オランダ映画祭 ’99

オランダ船リーフデ号が大分県に到着したのは、1600年の4月。2000年は日蘭友好400年に当たります。そこで ’98年より3年間に亘り開催されている「オランダ映画祭」。今年は2回目です。東京を皮切りに順次全国を巡回する予定。

オランダ映画といえば、最近は『アントニア』『キャラクター・孤独な人の肖像』に続き、『アムス→シベリア』『ドレス』等が公開されています。

今回は日本初公開作品のプレミア上映4本他、滅多に見られない「短編アニメーション・アンソロジー」やアートフィルムの総集編「ダンスフィルム」などの作品が上映されます。コンクな5日間、是非足を運んでみては?

昨年の第1回目の時、ふらりと出掛けた筆者は、結構その面白さと珍しさに引かれて今回も楽しみにしているところです。勿論、上映後はレポートをお届けします。

■スケジュール

期間:9月22日(水)~9月26日(日)
会場:赤坂・草月ホール(地下鉄銀座線・半蔵門線 青山一丁目)
料金:前売り 1回券¥1,200
3回券¥3,000 チケットぴあにて発売中
当日  1回券¥1,400
3回券¥3,600

お問合せ:
オランダ映画祭実行委員会事務局 ぴあ(株)映画事業部内
TEL 03 (3265) 1425 
(月曜~金曜 10:00~18:00 土日、祭日休み)

■作品紹介
□『失われたトランク』1998年/95分
ベルリン映画祭正式招待作品
監督:エロン・クラッペ
出演:マクシミリアン・シェル、イザベル・ロッセリーニ

70年代初頭、19才のチャヤは乳母としてユダヤ教徒との家に働く。5才の失語症の少年とその両親の心をつかんでいく。そんなある日、少年がチャヤにだけは話をするようになるのだが・・・。

俳優としての活躍も目覚ましい、エロン・クラッペの監督デビュー作。

□『密航者』1997年/90分
’97年マンハイム国際映画祭グランプリ受賞
監督:ベン・ファン・リースハウト

ウズベキスタンとロッテルダムの合作映画。近隣の綿向上での過度の灌漑から、すっかり干上がってしまった湖。男の住む漁村は、ソビエト崩壊後、壊滅的な貧困に瀕している。アメリカへの密航を計画した彼が辿りついたのはロッテルダム。

優しい家族の元で、ベランダに住まわせて貰っていたが、ある日強制送還された彼の見たものは、水をたたえた湖だったが・・・。

□『三人のプレーヤー』1998年/90分
監督:エディ・エストール

アムステルダムで人気のジョーダンを舞台とした、3部作のラスト。オランダ映画界を徹底的にパロった、オランダ版「ザ・プレイヤー」。

□『19.99ギルダーの夜』1997年/90分
監督:マリー・ドミニカス

1000年をテーマとした、才能ある若き監督達による4つの長編映画「ルート2000プロジェクト」シリーズの1本。

2000年直前の、1999年最後の日に、高級ホテルが企画したサービスとは、新婚カップルを豪華なスイートに、たったの19.99ギルダーで泊めるというものだったが・・・。

□『短編アニメーション・アンソロジー』:全5作品
世界的なアニメーター、ポール・ドリエッセンの新作をはじめとする、オランダアニメの総集編。長編映画に並映する作品群と、7月末から開催された「第7回キンダー・フィルム・フェスト・ジャパン」で上映する作品群の2種類のプログラミング。

◇『3人のお嬢さん』1998年/10分30秒
監督:ポール・ドリエッセン

3人の紳士が3人の令嬢を救おうと奮闘するが、物事は悪い方向へ向かってしまい・・。

◇『バイオレンス・ガール』4分
監督:クルスティー・ムスクール

暴れまわり、激怒する小さな女の子。彼女の怒りを鎮める事が出来るのは・・・?ドアの開く音がして・・ママが帰ってきた。

◇『ふくろうのうた』1998年/11分12秒/モノクロ
監督:ティス・プーツ

ふくろうと女の子を中心に、古いゴシック教会の修復と、そこに棲む動物達の生活を工事の進行に合わせて展開していく。

◇『グレッグ・ローソン短篇集』1997年/1分24秒
監督:グレッグ・ローソン

◇『こわいのはどっち?』『恐怖の映画館』『大都会』『海』『腹ぺこのうた』
監督はCGを駆使して製作するコミカルなショート&ショートを得意とする、新進アニメーター。パートナーのリー・ロスとの共同でアニメスタジオを経営している。作品集の形で上映するのは、今回がワールドプレミア。

◇『フーガ』1996年/11分
監督:ハンツ・ネセスティン

ピアノを弾いていた男は窓辺に彼の過去が現れるのを見る。子供の頃の夢が蘇る。メランコリックな男の人生を描くアニメ。

□『ダンスフィルム』: 全5作品
現代オランダのダンス・シーンが生んだダンスフィルムの秀作を一挙上映。ステージライヴでもなく、ミュージカルでもなく、映像とダンスの創り上げる芸術世界。

◇『橋を渡る』1999年/9分/モノクロ
監督:ノード・ヘ・ケンス

1999年ロッテルダム映画祭でワールドプレミア上映され好評を博した。

アレックス・コックスの『3人のビジネスマン』と併映されたダンス・バージョン。実景の中で踊る3人のビジネスマン。向こう岸へ1番早く渡れた人は?

◇『アナザー・アナザー』1999年/8分
監督:ベア・デ・ヴィッサ

ルディ・ヴァン・ダンツィングの自宅での振り付けの模様を挿みながら、足の振出しを純化してみせる。

◇『密室のタンゴ』1998年/14分 
1998年オランダ映画祭金の仔牛賞受賞(最優秀短篇映画)
監督:クララ・ファン・ホール

居間のパーティは、炭坑の梺のアパートに場面が変わり、2組の夫婦が踊るタンゴは実は幻想にすぎない孤独なものだった。

◇『ブラインドサイド』1999年/25分
監督:マリー・ドミニカス

◇『19.99ギルダーの夜』と同じ監督の手によるダンスフィルム。
アメフトチーム、ザ・アムステルダム・クルセイダーズとクリスティーナ・デ・シャテル・ダンス・カンパニーのダンサーが出会い・・・。

◇『海のソナタ』1998年/5分
監督:ヤニカ・ドライスマ

監督はダンサー、女優。海を背景に、水の上での重力、肉体的限界、時間、場所等の制限を受けずに踊る。

鳥野 韻子

Four Fresh! ’99+2 後編

映画美学校の生徒さん達のフレッシュな作品を紹介する、Four Fresh!。

今年は第一期高等科生の作品を加え『Four Fresh! ’99+2』としてユーロスペースにて公開中です。

後編は、Bプログラム作品3本をご紹介致します。

後日、『意外と死なない』と『薄羽の蝶』の監督のインタビューを掲載します。

スケジュール等詳細はScreenKiss Vol.44を参照ください

■Bプログラム9月25日(土)~10月1日(金)

◇『薄羽の蝶』カラー/16mm/23分(+2)

監督・脚本:原瀬涼子出演   :上野友希、辻本裕子、児玉数夫

シナリオ、演出において、女性ならではのシャープな感性が評価された作品

ストーリー:友人の結婚式に出席しても、どこか虚しい気分の由美子。電話の祖母は彼女を幼馴染みの友人と間違えている。そんな祖母に逢いたくないと、母の説得を振りきり、祖母の誕生日に口実を設けてしまう。が、その日、ふと電車で席を譲った老人から水色の紙で作った蝶を手渡される。その途端、何とも言えない気分が由美子を襲い、彼女は祖母のもとに急行する。

コメント:蝶のように、花びらのようにキラキラと祖母の周囲に舞い落ちるもの。これは彼女の美しい思い出かもしれない。まるで、「花のもとにて我死なん」と言った西行のような、祖母に対する黄昏の表現なのかもしれない。

ぼけた祖母を叱る叔母。ひたすら念仏のように「ごめんなさい」と繰り返す祖母。叱るほど心を閉ざし、益々ぼけに逃げるようになるという。相手を理解する心が老人介護の第1歩とはいえ、なかなか出来ない事ではある。

由美子はラストで、自分を孫と言い張らず、祖母の思いたい相手・・幼馴染み・・に成り変わり返事をしてあげる。電車の中の一片の蝶が由美子の心を変えたように、この事が祖母の心を穏やかにする事は間違いない。美しい画面と繊細さを備えた秀作だ。

◇『犬を撃つ』カラー/16mm/32分 (Four Fresh! ’99)

監督・脚本:木村有理子出演   :堀江慶、山内知栄、糸井光琳

しっかりとしたシナリオと的確な演出が高い評価を得た作品

ストーリー:大学生の裕紀は、子供の頃の“あの日”のまま空家となっている実家に戻る。同じく毋に呼び出された姉の麻紀も訪れていた。毋は夜になってもやって来ない。

子供の頃姉の見た“あの日”の光景は何だったんだろうか。確実なのは、その日以来父の姿を見ていない事。台所で寝込んだ裕紀は、怪しい物音に引かれ、庭に出てみると・・・。

コメント:まるで絵画のような光と影の使い方は見事だ。逆光による影、闇と雨、雫などの水の音が無気味にマッチして、怖さを演出している。サスペンスタッチの手法は、確かにこの「Four Fresh!」の選考基準である「観客を動揺させる」を充分満たしている。是非次回の+2で新作を見たいものだ。それにしても、誰かこのタイトルの意味を教えてください。

◇『集い』カラー/16mm/30分 (Four Fresh! ’99)

監督・脚本:遠山智子出演   :富田瑛子、廣瀬美葵、堀田文子

個性あるシナリオと卓越した映像センスが高く評価された作品

ストーリー:

出口ならいくらでもあるんだよ・・・・。出口が判らないままに、少女、宇辺千は、とある家に辿り着いた。その家に住む奇妙な住人達。マシュマロに憑かれている女、秋崎。火燵に執着する男、平田。千を眠る姿で迎えた家の主である、老女、小野。その住人達によって、千は、それが当然であるかのように受け入れられ、自らも家の住人になっていくのだが・・・。

コメント:不条理劇風の何だか無気味な作品だ。いきなり滑り込んでしまった別世界。そこで、普通の子なら、泣いて駄々をこねる筈が、千は決して泣かない。食事時の行儀が悪くて、叱られても、食べるものは、しっかり食べる。

出口へ案内してくれた秋崎の手を自らの意志で振りほどき、さらに住人におさまってしまう樣は、まるで安倍公房の『砂の女』のようだ。ほとんどの舞台が火燵という設定もユニーク。

故意的とはいえ、登場人物の台詞が聞き取りにくいのが、残念だった。老女役の堀田文子さんの、とても初出演と思えない堂々とした演技に拍手。

どれもなかなかの力作で圧倒された。出演者も、勿論、校内で調達してる事も多いが、プロに混じって全く別の世界の仕事のプロが俳優に挑戦してたりして、とてもユニーク。

こういった作品を昼間に公開するのは、難しい事かとは思うが、レイトショーだと、客層、観客数も限定してしまうので勿体無い気もする。実は筆者も、レイトだと帰宅の足の心配等でどうしても腰が引けてしまってい、興味があっても行けなかったというのが現状。

こうした作品はやはり、商業ベースに乗らない自由さもあり、だからこそユニークな面が見い出せるといった事を考えると、レイトショーというのも仕方ないが。ただ、この中から誕生した未来のプロも、最初のこうした「fresh」な感覚を大事にしていって欲しいものだ。

鳥野 韻子

Four Fresh! ’99+2

映画美学校の生徒さん達のフレッシュな作品を紹介する、<Four Fresh! >が、昨年に続き、今年も渋谷のユーロスペースでこの秋、レイト公開されます。監督、撮影は勿論、製作等に至るまで全て、学校の生徒によるものです。この機会に、是非新しい才能をみつけに出掛けてみませんか?

作品については、2回に分けてご紹介します。後日、『意外と死なない』と『薄羽の蝶』の監督のインタビューを掲載します。

□スケジュール

◇日時    :9月18日(土)~10月 1日(金)Aプログラム:9月18日(土)~ 9月24日(金)Bプログラム:9月25日(土)~10月 1日(金)

上映時間  :連日21:00~

◇劇場    :ユーロスペース渋谷駅南口下車2分、JTBさくら通り上がるTEL 03-3461-0211

◇料金    :前売り鑑賞券 ¥800当日一般 ¥1000、学生 ¥900

劇場窓口、チケットぴあにて発売中

□イベント情報9月18日(土):Aプロ初日3作品監督による舞台挨拶 9月24日(金):Aプロ最終日3作品の監督トークショー 9月25日(土):Bプロ初日3作品監督による舞台挨拶10月 1日(金):Bプロ最終日3作品の監督トークショー

詳細は映画美学校 TEL 03 (5205) 3565

□Four Fresh! ’99+2とは?97年にスタートした映画美学校(アテネ・フランセ文化センターとユーロスペースの共同プロジェクト)の、初等科から誕生する4本の短編映画が「Four Fresh!」。初等科は16mmは初めての人対象で基礎から学ぶ、実践的なコース。その中のシナリオ課題と、ビデオ課題の総合評価で選ばれ、10日間の撮影と、約1ヶ月の編集で完成させたもの。

選考基準は「完成度の高い作品より、未知の可能性を感じさせる作品」、「観客を納得させるのではなく、動揺させるようなもの」。

このようにして、年令、経歴も様々な生徒達による“劇場公開を前提とした短編劇映画”として「Four Fresh! 99+2」が誕生した。今年の「+2」というのは、第一期高等科生による、さらなる技術的飛躍を目指した2本の実習作品を講師陣(筒井武文、塩田明彦、高橋洋、等)の高い評価のもと、併映される事になったもの。

今回上映される『意外と死なない』『薄羽の蝶』は今年のPFF(ぴあフィルムフェスティバル)の「特集1・日本映画の未来を観よ!」の中でも公開した。

なお、昨年の「Four Fresh!」からは『怯える』(古澤健監督)が、クレルモンフェラン国際短編映画祭に、『鼻の穴』(稲見一茂監督)がオーバーハウゼン国際映画祭に招待されるなど、高い評価を得ている。

□作品紹介Aプログラム:9月18日(土)~9月24日(金)

◇『意外と死なない』カラー/16mm/42分監督・脚本:大九明子出演   :億田明子、けーすけ、愛染恭子

シナリオ、演出力ともに独特のセンスが評価された作品

ストーリー子供の頃から“痛い”事の大嫌いな月子は小学校教師。抜けた歯を見せる子、予防注射に泣く子。そんな時必ず頭を過るのが、月子の「痛い思い出」。中学、高校での性教育や、初体験。その“痛い”初体験以来ストーカーと化した、嘗ての恋人。そして今、“出来ちゃった結婚”しようとしている、同僚マユの日に日に目立つお腹を見る度、危険な衝動に駆られる彼女だが・・・。

コメント月子の「イ~テテテ」は女性特有の痛みで再現されている場面が多く、見ている側としては、多分女性の方が感覚的に理解出来る気がする。こうして考えると、女性は結構「痛い」一生を余儀無くされているようだ。

渡辺淳一氏が嘗て、『解剖学的女性論』の中で、女性は男性と異なり、「痛くないですよ」と安心感を与えるだけで、実際はかなりの痛みに耐えられると言っていた。しかし、月子には通用しなかったわけだ。

が、彼女の痛みへの怒りは、マユへの暴力的幻想に集約されるが、もっともしぶとく、ある意味で暴力的なのはマユの方かもしれない。

それにしても、にたついてる癖に存在感のあるストーカー男や、ちゃらんぽらんな教師達など、なかなかのキャスティング。月子役はテレビ出演等タレント活動もしている監督自身。無理矢理高音をひねり出して「小さい秋みつけた」を熱唱?してみたり、途中登場するミニチュアダックスのウエンズ君も堂々配役に名を連ねているところなど、茶目っ気のある方とお見受けした。

◇『黒アゲハ教授』カラー/16mm/30分監督・脚本:福井廣子出演   :水谷郷、倉沢愛、山崎剛太郎

シナリオの独特な世界が高く評価された作品

ストーリー定年を迎えた金森教授の研究室で、本の整理を手伝うマモ君。古本の甘い匂いは、幼少時の“物憂げ坂上”を彷佛とさせた。幻聴に悩むカナコは、そこでの幼馴染み。

そこで良く見た黒アゲハと、まるでアゲハ蝶のような美しい肌の金森教授。そして花の蜜の様な古本。カナコはバスで金森教授を補虫網で捕らえる。古本屋でアルバイトするカナコと立ち寄ったマモ君と教授。そこには黒アゲハが舞っていた。

コメントScreenKissの常連さんはお気付きでしょうか?この作品で金森教授を演じているのは、嘗て「バックステージ」にご登場頂いた、字幕翻訳の山崎先生です。(バックナンバー20参照)

まさにぴったりの役処で、これが俳優初仕事と思えないほどはまってました。ただ、外出のシーンでは、トレードマークのソフトがなく、何となく普段の魅力が出し切れなくて残念だった。

「古い書物の端っこの甘くなったところだけが、黒アゲハの食べ物なの。活字を混ぜてはだめ。教授の寿命を縮めるから」こういった“嗅覚”“味覚”。アゲハが舞い、眩しいようなバスの中の“視覚”。そして蝶の羽のような“触覚”。まさに「感覚的」な美しい作品。

偶然、試写会で隣に座られた山崎先生は、しきりと照れていらしゃいましたが、場内が明るくなり、前の方の席にいた女性達がふと振り返って「あ、あの教授役の人だ。すご~い、若いね」と感心していました。先生は「最初で最後の映画出演」などと仰っていますが、この分ではオファーが殺到?するかも。

この作品のロケーションには、先生の御自宅も使われたそうです。実はその辺の事情も含め、先生には今、インタビュー第2弾を交渉中です。乞う御期待!

◇『よろこび』カラー/16mm/32分監督・脚本:松村浩行出演   :遠山智子、西山洋一、泉雄一郎

音、光、構図、キャメラの動き等、徹底した映画表現に対するこだわりが高い評価を得た。

ストーリー水辺で笛を吹くグループに献金した為、殴られた父。父を殴ったグループと偶然出会ったアオシギ。彼女は昼間、「リズム社」で規則的にドラムを叩く仕事をしている。退職した同僚の後に入社した“自称”ロカビリー崩れが、新米の日給¥1,000也を父同様“施し”たため殴られたのだ。が、このグループと共に、退屈な毎日を脱却すべく行動を共にするが・・・。

コメント不思議な感覚の映画だ。父と猫のいる家庭の雰囲気も、少しばかり現実味がないし、「リズム社」の仕事も怪しい。そこの女社長がそれ以上に怪しい。アオシギが勉強する、天文学ラジオ講座もそれ自体怪しい。不思議なキャラクター達とアオシギの生き方に『よろこび』は見いだせるのか。

主演のアオシギ役は『集い』の監督。視線がなかなか決まっている。ちなみに、今回の6作品の内、これが唯一の男性監督作品。

Bプログラムについては、後編でご紹介します。

鳥野 韻子

PFFアワード99

□『あおい夏』1998年/カラー/8mm/25分

監督・脚本・編集:渡辺充浩出演:中村雪子、高田信吾、土屋直子

◇ストーリー夏のだるい日射しの中で、延々繰り広げられる男女4人の人間関係。それぞれが、変化を求め、それでいて離れられない青春のひとコマ。

◇コメント思う事を素直に表現出来ない、相手への接しかたが、そして自分自身の事さえ、よく分かっていない。そんな若者の心境を、夏の時間の中に凝縮させた。男女2人が塀越しに飲む一杯の水。相手との距離を反映しているようで面白い表現だった。ちょっと間抜けな音楽もご愛嬌だ。ただ、惜しむらくは、台詞が聞き取りにくかった点だろう。

□『シアワセの記号』1998年/カラー/Hi-8/85分

審査員特別賞・ブリリアント賞(日活)受賞

監督・構成:三好曉 出演:高岡敬子、杉崎竜人、神谷光治

◇ストーリー街で見かける“幸せそうな”若者は、どうして幸せなんだろうか?何を基準に幸せと言い切れるのだろうか。そんな素朴な疑問からスタートした監督は、大勢の若者にその質問をぶつけていく。そうした若者の中から一人の女性に長時間密着して、彼女と監督自身の信頼関係が生まれる頃、ひとつの結果が見えてくる。ドキュメンタリー形式の作品。

◇コメント作製していたのが、昨年だったため丁度今年の7月が、いわゆる「世紀末説」。そんな絡みもあって、“今が楽しければ充分”という若者達の刹那的な回答が目立っていた。そんな彼らの答を、今年7月に見ているというのも、不思議な気分だった。

多くの大人が「今どきの若者は・・」と眉根を寄せるだけで、彼らだって個々に悩んでいるものの、現実と対峙する勇気が少しばかり足りないだけなのだ。

「どうして?」と執拗に質問する監督。究極の自分探し。密着取材された一人の女性の成長記でもある。(ラスト近くで事実は小説よりも・・・を実感する彼女の身辺の変化には見ている側も驚きだった。その後の彼女についても気になる)

ただのドキュメンタリーに終わらず、途中、高校教諭や幼稚園教諭の談話、そしてニュースや漫画を巧みに取り入れているところが秀逸。ハンディカメラのぶれが惜しいところだ。

□『5月2日、茶をつくる』1998年/カラーDV/25分

グランプリ受賞

監督・脚本・撮影・編集・小嶋宏一出演:山崎祐作、萩原豊、澤井真也

◇ストーリー専門学校に通いながら、家業でもある、茶つくりを師匠に習っている祐作。進路もなかなか決まらず、鬱々とした思いを託すように茶作りに力を込める。そして、八十八夜の5月2日、師匠と共に新茶の仕上げにかかる。

◇コメント一面の茶畑や、ひたすらに茶を手で摘む作業・・・出だしはまるでNHKのドキュメンタリーフィルムのような雰囲気だ。茶つくり名人の草履と、祐作の踵を潰した運動靴の対比。焦躁感と不安を無心に茶作りに没頭していく事で見事に昇華させていく過程が簡潔に描かれている。背景に見える「茶手揉道場」「一葉入魂」といった額からも緊張感が伝わる。手揉みのシーンは茶の香りが漂ってきそうだ。

茶の仕上がりの所で初めて入る音楽と、寡黙な名人と出来たての一杯を飲み干した後の「うまいっす」の一言がとても効果的。題材選びも良かった。

□『ウワバミの絵』1998年/カラー/8mm/31分

監督・脚本・演出・出演:山下真由子出演:樋口わかこ、森美華、吉田絵理

◇ストーリー男友だちから貰った1冊の本、「星の王子様」。大人には帽子にしか見えないが、ウワバミが象を飲み込んでいる絵なのに・・・。そんな柔らかな心を取り戻すように東京タワーへ向かうマユコ。その下の公園には、公園番付?をしている3人の女の子がおしゃべりをしている・・・。

◇コメント『シアワセの記号』にも見られたような、他者との関わりに不器用な、現代の若者をよく表現している。針ねずみのように、一定間隔を保っていなければ相手も自分も傷ついてしまう、それでいて一人ではいられない...。結構な年令の女の子が塊で、公園のブランコ目指して走りより、我がもの顔に使用する樣は、そんなアンバランスさを描いているのだろうか。

説明が多すぎる感じもするし、演出の為か台詞が見事に棒読みなのが気になった。

□『福田さん』1998年/カラー/DV/41分

監督・脚本・出演:宇田敦子出演:福田史、内山ありさ、玉井章子

◇ストーリー福田さんの日常を切り取った、4話のエピソードから構成されている。

「日曜日」実家から送られた蟹を、友人を招待して一緒に食べる。「かけら」友人の手作りの茶腕を割ってしまい、別の茶碗をプレゼントするまで。「バドミントン」引っ越しの為1度捨てたバドミントンで、友人と童心にかえって遊ぶ。「何でもない日」部屋に遊びに来た友人と、お菓子とお茶で話をする。

◇コメントこれといった音楽もなく、淡々と福田さんの目を通した日常を描いているだけのものだが、“こういう人いたよね”と、子供時代や学生時代等を通じて思い出せるような気分になってくる。お人よしで、ちょっと割が合わないような立場で、でもそばにいるような...。友人役で出演している監督本人も、気負わない演技でグーでした。

『失跡-1998年の補足』1998年/カラー/DV/45分

企画賞(TBS)受賞

監督・脚本・編集:横川兄弟出演:平田亜希子、大九明子、岡本真太郎

◇ストーリー恋人に裏切られたOLケイ。自分をターゲットとした殺し屋を雇った途端、彼女の日常は一変した。漠然とした日々を送っていた時と異なり、常に緊張を強いられるが、生活に張りが出てくるが・・・。彼女は逃げ切れるのだろうか?

◇コメント設定は、あのカウリスマキの『コントラクト・キラー』か?という思いも頭をかすかに過ったものの、中心は逃走劇。屋上から、下水道から、彼女は走る、走る・・冒頭でも恋人の裏切り現場を押さえるために、自転車を漕ぎまくっていたし、見ている側も疲れそうな感じだ。まったく、トライアスロンのようにタフさを競うのが、殺し屋から逃走だったとは・・・。

下水道の場面は、少し長過ぎて『第3の男』風の緊張感が薄れてしまったのが残念。空家に来たカップルが彼女の隠れてるベッドの上でよろしくやっている間、刺さるスプリングにじっと耐える様は、『愛情萬歳』のリー・カンションみたいで笑える。

全体に抑えたトーンとヒロインの台詞が極端に少ないのは、スリリングさの演出に役立った。出演者の一人、大九明子さんは、『意外と死なない』で監督デビューし、7月のぴあフィルムフェスティバルでは、特集上映“日本映画の未来を観よ”の中で上映された。ちなみに監督の横川兄弟は複数の人間でなく一人。

□『にくいあなた』1997年/カラー/16mm/23分

技術賞(IMAGICA)受賞

監督:継田淳出演:伊藤賢治、前川拓也、鈴木由実子

◇ストーリー大学生ばかり狙う連続殺人鬼と、切腹のアングラ映画を作製しようと集まった、所謂アーチスト志望の学生達。女優志望の女は、リアルさを出すために本当に腹を切ると言い出すし、撮影担当の男は“自分の感性が許さない”と土壇場で降番。そこへ、例の殺人鬼が押し入って・・・。

◇コメント「寂しかったから」という殺人鬼はじめ、皆どこか自己中心的で、おかしい。が、その変さ加減を“こだわり”とか“才能”だとかと勘違いしている。監督は、こうした“クリエイター志望の勘違い連中”に向けて、冷ややかな視線を向けているんだそうだが、こうした連中はどこの世界にも存在している。

大袈裟に言えば社会全体の風潮とも言える、こうした世界を巧くまとめた作品だ。それにしても、殺人鬼のマスクが非常にちゃちくて面白い。『カンヌ映画祭殺人事件』というおバカな映画、ご覧になった事のある方、どこか似てると思いませんか?

□『昼下がり』1998年/カラー/β-cam/52分

監督・脚本・撮影・編集:小野靖之出演:鹿島直弘、新川勝博、加藤恵子

◇ストーリー精神を病んでい入院中だった親友、岡村の妻と関係してしまった岸。退院後も岡村は岸を頼りにしているが、どこか邪険にされる。2人の住む地域で交番のピストルが盗まれ、自警団が結成される。自警団に参加した岡村だったが...。

◇コメント実は、この作品選考に漏れたのが筆者的には非常に残念だった。テーマは友情、コミュニティ、弱者への対応、と結構盛り沢山。岡村は自警団に迎え入れられ、自分なりの場所を得られたと感じ始めた途端、入院の過去を責められた挙げ句、彼らの中にいた犯人の隠蔽にまで使われてしまう。

狭いコミュニティの中に潜む狂気。脈々と続いている“内輪”意識と“排他性”。ここには、ルコント監督の『仕立て屋の恋』に似た恐怖がある。いつ被害者が、加害者にされるかもしれない現実。そこそこのサスペンスフルな演出と、はっきりしたキャラクター描写はなかなかだ。

□『他、3本。』1998年/カラー/DV/48分

審査員特別賞&音楽賞(TOKYO FM)受賞

監督・脚本:川合晃出演:伏原正康、江籐公威、藤田裕樹

◇ストーリー映画館を舞台に、ヤクザと彼らに借金を返せない男、殺し屋、麻薬売人が拳銃、麻薬、それぞれの受け渡しに使用したトイレを軸に大騒動。一方、映画館の受け付けでも、何やら男女関係のすったもんだが・・・。この2人で時間経過を刻みながら、話は一気にラストに突入。

◇コメントスピーディな展開と、それぞれの役者のはまった演技に思わず身を乗り出したくなる作品。これは、文句なしに面白い。今回見た作品中では、一番完成度が高いように思う。ひょっとして、このまま公開してもイケるんではないだろうか。

それぞれの独立したエピソードが、きちんとひとつに纏まる展開は、計算され尽くした脚本の勝利。借金男がトイレに立て篭り、逃げ出す算段をするところや、ラリッた殺し屋が、日本刀のつもりで吸引具(と、いうのだとうか)を使ってパフォーマンスする樣は、先が分かっていても可笑しい。

ストーリーの展開や小道具が、確かに『パルプフィクション』的ではある。ラストで、仕方なく死人を背負って歩く羽目になる麻薬売人の様子を、台詞だけに止めたのは大正解。内容で想像するだけで、観客それぞれにラストシーンが浮かんでいるはず。『太陽がいっぱい』ではトムに実際、死人とお友達を演じさせていたけど。

ファーストシーンから、映画それ自体を使って遊んでいるが、ミュージッククリップ風なラリラリシーンもなかなかで、彼の次の作品も今から楽しみだ。

□『バッド デット』1998年/カラー/8mm/23分

監督・脚本・撮影:郡司正人出演:菊池徹、福原大介、岸田研二

◇ストーリー大学の授業料を使い込み、同級生の菊池に50万の借金をしている福原。利息が膨らみ、菊池の取り立ては日増しに厳しくなる一方だ。友人、岸田の紹介で怪し気なバイトに出掛けるも、ほうほうのていで退却。何故か菊池に肩入れし、福原に不利な発言を繰り返す謎の女。彼女を誘拐して借用書を破棄させようとするが・・・。

◇コメント無表情で無言、とんがったヘアスタイル・・とくれば菊池の感じはまさに「レニングラード・カウボーイズ」。さては、カウリスマキを意識したか、と思ったのも束の間、鈍臭い福原の存在が妙なリズムを刻んでくれていた。タイトルは、「まずい借金」とでもいうのだろうか、まさにダイレクトで可笑しい。アイデアは面白いが、笑いの質をもっと洗練してくれれば、もっと良かったのに。

□『PORTAMENTO(ポルタメント)』1998年/カラー/DV/24分

監督・脚本・撮影・編集・音楽・効果:林拓身出演:木村一郎、織原恵美、加藤淳一

◇ストーリーA「お中元のお返しは届いたか?」→B「おいしかったです」→C「いつも変な機械が来るんだよな」→D「湿気が凄いの(くぐもった声)」・・・と電話を媒介に、6部屋の住人が繰り広げる行動を、尻取りのようなゲーム感覚で連係させていくストーリー。それでいて、ラストシーンは再びファーストシーンに戻っている不思議な作品。

◇コメント実に手が込んでいる。電話の主を俯瞰で捉える様子は、乱歩の「屋根裏の散歩者」や『硝子の塔』のような、覗き見的感覚をひき起こす。途中挿入される野球のシーンも一瞬本当のTVと錯覚してしまったし、おかしな機械も現実に存在していても変でないし・・・と言った全編に漂うフェイクさが面白い。

DVで撮影し、全てMac内で編集されたという制作方法は、今後増えるのではないだろうか。実は、この作品も筆者的には一押しだった。短い時間に要領よくまとまっているし、映像もスタイリッシュ。監督の更なる躍進を願っています。

□『風は吹くだろう 』1998年/カラー/DV/111分

準グランプリ受賞

制作・監督・脚本・編集・出演:白石晃士、近藤太出演:笠井曉大、松梨智子、佐野敬子

◇ストーリー一時同じ劇団に所属していた、夕希子と町田。2人は同じマンションの隣通しとなっていたが、夕希子の浮気が原因で別れた。映画監督志望の町田は、2人の出会いから別れまでをドキュメンタリーとして考証していく事を思い付き・・・。

◇コメント初めのうちは、ふられた男の未練たらたら的な、情けないビデオ・・・と誤解してしまう。映画は自己満足の賜物とはいえ、究極の自己満足作品だ、と。が、これが曲者。とりあえず、別れた原因糾明と冷静な自己判断、そしてそれらの虚しさから、もともと脆い男女関係に対するこうした行動の馬鹿らしさ、といったものをあぶり出している。音も映像に合っている。

フィクションとノンフィクションの境界が不鮮明になっていくにつれ、脚本の巧みさに騙されていた事に気付く、という手のこんだ作品だ。

□『ランナーマン』1998年/カラー/16mm/15分

観客賞受賞

制作・監督・脚本・編集・出演:中村隆太郎出演:達弘介、足立学、藤原洋介

◇ストーリーその高校の弱小陸上部は、大会に出たいが部員が不足だった。そこへ、今迄見た事のない“生まれながらのランナーマン”を自負する男、田中が入部する。自己の実力の過信からか、体調管理で失敗した田中は、大会でも惨敗。果たして陸上部の未来は・・・?

◇コメント大袈裟なアクション、臭い台詞、いきなり登場する派手な背景・・・と、この作品の魅力は、そうしたわざとチープな感覚。今時の映画と異なり、CGを使用せず、オーソドックスな手法で、人間が演じているところが、逆に新鮮。出演者も決して巧いとはいえない演技だが、ラストも『ディディエ』みたいで、結構爽やかな印象を残している。

□『夏将軍 』1998年/カラー/DV/40分

監督・脚本:木下涼子監督・撮影・編集:上田啓嗣出演:葉隠みどり、蔵谷貴輪、冨田恵実

◇ストーリーケーキ屋でバイトする志麻子。定職もなく、ぶらぶらと1日を過ごす少女。その少女と同居している、料理上手な女性。志麻子は思い立って、夏休みを過ごすべく、島に独り旅する。素朴な島民や単調な時間の流れでの中で、リフレッシュした彼女にはまた、いつもの日常が待っている。

少女は身体が女性への1歩を踏み出し、同居人はありったけの料理を彼女に残して姿を消す。「好きな人に、好きな料理を食べてもらうのが、私の幸せ」と。

◇コメント『あおい夏』にも見られたようなだるさと、季節の変わり目に向かう区切りという晩夏の時を主人公それぞれの心境と対比させている。バックミュージックが、一昔前のテレビドラマのような感覚で、夏のひとときを表現している。ここに登場する3人の女性は、生活環境こそ異なるが、何か新しいことが起こるのを待っている。そうした意味では、志麻子以外は生活内容を明かしていないところは賢明な設定だったといえよう。

□『テーブルトーク』1998年/カラー/8mm/85分

審査員特別賞受賞

監督・脚本:三内徹脚本・出演:中野良一出演:こんみゆき、松谷要作、鈴木葵

◇ストーリー料理の巧い兄と学生の妹は、マンションの一室で仲良く暮らしている。そこへ、父の居所を探して、葵という少女が尋ねてくる。父の知らせた住所が兄妹の部屋だったのだ。葵に同情した兄は“第3者を家に入れない”という暗黙のルールを破り、暫く彼女を同居させる。妹はそんな兄に反発して、恋人の元へ外泊の日が続く。2人で続けてきた、当たり前の生活に微妙な変化が訪れて・・・。

◇コメント『秘密と嘘』にインスパイアされたという、この作品。何でもない生活を延々と写していく、という手法は似てはいるものの、第3者の少女の2人の生活への馴染み方が、安倍公房原作の『ファミリー』みたいで少々無気味な気がした。

部屋で定位置のカメラが捉える椅子とテーブルの位置が、兄妹間の状況を表すように、話の進行に従って微妙に変化している。同様に、洗濯物からもそんな様子が伺える。そうした細かい工夫の積み重ねが、この作品に深みを与えている。

□『プロゴルファー虎木』1998年/カラー/S-VHS/48分

エンターテインメント賞(レントラックジャパン)受賞

◇ストーリー下着泥棒の頻発に「下着窃盗犯捕縛方」が設置され、長官の時田と下着泥の老舗、駒沢一家の助次郎が協力して犯人逮捕に全力をあげる。助次郎は、兄の伝蔵が老舗の家名を汚す仕事をしているのを恥じての協力だったが・・・。

◇コメントのっけからギャグ満載で・・結構・・疲れる。それでいてバックには、“ペールギュント”などのクラシックが優雅に流れる、このギャップ。画面繋ぎが早く、矢継ぎ早のギャグで、ストーリーのちぐはぐさが薄れている。お遊びがそのまま映画になった感じだ。

監督は余程のカンフー好きとみえて、時田(監督本人)と西日暮里の対決シーンがえらく長い。ジャッキー・チェンばりのアクションは、かなり練習した模様。それだけでも努力賞ものです。

16本、合計726分(約12時間)の鑑賞は、結構へたばってしまいました。が、最初の選考の段階では、何と440時間分(応募総数914本)、その中から約40時間分の作品に絞られた上、最後にこの16本に絞られたというから、審査員の皆様のご苦労が、骨身にしみて理解したわけです。

しかし、それだけにきっと“あと一歩”のところで、惜しくも選に漏れてしまった作品もあったでしょうから、ここだけの話、「何だこの程度か~」という安心感を求める為にも1度御覧になられるのに、いい機会だと思います。

また、今迄観客サイドだけだった方も、ひょっとして、これを機に作り手になってみたくなるかもしれません。

何れにせよ、百聞は一見にしかず・・です。

鳥野 韻子

第21回ぴあフィルムフェスティバルレポート&PFFアワード受賞結果速報

1977年にスタートしたぴあフィルムフェスティバル(PFF)も今年で21回目を迎え、毎年12月の開催から夏の開催となった。

今年は7月3日(土)から9日(金)、有楽町の東京国際フォーラムの2会場(映像ホール+ホールD)にての PFF アワード対象の自主映画 16 本と、特集映画23 本、それに特別上映としてジョン・カーペンター監督『ダーク・スター』、今年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞した伊比恵子監督『ザ・パーソナルズ:黄昏のロマンス』の上映が行われた。PFFは東京を皮切りに9~11月にかけて名古屋、関西等の主要都市でも開催するという。

PFF ではコンペ部門の PFF アワードと、そこで入賞した作品からスカラシップ制度により、劇場映画製作を推進していくという人材育成の場としても機能している。過去の入選者の中には森田芳光、橋口亮輔といった現在プロとして活躍中の人物も多い。

今年はこの他に新たに5社(TBS/レントラックジャパン/TOKYO FM/日活/IMAGICA)が協力しての PFF パートナーズからの独自の賞も設定された。

※私は過去数回、PFF に行った事があるが、毎年観客動員数も増えているようだ。PFF アワードは平日の昼間のプログラムが多く、仕事を持っているとなかなか見に行けない。今回は特集上映を3本見たが、中には前売券はおろか当日券も売り切れていた作品もあった。

ちなみに前売り券はPFFアワードで1,000円(当日1,200円)特集で1,200円(当日1,400円)と他の映画祭同様若干値上がりの傾向。

しかし、普段なかなか見られない海外の作品や、新作をいち早く見る事が出来るのもこうした映画祭の魅力のひとつだ。

低迷しているといわれる、日本映画の活性化と、新人の登竜門の場の提供のためにもこれからも続けていって欲しい映画祭である。

■PFF アワード’99受賞結果

ここ数年、年々応募数が増加しているが、今年は PFF 史上最多の 914 本が応募、会期中上映された16本から以下の作品が入賞した。入賞作品からは更に次回の長篇劇場映画製作、公開のチャンスがあるPFFスカラーシップ制度がある。

なお、最終審査員は以下の5名。個々の作品については追ってレポートを予定。

降旗康男(映画監督)、三枝成彰(作曲家)、原田美枝子(女優)、平山秀幸(映画監督)、仙頭武則(映画プロデューサー)

□グランプリ映画監督として将来を最も期待したいつくり手に贈られる(副賞・賞金100万)

受賞作品『5月2日、茶をつくる』DV監督:小嶋宏一 出身:京都府   年令:26

□準グランプリグランプリに迫る映画の才能を感じさせるつくり手に贈られる(副賞・賞金20万)

受賞作品『風は吹くだろう』DV監督:白石晃士  出身:福岡県  年令:25:近藤太     :愛知県    :26

□審査員特別賞無視する事の出来ない映画の才能を感じさせるつくり手に贈られる(副賞・賞金20万-3作品)

受賞作品『シアワセの記号』Hi-8 *監督:三好曉   出身:大阪府  年令:23

受賞作品:『テーブルトーク』8mm監督:三内徹   出身:大阪府  年令:23

受賞作品:『他、3本。』DV *監督:川合晃   出身:大阪府  年令:29

□観客賞観客の人気投票で最も高い支持を得た作品に贈られる

受賞作品『ランナーマン』16mm監督:中村隆太郎 出身:東京都  年令:23

■PFFパートナーズ主催の受賞結果

人材発掘、育成システム向上を目指してPFFパートナーズとして参画した5社(TBS/レントラックジャパン/TOKYO FM/日活/IMAGICA)独自の審査による賞が今年から新たに加わった。

□企画賞(TBS)作品の優れた企画性(着眼点、アイデア、発想等)に対して贈られる

受賞作品『失跡-1998年の補足』監督:横川兄弟  出身:埼玉県  年令:25

□エンターテインメント賞(レントラックジャパン)ユニークさや華やかさを持ったエンターテインメント性溢れる作品に対して贈られる

受賞作品『プロゴルファー虎木』監督:長屋正志  出身:北海道  年令:33

□音楽賞(TOKYO FM)既成曲の使い方などを含み、全ての音楽、音響に対して贈られる

受賞作品『他、3本。』DV *監督:川合晃   出身:大阪府  年令:29

□ブリリアント賞(日活)最も光り輝く才能を感じさせる監督の作品に対して贈られる

受賞作品『シアワセの記号』 *監督:三好曉   出身:大阪府  年令:23

□技術賞(IMAGICA)撮影面、照明、映像のクオリティなど、技術に特化して優秀な作品に対して贈られる

受賞作品『にくいあなた』監督:継田淳   出身:秋田県  年令:24

*を付した作品は部門別で重複受賞しているもの

■特集上映作品レポート

今回は<特集1:日本映画の未来を観よ!>と<特集2:アジアの新しい風>の2部門に分かれての上映。

特集1は黒沢清、手塚真、あがた森魚、斎藤久志、園子温、等活躍中、またこれから期待の監督までエネルギッシュな人々の作品15本。ここでは、黒沢清監督の新作『カリスマ』を見てきた。

また、特集2では、中国、香港、韓国のインディペンデント映画を中心に、日本でなかなか見られないアジアのインディペンデント作品8本を紹介。こちらは中国の『小武(シャオウー)』とキルギスタンの『あの娘と自転車に乗って』を見た。

今回、見た作品は全て日本で、今後の公開が決定している。詳細については随時レポートする予定。

特集1『カリスマ』’99年/103分(35mm) 監督:黒沢清出演:役所広司、池内博之/風吹ジュン

ストーリー“カリスマ”と呼ばれる巨木を巡る様々な人間模様。それぞれの立場から伐採派、保存派に対立する村。そこに仕事に疲れ果てて流れ着いた刑事、薮池が巻き込まれていく。対立はやがて殺人事件にまで発展するが・・・。

コメント今年のカンヌ映画祭では監督週間に出品された作品で、今回の上映は日本では初めて。海外での評判もまずまずだったとか。当日券を求めての整理券が配付されたようだが、それでも入場出来なかった人が出た人気ぶりだった。

数年前の監督の本に『カリスマ』の名が既に出ていて、かなり前から温めていた企画である事は知っていたが、まさか約10年にもなるとは思わなかった。本人も仰っていた通り、当初のものとは大分変更があったようだ。昨年、急に映画化の話が持ち上がり、じっくりと見直す時間がなかったという。

内容的にはもっと恐ろし気なものを想像していたが、今回は殺人シーンも滑稽でさえある場合もあり、ある意味でほっとしたものの、監督の意気込みは充分伝わってきた。ソフトな語り口の監督を見ていると、作品に見られるエネルギーはどこから涌いてくるのかと、いつも不思議に思えてくる。

(私事だが、今年初めて監督に出会った日が、丁度この作品のクランクアップの翌日で、以来タイトルが頭を離れなかっただけに、作品を見られただけでも感慨深いものがありました)

特集2『小武(シャオウー)』中国 ’97年/103分(35mm)監督:ジャ・ジャンクー出演:ワン・ホンワァイ、ハオ・ホンジャン、ズオ・バイタオ

ストーリースリで暮らすウーは未だに足が洗えず、警察でもお馴染みの顔。かつての仲間には事業に成功した者も。カラオケで意気投合した(つもりの)メイ・メイとの結婚で今の生活を一新しようとしたのも束の間、彼女は行方をくらましてしまう。実家に帰ってみても厄介者のウー。彼はまたしてもスリに手を染めてしまう。

コメント長編第1作目というこの作品でナント映画祭グランプリ、ベルリン映画祭再優秀アジア映画賞等数々の賞を受賞、しかし本国中国では未だに上映出来ずにいるという。

ここでのティーチ・インはあまりにマニアックで、とても私ごとき観客・・実は監督の話を聞くまで中国映画だって知らなかった・・は到底お呼びでない、というか、ついていけない質問が飛び交い、更には原語(中国語)で通訳の言葉を介す前にフムフムと頷く人までいてぶっ飛んでしまった。

監督は小柄な可愛い感じの人。ハキハキと時にユーモアを交えてのコメントも。

映画の上映前後に登場する、PFF ディレクターの荒木啓子さんのコメントは、毎回とても的を得ていて感心するのだが、この時のコメントもあまりに的確だったので最後に、ここに再録させて頂く。

「スリが主人公で、何だかとても情けない話なんですよね。でも、何だか分らないのですが、後で妙に心に残ってしまった作品でした。」・・その通りの映画です。

『あの娘(こ)と自転車に乗って』キルギスタン ’98年/81分(35mm)監督:アクタン・アブディカリコフ出演:ミルラン・アブディカリコフ、アルビナ・イマスメワ

ストーリー少年ベシュケンピールは腕白ざかり。今日も遊びすぎて父に叱られ、映画に行きたいといっても許して貰えない。そんな時優しいお婆ちゃんがそっと小遣いを渡してくれる。ある日、可愛い女の子と友だちになってほのかな恋心が芽生えるが、嫉妬した悪ガキ仲間に「お前なんか養子のくせに」と言われ、ショックを受ける。家出した彼にお婆ちゃんの危篤の知らせが・・・。

コメント昨年の東京国際映画祭でも上映され、スペシャルメンションとして、黒沢清監督『ニンゲン合格』とともに選ばれた作品。映画祭では『ベシュケンピール』として上映。

しかし、今回の邦題は内容に添っていて、なかなか粋。

何とも懐かしい匂いのする作品。これといって大きな事件が登場するわけではない。だが、心の奥を揺すられるような感じがする作品だ。キルギスタンではソビエトからの独立後初の作品だが、今回はフランスが製作費を70%提供してくれたという。これは、監督の前作『ブランコ』を見ての申し出という。文化に対する国の姿勢が問われるような話だ。

国で唯一の映画監督という事だが、とても穏やかな感じの人で、今後の作品も是非見たくなるような気がする。今回のティーチ・インでは通訳の方(中川さん)の落ち着いたやりとりと、温厚な監督の息が合っていて、とても雰囲気が良かった。

上映後のロビーでの会話で、ティーチ・インで一人でたくさんの質問をした観客に対し、「君の質問はとても時間内で答えられる事ではないよ。たくさんの人が質問出来るように、ここではそんなに答える時間がない」とやんわり諭しているところも好感が持てた。

劇中の鳥があまりに珍しく可愛かったので、その種類を聞いてみると、日本の雀のように当り前にいる鳥との事。通称「プープー」?

この上映は7月7日の夜。七夕の話を知らなかった監督も、その由来を聞いて、国では「7」は聖なる数字という事もあり、この日の上映をとても喜んでいた。

鳥野 韻子

フランス映画祭って

この映画祭は、フランスでも封切りされたばかりとか、または封切り前の作品を見られる貴重な機会でもありますが、フランス語を学ぶ人たちにとっては、また別の意味で、足を運んで損はないイベントです。来日ゲスト達のユーモアたっぷりの舞台挨拶や観客との質疑応答の内容が逐一、一流の通訳達によって訳されていく、その様子を目の当たりにできるしあわせ。フランス好きの人には、実にたまらない場なのです。

映画の中のフランス語は、大変くだけた言葉を使っている事も多いので、少し分かるだけでも大変なものなのですが、こんな言い方もするのだなあと、ふと心に残る言い回しなどを見つけて帰るのもまた、楽しいです。

例えば、「ヴィーナスビューティー」の一節で、こういうのがありました。Tu as boutonne mardi avec mercredi!(ボタンをかけ違えているわよ)これは、月曜と火曜でもいいのかとか、二つずれていたら、火曜と木曜と言うのかなど、いろいろ思いが巡ってしまいます。ごく普通に使われるのかどうか、この辺は知り合いにでも聞いてみようと思いますが、脚本家の方の独自の言い回しなのなら、思わず「それ、いただき!」ですね。

映画的にいいわるいは別として、個人的には、最後の上映作品「ヴィーナスビューティ」が一番、心にこたえました。一本でも心にささる作品があれば、それだけで充分、映画祭全体の印象もよくなるもの。やはり何本も見れば好き嫌いはあるので、気分的には最終上映までは、今年はちょっと好きなのないなあと思っていましたが、クロージングの「ヴィーナス…」にはあまりに感動してしまったので、思わず手を挙げて質問したい、というよりも監督や俳優さん達にお礼を言いたい衝動に駆られてしまいました。

なんて言おうか頭の中を整理しているうちに、時間切れになってしまったのですが、中には、フランス語でご自分で質問される方もいらっしゃって、自分の勇気の無さを反省させられます。

時間も限られているので、運が悪ければ発言できずに終わったりもしますが、きっと毎年楽しみにされている方も多い事でしょう。ちなみに、この質疑応答のおまけがあるので、いい作品はよりおもしろく、あれ?と思う作品でも逆に、質疑応答が非常におもしろかったりして、それなりに楽しめますよ。

毎年、フランス語検定の時期と微妙に重なり、行きたいのに行けない方もいらっしゃるかもしれませんね。私も悔しい思いをした事があります。余裕があれば、気分転換にちょっと出かけるのも決してマイナスにはならないと思います。サイン会などに並ばれたり、そうでなくてもふっと、その辺をゲストの方が歩いていたりする場合もあるので、フランス語で話し掛けるチャンスは日常に比べて何十倍もあるはずだと思います。あとは、度胸の問題。

映画を見るだけではない、必ずそれ以上の思い出をつくって帰れる横浜フランス映画祭。みんなにもっと教えたいような、そっとしておきたいような…何とも複雑な心境です。

松山 弥代

総評

毎年6月の恒例となったフランス映画祭横浜も今回で7年目を迎え、10 日~13 日の4日間、桜木町のパシフィコ横浜は大勢の人で賑わった。

梅雨とはいえ、連日真夏日の中、9:00台からの1本目の上映もほぼ満席という盛況ぶりで、初のレイトショーも、かなりの観客が席を埋めていたのには吃驚した。

今年はジャンヌ・モローに始まる歴代の女優に代わり、初の男性監督、クロード・ルルーシュが団長として来日した。ルルーシュといえば『男と女』~『男と女嘘つきな関係』まで、長いキャリアでたくさんの人々を魅了してきた監督だ。そのせいか、観客の年齢層も幅広く、彼の作品『幸運と必然』のチケットは早くから完売してしまった。

普段スクリーンでしか目に出来ない、俳優や、滅多にその声も聞けない?監督やプロデューサーといった人々と身近に接する機会があるのも、この映画祭の魅力のひとつ。

今年はカンヌでグランプリを受賞した『ヒューマニティ』のブリューノ・デュモン監督や、コメディの大御所のクロード・ジティ監督も最新作『アステリクスとオベリスク』を引っ提げて来日。『ペダル・デュース』以来大ブレイクのパトリック・ティムシットは監督と主演をこなした『カジモド』と共に・・・と多彩な顔ぶれだった。その他、ヴァレリー・ルメルシェ、アラン・ベイジェル等、ティムシット同様俳優出身の監督が目立った。

一方、俳優陣は、先の『ヒューマニティ』で主演女優賞のセヴリーヌ・カネルや、サイン会でまでも、慌ただしくインタビューを受けていたサミュエル・ル・ビアン、若手成長株のギヨーム・カネやロランス・コート等、次代を担う、元気な人々の来日が多かった気がする。

以前に比べ、ヨーロッパの作品もかなり配給されてきているが、まだ単館上映が多い事から、アメリカの俳優に比べると、彼等に対する一般的な認識度が低い。そんな中、早くもこうした旬な人々といち早く出会えるのも映画祭のメリットだといえる。

勿論ヌーベルヴァーグ世代にはお馴染みのナタリー・バイの来日も、ファンには懐かしいものがあるし、来日こそなかったが、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カトリーヌ・ドヌーヴ等のベテラン俳優達も健在だ。

さて、今回上映作品約 20 本のラインナップだが、硬質な社会派から、ドタバタコメディまで、バランスよく散りばめられていた。

『冬の少年』は一見サスペンスの形式をとりながら、『今日からスタート』は丹念なリサーチの上で、それぞれ現代のフランスを反映している。『幸運と必然』、『幸せな日々』のような作品ではフランス映画らしい、心の襞を繊細に描いていた。

また、アメリカ映画のような大仕掛けこそないものの、SFX を駆使した『アステリクスとオベリクス』や、人気舞台の映画化『大浸水』などは、かなりの装置と思われた。こうしたコメディでは、他に大胆な解釈の『カジモド』や、可愛らしい『ギャルソンヌ』等それぞれに楽しめた。個別の作品については、あとで詳細を報告。

今回気になった事といえば、このところ、映画人口が増えていると言われている中で、ベテランのジャック・ドワイヨン監督が、“予算の関係で”16mm 撮影を余儀なくされた、とその新作『少年たち』の舞台挨拶で述べていた事だ。無論、彼の手にかかれば、フィルムの質を越えて作品としてはなかなかのものだったが。

今年はリザーブシートが設けられ、チケットの獲得に苦戦したところもあったが、始まってみると、観客のエチケットもよく、また会場係も例年に比べ穏やかだった気がする。

来年は8回目。どんな映画祭になるかが今から楽しみだ。