一昨年の「ルコントの大喝采」。昨年の「家族の気分」。
年間を通して日本にくる外国映画のなかで、コメディーはもちろん多いし、いく
つかはそこそこ笑える。ただその中でも心底笑える映画となれば、これは2、3
本と少ないもんだが、その中の1本が最近はフランスから来ているようだ。しか
もその1本が毎年フランス映画祭で見られる。選考の良さからか、フランスコメ
ディー映画のレベルが高いのか?
まったく笑いのセンスが違うような(はっきり言えばくだらない)多くのフラン
ス映画を見るにつけ、フランスコメディーのレベルが特に高い訳ではないと感じ
るから、まずは映画祭の選考にかかわる方々に感謝すべきだろう。
今年の第6回フランス映画祭でもまた来た。「変人たちの晩餐会」は心底笑える
1品。アメリカのテレビ番組的なちょっと大袈裟な演技で、コメディーのパター
ンは世界どこでも通用しそうな、人を小馬鹿にするタイプ。こう聞くと嫌気を感
じる人も多いだろうが、観ているとそんなことを感じる暇もなく進んでいく。こ
のテンポは脚本がうまいからだろうし、役者も脚本を熟読した上で笑いのつぼを
十分把握した演技を感じさせる。
みんながそこそこの個性で責めてくる。ティエリー・レルミットは特別な個性を
感じないが、そこはこの映画の中でもっともノーマルな感じの人を演じているの
で、はまり役といえるし、ジャック・ヴィレルは丸い顔を更に丸くした演技が独
特のまじめな人柄をうまく演じている。
監督は劇作家出身で、舞台を見ているようなテンポがうまくカメラを駆け巡るし、
この脚本はそのまま舞台でも成功をおさめそうだ。この手の映画ノは、アドリブ
を多用する場合と、脚本に全て書いてある場合があるが、演技がいきすぎない為
には脚本がしっかりしていなければならないと思う。あくまでもそこそこの表情
で、そこそこのアクションで演じてこそおもしろい。この映画にももちろんいき
すぎの場面(演技)もあるが、そんな場面もこのテンポにアッという間に飲み込
まれてしまう。とにかく久しぶりの傑作だったから、今年のフランス映画祭 No.
1は文句なしにこの1本!
映画評論家 立野 浩超