エリザベス

監督:シェカール・カプール出演:ケイト・ブランシェット、ジョセフ・ファインズ、クリストファー・エクルストン

ストーリー

時代は1550年代。英国は熱心なカトリック信者のメアリー女王の統治下、容赦ないプロテスタントへの弾圧が行われていた。所謂“ブラディ・メアリー”である。が、スペイン国王との間には子供なきまま、他界する。メそこで、アリーへの謀反のかどで、1度は捕らえれた義妹のエリザベスが王位に就く。

奸知に長けたノーフォーク卿、政略結婚をまとめようとするスペイン大使やフランス大使。そんな中、頼りにしていたダドリー卿までをも含む、彼女への謀反が発覚して・・・。

インド人の監督、オーストラリア人のエリザベスと側近(ジェフリー・ラッシュ)、英語の台詞で初出演の元サッカー選手(エリック・カントナ)や生っ粋の?フランス人俳優達(ファニー・アルダン、ヴァンサン・カッセル)・・・と何と個性的で国際的な英国史劇だろうか。

残るイギリス人俳優たちも、出身地が異なり、おまけに古い宮廷言葉だから、これは台詞面を考えても凄く大変だったに違いない。あまり英語は得意でない筆者だが、やや?BBCを聞いているような“かたい”英語が耳に心地よかった。

それにしても、よくまぁ、という位の曲者俳優を集めたものだ。コスチュームに欠かせない、大ベテランのJ.ギールグッド、女装が決まってた?ヴァンサン・カッセル等。これで、ファインズ兄弟両方と共演した事になる、ケイト・ブランシェットは実に堂々としていた。(兄のラルフとは『オスカーとルシンダ』で共演)

歴史的な部分は大幅に改ざんされているが、”History”でなくHi(高度な)Storyと考えれば、充分楽しめる。その昔(?)高校で歴史の講師なんぞしていた、筆者は最初の授業で、「人々が語り伝えたお話・・これが歴史」何て偉そうに話していたことがあります。

だから、立場が変われば、お話の内容も違ってくるわけで、それをまた、映画という娯楽にするのだから、この程度なら赦されてしまうだろう。まぁ、興味のある方は『1000日のアン』とか『オルランド』を見てみるとか。参考までに、本では小西章子さんが書いた「華麗なる二人の女王の闘い」は面白く読めるのでお薦めです。

そんな歴史的な内容より、エリザベス1世のコワイ女のイメージがある中、この作品では歴史に翻弄され、「普通の」女として生きられなかった、ある意味、政治の犠牲者となった女性の苦悩を前面に出している。

登場人物達の衣装を見るだけでも一見の価値がある。各役者の個性と、残されている肖像画の雰囲気を両方生かしていて、素晴らしい。

エリザベスは、その心境や境遇に合わせて、色やデザインに変化が見られる。若々しいレッド中心のドレスから、凝ったつくりの深みのあるカラーのものへ変わっていく。

そして、その子ちゃんも吃驚の白塗に国家の花嫁となった白い衣装。その昔日本でも白塗りをしていた時代は、暗い中に顔がぼ~っと浮かぶように、とか表情を悟られない為とか言われていたが、彼女も多分後者の理由も考慮しての事だろう。

また、それらの衣装を一層雰囲気あるものにしているのは、レンブラントの絵画のような光だ。後半の暗殺シーンでは、この暗がりが一層無気味さを引き立たせる。

同時に音楽の使い方も秀逸。恋をしているエリザベスには軽いダンスの音楽。そして、ラストは荘厳なモーツアルトの「レクイエム」。それも第1楽章の”キリエ”以前までを使用しているところも、憎い演出だ。

それにしても、知らずにこの映画をエリザベスの誕生日(9/7)に見に行ったと、後で知っと時はとても吃驚でした。

鳥野 韻子

日本映画名作鑑賞会

□11月2日(火)◇11:00~ トークショー新藤兼人監督、俳優の三國連太郎氏、映画評論家の草壁久四郎氏

第21回モスクワ国際映画祭グランプリ作品『生きたい』の主人公を演じた、三國連太郎氏をゲストに迎え、今なお現役監督として活躍し続ける新藤兼人監督、「世界えの映画祭をゆく」の著者であり、映画評論家でもある草壁久四郎氏の三者対談を予定。

◇12:00~『生きたい』 119分日本の古い民話「姥すて伝説」と現代の老人問題を交錯させて描く人間ドラマ。(ScreenKiss Vol. 26参照) 

◇14:00~『裸の島』95分1961年モスクワ国際映画祭グランプリ作品人間の生きていく厳しさが感動的に描かれている。台詞は一言もない。

□11月3日(水)◇11:00~『本能』 103分人間の一切の装飾を捨てた原始にかえって、性本能から愛の深淵を追求する野心作

◇13:15~『人間』 116分4人の漁民の遭難を背景に飢餓と不安をのりこえて生き抜こうとする人間の真の姿を描く。

□11月4日(木)◇11:00~『裸の十九才』 117分希望に胸膨らませ上京した少年は、大都会のメカニズムの車輪に巻き込まれ、遂には殺人を犯してしまう。

□13:30~『北斎漫画』 119分春画の大家としても知られる葛飾北斎と娘、お栄の一生、ふんけいの友、滝沢馬琴との交流を描く。

□11月5日(金)◇11:00~『ある映画監督の生涯 溝口健二の記録』 150分溝口健二と一緒に仕事をした俳優、スタッフ、友人たちのインタビューを通して、溝口の人生を描こうとしたドキュメンタリー作品。

◇14:00~『原爆の子』 100分終戦以来、広島を離れていた孝子は、当時の園児達に会ってみたくなり、消息を訪ね歩くが・・・。

□11月6日(土)◇11:00~『新藤兼人監督 講演会』

◇12:00~『愛妻物語』 96分新藤兼人監督が自ら書き下ろしたシナリオによる監督第一回作品。

◇14:05~『午後の遺言状』 112分別荘に避暑にやって来た大女優が出会う出来事の数々を通して、生きる事の意味を問うドラマ。

□11月7日(日)・8日(月)休映

□11月9日(火)◇11:00~『第五福竜丸』 110分日本人漁夫がビキニ環礁で遭遇した水爆実験の被害事件を描いている。

◇13:20~『竹山ひとり旅』 123分津軽三味線の名人、高橋竹山の放浪の半生、苦難の半生を追って風雪の中に生き抜いた竹山のこころを描く映画詩。

□11月10日(水)◇11:00~『落葉樹』 105分老作家が少年時代を回想する中で、亡き毋への追想と思慕が描かれる。

◇13:15~『薮の中の黒猫』 108分平安末期の伝承説話に発想して、争乱の中の民衆の人間像を幻想的なイメージで描く。

□11月11日(木)◇11:00~『かげろう』 103分一つの猟奇犯罪を巡って瀬戸内海の島の美しさの陰に潜む因習と貧困、女の愛憎の執念を描く。

◇13:15~『縮図』 135分我が国の封建制の典型である芸者の世界をリアルなタッチで描き出したものとして注目された作品。

□11月12日(金)

◇11:00~『さくら隊散る』 110分被爆で命を落とした移動演劇隊「櫻隊」の足跡を再現ドラマと縁の人々の証言で描くドキュメンタリー。

◇13:20~『賛歌』 111分盲目のお琴と佐助、二人の愛の世界は闇の中にあった。愛の「献身」と「掠奪」の中に人間のエゴイズム、愛の極限を見事に描き出している。谷崎潤一郎原作。

□11月13日(土)◇11:00~『鬼婆』雑草のようなたくましさで自由奔放に生き抜いた、民衆の力強い生命力を描いている。

◇13:20~『墨東奇譚』 111分永井荷風の半生を描いた作品。

《11月16日(火)》

◇12:00~『銀河の魚/クジラの跳躍/ファンタスマゴリア』 全66分監督:たむらしげる声の出演:永瀬正敏、利重剛、永井一郎

絵本などを中心に活躍する作家、たむらしげるのファンタジーアニメ。ガラスの海に住む老人が、ある日半日かけて行われるクジラの跳躍に遭遇する。

◇13:30~『てなもんや商社 萬福貿易商社』 97分監督:本木克英出演:渡辺謙、小林聡美、香川照之

腰掛け気分で貿易会社に就職した女性が成長していく樣を描いたコメディ。(ScreenKiss Vol. 13参照) 

◇15:30~『頑張っていきまっしょい』120分 監督:磯村一路出演:田中麗奈、真野きりな、中嶋朋子

’76年の四国、松山。悦子の高校にはボート部がない。それなら、と仲間を集めて発足。が、新人戦で大敗。コーチもつき、2年め、2回目の新人戦に挑む。

□11月17日(水)

◇12:00~『大怪獣東京に現わる』 133分監督:宮坂武志出演:桃井かおり、本田博太郎、角替和枝

東京に謎の巨大原子怪獣が出現したニュースで、パニックに陥る福井県の住民達。九州からのカメ怪獣の出現で、原子怪獣は福井に向かった!そして・・・。

◇14:30~『しあわせになろうね』 115分監督:村橋明郎出演:渡瀬恒彦、有森他美、風間杜夫

不景気で解散を余儀なくされた山室組。組長も組員も解散後の「しあわせ」な生活を夢みていたのも束の間、組員が対立している組長の殺害をしてしまった!解散どころでなくなってしまった彼らの運命は・・・。

◇16:45~『卓球温泉』 110分監督:山川元出演:松坂慶子、牧瀬里穂、桜井センリ

夫婦の会話もなくなった主婦、園子。ラジオDJの「家出でもしゃちゃえば?」の一言で、本当に家出をして、さびれた温泉町へやってきた。町興しとしての一大イベント、卓球大会へ向けて、園子も一役かう事になって・・・。

□11月18日(木)

◇12:00~『UNLUCKY MONKY』 106分監督:サブ出演:堤真一、吉野公佳、大杉漣

銀行強盗を計画した男は、別の強盗からの金を入手するが、偶然女性を刺殺。金を埋めた、同じ場所に敵対組織の死体を葬ってしまった村田組の男達と出会うが・・・。

◇14:10~『生きない』 100分監督:清水浩出演:ダンカン、大河内奈々子

借金苦に疲れた人々の二泊三日の沖縄ツアー。保険金目当ての自殺ツアーの添乗員、新垣。ところが、一人だけツアーの真実を知らない女性がバスに同乗しており・・・。ダンカンが初の映画脚本を手掛けた作品。

◇16:10~『リング』監督:中田英夫出演:松嶋菜々子、中谷美紀、真田広之

巷に勃発する原因不明の突然死。見た者を確実に7日間以内に死に追いやるという、呪いのテープの存在の噂は、人々の間で急速に広まった。偶然、そのビデオを見てしまった浅川は、夫に相談するが、彼もまた見てしまい・・・。続編『らせん』と共に公開されたホラー。

□11月18日(金)

◇12:00~『The Artful Dodgers(アートフル・ドヂャーズ)』 96分監督:保田卓夫出演:いしだ壱成、西島秀俊、佐藤タイジ

WowWow製作による「J・MOVIE・WARS」シリーズの1本として、ニューヨーク大学映画科出身の保田卓夫が監督デビューした作品。前編NYロケのインディーズ作品。

ニューヨークで毎日を「アートフル」=やりたいように、「ドヂャーズ」=すりぬけて生きている売れない画家、ポルノ小説家、ストリートミュージシャンの3人。今年も御寒いクリスマスを迎えようとしている彼らの元に一人の少女が現れて・・・。

◇14:00~『Beautiful Sunday』 93分監督:中島哲也出演:永瀬正敏、尾藤桃子、ヨネヤママコ、山崎努

とある、マンションの日曜日。住民達はキャッチボールをしようとしている、会話のない夫婦、鏡にの自分に陶酔するOL、ストーカー芝居をする男、奇妙な老夫婦、そして変な大屋。老夫婦は宇宙へ帰り、殺し屋はゴミ捨て場で死に、また1週間が始まるのだった。

◇16:00~『中国の鳥人』 118分監督:三池崇史出演:本木雅弘、石橋蓮司、王麗黎

翡翠輸入の為の中国出張へ出た商社マン。彼に同行したヤクザ。案内人に連れてこられたのは雲南省の奥地。そこでは鳥人になる為の学校があった。信用を得る為鳥人になろうとする、商社マンだったが・・・。

□11月20日(土)

◇12:00~『キリコの風景』 105分監督:明石知幸出演:杉本哲太、利重剛、小林聡美

詐欺の前科がある村石。彼は、別れた妻を探して函館に来た。彼には人々の心を癒すという不思議な力があり、行く先々で人々を癒していくが・・・。

◇14:15~『落下する夕方』 106分監督:合津直枝出演:原田知世、渡部篤郎、菅野美穂

江國香織の原作を『幻の光』のプロデューサー、合津直枝の監督デビュー作。恋人から突然別れを言い出されたリカ。彼の心を奪ったのは不思議な少女、華子。何故かリカの部屋に住み着いた華子と、それを追ってきた彼との3人の生活がはじまるが、ある日華子が急死してしまう。

◇16:20~『ユキエ』 93分監督:松井久子出演:賠償美津子、ボー・スベンソン、羽野晶紀

ユキエは朝鮮戦争時、米軍パイロットだったリチャードと結婚。バトンルージュに嫁してからは1度も帰国していない。2人の息子も独立したが、リチャードは旧友に騙され財産を失う。名誉回復に奔走する彼の唯一の理解者だったユキエが突然アルツハイマーになってしまう。正気と病気の狭間に、ユキエ自身も苦しむが・・・。

吉目木晴彦の芥川賞受賞作「寂寥郊野」の原作を新藤兼人が脚本にまわり、プロデューサーの松井久子がメガホンをとった作品。愛する者への「スロー・グッドバイ」を描いた夫婦愛の物語。

気持ち悪系が苦手な筆者は、当然『リング』は未見ですが、こちらの「新しい風」シリーズ15本のラインナップもなかなか。これだけまとめて見られる機会は滅多にありません。

特に「新藤兼人の世界」で幕を開けた、今回の「日本映画名作鑑賞会」。彼が脚本にまわった『ユキエ』は特集ラストに相応しく、しっとりとした味わいがあるでしょう。皆様、ふるって御応募くださいね。そして、めでたく優待に当たったあなた、ご感想をお待ちしています。

鳥野 韻子

ハリケーン・クラブ

母親が服役中の15歳のマーカス(ブレンダン・セクストン・サード)は、万引きをやってその日暮らし。彼は14歳のメレーナ(イザドラ・ヴェガ)と親しくなる。彼女の母親は、暴力を振るう父親に愛想を尽かして出ていってしまった。その父親が、子供を真っ当に育てたいがために、今度はメレーナを半ば暴力的に躾けている。 マーカスは、ニューヨークから抜け出したくて仕方ない。メレーナとマーカスは一緒にアラスカの親戚へ行こうとする。現状を逃れて、仲良く2人はいわば道行きである。ニューヨークという現実は彼等に無力感だけを与え、手応えのある将来を夢見させてくれない。そこで、見知らぬ土地へと旅立つのだが、それは現実からの逃避であり、江戸時代に見せた心中と同じ心理である。

映画は2人がアムトラックに乗って、シートに並んで腰掛けたところで終わる。「こんな事をしたら、父親に殺される」と父親の影に怯えての旅立ちだが、その父親はすでに死んでいる。もちろん、メレーナは父親の死をまだ知らない。その後でどんな場面が展開されるかは、観客の想像にまかされている。父親に殺されるかも知れないと言う危惧を抱いてまで、父親の元を離れていく娘。それが現実だとはいえ、何という悲劇だろうか。

観客は、この父親にはまったく同情しない。自分では愛情表現として、子供や奥さんに自分の価値観を押しつけているのだ。決して愛情がないわけではない。暴力が彼の愛情表現なのだ。むしろ、誰よりも強い愛情を持っているだろう。とりわけ奥さんに逃げられてからは、メレーナがこの世でたった1人の分身である。可愛くないわけがない。しかし、彼は相手の意志を大切にするという、愛情の表現の仕方を知らないのだ。自分の愛情だけを押しつけ、相手の願望を省みない。

古き良き家族が支配的だった時代には、男女の役割や家族の役割が決まっており、それに合わせて人は生活していた。男女で性別役割が固定していたし、立場で生き方が決まっていた。役割や立場から逸脱することは、将来の生活ができなくなることを意味していたから、親たちにとって子供を鋳型にはめることこそ良識ある教育だった。そのため、親たちはそのパターンにはまるように子供たちを育てた。そのために躾が厳しく言われた。暴力的な躾も肯定されたし、子供たちも渋々ながらそれに従った。この父親はそうした時代の価値観から逃れられない。彼が考える厳しい教育、それが子供の幸せを保証すると考えている。

今やそうした役割分業や立場でものを考える発想は役に立たなくなっている。それを子供たちは敏感に察知して、親が体現する既成の価値から逃れたくて仕方ない。それは具体的には家庭からの脱出だし、父親からの逃避である。メレーナにしても、父が死んだことを聞かされれば、動揺はするだろう。しかし、だから逃避行をやめるかと言えば、決してやめることはないだろう。

肉体関係を予感させながら、性交をともなった恋愛までいかない年齢。揺れ動く感情に翻弄されて、旅立つ15歳と14歳の2人。かつては旧弊な田舎の生活を嫌って、都会へと旅立ったものだが、今や都会の生活が子供たちに夢を与えない。マーカスは喘息持ちで、いつも吸入器を持ち歩いている。都会の生活者であり、都会を知っている子供たちには、都会が希望を与えてくれず、いまだ見ぬ場所は青空の田舎なのだ。しかし、田舎も近代化の波は押し寄せ、田舎にも彼等の求めているものはない。近代の生活は厳しい。子供たちは、それについて来ることができない。

近代は若者が担った。だから近代の象徴である都市へと、子供たちは旅立った。しかし、近代が先鋭化し、出口がないように感じ始めている。肉体労働の時代には、肉体的な劣者が差別され、オチコボレだった。頭脳労働が優位の社会では、劣等生は落ちこぼれる。しかも、頭脳労働の社会での規準がまだ見えない。弱い部分へと社会のしわ寄せが来る。自立した大人たちにとって、子供は必要不可欠のものではない。子供は親の癒しであり、いわばペットなのだ。子供は自己存在の手応えを求めて彷徨わざるを得ない。

モーガン・J・フリーマンという若い監督作品だが、繊細で現代的な感覚に優れた美意識にあふれている。平凡な日常に社会の歪みを鋭く見抜き、非凡な映画に仕立てているのは、サンダンス映画祭で入選するには充分な力量である。「マクマレン兄弟」と同じ系列に属する映画だが、対象とする年齢がもう少し低くて、子供の自立というきわめて現代的な視点である。

1997年のアメリカ映画。

匠 雅音

オランダ映画祭 ’99

オランダ船リーフデ号が大分県に到着したのは、1600年の4月。2000年は日蘭友好400年に当たります。そこで ’98年より3年間に亘り開催されている「オランダ映画祭」。今年は2回目です。東京を皮切りに順次全国を巡回する予定。

オランダ映画といえば、最近は『アントニア』『キャラクター・孤独な人の肖像』に続き、『アムス→シベリア』『ドレス』等が公開されています。

今回は日本初公開作品のプレミア上映4本他、滅多に見られない「短編アニメーション・アンソロジー」やアートフィルムの総集編「ダンスフィルム」などの作品が上映されます。コンクな5日間、是非足を運んでみては?

昨年の第1回目の時、ふらりと出掛けた筆者は、結構その面白さと珍しさに引かれて今回も楽しみにしているところです。勿論、上映後はレポートをお届けします。

■スケジュール

期間:9月22日(水)~9月26日(日)
会場:赤坂・草月ホール(地下鉄銀座線・半蔵門線 青山一丁目)
料金:前売り 1回券¥1,200
3回券¥3,000 チケットぴあにて発売中
当日  1回券¥1,400
3回券¥3,600

お問合せ:
オランダ映画祭実行委員会事務局 ぴあ(株)映画事業部内
TEL 03 (3265) 1425 
(月曜~金曜 10:00~18:00 土日、祭日休み)

■作品紹介
□『失われたトランク』1998年/95分
ベルリン映画祭正式招待作品
監督:エロン・クラッペ
出演:マクシミリアン・シェル、イザベル・ロッセリーニ

70年代初頭、19才のチャヤは乳母としてユダヤ教徒との家に働く。5才の失語症の少年とその両親の心をつかんでいく。そんなある日、少年がチャヤにだけは話をするようになるのだが・・・。

俳優としての活躍も目覚ましい、エロン・クラッペの監督デビュー作。

□『密航者』1997年/90分
’97年マンハイム国際映画祭グランプリ受賞
監督:ベン・ファン・リースハウト

ウズベキスタンとロッテルダムの合作映画。近隣の綿向上での過度の灌漑から、すっかり干上がってしまった湖。男の住む漁村は、ソビエト崩壊後、壊滅的な貧困に瀕している。アメリカへの密航を計画した彼が辿りついたのはロッテルダム。

優しい家族の元で、ベランダに住まわせて貰っていたが、ある日強制送還された彼の見たものは、水をたたえた湖だったが・・・。

□『三人のプレーヤー』1998年/90分
監督:エディ・エストール

アムステルダムで人気のジョーダンを舞台とした、3部作のラスト。オランダ映画界を徹底的にパロった、オランダ版「ザ・プレイヤー」。

□『19.99ギルダーの夜』1997年/90分
監督:マリー・ドミニカス

1000年をテーマとした、才能ある若き監督達による4つの長編映画「ルート2000プロジェクト」シリーズの1本。

2000年直前の、1999年最後の日に、高級ホテルが企画したサービスとは、新婚カップルを豪華なスイートに、たったの19.99ギルダーで泊めるというものだったが・・・。

□『短編アニメーション・アンソロジー』:全5作品
世界的なアニメーター、ポール・ドリエッセンの新作をはじめとする、オランダアニメの総集編。長編映画に並映する作品群と、7月末から開催された「第7回キンダー・フィルム・フェスト・ジャパン」で上映する作品群の2種類のプログラミング。

◇『3人のお嬢さん』1998年/10分30秒
監督:ポール・ドリエッセン

3人の紳士が3人の令嬢を救おうと奮闘するが、物事は悪い方向へ向かってしまい・・。

◇『バイオレンス・ガール』4分
監督:クルスティー・ムスクール

暴れまわり、激怒する小さな女の子。彼女の怒りを鎮める事が出来るのは・・・?ドアの開く音がして・・ママが帰ってきた。

◇『ふくろうのうた』1998年/11分12秒/モノクロ
監督:ティス・プーツ

ふくろうと女の子を中心に、古いゴシック教会の修復と、そこに棲む動物達の生活を工事の進行に合わせて展開していく。

◇『グレッグ・ローソン短篇集』1997年/1分24秒
監督:グレッグ・ローソン

◇『こわいのはどっち?』『恐怖の映画館』『大都会』『海』『腹ぺこのうた』
監督はCGを駆使して製作するコミカルなショート&ショートを得意とする、新進アニメーター。パートナーのリー・ロスとの共同でアニメスタジオを経営している。作品集の形で上映するのは、今回がワールドプレミア。

◇『フーガ』1996年/11分
監督:ハンツ・ネセスティン

ピアノを弾いていた男は窓辺に彼の過去が現れるのを見る。子供の頃の夢が蘇る。メランコリックな男の人生を描くアニメ。

□『ダンスフィルム』: 全5作品
現代オランダのダンス・シーンが生んだダンスフィルムの秀作を一挙上映。ステージライヴでもなく、ミュージカルでもなく、映像とダンスの創り上げる芸術世界。

◇『橋を渡る』1999年/9分/モノクロ
監督:ノード・ヘ・ケンス

1999年ロッテルダム映画祭でワールドプレミア上映され好評を博した。

アレックス・コックスの『3人のビジネスマン』と併映されたダンス・バージョン。実景の中で踊る3人のビジネスマン。向こう岸へ1番早く渡れた人は?

◇『アナザー・アナザー』1999年/8分
監督:ベア・デ・ヴィッサ

ルディ・ヴァン・ダンツィングの自宅での振り付けの模様を挿みながら、足の振出しを純化してみせる。

◇『密室のタンゴ』1998年/14分 
1998年オランダ映画祭金の仔牛賞受賞(最優秀短篇映画)
監督:クララ・ファン・ホール

居間のパーティは、炭坑の梺のアパートに場面が変わり、2組の夫婦が踊るタンゴは実は幻想にすぎない孤独なものだった。

◇『ブラインドサイド』1999年/25分
監督:マリー・ドミニカス

◇『19.99ギルダーの夜』と同じ監督の手によるダンスフィルム。
アメフトチーム、ザ・アムステルダム・クルセイダーズとクリスティーナ・デ・シャテル・ダンス・カンパニーのダンサーが出会い・・・。

◇『海のソナタ』1998年/5分
監督:ヤニカ・ドライスマ

監督はダンサー、女優。海を背景に、水の上での重力、肉体的限界、時間、場所等の制限を受けずに踊る。

鳥野 韻子

Four Fresh! ’99+2 後編

映画美学校の生徒さん達のフレッシュな作品を紹介する、Four Fresh!。

今年は第一期高等科生の作品を加え『Four Fresh! ’99+2』としてユーロスペースにて公開中です。

後編は、Bプログラム作品3本をご紹介致します。

後日、『意外と死なない』と『薄羽の蝶』の監督のインタビューを掲載します。

スケジュール等詳細はScreenKiss Vol.44を参照ください

■Bプログラム9月25日(土)~10月1日(金)

◇『薄羽の蝶』カラー/16mm/23分(+2)

監督・脚本:原瀬涼子出演   :上野友希、辻本裕子、児玉数夫

シナリオ、演出において、女性ならではのシャープな感性が評価された作品

ストーリー:友人の結婚式に出席しても、どこか虚しい気分の由美子。電話の祖母は彼女を幼馴染みの友人と間違えている。そんな祖母に逢いたくないと、母の説得を振りきり、祖母の誕生日に口実を設けてしまう。が、その日、ふと電車で席を譲った老人から水色の紙で作った蝶を手渡される。その途端、何とも言えない気分が由美子を襲い、彼女は祖母のもとに急行する。

コメント:蝶のように、花びらのようにキラキラと祖母の周囲に舞い落ちるもの。これは彼女の美しい思い出かもしれない。まるで、「花のもとにて我死なん」と言った西行のような、祖母に対する黄昏の表現なのかもしれない。

ぼけた祖母を叱る叔母。ひたすら念仏のように「ごめんなさい」と繰り返す祖母。叱るほど心を閉ざし、益々ぼけに逃げるようになるという。相手を理解する心が老人介護の第1歩とはいえ、なかなか出来ない事ではある。

由美子はラストで、自分を孫と言い張らず、祖母の思いたい相手・・幼馴染み・・に成り変わり返事をしてあげる。電車の中の一片の蝶が由美子の心を変えたように、この事が祖母の心を穏やかにする事は間違いない。美しい画面と繊細さを備えた秀作だ。

◇『犬を撃つ』カラー/16mm/32分 (Four Fresh! ’99)

監督・脚本:木村有理子出演   :堀江慶、山内知栄、糸井光琳

しっかりとしたシナリオと的確な演出が高い評価を得た作品

ストーリー:大学生の裕紀は、子供の頃の“あの日”のまま空家となっている実家に戻る。同じく毋に呼び出された姉の麻紀も訪れていた。毋は夜になってもやって来ない。

子供の頃姉の見た“あの日”の光景は何だったんだろうか。確実なのは、その日以来父の姿を見ていない事。台所で寝込んだ裕紀は、怪しい物音に引かれ、庭に出てみると・・・。

コメント:まるで絵画のような光と影の使い方は見事だ。逆光による影、闇と雨、雫などの水の音が無気味にマッチして、怖さを演出している。サスペンスタッチの手法は、確かにこの「Four Fresh!」の選考基準である「観客を動揺させる」を充分満たしている。是非次回の+2で新作を見たいものだ。それにしても、誰かこのタイトルの意味を教えてください。

◇『集い』カラー/16mm/30分 (Four Fresh! ’99)

監督・脚本:遠山智子出演   :富田瑛子、廣瀬美葵、堀田文子

個性あるシナリオと卓越した映像センスが高く評価された作品

ストーリー:

出口ならいくらでもあるんだよ・・・・。出口が判らないままに、少女、宇辺千は、とある家に辿り着いた。その家に住む奇妙な住人達。マシュマロに憑かれている女、秋崎。火燵に執着する男、平田。千を眠る姿で迎えた家の主である、老女、小野。その住人達によって、千は、それが当然であるかのように受け入れられ、自らも家の住人になっていくのだが・・・。

コメント:不条理劇風の何だか無気味な作品だ。いきなり滑り込んでしまった別世界。そこで、普通の子なら、泣いて駄々をこねる筈が、千は決して泣かない。食事時の行儀が悪くて、叱られても、食べるものは、しっかり食べる。

出口へ案内してくれた秋崎の手を自らの意志で振りほどき、さらに住人におさまってしまう樣は、まるで安倍公房の『砂の女』のようだ。ほとんどの舞台が火燵という設定もユニーク。

故意的とはいえ、登場人物の台詞が聞き取りにくいのが、残念だった。老女役の堀田文子さんの、とても初出演と思えない堂々とした演技に拍手。

どれもなかなかの力作で圧倒された。出演者も、勿論、校内で調達してる事も多いが、プロに混じって全く別の世界の仕事のプロが俳優に挑戦してたりして、とてもユニーク。

こういった作品を昼間に公開するのは、難しい事かとは思うが、レイトショーだと、客層、観客数も限定してしまうので勿体無い気もする。実は筆者も、レイトだと帰宅の足の心配等でどうしても腰が引けてしまってい、興味があっても行けなかったというのが現状。

こうした作品はやはり、商業ベースに乗らない自由さもあり、だからこそユニークな面が見い出せるといった事を考えると、レイトショーというのも仕方ないが。ただ、この中から誕生した未来のプロも、最初のこうした「fresh」な感覚を大事にしていって欲しいものだ。

鳥野 韻子

マンハッタン殺人ミステリー

キネカ大森のウッディ・アレン特集よりマンハッタン殺人ミステリー

(私は、冷静にアレンの作品に★をつけることができない。)

とにかく映画館でアレンの過去の作品を見直す、いい機会がやってきた。キネカ大森だけでなく、常に映画館のアンケートでは「アレンの特集を!」と書いてきたのが効果あったというわけではないだろうが、最近の作品をメインに10本再上映。

隣人が心臓発作でなくなった。それに疑問を感じた夫婦が始めた探偵ごっこが思わぬ展開に…というストーリは良くできている。コメディーファンだけでなく、ミステリーファンでも楽しめるのではないだろうか。

尚、撮影(カルロ・ディ・パルマ)を始め、美術(サント・ロクアスト)、衣装(ジェフリー・カーランド)、編集(スーザン・モース)など、アレン映画に欠かせないスタッフがそろっており、毎回見事な作品を生み出す連中に拍手喝采。

立野 浩超

バダック・砂漠の少年

キネカ大森のイラン映画特集より

ストーリーの評価:★★★総合点 :★★

この映画は、『運動靴と赤い金魚』のマジッド・マジディ監督が92年に撮った映画。面白味はあるが、多少編集の強引さが気になる。7年前で且つ、イランで作られた映画と考えると十分大作だから、アジア・インド映画に興味がある人はついでに見る事をお勧めしたいが、公開が終了後はビデオもないだろうから、お目にかかることが難しいだろう。

イラン映画というよりも、インド・パキスタン系の味が混ざっているストーリ展開で、いままで日本で見られてきたイラン映画の系統からは離れている点にも興味がもてる。

イランの日常的な風景はテレビや旅行のガイドブックなどでもなかなか知る機会がなく、特にテヘラン以外の田舎町の映像は目にすることが少ない。また、経済制裁を受けている国や、貧困国に旅行をする人も少ないだろうから、何を着て、何を食べて、どんな町の雰囲気なのかといったことを知る事もむずかしい。イラン映画を見るとほんの一部であれそれを目にすることができる。

この映画の中では、悪玉の親分が子供達を使って国境線にはられた有刺鉄線の隙間から密輸取り引き(貿易tいってもよかろう)をしている。イランという国は、貿易が制限されているため現在でも外国製品を輸入したり、持ち込んだりすることが難しい。しかし実際は多くの製品、それこそコーラから、布地までが手に入る。ごく普通に商店で売られている。ただし、輸入をする事はまだまだ難しく、そこでこうした密輸が影では頻繁に行われているのが実情だ。その一例を垣間見れるわけだ。

また、労働力の為の人身売買、少女を買っていくサウジアラビア人、走っているバイクや、ピックアップトラック、衣装など一つ一つがドキュメンタリーのようにリアルだ。そんな問題行為を主体に、少年達が相変わらず頑張っている姿は最後まで印象的で、飽きがこない。

今年のモントリオール映画祭ではマジディ監督の作品『カラー・オブ・ゴッド』が、97年の『運動靴を赤い金魚』以来の2度目のグランプリをとった。これは世界的なブームといってもいいのではなかろうか。引き続きイラン映画に関してScreenKiss上でもお届けする機会が増えるだろう。

立野 浩超

ラスト・アクション・ヒーロー

★★★★

映画だけが友達の少年が、ふとしたことから映画の中に迷い込み、憧れのヒーロー(シュワちゃん)と共に冒険を繰り広げて行く、というまさに映画ファンのための映画。

映画の中が舞台なだけに、ゲスト出演も豪華。また映画のパロディ的な要素も多々みられ、映画オタクな私やあなたにとってはそれを見つけるのも楽しみの一つになることでしょう。やはりハリウッド映画は夢がなくっちゃ!と思わせる一本。

ちなみに余談ですがこの映画でシュワの娘を演じたブリジット・ウィルソンという女優さん、アメリカ娘!って感じでなかなか可愛かったのに、その後B級映画でしかお目にかかっていない。極めつけは松田聖子のハリウッド進出作「サロゲート・マザー」。

とほほ…

MS. QT MAI

上海ルージュ

1930年代、上海を舞台にマフィアの愛人をめぐる切ない物語を愛人の付き人となった

少年の目を通して描く。アカデミー賞にもノミネートされた撮影の美しさが見所。

ふだん可愛らしい印象の主演のコン・リー(ラーメンのCMでもお馴染み)がここでは気性が激しいながらも本当は一人の恋する女である愛人の役を見事に演じている。

まさに彼女の演技の見事さに魅せられる一本だ。また一人の少年の目を通して描いたことで、暗黒街に生きる男女達の非情さ、哀しさなどをよりいっそう引き立てており

文句のない演出。中国映画初心者でも解り易く、観やすい作品である。私自身大のお気に入りの作品で劇場公開時に2回映画館で観てしまった。

MS. QT MAI

フォールームス

★★★★

タランティーノ、ロバート・ロドリゲスなど今をときめく4人の監督のオムニバス作品。

見所はティム・ロス(大好き!)の軽妙な身のこなしと、バンデラスの濃ゆ~い演技。

バンデラスというと,つい男前系の役を想像しがちですが、この映画のような濃すぎるよ~って役をもっと演ってもらいたい。ちょっとサリーちゃんのパパに似てると思うのは私だけか?!

あと、あの「フラッシュ・ダンス」のジェニファー・ビールスがアブナイ役で出演しているのも笑える。ヘンタイ夫に椅子に縛り付けられるような役をやろうとは当時誰が想像しただろう・・・

作品全体の出来としては監督個人の差もありそんなに良いとは思いませんが、四星なのは個人的なタランティーノへの思い入れから。ラウンジ風音楽のサントラもオススメです。

MS. QT MAI