ギャルソンヌ 

■ギャルソンヌ LE DERRIERE 1999年(102分)

監督・主演:ヴァレリー・ルメルシェ
出演:クロード・リッチ、デュードネ

ストーリー:
田舎で馬の飼育をしているフレデリック。毋の死後、その存在も知らなかった父を探してパリに行く。父は有名なギャラリーの学芸員でその愛人は肛門医のフランシス。2人のもとへ“息子”として入り込んだ彼女は、息子への変身前の姿の時、学生時代の彼と偶然出会い・・・。

コメント:
『カドリーユ』に続く、ルメルシエの監督2作目。テンポの早い展開と、各所に仕込まれた笑い。誰にでも“裏”の顔がある、という事か。このところ、多く取り上げられるゲイだが、ゲイといっても彼等にはそれが当然の生活の一部だし、ひと括りに出来ない、それぞれの生活がある事を描きたかったという。

ルメルシェの可愛い息子ぶりは一見の価値あり。

幸せな日々

■『幸せな日々』 NOS VIES HEUREUSES 1998年(145分)

監督:ジャック・マイヨ
出演:マリー・ペアン、サミ・ブアジラ、アラン・ベジェル、カミーユ・ジャピー

ストーリー:
傷つきやすく、自殺未遂を起こしたジュリー、モロッコからのアリ、別れたものの、いまだ互いが気になるエミリーと医者のアントワーヌ、写真家希望のセシル等、数年に亘る友人たちの友情と人間関係を丁寧に描いた作品。

コメント:
監督は短編映画では数々の賞を受賞してきたベテラン。今回は初の長篇作品となる。

この中で、社会の中の孤独や、人種を越えた友情、対する行政の対処等を表現したかったという。

時に傷つき、時に慰めあいながら年令を重ねていく、主人公達の生き方は、何となく国境を越えて理解出来るところもあった。145分と長尺ながら、長さを感じさせない出来だった。

カジモド

■カジモド QUASIMODO D’EL PARIS 1998年(100分)

監督・主演:パトリック・ティムシット
出演:リシャール・ベリ、ヴァンサン・エルバス、メラニー・ティエリー

ストーリー:
富裕な家庭の息子だったカジモドは、呪いで醜い顔に。それ故両親に捨てられた彼は、神父フロローのもと、教会の鐘つきをしている。が、そんな彼も20才に。

しかし、フロローの監視なくして外出もままならない彼は、ある日美しいエスメラルダに一目惚れ。そんな折、ここエル・パリでは女性連続殺人事件が発生。彼が容疑者とされるが・・・。

コメント:
古くはアンソニー・クィンの主演で、最近はディズニー映画で知られる古典を、大胆に解釈。醜い事でちっとも卑屈にならない、元気一杯の青年カジモド。

対するフロローもただの悪人ではなく、カジモドを我がものに独占しようとする複雑な心理を折り込み、しかもハイテクに強い切れ者としての人物像に仕立てた。

さすがのティムシットも、20才のナイーブさの表現には苦労したとか。

黒髪が印象的なヴァンサン・エルバスが今回、キラキラの金髪で登場したり、いつもはセクシーなリシャール・ベリが変態ワル神父を楽しそうに演じていたり、とキャスティングもなかなか。

ベル・ママン

■ベル・ママン BELL MAMAN 1999年(102分)

監督:ガブリエル・アギオン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ヴァンサン・ランドン、マティルド・セニエ

ストーリー:
法廷で知り合った弁護士の2人、アントワーヌとセヴリーヌ。二人の結婚式に駆け付けた花嫁の美しい毋、レアに一目惚れした新郎。何かと口実を設けては、彼女に近付こうとするアントワーヌ。娘が誕生しても想いは募るばかり。1度は拒絶するもののレアも心動かされ、2人の事はとうとうセヴリーヌの知れるところとなり・・。

コメント:
前作『ペダル・ドゥース』で一世を風靡したアギオン監督らしく、トイレで始まるダンスシーンなど、楽しさ満載。ラストで、アントワーヌの娘が一族を紹介するシーンが何ともいえない。「あのね、あれが私のパパで、ママは私のお婆ちゃん」

これからの社会、こんな家族が誕生するかも。

若者に惚れられるドヌーヴは、本当に美しい。こんなお義毋さんじゃ、無理ないかも、って納得。ちなみにタイトルは、美しいお母さんではなくて、義毋の事。

父の跡をたどって

■『父の跡をたどって』JE REGLE MON PAS SUR LE PAS DE MON PERE
1999年(88分)

監督:レミ・ウォーターハウス
出演:ジャン・ヤンヌ、ギヨーム・カネ、ロランス・コート

ストーリー:
コックとして働くソーヴール。彼は父との再会に全てを賭けた。が、父はケチな詐欺師。女性関係にもだらしなかった彼は、ソーヴールの毋とも束の間の関係だった。しかし、息子を自分の相棒にするべく教育?開始。しばらくは親子の連係プレイが巧くいくかに見えたが、カモにしようとした女性、サンドラに本当に恋してしまった息子は・・・。

コメント:
ワルに成りきれない息子が刑務所入りし、塀の外では、性懲りもなくサンドラを騙そうとする父。この割り切れない?ラストには観客からも疑問の声が。それに答えて、監督からは「それまでは、タイトル通り、父の跡ばかり追っていた息子が、ここで初めて自分の道を歩み始めた、いわば自立の表現」との事。

何処から見ても似ていない親子、女たらしのベテラン中年のパック顔・・・といった不釣り合いの可笑しさ。出演者、監督それぞれに“好きな”シーンが別々のところも興味深かった。

幸運と必然

■『幸運と必然』HASARDS OU COINCIDENCES 1998年(120分)
監督:クロード・ルルーシュ
出演:アレッサンドラ・マルティネス、ピエール・アルディテイ

ストーリー:
バレエ・ダンサーだったミリアムが別れた夫の思い出に8才の息子と訪れた、ヴェニス。ここで出会った贋作家のピエールと愛しあったのも束の間、幸福の絶頂期に今度は息子とピエールが事故死。彼等と訪れる筈だった場所を、ビデオに納めては、一人旅するミリアム。そんな折、大切なそのビデオを盗まれるが・・・。

コメント:
ルルーシュ監督の37本目の作品にして40年のキャリアの集積といえる作品。

以下は監督のコメント。事実にインスパイアされた作品。タイトルの「幸運と必然」はフランスで良く使われる言葉だが、作品では“出会い”を中心に描きたかった。

この場合の“出会い”とは予測可能な、いわば“約束された出会い”と“予測外の出会い”。人生において後者の出会いは非常に大事な事と思う。

繰り返される台詞、“不幸が大きい程生命力が涌く”というのは「生は死よりも強い」事を表したかった。不幸は幸せへのステップ。光に向かう作品といえる。

ヒロインを演じるアレッサンドラ・マルティネスは前作『男と女、嘘つきな関係』に次ぐ主演にして、監督の夫人。気のせいか、彼女の写し方が何と美しかった事か。

作品のオープニング部分もなかなかしゃれた感じだ。

ヒューマニティ

■『ヒューマニティ』L’HUMANITE 1998年(150分)
監督:ブリュノ・デュモン
出演:エマニュエル・ショット、セヴリーヌ・カネル、フィリップ・チュイエ

ストーリー:
少女がレイプの上殺害された。この事件を担当する刑事ファラオンは、妻子を亡くして母親と2人暮らし。隣人のドミノに恋心を抱いているが彼女には恋人がいる。ナイーヴな彼は、事件の捜査を進めていくうちに、様々な罪悪感を抱いてしまう。

コメント:
『ジーザスの日々』に次ぐデュモン監督の2作目にして、今年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞した作品。今回はカンヌに次ぎ世界プレミア上映となる。タイトルは他者に向かっていく、人間の傾向を表している。

『ジーザスの日々』のラストで主人公を尋問する、少々調子はずれの警察官から着想を得て、この作品が生まれたという。多少のデフォルメはあるが、別の視点から物事を見る事の出来る人物としての主人公を位置している。

カンヌで主演女優賞を得たセヴリーヌ・カネルは、受賞で様々な嫉妬にも遭ったが、これはスタッフ全員に与えられた賞だと思う、とコメント。この映画は心から愛について描いた作品だ、とは監督のコメント。

主演2人とも初出演とは思えない、素晴らしい演技だった。『ジーザスの日々』より、更に人間に迫った作品となった。

ギャルソンヌ

■ギャルソンヌ LE DERRIERE 1999年
監督:ヴァレリー・ルメルシエ
出演:ヴァレリー・ルメルシエ/クロード・リッシュ/デュードネ

ストーリー一人娘のフレデリックが母の死後知ったのは、名前も知らなかった父親がパリにいるということ。ところが捜し当てればギャラリー学芸員の父親はホモセクシュアル。肛門科医のフランシスと同棲していてオンナには全く興味を示さない。そこでフレデリックは男に変装し、彼の「息子」だと名乗り出るのだが……。

コメント
「同性愛者にとって同性愛は生活の一部にすぎないのに、そこばかりが大袈裟にクローズアップされすぎていると思います。それに同性愛にだっていろいろな形があるってこと。それを見せたかったんです」と語るルメルシエ。来日5回目とあってか、彼女が舞台に登場するや満場の拍手と喝采。質問もポンポン出て、会場は和やかな雰囲気に溢れていた。

それにしても、ほとんどノーメイク、普段着みたいなミニの黒いワンピースで素足にローヒールとは、ルメルシエってほんとに飾らないヒトなんですねえ。

大浸水

■大浸水 TOUT BAIGNE 1999年
監督:エリック・シヴァニャン
出演:イザベル・ジェリナス/フランソワ・モレル/ティエリー・ニコラ

ストーリー出産を間近に控えた夫婦の家に、見知らぬ男、友人、飲食店店主、ドジな女消防士が次々押しかける。突然の大雨でそれぞれがアクシデントに見回れ、ここへ避難して来たのだ。この4人と夫婦が浸水の始まった家から脱出を試みるが、避難道具は無いし、それぞれのエゴがぶつかるしで大わらわ。その上妊婦が産気づいたからさあ大変。

コメント
同名の舞台喜劇を映画化したもので、フランスでも未公開。これが世界初上映だそうだ。監督が元気で明るく気さくで、舞台挨拶のときにはまだ紹介されないうちから勢いよく飛び出してきたりして。その人柄が映画にも反映し、心地よく笑える映画である。

監督と共に登場した主演のイザベル・ジェリナスは、「パパラッチ」にも出演した本国で活躍中の女優さん。映画で見せたセミロングの髪から一転しベリーショートで登場した。たどたどしいながらも日本語で挨拶して観客の好感を集め、「日本は初めてなので場違いなヘマをしてしまうんではないかと心配でした」なんて純な発言も。彼女の謙虚さ、フランス女優には珍しいのでは?

今日からスタート

■今日からスタート CA COMMANCE AUJOURD’HUI 1999年
監督:ベルトラン・タベルニエ
出演:フィリップ・トレトン/マリア・ピタレシ

ストーリー
貧困家庭の集まる地区で幼稚園の校長を勤めるダニエルは、子供の教育に情熱を注ぎ、電気代を払えない家庭に差し入れし、さらに彼らへの援助を行政に掛け合ったりもする熱血漢。だがその努力は地元教育界にも行政にも理解してもらえず、彼自身への評価にも影響する。そんな彼が、行政などを相手に苦闘する物語。

コメント
モデルとなった幼稚園校長の話に心動かされ、その幼稚園や園児たちを使ってドラマ化したという。タベルニエ監督には珍しい社会派作品だ。もっともこの手のドキュメンタリーは何本も作っているそうで、ティーチインでも「今もっとも大きな戦争は経済戦争であり、その犠牲者は非常に多い。IMFはこの戦争の親玉だ」などと硬派ぶりを披露した。

出演者で来日したのは校長の恋人役マリア・ピタレシ。映画ではどちらかといえばおとなしい役柄だったが実際はイキのいい人で、会場からの彼女への質問がなかなか出てこないと「私、みんなを取って食べたりしませんよ」なんて機転を利かせて会場の雰囲気作りに一役買っていた。