観者として見てきたのでそれを描こうとした。イギリスといってもヒュー・グラントやケネス・ブラナーのような紳士ばかりいる国ではない、というこうした面も分かってもらいたかった。

・映画化に困難だったことは?

俳優陣は皆友人なのでとてもやりやすかったが、一番困ったのは資金面だった。特にこれは裏社会の事を描いているので余計銀行が渋った。

・俳優にデビッド・ボウイやゴールディ等の有名人を起用した訳は?

ゴールディは元々友人で、キャラクターもぴったりだったし、育った環境も自分と似ていた。従兄弟という難しい役を巧く演じてくれた。

デビッド・ボウイに関してはあれだけのスーパースターを使うと現実性がなくなりそうな気がしたが、レコーディングを一緒にしたこともあるし、彼自身、驚くほど入念な役作りをしてくれた。

ワールドプレミアという事で何となくわくわくして見に行ったが内容はかなりシリアス。しかし冒頭の乾いたカメラワークからしてかなりスタイリッシュな作品でとてもクールな仕上がりになっている。全体の抑えたライティングも良い。

「フェイス」とまた違った表現の裏社会だ。別枠の「ブリティッシュ・カルト&クラシック」部門で旧作を8本上映していたが、そこでも「地球に落ちて来た男」や「戦場のメリー・クリスマス」で出演していたデビッド・ボウイ。

さすがにその頃の美貌?はなかったが、何となく白いものが混じった無精ひげを生やして、しかし昔気質のスマートなギャングを演じていた彼、映画の中でポケットチーフを台紙に縫いつけているシーンには何となく笑えた。

オープニングという事もあって花束の贈呈何ぞ行われたのだが、記念撮影に彼のたっての願いとかで観客をバックに2枚撮った。これはお母さんに「僕は日本でもこんなに有名何だよ!」と見せたいからだそうだ。結構ポーズ決めたりしてお茶目だった。

(そういえば一昨年前にイランのアボスファズル・ジャリリ監督がアジア秀作映画週間のラストを飾った時、主演の男の子から依頼されたと言ってこちらはステージから観客を撮影させてくれ、と自前のカメラを取り出してシャッターを切っていた)

写真で見ると両監督はほとんど同じ位の身長なので、大きさを感じないかも知れないが、実は彼等はかなりの大男なのである。と、言ってもハム監督には近くでお会いしていないので実感が湧かないのだが、ゴス監督はたまたま終映後しばらくしてコクーンの前に戻ったら2~3人のファンにサインを求められていたのでちゃっかし私も便乗した。

で、そばに行ってみて吃驚、見上げるような背の高さなのだ。映画の中でもダンスシーンでその脚の長さは充分堪能したものの間近で見ると、私のお腹の高さ位から脚が生えている!

サインして貰っていたらたまたまオーチャードホールの正面玄関辺りで突然悲鳴がわき起こり「何で悲鳴何だ?」という彼にスタッフの人が「誰か着いたんでしょう」

(この時は「アルマゲドン」で来日したブルース・ウィルスやベン・アフレックが丁度到着したところだったのだが)と説明するとちょっと背伸びをして「誰か来たみたいだ」。そう、彼の目線ではどうやら見えてたらしい。これが彼にとっては初監督作品という事だが次回作が楽しみだ。

◆サンセット・ハイツ 11/7(土) *公開未定ゲスト: コルム・ヴィラ(監督)

作品内容

荒廃した近未来の北アイルランド。町中の不良少年達は自治組織(といってもその行動は暴力的でほとんどギャングとして怖れられている)の大人達に輔導され、重犯は再犯しないよう、その脚を撃たれたりの制裁を受けていた。その頃幼児連続殺人犯が横行し、最愛の息子も犠牲者となった父親の為、対立している2つの自治組織が犯人探しに一時休戦して手を組む。

犯人と目されたのはは孤独でどこか変わった老牧師だった。彼等はサンセットハイツと呼ばれる処刑場に彼を連れていき射殺するが、それでも幼児殺害は止まらない。

牧師の飼っていた犬が犠牲者の子供の下着をくわえてきたり、彼に酷似した風体の男がみかけられたりしたため念のため死体を暴いたところ死体は消えていた。第2第3の容疑者が浮かぶが彼等も殺されてしまう。挙げ句牧師の名前でホテルにチェックインも確認される。

果たして続く幼児殺人事件は牧師の怨念の業なのか、それとも・・。意外な結末が。’98 年カンヌ映画祭での上映で「ユージュアル・サスペクツ」風ストーリーが評判となった作品という。

ティーチ・イン

・作品化にあたってどんな苦労があったか?

ロケーションの多い脚本だったので(ちなみに脚本も監督)予算不足に悩んだ。

・ベルファスト出身の観客からの発言:北アイルランドというと政治的な問題に焦点が当てられる場合が多いがこの作品では、その点あまり強調していない点が良い。

政治的な事よりスリラーとしての作品にしたかったから IRA 等の関連は出していない。

観客はアイルランド人だけではないのだから映画の中でその辺の状況を説明しなくてはならない。例えばロミオとジュリエットを宗教劇として描いたらあまり映画的でないのと同じだと思う。

・タイトルのサンセットハイツは実際に存在する場所か?

実際はない。イメージとしてはストーンヘィンジ風に舞台をつくってみた。

・何故容疑者として牧師を登場させたのか?

孤独で少し頭の変な老人となるとそうしたもののターゲットになりやすい。キャラクターとして頭に思い描いていたのはフランス」中世に実在したジール・ド・レイという人物。彼は約400人の子供を殺害した史上初のシリアルマーダー。相手がかなり手強い者でなくては対立するギャングが手を結ぶはずがない。

・アイルランドが舞台の作品に容疑者として牧師を登場させたのには理由があるのか?

ベルファスト辺りでは今日でもレイ・プリチャーと呼ばれるレイ(説教を書いた看板)を下げた無資格の牧師が辻説法していたりする。そういういい加減な意味でプロテスタントとしての牧師を起用した。

・近未来という設定だが、ここでは北アイルランドは独立していて EU にも加盟しているようだが(車のナンバープレートから)何故犯罪都市としての舞台を監督ご自身の出身地を選んだのか?

未来都市としてはリドリー・スコットも「ブレード・ランナー」でロスを舞台として使用しているし、映画においての未来は必ずしもその通り実現する訳ではない。神話的に未来を描いてみたかった。

・とてもドキドキするような恐いシーンにふと笑いを誘う部分が多々見られるがこれはわざとか?

これでもカットしているのだが主人公が緊張してるシーンにコミカルな部分を加えている。

・ラストの方で車椅子からピストルが出てくるなど変わった仕掛けがあったが何かヒントがあったのか?

今 45 才位の男で彼が 20 年程前車椅子で犯罪を犯していた。それがヒントとなっている。

パンフレットの説明には悪いが「ユージュアル・サスペクツ」ほど込み入ったどんでんがえしではないが、次のシーンは気味悪いかも・・・と思わせるところが多くて痛い場面の嫌いな私には十分怖かった。

実はこの上映は朝 10:35~で低血圧で朝に弱い私としては前売りを買う勇気がなかったのだが、上映未定の文言に弱い体質?と怖いものみたさ?には早起きも可能だった。

その怖いシーンにはわざとコミカルなものを取り入れた、という事だったがこの「怖い」と「笑い」は表裏一体だとよく言われる。日本でも公開された「シューティング・フィッシュ」のステファン・シュワルツ監督も前回の映画祭で「コメディの次はサスペンスを撮るつもり。

対極にあるようだけど同じなんだよ」と言っていたのを思い出した。さて、映画祭期間中に開催された国際シンポジウムにもゲスト出演していたヴィラ監督。

監督は北アイルランドの出身だがヒッチコックといい、彼といい英国近辺?のサスペンス監督は怖いものをつくる割にご自身は何となく親しみのある感じの人が多いのだろうか。

そういえば体格のいいところも共通しているかも。写真はバッチリとカメラ目線で、これはちょっと話をしてからお願いしたらポーズしてくれたところ。ウィットのあるキュートな人柄で、「とても楽しめましたよ。でもとても怖かったですよ」と言うとニヤッと笑って「怖がってくれた何て、それでは僕は大成功だったわけだね」と喜んでくれました。

□ D □  フェアリー編

◆フェアリー・テイル~ア・トゥルー・ストーリー~ 11/3(火)*’99年春公開予定ゲスト:チャールズ・スターリッジ(監督)

作品内容

英国で20世紀最大の謎といわれる「コティングリー妖精事件」これは第1次大戦下従姉妹のエルシーとその家に預けられたフランシスが森の中の2人の秘密の場所で美しい妖精達を見ることに端を欲する。

エルシーの父のカメラを借りて彼女達は妖精を写真に収めることに成功するが、大人達はそれを信じない。そこで妖精の研究家としても名高いコナン・ドイルに相談するとどうやら紛れもなくその写真は“本物”らしい事がわかる。

やがて媒体に掲載された少女達の記事から執拗な新聞記者により場所が特定されてしまい妖精捕獲ツアーまで出る始末。これには静かに森で暮らしていた妖精達も引っ越しを考えざるをえない。ドイルの友人の有名なマジシャン、フーディーニのショーを見るためロンドンへ行った少女達は人気者になるが・・・

ティーチ・イン

監督の飛行機が到着遅延のため上映時間も多少送らせた関係から当然ティーチ・インも遅れ、その為私事ながら次の鑑賞予定の時間とのかねあいでティーチ・インを最後まで聞くことが出来なかった。ご了承頂きたい。

・何故これを作品に選んだか?

英国では「フェアリー・テイル」といえば普通子供のお伽話の事、つまりファンタジーを意味するが、そこに副題のトゥルー・ストーリーが付属する事でその矛盾の面白さがあったから。

・俳優陣の中にハーベィ・カイテルやメル・ギブソンといった人々を起用した訳は?

メルはアメリカにスタジオを構えていてなかなかスケジュールが合わなかったが、たまたま1日だけの撮影だったので出演してもらえた。感動的なシーンに彼の出番はフェアリーテイルにふさわしいと思った。

(ラストでフランシスが待ち望んでいた父が戦地から戻って来て彼女を抱き上げるシーンだが)また、ハーベィ・カイテルはコナン・ドイルを演じたピーター・オトゥールと共に重要な役回りだがドイルが作家でとてもロジカルなのに対してフーディーニは対称的な位置で良いコントラストとなっている。)

まるで絵本から抜け出たような背景と可愛らしいフェアリー。とても夢のある題材ながら結構皮肉が利いている。今でも同じ光景が見られるであろう野次馬的な観光客による自然破壊。

その観光客を誘致する抜け目ない業者達。ついオウム事件の際の上九一色村の様子などが目に浮かんでしまった。一方捕虫網まで持ち出す彼等の足下では「これはたまらん」とばかりに荷車に家財を積み込んで移動するフェアリー達。

ドイルもフーディニも実在の人物で対極にある立場に見える2人がこの少女達の理解者という点も面白い。ドイルの父が病院でフェアリーの絵を描いていたのは有名で一昨年辺りだったか「妖精展」を見にいった時彼の絵を見た。

また、私がフーディニを初めて知ったのはたまたま見ていたTVでトニー・カーティスが彼の自伝的映画に出演していた時だが、仕掛けがあるイリュージョンが売り物の彼がフェアリーも手品も信じる心の共通性で捉えている点も面白い。

監督は飛行機の遅延で空港に到着した途端車で文化村に直行。そのため「日本の印象は?」などと聞かれても「私が日本で見たのは成田とここ文化村だけです」と言っていた。ちょっとお疲れ気味の感じでした。

◆フォトグラフィング・フェアリーズ:11/7(土)*’99 公開予定ゲスト: なし

作品内容

写真家のチャールズは新婚1日目にして新妻をクレパスから救出出来ず、後悔と失意の日々を過ごしている。そこへフェアリーを撮影した写真の鑑定の仕事がやってくる。子供が撮影したというその写真は当時の技術を駆使しても確実に本物と思われ、特に子供の瞳に反映している像は妖精そのものだった。

その頃第1次大戦で子供を失った親などを中心に超常現象の研究会が開かれていたが、その中にはコナン・ドイルもいた。彼と意見交換したりしながら次第にチャールズは妖精に引き込まれていき、ついに自分も妖精の姿を撮影しようと撮影現場に居を移す。

妖精を写した子供の家は牧師の家庭で彼はとても嫉妬深く、妖精を見たくて木に登り転落死した彼の妻への責任の一端はチャールズにあるとして撮影装置を破壊してしまう。

妖精を見るためには特殊な花が必要だが、それを食べたチャールズは妻の幻影をも見えてしまった。以来死に取りつかれていた彼は牧師の死の罪をかぶり死刑を受け入れる。絞首刑の後に彼の見たものは・・・

この作品はこの日時で1回しか上映がなかったので何も考えないで見てしまったが、奇しくも同じ事件を扱った2つ目の作品。

「フェアリーテイル」でのフェアリーと違ってこちらは特殊な花による一種の幻覚作用のような描き方でその動きがとても目まぐるしい。その動きをシャッタースピードを速める事で捉えようとするチャールズ。

こちらの作品では発見者の少女達を巡る大人と思惑というより、それをベースとしたラブストーリーだ。絞首刑後の映像はまるでそれまでのすべてが彼の白昼夢だったようにもとれる。

ベン・キングスレー演ずる嫉妬深い牧師や TV シリーズ「シャーロック・ホームズ」でワトソン役でお馴染みのエドワード・ハードウィックがこの中ではその生みの親のコナン・ドイルを演じていたりと達者は俳優陣が脇を固めている。

□ E □  しゃれた大人の恋物語

◆ガールズ・ナイト 10/25(金)*’99年春公開ゲスト:ニック・ハラン(監督)

作品内容

奔放なジャッキーと大人しいドーンは幼馴染み。同じ工場でパート勤めをしている2人の唯一の楽しみは金曜夜のビンゴ大会「ガールズ・ナイト」。ある日ドーンが 10 万ポンドを当ててしまう。賞金はいつも仲良く分けていた2人はこの大金も分け合い、亭主に愛想を尽かしていたジャッキーは工場を辞めて別居。

しかし勤務中に倒れたドーンは脳腫瘍を発病していた。家族には病名を言わずにいた彼女だが、ジャッキーは見逃さなかった。そして彼女の永年の夢だったラス・ベガスへの旅を計画する。

ティーチ・イン

・一番伝えたかった事は何か

辛い話の中に尊厳や希望を描きたかったので、ラストはこのようなものになった。これは脚本家のケイ・メラーの実体験に基づくものでそこで、オープニングに“デニーズに”という言葉が書かれている。

実際は行かなかった旅だがそこの部分はややファンタジックに表現している。しかし夫や子供達、そしてジャッキーがドーンを通して皆前向きに変わっていく。

・ブレンダ・ブレッシン、ジュリー・ウォルターズの起用は?

2人は脚本の段階でキャスティングを念頭に書いていた。クリス・クリストファーソンも是非起用してみたかった。

・このところ英国映画が好調なのは何故だと思うか

映画製作に対する自信とそうして製作された質の高い作品への財政的投資。それにより新しい脚本家や監督にチャンスが与えられ、またその中から良い作品が生まれる。

良い意味でのそうした雪だるま的な相乗効果の構造が好調な英国映画を支えている。また、日本においても最近はアメリカの大金をかけた大掛かりな作品ばかりでなく内容の良いものへの評価が高まって来ている。

~会場からの質問~・癌の告知については日本では色々と問題にされているが英国ではどうなのか

基本的に本人にする場合が多い。監督のお毋様の場合のそうだったという。ただし本人の精神状態のは十分留意する。また、その事に対する家族や周囲の受け止め方がポイントとなる。

・バックミュージックにプリティ・ウーマン等のりのいい音楽を使っていましたが。

は大きく2つに分けて「楽しい、面白い」場面にウェスタン調を取り入れ、背景としての音楽は「神様からのギフトとしての命を幸せに生きている」のを表現した。

・これからのご予定は?

丁度今トライスターで撮り終わったばかり。内容はロマンティック・コメディでボーイフレンドのいない若い女の子がコンピューターで理想の完璧な男の子をデザインしてしまうもの。テーマは“ヴィジュアル・セクシャリティ”。

この作品は恋がテーマではないのでこの分類(E:大人の恋)に入れるかどうしようか悩んだが、ベガスで出会う気の良いカウボーイとの関係はラストでドーンの遺品とジャッキーの生き方に関係してくる重要な部分でもあったのでここにいれた。

監督の言う通り病気がテーマだとどうしても暗くなりがちだが、その辺をも英国お得意のウィットを混ぜて乗り切っている。見た後はお涙頂戴というよりはむしろ何だか爽やかな気分になれる。予定のゲストに主役のブレンダ・ブレッシンには期待していたが来日した監督はとても物静かな落ちついた感じの人で終映後のロビーでは1人づつ丁寧にサインに応じていた。

◆アイ・ウォント・ユー 10/25(日)*’99年1/15~公開ゲスト:なし

作品内容

美容院で働くヘレン。そこへ9年振りにマーティンが戻ってくる。実は彼はヘレンとベッドにいたところを彼女の父に咎められ殺して海に遺棄し、刑務所にいたのだった。

今23才になったヘレンは今は DJ の恋人がいる。が、毋が自殺して以来口をきかず楽しみは盗聴と毋の生前吹込んだお伽話のテープを聞くことという難民の少年ホンダや娼婦の姉との関わりから9年前の事件の意外な事実が浮上して来て・・・

「バタフライ・キス」や「ウェルカム・トゥー・サラエヴォ」も記憶に新しいマイケル・ウィンター・ボトムの最新作である。“大人の恋”のジャンルにしてはあまりに残酷で恋にしてはあまりに幼い「事件」。

だがすべては彼等の恋に始まったという事でここに入れてみた。さびれた町、心に傷のある登場人物達。「ウェルカム・・」より「バタフライ・・」を想起させる重い内容だ。

ヘレンの住む家にはプールがあってこのあたりはゆらゆらと揺れるブルー。海辺のホンダ達の家、寒々とした町の風景と、レッドやセピアといった色彩の妙。すべてが幻影のようであり曖昧な過去を暗示しているようにも感じられる。美しいヘレンがその顔で平然とやりのける事実。その目撃者はホンダだけという皮肉。

そしてそのホンダが語り手となっている不思議。この重要な少年役はどこかハーモニー・コリンの「ガンモ」に出ていたモーゼスという名の大人子供の様な少年に似ている。

随所で使われるタイトルでもある「アイ・ウォント・ユー」のメロディが物悲しくストーリーを際立たせている。孤独で寂しい時に見てはいけない作品です。

◆ラブ&デス:10/27(火)*11/28~公開ゲスト:リチャード・クウィートニオスキー(監督)

作品内容

妻を亡くし独り住まいの英国人作家デアスは、文豪として君臨している。ある日文芸作品の映画化といわれる「永遠の瞬間」を見るつもりで雨宿りを兼ねて映画館に入ったところ間違えて別の作品を見るハメになってしまった。

しかもアメリカのアイドルもので、下らない!と席を立ちかけた時彼の目は画面の美しい青年に釘付けになる。丁度美術館で最近見た美少年が横たわるまさに同じポーズで青年は画面にいる。

俳優の名前はロニー・ボストック。その日から彼のマニアと化したデアスは1度も使用した事のないビデオやそれを見る時間の為に留守電を購入したり、初めてレンタル・ビデオ店に足を運んだり。挙げ句“ボストキニア”とタイトルした専用のクリッピングノートまで密かに作る始末。

想いが高じた彼はとうとうロニーのいるロングアイランドまで飛び何とか彼と接触する機会を得るが、ロケで離ればなれになる時がやってきて・・・

ティーチ・イン

・東京は初めてという事でしたが、印象は?

花の蕾みが開くような昼間に対して夜はネオンが森のようでまさに“映画的”体験だった。

・撮影中の苦労は?

同じ英語を喋るのに英国人と米国人は発音も違えば、文化的にもかなり異なる。例えば脚本の紙の大きさもページ割りも違う。

・この作品の見どころは?

異なる文化圏から来た人間とのロマンス。これは世界中どこでも起こるカルチャーギャップだから同じ箇所で泣いて笑える。

・日本の食べ物で好きなものは?

寿司、酒、刺身。今度は納豆」に挑戦するつもり。

・日本映画で好きな作品」はあるか?

10代の頃溝口や小津の作品を見て今迄に見たことのないタイプの映画だと思った。時間や舞台の感覚がかなり異なっていてその感じに慣れる迄が時間がかかった。黒澤や大島の作品は好きだが、それに北野武の「Hanabi」は 1990 年代で優れたロマンティック作品だと思う。

「ベニスに死す」や「ロリータ」の変型といわれているようだが、「ベニス..」にしては明るくて、「ロリータ」にしては偏執的すぎず、むしろアン・リー監督の「推手」に見られるようなカルチャーギャップに、少々ロマンティックなエッセンスを加えたような洒脱な物語と捉えた方が良いような気がする。

堅物でトラディショナルな典型的英国紳士がアイドルに夢中になったばかりに巻き込まれる個人的な文明開化。たまたま夢中になった相手が男の子というだけでここにはそれほど深いゲイ的な強調はないと思う。

誰でも1度位は経験するだろうこうした気分を、たまたまこの作家氏はこともあろうに老年にさしかかろうとしている今経験しているにすぎないのだ。普通なら手が届かない存在で過ぎていくこうした時期を、彼はその社会的地位も後押しして本人に会ってしまうという快挙を成し遂げてしまっただけなのだ。

こうした憧れの気持ちが実に良く出ている。最初にロニーを目にした時のエンディングクレジットが、彼のキャスティングの部分だけ輝いて見えたり、彼に関する情報は総べて知りたい、とせっせと記事を集めた結果、飼い犬の名前まで暗記して夢の中でもロニーに関する口答試験を受けていたり。

まして憧れの彼から貰ったサングラスともなればこれはデアスにとって国宝級の代物になる。これがティーンエージャーの物語なら平凡すぎて特別面白味がないが、立派は先生だから話になるのだ。

自分で自分をおちょくっているジェイソン・プリーストリーもさることながらジョン・ハートはさすがだ。特にあの大好きなアイドルと話す時心の中の憧れと嬉しさと照れを父親的、先輩的な顔で隠している表情などは最高だ。

監督は静かな語り口の何となくのっそりした感じの人で、彼こそあちらの世界の人では...とつい考えてしまった。

◆雨の中の恋:11/5(木)*’99年春公開予定ゲスト:マリア・リポル(監督)

作品内容

役者の卵ビクターは恋人シルヴィアがいながら劇団の仲間とたった1度だけ浮気をした帰宅後彼女に問い詰められて「真実」と言ったため別れてしまう。その後ふと立ち寄ったパブでふいの雨にあって傘を借りる。

傘をさして辿り着いたゴミ捨て場で不思議な人々に会い、彼はシルヴィアと別れる前の時まで遡ることが出来る。そこで彼が見た光景は...一方やり直しの中で今度はシルヴィアが別の人生を歩んでいる。ここでは、彼女もビクターを失いやはり失意でベンチに腰掛けていると...

ティーチ・イン

・映画化のプロセスを

普遍的な内容で脚本が良かった。

・製作に当たり、困難だった点は?

ロンドンのカーニバルは世界でリオに次ぎ大きなお祭りだが、そこでの撮影シーンは人ごみと大音響の中、大変だったが同時に楽しい思い出となった。

・影響を受けた監督は?

母国スペインの監督ではルイス・ブニュエル。そして国際的な英国の監督という意味でアルフレッド・ヒッチコック。

・スペインの監督として見た時の最近の英国映画の動向をどう思うか?

とても身近なテーマを巧く撮っている。そのテーマが世界的にみても通じるものがある。

・日本映画では何が好きか?

うなぎ

・今後どんな映画を作製したいか?

脚本を映画化するには約2年の歳月を要するので次の2年間を費やすだけの価値ある作品を選びたい

この作品の原題は”The man with rain in his shoes”だが、公開時のタイトルは”If only”となっていた。何となくうろ覚えの受験単語の記憶では・・しさえすれば、とか・・なら良いが、という意味で何となくこちらの方が分かりやすいかもしれない。

人間後悔はつきもので、幸福の神様の前髪を掴まなかったばっかりに・・という事が多いものだが、じゃあやり直せれば幸せになれるのかというと、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で命拾いしたドクは別として、こと恋愛となると必ずしもそうとはいえないかもしれない。

巧みな画面繋ぎでスタイリッシュな作品に仕上がっている。監督はどことなく男性的なさばさばした感じの女性で歯切れのよいテンポの作品が頷ける。舞台はロンドンだが、音楽や色彩に色濃くラテンが漂う不思議なボーダーレスな感覚の映画だ。

...というわけで以上英国映画祭のレポートでした。実に新作18本のうち 13本とは良く見たものです。いわゆる典型的な英国映画という感じではなく、本当に様々なジャンルの様々な表現、そしてたくさんの新しい才能が出て来ているのを知って驚いた。

全てとは言わないが、アメリカ映画で感じられる人工的な笑いではなく、ひねりの効いたコンクな味わいこそ英国映画の醍醐味だと思う。また、何人かの監督もおっしゃっていたように、世界に通じる身近なテーマとというのが更に強みとなっている。

さてここで紙面をお借りするのも変だが、東京国際映画祭のシネマプリズム部門最終日でキャンセルになったカザフスタン映画の「殺し屋」が昨年 12 月 17日と19日の両日各1回上映されたので簡単に御報告を。上映場所は京橋の映画美学校の試写室。事前の申し込み受け付けだった。

作品内容

ラジオのスタジオ収録場面。スタジオ入りしている医学博士の運転手がロビーで彼を待っている。

運転手はこの日はじめて父親になる。そこで早めに仕事を切り上げその足で病院へ妻と子供を迎えに行った。バックミラーで後部座席の赤ん坊を良く見ようと脇見をした瞬間追突してしまう。

免許証を取られたまま修理代の請求に一向に応えられない。運転手で稼ごうとした矢先、件の博士は自殺。研究所の経営も危ぶまれる。仕方なく姉に金の無心に行くが、当てにしていた金は騙し取られて夫婦喧嘩の真っ最中。

そのうち修理代催促に暴力団が来る始末。とうとうヤクザから借りて一件落着したものの今度は強盗団に遭って商売用に購入した車を壊され、借金は貯まるばかり。その上赤ん坊は難病に罹り、借金帳消しと引き換えに殺人を請け負う事になるが。

’97 年のぴあフィルムフェスティバルだかでカザフスタンのやはり救いのない少年の犯罪映画を見た記憶があるのだが、この作品は終わってからしばらくどんより~としてしまう位これでもか、という不幸雪だるま映画である。

カザフスタンてどんな国か実は良く知らないのだが、もしこれが事実ならとんでもない国だし、事実を歪曲してるなら間違った知識を世界に植え付けることになるわけだが。

大体なんでそもそも追突事故を警察に届けず示談にしようとするのか、とか保険の制度はどうなっているのかとか、失業手当てはないのか、とか何だって言う通りに殺人したのか、とか私の悪い頭の中は疑問符で埋まってしまった。

映画祭では一応監督が登壇する予定だったので是非聞いてみたかったと思った。